「論点ずらし」から「論点隠し」へ。-【朝日社説】学術会議問題 進む介入、深まる危機
【朝日社説】学術会議問題 進む介入、深まる危機
学術会議問題 進む介入、深まる危機
2020年11月24日 5時00分
【1】 日本学術会議は独立して職務を行う――。そう定める日本学術会議法に反しかねない、少なくともその精神をないがしろにする行いだ。会員の任命拒否問題に続き、菅政権の強権的な体質を示す国会答弁があった。
【2】 質問したのは自民党議員だ。17日の参院内閣委員会で、大学などの研究機関は軍事研究に携わるべきではないとの立場をとる同会議を攻撃し、今後の改革論議の中でこの問題を取りあげるよう迫った。これに井上信治科学技術担当相は「梶田隆章会長と話をしている」「会議自身の検討を待っているが、しっかり意見交換をしながら取り組んでいきたい」と答えた。
【3】 3日後の会見で井上氏は「見直しを要請したわけではない」としつつ、「デュアルユースについても冷静に考えなければいけないのではないかという考えを述べた」と明らかにした。この状況下で大臣がそう言えば、見解の変更を迫ったと受け止めるのが当然ではないか。
【4】 研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」は科学技術の宿命だ。科学者の発明や発見は快適で便利な生活をもたらした半面、毒ガス、生物兵器、核兵器などをつくり出した。国内外を問わず、意に反して動員され戦争に協力させられた研究者も大勢いる。
【5】 その反省に立ち、あらかじめ歯止めをかけようと学術会議は1950年と67年に「軍事目的の研究は行わない」と表明。3年前にも「これを継承する」との声明を出した。政府は大学の補助金を削る一方、兵器などの開発につながる研究に多額の資金を支給し、管理する制度を広げていた。危機感をもった同会議が安全保障の重要性も含め、多角的に「冷静に」議論を重ねてまとめたものだった。
【6】 声明に研究機関や個人の行動を縛る力はないが、政府・自民党は反発し、虚偽や誇張も交えて学術会議を批判してきた。
【7】 任命拒否は人事で学術会議をゆさぶり、政権の考えに沿う組織に変えていこうとする意思の表れと見ることができる。さらに踏みこんで個別の活動にまで介入する構えをのぞかせたのが、今回の大臣答弁だ。
【8】 学問研究が政治の統制下におかれ、国を危うくした過去を踏まえて、学問の自由を保障した憲法のもと、先人は特別な機関として日本学術会議を設け、職務の独立の重要性を法律にうたった。歴史に学ばなければ同じ轍(てつ)を踏むことになる。
学術会議は学会では無い.一部学者が担う、政府の諮問機関だ。
お気づきだろうか.上掲朝日社説は、学術会議問題を題材としながら、「学問の自由(の侵害)」というキーワードが、タダの一度も出て来ない。
奇妙な話では無かろうか。朝日新聞は以前の社説タイトルで、本「学術会議問題」のことを、「学問の自由 脅かす暴挙」と断定断言して見せたのだから、な。
本問題が問題化して以降の朝日社説タイトルを列挙すると、以下の通りである。
- ①学術会議人事 学問の自由 脅かす暴挙 10/2
- ②学術会議人事 説得力ない首相の説明 10/6
- ③学術会議問題 論点すり替え 目に余る 10/9
- ④学術会議問題 首相は説明責任果たせ 10/13
- ⑤学術会議問題 自身の戒め忘れた首相 10/25
- ⑥学術会議問題 首相答弁の破綻明らか 10/31
- ⑦学術会議問題 6人を任命し出直せ 11/7
- ⑧学術会議問題 進む介入、深まる危機 11/24
上掲タイトルに見られる通り、最初(上記①10/2)は「学問の自由の侵害!!」と盛大にぶち上げて大いに政府を非難しながら、上記②(10/6)~⑥(10/31)まで「管首相答弁」や「説明責任」へと「論点すり替え」に終始した挙げ句、上記⑦(11/7)で「無かったことにしろ」と主張した、上での上記⑧・上掲の通りの朝日社説である。
上記⑧・上掲の朝日社説を一言でまとめるならば、「学術会議問題を追及しろ!!」であろう。但し、左様追及する理由は、相当に曖昧になっている。何しろ前述の通り「学問の自由(の侵害)」と言うキーワードが、上記⑧・上掲朝日社説には、タダの一度も出て来ないのだ。
「学問の自由(の侵害)」と言うキーワードがタダの一度も出て来ないのは、ある意味理の当然ではある。上記⑧・上掲朝日社説の大半、パラグラフ【2】~【6】にて、学術会議が三度にわたって出している「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」声明を取り上げており、同声明を「政府と学術会議の対立点」としてのみ扱い、「政府がその意向に学術会議を沿わせようする」介入として非難批判するのみであり、かかる声明自身が「戦争を目的とした科学の研究を阻害する」モノであり、「学問の自由の侵害」そのものであるという視点・論点が全く欠落させているのである。
言い換えれば、当該声明を「政府と学術会議の対立点」としてのみ扱うためには、「実は当該声明自身が、学問の自由侵害(の疑いがある)」事は隠しておきたい。そりゃ、「学問の自由(の侵害)」とは、言わない/言えない訳だぁ。
だが、これを「論点ずらし」とか「論点隠し」とか言わずして、一体何を「論点ずらし」「論点隠し」と言おうか。諄いようだが繰り返すが、本「学術会議問題」を「学問の自由 脅かす脅威」と社説タイトルで断定断言し、「学問の自由(の侵害)」を論点としたのは、ほかならぬ朝日自身である。
辛うじて、
1> 声明に研究機関や個人の行動を縛る力はないが、政府・自民党は反発し、虚偽や誇張も交えて学術会議を批判してきた。
の一節で、「学術会議の『戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない』声明は、学問の自由の侵害である」とする主張に対する「反論」としている様ではあるが、事実としてこの声明に基づいて各大学に『戦争を目的とする科学の研究を審査し、禁じる』委員会だか審査会だか作られ、同声明を実践実行しているのだから、少なくとも学術会議は「戦争を目的とした科学の研究を禁じる」提唱者であり、「学問の自由侵害の促進者」である。
私(ZERO)に言わせれば、学術会議は「学問の自由侵害の主犯」であり、「(学術会議の)声明に研究機関や個人の行動を縛る力はない』のは「実行犯ではない」ことしか証していない、と主張する。
私(ZERO)の主張を、(上掲朝日社説のように)「虚偽」や「誇張」と抜かすのであれば、先ず「戦争を目的とする科学の研究を禁じる」各大学の委員会だか審査会だかが「学問の自由侵害」に当たるか否か、更にはデュアルユースを含めた「戦争を目的とする科学の研究」は「学問の自由」の範囲内か否かを、明確に宣言すべきであろう。
無論、私(ZERO)に言わせれば、「戦争を目的とする科学の研究」は「学問の自由の範囲内」だ。従って、実行犯たる「戦争を目的とした科学の研究を審査し、禁じる」各大学の委員会・審査会が「学問の自由の侵害者」である事に疑義の余地は無い。
学術会議やその当該声明が、当該委員会・審査会の設立や運営に「何ら影響を及ぼしていない」ならば、学術会議は「学問の自由の侵害者」である事を免れ得るが、左様なことは、想像を絶するな。
チョイと邪推を巡らすならば、斯様な議論・論点を回避するための「言い訳」が、上掲朝日社説なのではなかろうか。
全く「回避になっていない」と、私(ZERO)には思えるが、上記1>の「虚偽や誇張」で「反論」の心算らしい、って事だけは、ナントカ理解できた。
諄いようだが、繰り返そう。
本「学術会議問題」を「学問の自由侵害」と明言断言断定したのは、朝日新聞自身である。
であるならば、その学術会議が再三出している「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」声明が、「学問の自由侵害には当たらない」事は、立証論証されて然るべきである。上記1>の様なのは、「主張」ではあるかも知れないが、「反論」になって居らず、立証論証にもなっていない。
如何に、朝日新聞。
- 弊ブログの先行記事.
- 1.「学問の自由を脅かす!」とは、片腹痛い。ー学術会議人事を巡る各紙社説のトンチンカン https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12630873289.html
- 2.「学問の自由を脅かす!」は、どうしたんだ?ー学術会議人事を巡る各紙社説の推移 https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12632304782.html
- 3.モリカケ桜、ガクジュツカイギー管首相国会答弁に対するアカ新聞社説に大笑い
- https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12635256656.html
- 4.「違法だぁ!」とすら言えなくなり、「首相答弁の破綻/矛盾」に切り替えたらしい。ー学術会議問題を巡る各紙社説
- https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12636560433.html
- 5.「学問の自由侵害」への原点回帰、の筈が・・・【東京社説】憲法と学問の自由 迫害の歴史の果てに +1
- https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12636726331.html
- 6.悪役探しか、魔女狩りか。-学術会議を巡る毎日&琉球新報社説
- https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12637984472.html
- 7.あれだけ騒いで、「無かったことにしろ」とはね。ー【朝日社説】学術会議問題 6人を任命し出直せ https://ameblo.jp/zero21tiger/entry-12638161779.html
- 8.論点ずらし」から「論点隠し」へ。-【朝日社説】学術会議問題 進む介入、深まる危機