アベノマスクは、愚挙か?ーチョイと頭冷やして再考して御覧。

 発表当初からやいのやいの言われ、今や一部では愚の骨頂」や「税金の無駄遣いの典型例」の様にも言われる「アベノマスク」は、以下の特徴を有する施策である。

① 日本政府は、日本の全世帯に一世帯あたり2枚の布製マスクを配布する。

② 布製マスクとするのは、洗濯して再利用可能だから、である。


 付け加えるならば、この施策が発表された当時は、武漢肺炎の影響らしく、恐らくは買い占めと転売狙い(*1)の影響もあって、市場からマスクが消え、結構な騒ぎとなっていた。なればこそ、「前代未聞」とも言えそうな「アベノマスク」政策が決定され、発表され、実施された。

 その後の、やれ「異物の混入などの品質問題」だの、「選定業者の妥当性」だの、少なくともその一部は「イチャモンとしか思われない」様なスッタモンダがあれこれあり、それらの影響もあって(多分)実施は遅れ、未だ「完遂・完了」とは行かない様だが、相応に実施されているがのが、現状である。

 無論、その間に、マスク転売を禁じる法律を作るなどの努力(*2)を、日本政府は行っており、民間は民間で新規参入を含めて国産マスクの増産に努め、それらの努力もあって今日では「武漢肺炎禍以前よりも、日本国内のマスク事情は好転している」と言えそうだ。

 左様な好転したマスク事情なればこそ、アベノマスクは、「愚挙」「愚の骨頂」「税金の無駄遣い」と揶揄され非難されている、訳であるが・・・果たして、さほどに非難批判されなければならない様な、「愚挙」であろうか?

 正直言って、最初に「アベノマスク」政策構想を聞いたときは、「何じゃソリャ?」と思わないでは無かった。「洗濯して再利用出来る布マスク」とするのは理解出来るが、「一世帯に2枚」という数量制限は「必要最小限を辛うじて満たす程度」と思われたから、である。
 
 ではあるが・・・まあ、市場に「武漢肺炎禍以前以上のマスクがある」現時点なれば尚のこと、「アベノマスクを冷静に評価出来る」のではなかろうか。無論、「冷静に評価する」気があり、己が「小さな灰色の脳細胞」を使う気があれば、だが。

  • <注記>
  • (*1) その一翼は、マスクの製造元でもある中国が担ったとする、根強い噂がある。大いに、あり得ることだ。 
  •  
  • (*2) 左様な努力を以て「十分」とするか否かは、議論の余地があるだろう。だが、「政府が何をやっても、何もやらなくても、非難する奴は、非難する。」って点は、忘れるべきではないな。 




【Q1】 現状のマスク事情下で、アベノマスクは有用か?
 
 この問いに対しては、既に答えてしまっている様なモノだな。

【A1】 現状のマスク事情は、武漢肺炎禍以前よりも好転しており、アベノマスクを利用・活用する必要は、殆ど無い。

 「市販されているマスクは、高くて手が出ない」様な人たちにとっては、アベノマスクはなお有用、有益であろう(何しろ、国がタダでくれるんだ。)が、それ以外の大半の日本国民にとって、「アベノマスクを着用し、利用する機会も必要も無い。」だろう。

 諄い様だが、なればこそ、アベノマスクは「愚の骨頂」とか「税金の無駄遣い」とか非難され、揶揄されているのである。

 が、・・・頭ぁ冷やして考えてみるが良い。アベノマスクを「愚の骨頂」とか「税金の無駄遣い」とか非難し、揶揄出来る現状が、如何に幸福であるか、と言うことを。

【Q2】 アベノマスクは、無効か?無効と予断すべきであったか?

 繰り返すが、アベノマスクとは、「一世帯あたり2枚配布される布製マスク」である。これが昨今の好転したマスク状況下では「ほぼ無用」と言えることは既に述べた。

 だが、「ほぼ無用」なアベノマスクは「無効か?」と問うならば、「そんなことはあるまい」と言い得る。所詮布製マスクであるから、布製マスクとしての限界はあるが、布製マスクとしての防疫効果は着用すれば得られる筈だ。また、左様な「アベノマスクの防疫効果」は、施策発表当時でも予想でき、期待し得た、筈である。

 「アベノマスクは利用・着用されていないのだから、当初期待された様な防疫効果を、アベノマスクは発揮していない。」とは言い得よう。だが、肝心なのは、マスクが国民に十全に行き渡る等して「防疫効果が上がること」であり、「武漢肺炎を押さえ込むこと」である。その目的のためならば、「アベノマスクが利用されず、当初期待された防疫効果を発揮していない」現状は、「以てアベノマスクは瞑すべし。」とは言い得ても、「アベノマスクは無効だ!」と断定断言するのは、チト非道かろう。

 マスク市場が現状の様に好転せず、配布されたアベノマスクを大いに頼りとしなければならない事態も、予想されて然るべきである/あった、のではないか。左様な事態においては、恐らくは現状よりも「アベノマスク以外を含めた防疫効果」は低下しており(*1)、武漢肺炎は現状よりも猛威を振るっていたことだろう。左様な「現状よりも非道いマスク状況及び武漢肺炎禍」を予想・予測しての「保険としてのアベノマスク効果」は、決して徒や疎かにすべきではあるまい。

 斯様に考えるならば、「アベノマスクは無効だ!無駄だ!!」と公言するヤツバラは、現・安倍政権とかアベノマスク政策とかに対してのみならず、先ずアベノマスクそのものに対して随分と無礼、なのでは無かろうか。
 
 私(ZERO)は根っからの日本人であるから、付喪神思想というか、付喪神発想(*2)骨身に染み込んでいる(*3)。「アベノマスクは無効だ!無駄だ!!」と公言するヤツバラには、付喪神となった「アベノマスク」の罰が当たるのでは無かろうか、等と、想像してしまうぞ。

 以上の様に考察すると、【Q2】に対する回答は・・・

【A2】 アベノマスクは、利用・着用すれば現状でも防疫効果を発揮するのだから、有効である。また、「マスク状況が好転せず、アベノマスクが大いに利用される」事態も想定されて然るべきである/あったから、「アベノマスクを無効と予断する」のは、かなりのリスクが伴う。

 

  • <注記>
  • (*1) 少なくとも、マスクは現状よりもかなり少ない、筈だ。 
  •  
  • (*2) 具体的に言えば「日本神道の一部」なのだろうが。竈の神様から便所の神様まで居る八百万神の中には、モノが長いこと愛用されて神に昇格する”付喪神”が相当数含まれており、且つモノが増えると共に付喪神も増えている、筈である。 
  •  
  • (*3) 日本神道には、教義も聖典も布教活動も無い。自然現象はおろか、ありとあらゆるモノが神となり得る。だから、「原始宗教」とやらに分類されるらしいが、それだけに、日本人には、骨の髄まで染み込んでいる。
  •  キリスト教も回教も、世界的には大宗教だが、日本での影響力は極めて限定的だ。仏教はそれらに比べると随分と普及しているが、日本神道の広がりに比べるとモノの数では無い。 

【Q3】日本政府は、アベノマスクなぞ実施すべきでは無かったか?


 この問いかけには、二つの意味が込められていよう。即ち、

【Q3-1】 アベノマスクは利用されていない上に、現状の好転したマスク事情には何ら資していない。従って全くの無駄ではないか?

【Q3-2】 アベノマスクにかかった費用は、他のことに廻すべきではないか?


 先ず【Q3-1】「アベノマスク全否定」であるが、論外と言うべきだろう。先行【A2】で「回答」した通り、アベノマスクが「実際に役立つ(役立ってしまう)」可能性は「考えるべきであった」から、「実際に役立たずとも、保険として役立った」とは言い得る。斯様な全否定は、適うまい。
 
 【Q3-2】の方は、未だ議論の余地がある。それはつまり、コストパフォーマンスの問題であり、「よりコストパフォーマンスの高い方法があった。」とする主張は、大抵の場合成立する、ある意味「便利なイチャモン」であり「万能イチャモン」である。【A2】で回答した通り、現状の好転したマスク状況下では「アベノマスクの効果は実際的なモノでは無く、保険としてのレベルに留まる」のだから、、「よりコストパフォーマンスの高い方法があった。」とする主張には、尚のこと説得力があろう。

 だが、政府とか、リーダーとかは、何らかの決定を、「何もしない」という決定を含めて、しなければならない立場だという点は、考慮して然るべきだろう。その立場は、「常にベストの決定を下す」のが理想ではあるが、神ならぬ身の定命の者には(*1)叶う業では無い。「アベノマスクは、ベストの選択では無かった」として反省材料として次回以降に活かすのは良かろうが、「アベノマスクは、ベストの選択では無かった」と、非難される筋合いは、神ならぬ身の定命の者には、無い。

 従って【A3-2】に回答するならば、以下の様になろう。

【A3-2】 「アベノマスクよりも良い政策」が「あった」可能性は、ある。その「より良い政策」は是非とも御教示頂き、次回以降への反省材料とすべきである。
 アベノマスクについては、当時のマスク状況下では、少なくともベターな施策であり、「過ち」とは言い難い、と考える。

  • <注記>
  • (*1) 「無謬性」なんてフィクションを構築しない限り。偶に構築する奴が居るから、困ったことになるのだが。 


【Q4】再び問う。アベノマスクは、愚挙か?

 以上の「回答」を要約すると、以下の様になろう。

【A1要約】 現今の好転したマスク状況では、アベノマスクの実際上の効果は低い。

【A2要約】 悪化していた当時のマスク状況に鑑みると、アベノマスクは保険として有効である。

【A3要約】 アベノマスクはベストの政策では無かったかも知れない。が、ベターな選択ではあった。


 以上でほぼ回答している様なモノだが、【Q4】に対する「回答」は、以下の様になろう。

【A4】 アベノマスクは、愚挙とは言えない。
 

 アベノマスクを「愚挙」と断ずる者には、以下のモノが必要であろう。

① 今日の好転したマスク状況を予見する神の如き洞察力( 且つ、その好転したマスク状況にアベノマスクは何ら寄与していないと言う、確信・確証 )

② アベノマスクよりもコストパフォーマンスの高い防疫施策。

 ああ、良く引き合いに出される様だが、上記②として「PCR検査拡大」なんてのは、論外だからな。先行記事「高校生でも判る、全員ウイルス検査は愚挙である。」にも記載した通り、不用意な大量検査は、大量の擬陽性者を発生させ、それだけで医療崩壊を招いただろう事に、殆ど疑義の余地は無いぞ。

 従って、上記①及び②が無いのに「アベノマスクは愚挙だ」と断じる様なヤツバラは、ブラックファロールの昼飯になるが宜しかろう。