問題は、安保法ではなく、憲法だ。ー【東京社説】安保法5年 違憲性を問い続けねば


 下掲するのは、殆ど「毎年恒例」となっている東京新聞の「安保法反対社説」である。斯様な「安保法反対社説」を掲げる以上、安保法が未だ「安保法案」として国会審議中に東京新聞自身が掲げた「安保法案反対社説」の類いを、東京新聞自身は「覚えている」と、期待するのだが・・・

  • 【東京社説】安保法5年 違憲性を問い続けねば

【東京社説】安保法5年 違憲性を問い続けねば

  https://www.tokyo-np.co.jp/article/94430?rct=editorial

 

2021年3月29日 07時31分

 

【1】 安倍前内閣が成立を強行した安全保障関連法が施行されてきょう二十九日で五年。この間、自衛隊の米軍防護が増えるなど米軍との一体化が確実に進むが、同法の違憲性を解消し、地域の緊張を緩和する外交・安全保障政策にこそ、知恵を絞るべきではないか。

 

【2】 米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、バイデン政権の閣僚として初めての訪問先に日本を選んだ。このことは、アジア・太平洋地域の情勢が依然、厳しいことを物語る。その視線の先にあるのは、軍事的台頭が著しい中国にほかならない。

 

◆増える米軍の防護任務

 

【3】 今月十六日に開かれた日米両国の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)後の共同発表では、海洋進出の動きを強める中国を名指しで批判し、「日米同盟」をさらに強化する決意を表明した。

 

【4】 自衛隊と米軍の防衛協力はこれまでも、自衛隊の役割拡大という形で、緊密化が進んできた。

 

【5】 その度合いを一層強めたのが、安倍晋三前首相が二〇一五年九月に成立を強行し、翌一六年三月に施行された安保関連法である。

 

【6】 「一体化」ともいえる自衛隊と米軍との緊密な協力関係は、数字にも表れている。自衛隊が昨年一年間、安保法に基づいて実施した米軍の艦艇や航空機の防護は一九年の十四回から増え、二十五回を数えた。初めて実施した一七年以降で最も多い。

 

【7】 内訳は弾道ミサイル警戒を含む情報収集・警戒監視活動による艦艇警護が四回、共同訓練の際の航空機警護が二十一回。法律上は米国以外の軍隊も対象だが、安保法施行後の五年間で自衛隊が防護したのは米軍だけだ。

 

【8】 「アジアで最も強力な二つの軍隊の統合が進んでいることの表れだ」。米CNNは、自衛隊による米軍防護の増加をこう報じた。

 

◆軍事衝突の引き金にも

 

【9】 安保法の施行以前、自衛隊が平時に武器を使って防護できる対象は自衛隊の武器や施設に限られていたが、同法の施行で「日本の防衛に資する活動」を行う米軍など外国軍隊の武器や施設が対象に加えられた。

 

【10】 しかし、いくら日本の防衛に資する活動をしているといっても、米艦などの防護活動中に攻撃や妨害行為があった場合、阻止するために自衛隊が武器を使用すれば、紛争の引き金を引きかねない。

 

【11】 しかも、防護活動の時期や場所は米軍の部隊運用に関わるとして発表されず、情報に乏しい。

 

【12】 安倍前首相が安保法案の国会審議で、米艦などへの防護活動について「国会および国民に対する説明責任を果たすため、可能な限り最大限の情報を開示し、丁寧に説明する考えだ」と、情報公開を約束したにもかかわらずだ。

 

【13】 安倍前内閣は法案提出に当たって、歴代内閣が堅持してきた「集団的自衛権の行使」を憲法違反とする解釈を一内閣の判断で強引に変更し、一部とはいえ行使容認に転じた。

 

【14】 安保法を巡り、各地で違憲訴訟が提起されたのも当然だろう。

 

【15】 安保法でさらに進んだ自衛隊の任務、装備両面での強化や米軍との一体化が、戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法九条に合致するのか。施行から五年を経ても、その妥当性を問い続けねばなるまい。

 

【16】 今年は一九九一年に湾岸戦争が勃発してから三十年の節目の年でもある。振り返れば、この戦争を契機に日本の国際貢献策として自衛隊の海外派遣が始まり、イラク戦争や「テロとの戦い」など国際紛争の度に、自衛隊は海外での活動範囲や役割を拡大してきた。

 

【17】 そして私たちが今、直面するのが、中国の著しい台頭だが、これまでと全く違うのは中国が日本にとって地理的、経済的に極めて近い関係にあることだ。

 

【18】 もし、米中両国が日本周辺地域で軍事的衝突に至れば、日本も無傷ではいられまい。米国が日本に対し、日米安全保障条約に規定された以上の、さらなる軍事的協力を求めてくるかもしれない。

 

◆「したたかな外交」こそ

 

【19】 もちろん「平和」と口にするだけで、日本の平和と安全を保つことはできないが、日米の軍事的一体化を進めることで逆に、地域の緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥らないだろうか。

 

【20】 日本は憲法が許す範囲内で自国の守りを固める一方、地域の警察力としての米軍の存在を認め、米軍への基地提供という安保条約上の義務は誠実に果たす。

 

【21】 その上で、権威主義に大きく傾く中国とは対話を通じて自由や民主主義、人権を重んじ、国際社会の責任ある一員として責任を果たすよう促す。そんな外交戦略を描き、果敢に展開するしたたかさが必要とされているのではないか。

 

【22】 対立をあおり、封じ込めに固執することを、賢明な外交・安全保障政策とはとてもいえない。

 

 

  • 安保法執行以来5年を経ても「違憲性しか問えない」と言うことは、「実害はなかった」と言うことだ。

 殆ど章題だけで「QED(以上を以て命題は証明された。オワリ。)」と結論づけられそうなぐらい。なぁにしろ、安保法が未だ安保法案として国会審議されていた頃のアカ新聞どもの騒ぎ様=「安保法に予想される実害」ってのは、非道かったからねぇ。

 上掲東京社説に明示された「安保法による害」を列挙すると、以下のようになろう。(例によって【】は根拠となったパラグラフ番号)

① 自衛隊の米軍防護任務が増え、「日米両軍の一体化」が進んだ。【6】~【8】

② 米軍防護任務中に自衛隊が武器を使用すると戦争になりかねない。【10】

③ 米軍防護任務の時期や場所の公開情報が少ない【11】~【12】

④ 安保法に違憲訴訟がある【13】~【15】

⑤ 米中軍事衝突の恐れがあり、米国が更なる軍事的協力を求めるかも知れない【18】

⑥ 日米の軍事的一体化は地域の緊張を高める恐れがある【19】


・・・上掲東京社説のタイトルから充分予想された事だが、何と中身の無い「批判」だろうか。

 安保法は、とっくの昔に国会審議を通過して法律となり、執行されて(上掲東京新聞社説タイトルにもある通り)既に5年も経ているのである。であるのに、この安保法に対する上掲東京社説の批判=「安保法による害」上記①から⑥の半数、即ち、②「戦争惹起の恐れ」⑤「米国のさらなる軍事的協力要請の可能性」⑥「緊張を高める恐れは、何れも「懸念事項」と言えば聞こえは良いが、精々が「未来予測」であって、「今現在の実害」では無い。而して、何れも「安保法半審議の頃でさえ表明されていた”懸念”」であるから、「未だに懸念のままに留まり、実現化具現化していない」と言うことであり・・・少なくともある意味、ある範囲で「安保法案審議の頃に表明された”懸念”は、実現していない」のである。
 
 で、「今現在の実害」と(未だ)言い得るのは、①「米軍防護任務増加」③「米軍防護任務の時間・場所情報公開不足」④「違憲訴訟しかない。

 先ず上記③「米軍防護任務の時間・場所情報公開不足で「安保法を非難」出来てしまう非常識・平和ボケ・間抜けさに呆れるよな。「安倍首相の答弁と異なるぅぅぅ!」ってロジックらしいが、「軍が任務の詳細を秘匿する」のは基本であり、常識。そんなモノホイホイ公開したら、任務失敗の可能誠意が高まろうが。
 それを「文民統制に反する!」とか言う人は、文民統制の本質を理解しておらず、「文民統制」と称してイチャモンをつけている人、だ。「文民が統制すべき」なのは、「開戦と終戦」であり、その「間」にある「どの敵を何時、どう攻めるか」なんてのは専門家たる軍人に任せるべきなのである。そこに「文民統制」で文民が関与・介入することも確かにあるが、軍事的合理性に欠けるから、失敗の元。大抵、ろくな事にならない。
 言い換えるならば、上記③「米軍防護任務の時間・場所情報公開不足」なのは、当たり前。それを「文民統制に反する」とか「安倍首相の国会答弁」とかを盾に非難出来てしまう者は、己が常識と知識をじっくり再検討することを奨めるぞ。

 更に上記①「米軍防護任務増加で「安保法を非難」出来てしまうのも、スゴい話だ。①「米軍防護任務増加」とは、少なくとも一面、「安保法の有効性・有益製を示すもの」であり、「安保法の実績」とも言い得るのだから。
 「日米の軍事的一体化」とやらも、何やら非難の対象になっており、それが上記⑤や⑥にも繋がっているようだが、これまた一面「日米同盟の強化」とも言え、「安保法の実績」とも言い得る。

 即ち上記①は、「安保法の害」とも言えるかも知れないが、「安保法の実績」とも言い得るのだから、「一概に非難批判は出来ない」と言うことだ。


 そりゃ「日米同盟強化」は、米国と軍事的衝突に至りかねない中国や北朝鮮には不都合だから、非難も批判もするだろうし、「地域の緊張を高める」ぐらいはするだろうさ。だが、私(ZERO)に言わせるならば。「日米同盟強化で高まるような緊張ならば、高まるのが正しく、高めるべき。」である。
 逆に「地域の緊張を高めないために、日米同盟弱体化(更には破棄)」というのは、良く言って「事なかれ主義」。平たく言って、利敵行為だ。

 まあ、東京新聞の利敵行為は、昨日今日始まったことでは無いがな。
 
 何れにせよ、上記①を「安保法の実害」と断じる事は、随分と独断的である。利敵行為である、と言うのは別にしても、だ。

 そうなると、詰まるところ、「安保法の今現在の実害」とは、上記④「違憲である事に、尽きてしまうようだ。

 全く、呆れ果てるしか無いな。日本国は集団的自衛権を有するが、日本国憲法は集団的自衛権の行使を禁じているから、日本は集団的自衛権を行使出来ない。」ってのが上記④「違憲性」のベースである。それが長いこと日本政府の見解でもあり、今でも日本憲法学会の主流である、らしいのだが・・・普通に考えればこれは「日本国憲法が、日本の集団的自衛権を阻害し、蹂躙している状態」であり、「左様な日本国憲法は、早急に改憲ないし廃憲すべきである。」というのが、常識的な発想だろう。クドいようだが「日本国は集団的自衛権を有する」という状態は、「日本が、正当な権利として集団的自衛権を認められている。」状態である。「正当な権利と認められている」からこそ「その権利を有する」とされるのである。「不当な権利」ならば、「権利を有する」などととは、認められない。


 処が、「日本国憲法は、日本国に集団的自衛権の行使を認めていない。」のであるならば、その結果「日本国は集団的自衛権を行使出来ない」のならば尚のこと、「日本国憲法が、日本国の正当な権利である集団的自衛権の執行を阻害している」のである。「正当な権利の執行を阻害している」のであるから、これは「不当なこと」であるのは間違いようが無い。従って「日本国憲法は、日本国に対し正当な権利の執行を阻害してしまうような、不当性を有している」のであり、「日本国憲法は、不当な憲法である。」と、言うのが、論理的帰結というモノだろう。
 
 それを、「日本国は集団的自衛権を有するが、日本国憲法が日本国の集団的自衛権行使を禁じているのは、正しい。」と「理解/納得」出来てしまうような輩は、「キチガイ」で無ければ「日本国憲法信者」と呼ぶぐらいしかあるまい。而して、安保法に対し違憲訴訟とやらを起こしているのは、このキチガイだか憲法信者だかなのであろう。
  
 左様な違憲訴訟が今後どうなるかは予断は許されないが(何しろ、「同性婚は憲法違反だ」などと言うトンデモ判決がつい最近出たぐらいだ。)、「そのような違憲訴訟にる違憲性ぐらいしか問えない安保法」が、「今の所実害は無い」と言うことには、議論の余地が無さそうだぞ。