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話が、逆だろう。ーイラン弾道ミサイル攻撃を受けての朝日、毎日、東京社説の「平和ボケ」ぶり。
下掲するは、今般の海自中東派遣に「中途情勢緊迫化」を理由に反対する、アカ新聞どもの間抜けな社説である。まずはご覧あれ。
- ①【朝日社説】米国とイラン 武力の応酬、即時停止を
- ①ー1【朝日社説】中東情勢緊迫 自衛隊派遣の見直しを
- ②【毎日社説】イランの米基地攻撃 報復の連鎖、断ち切らねば
- ②ー1【毎日社説】海自に中東派遣命令 情勢変化踏まえていない
- ③【東京社説】米・イラン対立 報復の連鎖を断ち切れ
①【朝日社説】米国とイラン 武力の応酬、即時停止を
米国とイラン 武力の応酬、即時停止を
https://www.asahi.com/articles/DA3S14320266.html?iref=editorial_backnumber2020年1月9日 5時00分世界を巻き込む紛争に陥るか否かの縁である。米国とイランはこの事態の重さを認識し、報復の応酬をただちに停止しなくてはならない。
イランが、隣国イラクにある米軍の駐留する基地2カ所をミサイルで攻撃した。米軍の空爆による精鋭部隊司令官の殺害に対する報復だとしている。
1979年のイラン革命に伴う断交以来、両国の対立は続いてきたが、これほど直接的な武力行使に発展した例はない。大国間の無益な全面衝突は何としても避けなくてはならない。
イランでは、司令官を追悼する儀式が営まれ、反米世論が渦巻いた。指導部は国民感情も考慮して報復に踏み切ったとみられるが、一方で「戦争は求めていない」(外相声明)と抑制したい姿勢も垣間見える。
冷静に考えるべきだ。80年代のイラン・イラク戦争の下での苦しい生活を、国民は記憶している。新たな戦乱と窮乏の道は誰も望んでいない。米国との衝突をここで確実に抑えることが賢明なのは明らかだ。
ここまで事態が悪化した最大の責任は、米トランプ政権にある。司令官を殺害した空爆についての説明はいまも不明瞭なままで、法的根拠が見えない。
そもそもイランの核をめぐる国際合意から一方的に離脱した経過を顧みれば、危機を生み出したのは米国自身だ。これ以上無謀な軍事行動を重ねるなら、米国には国際秩序の破壊者の烙印(らくいん)が押されるだろう。
この危機の下でも国連安保理が機能しないのは、ゆゆしい事態である。とりわけ常任理事国である英仏中ロは、中東の緊迫に伴う経済市場の動揺や、過激派組織の活発化を防ぎたい共通の利害があるはずだ。国際世論を明示するうえでも安保理の行動を見せるべきだ。
今回の米国のふるまいは、過激派組織「イスラム国(IS)」掃討を含む、国際的なテロ対策にも冷や水を浴びせた。
イラクには掃討作戦に加わっている米以外の国々の軍部隊も駐留しているが、司令官殺害を狙った米軍の空爆は事前に知らされていなかった。そうした国々は急きょ、部隊を他国に移すなど対応に追われた。
自国の思惑を優先し、他国にとっては危険が高まる一方的な軍事行動も辞さない。そんな米国の「同盟軽視」は、ここでも各国を悩ませている。
安倍首相は11日から予定していた中東訪問を延期するかどうかの検討を始めた。だが、中東海域への自衛隊派遣は「方針に変更はない」(菅官房長官)という。事態の急変に伴うリスクなどの説明もしないままで国民の理解が得られるはずもない。
①ー1【朝日社説】中東情勢緊迫 自衛隊派遣の見直しを
2020年1月10日 5時00分中東情勢が大きく変化しているのに、既定路線に従って自衛隊派遣に突き進むことが、緊張緩和に資するのか。政府はいったん立ち止まり、派遣の是非から検討し直すべきだ。
米軍によるイランの革命防衛隊の司令官殺害と、それに報復するイランのミサイル攻撃。イラクを舞台にした両国の武力の応酬は、トランプ米大統領が、さらなる攻撃はしない考えを声明で示し、最悪の事態は当面、回避された。
しかし、トランプ氏は追加の経済制裁を科す方針も示しており、両国の対立がさらに深まる恐れはぬぐえない。イラクやシリアなどで、親イランの武装組織が米軍関連施設などを攻撃する可能性もある。衝突の火種が消えたわけではない。
昨年末、国会でのまともな議論もないまま、安倍政権が中東海域への自衛隊派遣を閣議決定した時とは、前提となる現地情勢が明らかに変わっていると言わざるをえない。
にもかかわらず、政府は新たなリスクをどう評価し、備えるのかの説明もないまま、派遣方針に変わりはないと繰り返している。河野防衛相はきのう、米国とイランの軍事衝突について「そのようなことは起きないだろう」と語った。
ホルムズ海峡やペルシャ湾を活動範囲からはずしていることで、危険度は低いと判断しているのか。菅官房長官も6日のテレビの報道番組で、イランが自衛隊の活動に「理解は示している」とし、「(心配は)していない」と言い切ったが、認識が甘くはないか。
日本は米国主導の「有志連合」には参加しないが、米国の同盟国である。米国への高まる敵意が日本に向かわない保証はない。トランプ氏は声明の中で、北大西洋条約機構(NATO)に対し「中東により関与するよう求める」とも述べた。安全保障関連法が施行された今、現地に日本の護衛艦がいれば、何らかの協力や支援を求められる事態もありうる。
この地域に原油の供給の大半を依存する日本が今なすべきことは自衛隊派遣ではあるまい。イランと友好関係にある立場を生かし、関係国の意思疎通をはかる外交努力の徹底こそ、地域の安定に役立つはずだ。
安倍首相はきのう、記者団に「(米国の)自制的な対応を評価する」としたうえで、今後も「外交努力を尽くす」と語った。今週末からのサウジアラビアなど中東3カ国歴訪を予定通り実施するのであれば、事態を悪化させぬよう、米国、イラン双方に一層の努力を求める立場を明確にし、国際社会に発信する場とすべきだろう。
②【毎日社説】イランの米基地攻撃 報復の連鎖、断ち切らねば
イランの米基地攻撃 報復の連鎖、断ち切らねば毎日新聞2020年1月9日 東京朝刊
米国とイランが軍事攻撃の応酬を繰り広げている。一刻も早く報復の連鎖を断ち切らなければならない。米軍などが駐留するイラクの軍事施設2カ所をイランがミサイル攻撃した。十数発を発射したという。
米軍のイラン司令官殺害への報復と発表した。米軍が反撃すれば「激しい報復」をもたらすとし、米国の同盟国にも警告を発した。
イランは国連憲章に認められた自衛権の行使として正当化するが、軍事行動による応酬で中東の緊張がより高まったのは事実だ。
報復合戦が続けば、米国とイランによる大規模な衝突につながるとの懸念が生じる。
イランのザリフ外相は「事態悪化や戦争を求めてはいない」と言う。エスパー米国防長官も「イランとの緊張緩和を追求する」と述べた。
そうであるなら、まずは双方とも挑発的な言動を自制すべきだ。
トランプ氏はイランの司令官を「怪物だった」と表現した。だが、司令官殺害には米国内でも判断が正しかったか疑問が出ている。
イランやイラクでの反米感情は高まっており、衝動的な言動が不測の事態を招くことも否定できない。米国は過剰な反応を避けるべきだ。
イランは司令官殺害と「同程度」の報復という。だが、集中的なミサイル攻撃は大規模な殺害につながりかねず、事態を悪化させるだけだ。
国際社会も緊張緩和を促す必要がある。国連安全保障理事会では司令官殺害をめぐり米国と中露が対立し声明を出せない状態にあるという。
米軍による司令官殺害には欧州が理解を示し、中露は批判している。中東の権益争いで大国の分断が深まれば国際情勢も緊迫しかねない。
英仏独や中露はイラン核合意の当事者だ。欧州3カ国は米国、中露はイランに対してこれ以上事態を悪化させないよう自制を求めるべきだ。
安倍晋三首相は今月中旬に予定していた中東訪問の延期を検討している。情勢の悪化を踏まえたものだろう。イラクからは欧州諸国の駐留軍の一部が退避を始めるという。
そうした情勢の変化にもかかわらず、政府は中東海域への海上自衛隊の派遣を予定通り実施する方針だ。派遣決定時の前提が変わった以上、再検討するのが当然ではないか。
②ー1【毎日社説】海自に中東派遣命令 情勢変化踏まえていない
毎日新聞2020年1月11日 東京朝刊昨年末の閣議決定後、中東情勢は大きく変化している。それを踏まえた再検討が必要なはずだ。河野太郎防衛相が海上自衛隊に護衛艦などの中東派遣を命令した。護衛艦1隻が2月下旬にオマーン湾などで情報収集活動を開始するほか、先行して海賊対処部隊のP3C哨戒機2機が海上監視を始める。
そもそも、米国の主導する有志連合への参加は見送り、情報収集のみ協力する「お付き合い」で決めた派遣である。イランを刺激しないようホルムズ海峡から先のペルシャ湾は活動海域から外してある。
しかし、年明け早々に米国がイラン司令官を殺害し情勢は一変した。ひとまず報復の連鎖は回避できたとしても、周辺海域の緊張は高まる。
米国の同盟国である日本の自衛隊派遣が地域の反感を買い、日本の民間船舶や自衛隊が武装勢力の攻撃対象となる危険はないか。
さらに情勢が悪化すれば、近くに自衛隊がいるのにどうして米軍を支援しないのだと、トランプ大統領から強く迫られる懸念もある。
防衛省設置法の「調査・研究」を法的根拠とする「軽い任務」で済ませようとした情勢判断の前提が崩れていないかを点検すべきだ。
しかも、なぜ自衛隊派遣が必要なのかについて、政府はこれまで国民に向けて丁寧に説明していない。
国会承認が必要ない「調査・研究」で派遣すること自体、海外の紛争に巻き込まれる恐れのある重い政治判断と見合わない。国民の代表によるシビリアンコントロール(文民統制)として国会の議論が欠かせない。
臨時国会の閉会後に閣議決定し、通常国会が始まる前に派遣命令を出した政府の姿勢は、国会を避けたと見られても仕方ない。
護衛艦の出港は2月2日以降となる。今月20日に開会する国会で徹底的に議論し、派遣の見直しも含めた対応を検討する必要があろう。
安倍晋三首相はきょうからサウジアラビアなど中東の親米3カ国を歴訪する。自衛隊派遣への理解を求める環境整備の色合いが濃く、オマーンからは護衛艦の港湾利用などへの協力を取り付けたい考えだ。
イランとも友好関係にある日本ならではの外交努力にこの局面の自衛隊派遣が水を差すことを危ぶむ。
③【東京社説】米・イラン対立 報復の連鎖を断ち切れ
【東京社説】米・イラン対立 報復の連鎖を断ち切れ2020年1月9日
イランが、米軍が駐留するイラク国内の基地二カ所をミサイル攻撃した。革命防衛隊司令官の殺害に対する報復だが、事態をこれ以上悪化させてはならない。米国、イラン双方に自制を促したい。
日本時間のきのう朝、現地時間八日未明だった。イランがイラク中西部アンバル州のアサド空軍基地と北部アルビルの基地を十数発のミサイルで攻撃した。いずれも米軍が駐留する基地である。
トランプ米大統領が、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の殺害を米軍に命じ、実行したことに対する報復である。
トランプ大統領は、イランが報復すれば大規模な反撃を警告してきた。しかし、米軍が反撃すれば全面衝突に発展しかねない。中東の不安定化に拍車をかけ、世界経済への影響も計り知れない。報復の連鎖を断ち切り、反撃をとどまるべきではないか。
そもそも、ことの発端をつくったのは、トランプ米政権がイランとの核合意から一方的に離脱し、その上、司令官を殺害したことにある。これ以上、一方的な振る舞いが許されるはずはない。
米国、イランとも事態の深刻化は望んでいないという。ならば軍事的手段ではなく、対話を通じて事態を打開すべきだ。
日本は、米国とは安全保障条約を結ぶ「同盟国」であり、イランとも伝統的な友好関係にある。今こそ、そうした外交的資産を中東の緊張緩和に生かすべきだ。
安倍内閣は、中東地域に自衛隊を「調査・研究」の名目で派遣することを閣議決定した。米国提唱の有志連合と一線を画すものの、米軍と連携した活動にほかならない。自衛隊派遣がイランとの友好関係を損ねないか、心配だ。
派遣の前提は、緊張は高まっているものの、日本関係船舶を直ちに防護しなければならないような緊迫した情勢ではないとの認識だったはずだ。
米軍による司令官殺害とイランの報復攻撃で前提が崩れた以上、自衛隊派遣をいったん、白紙に戻すべきではないか。
圧倒的な軍事力を持つ米国と、地域の大国であるイランが大規模な戦闘に突入すれば、世界大戦の再来になりかねない (*1)。
これ以上、人類史に悲劇を刻み込んではならない。当事者はもとより、国連や関係各国が、報復の連鎖を断ち切るために、知恵を絞らねばならない。人類の叡智(えいち)が試されている。
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<注記>
- (*1) 「地域の大国」と「圧倒的な軍事力の国」との戦争から「世界大戦」までは、随分なギャップがあろうが。なぁに短絡させて煽ってやぁがるンだよ。
中東情勢が緊迫するならば、なおのこと、海自艦派遣が必要であろうが。
かかる中東情勢緊迫化を受けて、安倍首相の中東歴訪が中止されようが(*1)、海自中東派遣が中止されようが(*2)、石油はじめとする数多の重要物資を我が国へ(また我が国から)運ぶ船舶は中東をも航行し続ける。航行してもらわねばならぬ。
かかる船舶を護衛する通商護衛は、海軍の本来任務であり、我が国の海軍は海上自衛隊以外あり得ない(*3)。
かかる船舶を護衛する通商護衛は、海軍の本来任務であり、我が国の海軍は海上自衛隊以外あり得ない(*3)。
であると言うのに、上掲①朝日②毎日③東京の各紙は「海自艦の中東派遣は白紙に戻して再検討しろ」と要求する。平たく言えば「危険な中東へは、海自を派遣するな。」という主張である。
話が、逆であろう。
上掲各紙の「危険な中東へは、海自艦を派遣するな。」という主張は、「危険な中東を航行する船舶は、見殺しにしろ。」と言う主張である。「平和ボケ」と言うと幾分かでも肯定的な響きもあろうが、「腰抜け」且つ「責任回避」の、男児の風上にも置けないような愚説である。
野党の馬鹿野郎が、「桜を見る会」「IR収賄」「中東緊迫」を三つ並べて「三点セットで安倍政権を追求する」という、味噌糞一緒くたにした(*4)愚説を唱えていたが、上掲各紙社説も同様に「安倍政権を追求する」一環として、斯様な責任回避の腰抜け主張を為しているのだろうか?
もし、左様であるならば・・・安全保障とか、戦争とか言うモノを全く理解していない、と言うことである。「国会軽視」所か「安全保障軽視」であり「戦争軽視」でもある。
現行の海自中東派遣の根拠が「情報収集」である、なんてのは、有り体に言って些事だ。
我が国に関わる船舶が、中東で危機に曝されているのならば、我が海自を派遣し船舶の安全を図るのは、理の当然である。
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<注記>
- (*1) 幸い、中止はされなかった。
- (*2) これまた幸い中止されず、正式な出動命令が出た。
- (*3) 海保庁が「海軍任務の一部を担っている」が、通商護衛は海保庁の任務ではない。
- (*4) 「スキャンダルにもならないタダのイメージ悪化キャンペーン」と「贈収賄から外国から献金授受というスキャンダルとなる可能性ある事象」と「本物の戦争となる可能性ある安全保障問題」が同列・同一視されているのだから、「味噌糞一緒くた」である。