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 原作 異世界食堂 http://ncode.syosetu.com/n1701bm/

 TVアニメ 異世界食堂 http://isekai-shokudo.com/?from=lower

 ラノベと小説の「違い」ってのは、私(ZERO)には「良く判らない」。ラノベ=ライトノベルだって、少なくとも広義には「小説」の一種に違いない。「ネット上で(無料で)公開されているのがラノベ」と(一応)定義出来そうだが、ならば「書いたは良いけど、どの出版社も買ってくれない小説」ってのは「ネット上で公開されていない」から「ラノベでは無い」というのも何とも妙な話だ。さらには、この「売れなかった小説原稿を、ネット上に公開した」ら、今度は「ラノベに変じる」ってのも、妙だ。

 小説や、より広義に「作品(*1)を、その公開法で分類するというのは「出版業界・出版業者」としては重要重大かも知れないが、作品そのものの評価と、作品の公開法や「出来方」ってのは、全く次元の異なる問題だろう、と思う。

 故に、私(ZERO)は、ラノベだからと言って軽視もしなければ、重視重大視もしない、様にしている。

 只、情報技術の発達(弊ブログもそこには含まれる)により、「小説を出版するのは相応に難事だった」往事と比べ、「誰でもラノベとして小説を公開出来る」様になったことは慶賀すべき事であろう。それ故に「ネット上で無料公開されている人気のラノベに、加筆やイラスト追加などして出版する=本として売りに出す」と言う「柳の下の二匹目のドジョウを狙う」様な商売法が散見され、中には成功した事例も在るようだ。弊ブログでも紹介した「異世界居酒屋のぶ」や「GATE 自衛隊彼の地にてかく戦えり」もそんな「商業化して成功したラノベの事例」なのだろう。

 今回紹介する「異世界食堂」ってのも「商業化に成功したラノベ」なのだろう。(多分。アニメ化までされたぐらいだから。)

 で、「異世界食堂」の評価を結論から言うと、「アニメの方が出来が良い」となる・・・原作者に対しては「失礼」にあたるだろうが。

 オフィス街に在るビルの地下に店を構える「洋食のねこ屋」。ランチタイムとディナータイムの平日営業で、土日は休業・・・なのは表向き。実は週に一度の土曜日だけ、店の出入り口は(どこでもドアよろしく)異世界のあちこちにつながる。異世界人は愚か、エルフやドワーフなどの亜人、リザードマンや吸血鬼の様な人型モンスター、果ては異世界に(未だ)神として君臨する竜までその美味を求めてご来店する、人呼んで「異世界食堂」。

 こちら(現代・日本)の飲食店が異界・異世界で営業するってのは、ラノベの一つのパターンらしく、先に紹介した「異世界居酒屋のぶ」と同じなので、「異世界居酒屋のぶ」との相違点を列挙してみよう。

① 異世界での営業は週に1日・土曜日のみ。異世界とこちら(現代・日本)では時間は併行して流れているらしく、異世界に「ねこ屋の扉」が出現するのも7日に一度だ。(*2)

② 店内の出入り口は一つだが、異世界側の出入り口は複数在って、「店に入ってきた処へ出られる」らしい。しかも、営業時間を過ぎても「退室」は出来るらしい。(土曜日の営業終了後に来店し、翌日帰って行った事例あり)(*3)

③ 異世界は人類以外の亜人や魔族やモンスター、果ては神である竜まで、しっかり実在し(*4)、闊歩&跳梁跋扈している

④ 魔法が厳然として存在する。異世界食堂の入り口がその典型例。因みにそこは(科学ならぬ)魔法で「異世界側の扉は忽然と姿を現し、その入り口を利用した客が元の異世界側に戻るとまた忽然と扉は消える、らしい。)

⑤ 常連客はそれぞれの「イツモノ」一品を定めており、それ以外のモノを注文することは滅多に無い。(ために、常連客同士はその「イツモノ一品」で互いを呼び合う事が多い。
 「おい!ロースカツ!!」「何じゃ、照焼チキン。」って具合。これが「王国最高の賢者」と「大陸切っての剣豪」の会話かと思うと、かなりシュールだ。
 挙げ句の果てに、うら若き女トレジャーハンターが「メンチカツ2世」って・・・「メンチカツ(1世)」の孫だけど。

⑥ 異世界側のいざこざトラブルを「異世界食堂」に持ち込むのは御法度で、喧嘩になりそうになると店主は「もう何も作ってやらないぞ。」と脅すし、7日に一度異世界側に出現する扉を開けなくなったり、入れなくなったりする

 毎回「料理または飲み物の一品」が題材となり(*5)、それがそのままタイトルになっている。必ずしも洋食ではないし、店で商品として出した料理または飲み物とも限らないが。

⑦ そんな構成かつ「基本1料理or飲み物1回」だから、上記⑤の特徴と相まって、常連も影&影響力が薄く、その分「人間ドラマとしての厚み」を減じている・・・ほぼ毎回「新キャラ」を登場させられ得る構成なのだが。

 
一方で、どうにも気に入らない部分、もある。

(1) 異世界食堂の「売り上げ」は、アルフェイド商会なる異世界側の商会に、食材の代金として引き渡している。
 が、異世界食堂で使われている食材は「こちら側(現代・日本側)」のモノも多い・・・と言うより、小説を読む限り
「こちら産の食材」が大半だ(*6)。
 仮にアルフェイド商会に引き渡している「売り上げ」が異世界在住の魔人の給与などをさっ引いたモノだとしても、こちら産の食材を異世界側の通貨で買うことが出来ない以上(*7)、こちら産の食材分(と、店長の給与分と光熱費)は「異世界食堂の赤字」であり、その分「こちら(現代・日本)側営業の利益を喰っている」筈である。 
 つまり、「異世界食堂営業」は、純粋に営業的には「美味しくない」筈だ。

 異世界人である現店主の祖母(前店主の妻(*8))に「異世界産の食材を供給する」というメリットはあるモノの、「洋食のねこ屋」としては経営上厳しいところだろう。何しろ異世界で評判となり異世界側の売り上げが上がるほど、赤字幅が拡大するのだから。
 言い換えれば、既に30年ほども続くという「洋食のねこ屋」の「異世界営業」は、少なくともアルフェイド商会との取引契約成立以降は「常に経営危機に立たされ続けている」のだが、現店主(二代目、初代の孫)にはそれを心配している節が全く見られない。余程こちら側(現代・日本)の営業が黒字なのだろう(*9)

(2) 「パン、スープ、ご飯、味噌汁食べ放題」で「最高価格1000円、異世界通貨で銀貨一枚」と言うのは、現代日本の人間だけ相手でも破格と言えそうな良心的値段だが、カツ丼5杯も平気で平らげる魔族やらオーガやらも含めてとなると(*10)・・・まあ、上記(1)の通り「ハナっから赤字覚悟」であるようだが。

 で、これらの「気に入らないところ」はそのままなのだが、私(ZERO)が「異世界食堂の原作(小説)よりもアニメの方を高く評価する」理由は、以下の通り。

<1> 料理や飲料を小道具扱いにしている。その分、常連客を中心としたキャラクターに重きを置き、ストーリーに深みを与えている。
 原作の小説だと、「在る料理のための一回こっきりのキャラクター」らしいのが散見される。謂わば「使い捨てキャラ」だ。これでは、話が、ドラマが、広がらない(*11)

<2> 上記<1>の影響、なのだろう(多分)。原作では通貨も持たずにカレーを食いまくり、古い友人の「赤」こと赤龍に代金立て替え払いしてもらっている「黒」こと「死を司る黒龍」が、アニメでは飲食代金のために「もう一人の従業員(ウエイトレス)」となり、あまつさえ赤龍から「留守の間の店の警護」すら任されている。
 その「代金を払うための就職」にせよ、「留守の間の警護」にせよ、一幕のドラマにはなるから、その分「話が深くなる」。キャラクターの造形もね。

 因みに、同じ原作による漫画も、この「もう一人のウエイトレス・黒龍」という設定は使っているから、やはりこの方が「原作よりも優れている」ないし「好都合」なのだろう(*12)。
 
 原作は、ラノベで短編とは言え既に120本を数える「大作」で・・・正直言って、「読んでいる内に飽きが来た」。アニメならば20本ほどで、全部見ても大した時間は取らない。

 心理描写、内面描写などはアニメよりも小説の方が適しているのだが、本原作はその利点を活かしているとは言い難い(*13)。まあ、まだまだ発展途上、「改善・向上の余地あり」と言うことだ。 

 さはさりながら、私(ZERO)が斯様な趣味に走った記事ばかり書いていられれば、我が国も安心安泰なのだがな。
 然り。北朝鮮は滅ぼされるべきである。

<注記>


(*1) ココでは広義に、フィクションにしてテキストベースの作品、としておこうか。 

(*2) 但し、併行してシンクロしているのは、「現代日本・こちらのねこ屋の日本時間」と「異世界側の現地時間」で、在るらしく、現代日本での営業時間(どうも早朝から夜9時ぐらいまで、らしい)=異世界側から入店出来る時間 らしい。
 即ち、「異世界側の”ねこ屋の扉”は、同時に出現するわけでは無く、異世界側での時差がある。 
 異世界が、我らが地球と同様に惑星で、地球と同様に恒星の周りを自転しながら公転しているとしたならば、だが。
 異世界なのだから「大地が平たくて、天動説が正しい」世界(即ち、時差が原則無い世界・・・平面“惑星”の反対側をなんとかしないといけないが)というのも、あり得るだろう。重力の法則やケプラーの法則とどうにかして整合させる(恒星の質量は平面”惑星”より遙かに小さい、とか)、或いはどうにかねじ曲げる(「魔法」と言えば大概の無理は通るが。)ことは、必要だが。 

(*3) 異世界側と店内側の”接続”がどうなっているのかは不明だが、今のところ「店に入ろうとしたが、先に”接続”されていて入れてもらえない」という”コンフリクト”は発生していない、らしい。 

(*4) 特に、火を司る赤竜は、異世界食堂を己が財宝の一つと見なし、保護すると共に、毎週寸胴鍋一杯のビーフシチューをお持ち帰りしている。 

(*5) これは「異世界居酒屋のぶ」も同じ。 

(*6) 例えば、ジャガイモやトマトは、異世界食堂の影響で異世界側で普及し始めている。 
(*7) 因みに「異世界居酒屋のぶ」には、異世界の通貨を現代日本の円に交換してくれる「両替屋」という誠に好都合なモノが登場している。 
(*8) にして、異世界を救った4英雄の一人。かつ4英雄の中でもずば抜けた才と加護の主、だそうな。 
(*9) と、解釈するほか無い・・・と、思っていたが、「異世界から買った食材を、こちら・現代日本で高く売る」ならば、この限りでは無い、と今頃気付く。 
(*10) オマケに毎月29日は「肉の日」で、味噌汁の代わりに豚汁がおかわりし放題、だそうだ。
 食通ではないと、自他共に認める私(ZERO)ですら、行ってみたいね、こんな「洋食のねこ屋」には。
 
(*11) ってぇか、登場人物に対する「作者としての愛情不足」なんじゃ無いかと、思うぞ。
 「登場人物たちは、みんな幸せになりました。」と断言したのは、確か和月伸宏@「るろうに剣心」だ。
 「作品とは作者の子供。子供(作品)の健康長寿を願うのが親(作者)と言うモノだ。」と断じたのは、確か松本零士大明神だ。 

(*12) 原作で「ウエイトレスとしての魔族の娘・アレッタ」が登場するのは大部たってから、そこまでは店主一人の営業で、注文取りから配膳まで店主=おっさんだけ。
 そりゃ、アニメや漫画にすると”華が無い”ったらありゃしないのだろう。アニメでは、第一話に「魔族・アレッタのウエイトレス就職」が描かれている。 

(*13) あれこれ、伏線はあるようだが。