応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
冒頭に書いておくべきだろう。弊ブログの古くからの読者(*1)の一人(*2)である「ぬくぬく」さんが御当人ブログ及び弊ブログコメントにて再三指摘する通り、「日本がトマホークを配備する」ことと「敵基地攻撃能力を持つ」事とは「イコールではない」。
一つには「敵基地攻撃」には「敵基地が何処か」と言う「専守防衛」とは無縁な要因が重要であり、今般話題になっている「北朝鮮の敵基地」ならば比較的日本に近いので攻撃しやすいが、「中国の敵基地」の特に内陸奥深くとなるとちょっとやそっとじゃ手が出なくなる。今般話題のトマホークを水上艦(*3)から発射すると、相応に広範な「敵基地攻撃能力」となりうるが、空母機動部隊による航空攻撃や、戦略爆撃機やらSLBMやらICBMやらによる「敵基地攻撃」範囲(*4)には及ばない。
即ち、「相手によっては、トマホークを配備しても敵基地攻撃能力として無効ないし不足となる」可能性がある。
逆に「相手によっては、トマホークを配備しなくても、極端には自衛隊の現有装備で敵基地を攻撃し得る」。我が自衛隊三軍現有装備による「敵基地攻撃能力」は、一番攻撃範囲が広そうなのが「F-2支援戦闘機による対地爆撃」でしかないから甚だ心許ないが、「ないではない」。
従って、「トマホーク配備 ≠ 敵基地攻撃能力」とは言えないが、「トマホーク配備 ∈ 敵基地攻撃能力」である。
二つには「敵基地攻撃」には「敵基地攻撃兵器があれば良い」訳ではないと言う事。攻撃目標が「敵基地」と非常にあいまいな表現となっているが、今般話題の「敵基地攻撃能力」とは「敵ミサイル発射機(及びその付随施設)攻撃能力」の意味であり、目標として10mオーダの大きさしかないし、車載などで移動できるモノもあるから、「目標位置情報として相当な精度が必要」なのもさることながら、「リアルタイムに近い目標位置情報”鮮度”」が必要になる。早い話が「槍だけ長くしてもあまり意味が無く、その長い槍で、何処を、何時突くかを判断出来る”目”が必要」と言う事。それも、「長い槍=トマホーク」の「槍の長さ=攻撃範囲(*5)」を有効活用する為には「槍の長さより遠くまで見える目 = 護衛艦&トマホークの攻撃範囲以上に広い範囲を目標標定できる手段」が必要、と言う事。
従って、「トマホーク配備 +トマホークを有効活用出来る標定手段の配備 = トマホークを有効活用出来る敵基地攻撃能力」である。
ここで強調しなければならないのは、今般話題の「敵基地」たる「北朝鮮のミサイル発射機」は「比較的標定が難しい目標である」と言う事。車載ミサイル発射機であると、地上にあって移動可能であり、濃密な人工衛星監ないし有人機・無人機による監視体制が無いと「ミサイル発射前に攻撃し、ミサイル発射を阻止する」のは難しい。現時点においては、米国ぐらいしか実施できそうにない位に。
故に、「トマホーク配備だけ議論する」のは意味・意義が薄く、「トマホーク配備だけ実施する」のはもっと意味・意義が薄い。と、言うのが「ぬくぬく」さんの主張、と私(ZERO)は理解している(*6)。
故に、「トマホーク配備だけ議論する」のは意味・意義が薄く、「トマホーク配備だけ実施する」のはもっと意味・意義が薄い。と、言うのが「ぬくぬく」さんの主張、と私(ZERO)は理解している(*6)。
その上で、上記の「ぬくぬく」様考察に私(ZERO)は大方同意しつつ、「トマホーク配備だけ議論する」事に「一定の意義はある」と考えている。と言うのも「日本政府はトマホーク配備を検討する」ってだけで、沖縄二紙と来たらこの調子なのである。
<注記
(*1) と言うよりは、私(ZERO)が久しく前から「ぬくぬく」さんブログの読者である、と言うのが正しいか。(*2) そんな奇特な方が、後何人いるかは、Only God knows(*3) トマホークはMk41VLSに格納できるから、相応の改修をすればイージス護衛艦DDGはじめとする我が護衛艦(の一部)から発射できる、筈である。(*4) それらは、「グローバルリーチ」であり、地球上の大抵の処を攻撃できる。(*5) 発射プラットフォームたるMk41VLS搭載護衛艦の進出範囲 + トマホークの最大射程内(*6) 「ぬくぬく」様、間違っていたらごめんなさい。誤解・誤認識あれば、訂正頂ければ幸いです。
(1)①【琉球新報社説】巡航ミサイル検討 専守防衛逸脱する愚行だ<社説>巡航ミサイル検討 専守防衛逸脱する愚行だ2017年5月7日 06:01【1】 政府が巡航ミサイルの将来的な導入に向けた本格検討に入った。北朝鮮による弾道ミサイル発射や核開発継続を受け、日米同盟の対処能力を強化することが狙いだ。
【2】 巡航ミサイル導入は発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を意味する。従来の「専守防衛」という日本の防衛の基本方針から逸脱する懸念がある。先制攻撃も可能となり、憲法違反の武力行使を誘発させる恐れがある。巡航ミサイルの導入は現憲法で定めた「交戦権否認」を否定する極めて危険な一歩であり、愚行だと言うほかない。
【3】 巡航ミサイルは主にジェットエンジンで推進する無人誘導の有翼ミサイルで、艦艇などから発射する。低空飛行のためレーダーに捕捉されにくく、射程が長く精度が高いことから、相手国の重要施設への攻撃に使用される。
【4】 日本が導入を検討している米国のトマホークは最大射程が約2500キロだ。米国は今年4月、地中海東部の駆逐艦から数百キロ離れたシリアの空軍基地を攻撃している。相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる攻撃的兵器だ。
【5】 日本はこれまで攻撃的兵器の保有は直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることになるとして「いかなる場合にも許されない」(防衛省)との立場に立っていた。それなのに、なぜ導入を検討できるのか。政府自ら前言を撤回するのなら、国民に納得できる説明をする必要がある。
【6】 敵基地攻撃について政府は憲法上も可能だとしてきたが、中国や韓国など周辺諸国への配慮から「政治判断」として、その能力を保有してこなかった。
【7】 安倍晋三首相は1月の衆院予算委員会で敵基地攻撃について「他に手段がないと認められるものに限り、敵の基地をたたくことも自衛の範囲に含まれる」と答弁した。
【8】 これは1956年の鳩山一郎内閣による「座して自滅を持つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。自衛の範囲だ」とし「他に手段がない」場合に限り許されるとの見解を踏襲したものだ。
【9】 だが敵基地攻撃能力の保有に突き進めば軍拡競争を加速させてしまう。かえって敵基地攻撃以外に「他に手段がない」状況をつくり出すだけだ。巡航ミサイル導入を検討するのではなく、日本は平和国家としての歩みを踏襲し、平和的解決に努力を傾けるべきだ。
.「専守防衛」は手段だ。目的は、我が国の安泰・安全保障だ。
目的である「我が国の安泰・安全保障」について考慮すること無く、条件反射的に「従来の我が国の安全保障方針の一つ」でしかない「専守防衛」を絶対視・神聖化する事こそ、愚行と言うモノだ。
②【沖縄タイムス社説】社説[巡航ミサイル検討]専守防衛 逸脱する恐れ【沖縄タイムス社説】[巡航ミサイル検討]専守防衛 逸脱する恐れhttp://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/96368 2017年5月7日 09:10軍事 安全保障 Tweet
【1】 弾道ミサイル発射や核開発をやめない北朝鮮に対し、政府は巡航ミサイルの導入に向け本格的な検討に入ったことを明らかにした。
【2】 攻撃される前にミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有である。来年度予算案に調査費などを計上したい意向という。
【3】 トランプ米政権が4月にシリアの基地を爆撃したのが巡航ミサイルである。日本は憲法9条で海外における武力行使が禁じられている。「専守防衛」の原則から逸脱する恐れがある。
【4】 政府が巡航ミサイル導入のよりどころとするのは1956年の鳩山一郎首相の国会答弁である。「座して自滅を待つべしと言うのが憲法の趣旨とは考えられない」「誘導弾(ミサイル)などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」との立場だ。
【5】 しかし、あくまで法理上であって、敵基地攻撃は現実的にはさまざまな問題とリスクを浮き彫りにする。
【6】 北朝鮮が発射台にミサイルを立てたとしても、それがどのようにして日本に向けた攻撃だと断定できるのか。その時点で日本が攻撃すれば逆に、日本による先制攻撃になりかねない。
【7】 北朝鮮は固体燃料を使用する移動式の弾道ミサイルを開発し、潜水艦からも弾道ミサイルを発射している。どこから発射されるのか、特定することはほぼ不可能に近いのである。【8】 さらに日本が攻撃した後、北朝鮮が多数のミサイルで報復すれば周辺諸国も巻き込んだ全面戦争になりかねない。
■ ■
【9】 自民党安全保障調査会は3月、北朝鮮のミサイル発射拠点を破壊するため敵基地攻撃能力の保有を検討するよう政府に提言した。
【10】 提言では、敵基地の位置情報の把握、それを守るレーダーサイトの無力化、精密誘導ミサイルなどといった攻撃用兵器の保有を検討するよう求めている。
【11】 安倍晋三首相は「新たな脅威の段階に入ったと深刻に受け止めている。提言をしっかりと受け止め、党と連携したい」と前向きだ。
【12】 日本は専守防衛の立場から攻撃的な兵器は保有しない立場を堅持しており、提言に従えばその原則からの転換となる。防衛費は5兆円規模に拡大しているものの、国内総生産(GDP)1%枠に収まっている。防衛費が大幅に増えるのは確実だ。
【13】 軍拡競争が加速する恐れがある。周辺諸国にも警戒感を抱かせることは間違いない。■ ■
【14】 北朝鮮の脅威の水準が上がっているのは確かである。だが、巡航ミサイルの導入検討といい、憲法9条改正を巡る安倍首相の前のめりの姿勢といい、北朝鮮危機をあおり、それに便乗しているようにしか見えない。
【15】 安倍首相は「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」とするトランプ政権を支持している。武力行使を選択肢に入れたものだ。【16】 北朝鮮に対する軍事的対抗策ばかりが強調され、対話や外交努力が押しやられていることを危惧する。
.「太陽政策」に「6か国協議」、原油から原発(軽水炉)まで供給する「話し合い路線」の結果が、今日の「核兵器保有国」北朝鮮を現出したんじゃないか
少なくとも選択肢の一つとして「軍事的解決」があるのは当然であるし、今まで等閑にふされている分、重視されるのも理の当然。
「軍拡競争」よりも悪い事の一つは「軍拡競争にすら至らず、一方的に負けてしまう事」。而して左様な状態は、過去数十年ほど「一方的に防衛費削減を続けてきた」我が国・日本に当てはまる。ここ数年、安倍政権発足以降にようやく我が国防衛費は微増に転じ、「軍拡競争に応じられる」可能性が出て来た。
英仏はじめとする諸国の対独宥和政策が、第2次大戦につながった史実に鑑みても、「宥和政策=対話路線」は万能ではない。
一方米ソ冷戦が熱戦に至ることなく「終結」し、西側=米側が一応の「勝利」を得たのは、西側が「軍拡競争に応じた」から。一定の「核軍縮」や「緊張緩和」が実現したのも「軍拡競争に応じた」からであって、「軍拡競争に応じない」愚挙を米はじめとする西側が選択していたら、ひょっとする我が国も「赤化=共産主義化」していたかも知れない。それこそ「沖縄二紙の夢見た世界」かも知れないが。
北朝鮮如きとの「軍拡競争」を、何ぞ恐れる事やあろう
逆転の発想「槍よりも、目を先に配備する」ならば?
さて、ここで少々視点を変えて、「長い槍=トマホーク」配備に先んじて「遠くを見る目=遠距離標定手段」を配備しようとしたら、と考えてみよう。
こいつはコイツで、結構大変な事である。何しろ北朝鮮はいつどこからミサイル発射するか判らないのだから、「北朝鮮国内」に範囲を絞ったとしても、24時間体制で監視しないといけない。それには①濃密な人工衛星監視網か、②有人ないし無人の偵察機による定期的哨戒が普通は必要だ。③「特殊部隊ないしスパイによる北朝鮮領内からの通報」って手も一応あるが、監視範囲も機動力も偵察衛星や偵察機に比べて限られるから、条件の良い場所でしか使えない。定点観測が基本となるだろう。
で、だ。③「特殊部隊ないしスパイ」は当然北朝鮮領内に配置しないといけない。②友人/無人偵察機 も公海上からは限界があるから一時的にせよ北朝鮮内侵入が必要だろう。
となると、「専守防衛」の範囲で実現可能なのは、①濃密な人工衛星監視網 と、③の内「北朝鮮領内のスパイ」しかない。これもダメなら、「目標位置情報は米国頼み」ってことになり、「米国の指示通りに攻撃する」他無くなる。序でに言えば、これならば「日本独自の”目”=遠距離標定手段」は不要になるから、「現時点でも”米国頼みの目”ならばある」事になる。
さて、その上で。
現行我が国、我が自衛隊三軍には「長い槍」も「遠くを見る目」も無い。「米国頼みの遠くを見る目」ならばある。
その現状で「長い槍=トマホーク」配備を我が国が検討し始めると、途端に沖縄二紙が「専守防衛がぁ!」と騒ぎ立てる。「専守防衛なんてのは一手段で、目的は我が久野安泰・安全保障。我が国の安泰・安全保障のためには、専守防衛とて、破棄が必要ならば、破棄すべきである」と言う「常識論」は、きっと通用しないのだろうな。
現行我が国、我が自衛隊三軍には「長い槍」も「遠くを見る目」も無い。「米国頼みの遠くを見る目」ならばある。
その現状で「長い槍=トマホーク」配備を我が国が検討し始めると、途端に沖縄二紙が「専守防衛がぁ!」と騒ぎ立てる。「専守防衛なんてのは一手段で、目的は我が久野安泰・安全保障。我が国の安泰・安全保障のためには、専守防衛とて、破棄が必要ならば、破棄すべきである」と言う「常識論」は、きっと通用しないのだろうな。
常識論の通用しない相手は相手にするだけ無駄だから放っておくとしても、「長い槍=トマホーク」を我が国が配備すれば、安全保障上の新たな地平が開けてくる。例えば以下の可能性だ。
、
(1) 「アメリカ頼みの目」による北朝鮮ミサイル基地攻撃 の可能性
、
(1) 「アメリカ頼みの目」による北朝鮮ミサイル基地攻撃 の可能性
(2) 「我が国独自の目」を今後整備することによる北朝鮮ミサイル基地攻撃 の可能性
まあ、上記(2)は、専守防衛に拘泥する限り相当な費用と期間を必要とするだろうから(*1)、「我が国独自の目」が整った頃には今回北朝鮮事態は(少なくとも一度は)収束しているだろう。
逆に「専守防衛に拘泥しない」ならば、上記②「有人/無人偵察機」による「我が国独自の目」は上記①「濃密な人工衛星監視網」よりも早く入手できるだろう。「いつから北朝鮮を監視しはじめるか」って決断は難しいだろうが。
さらに、「専守防衛に拘泥しない」ならば、(3)「大量報復戦略」をも、取りうる。今般導入される(かも知れない)通常弾頭対地攻撃型トマホークでは、目標も効果も限定的ではあろうが。
無論、上記(1)、(2)「ミサイル基地攻撃」と上記(3)「大量報復戦略」とでは、「必要とするトマホークの配備数」が異なろうし、そもそも(3)「大量報復戦略」には安価な固体ロケット弾道ミサイルこそ適している。
だが、上記(3)「大量報復戦略」を、限定的なりとも「取りうる」とすれば、それも一つの抑止力たり得る。
だが、上記(3)「大量報復戦略」を、限定的なりとも「取りうる」とすれば、それも一つの抑止力たり得る。
以上論じてきたとおり、今般我が国が検討すると明言した「トマホーク(艦上発射型)配備」は、「長い槍の入手検討」でしかない。それだけでは「長い槍を有効に使えない」し、「専守防衛議論」も起こって来る。
だが、「専守防衛の可否を論じる」契機としても、さらには北朝鮮ミサイル攻撃のための必要手段(それは、トマホーク、だけではない)を論じる上でも、「我が国がトマホーク配備を検討すると明言し、議論を始める」事は「有効有益である」と、私(ZERO)は考える・・・・ンですが、如何ですかねぇ、ぬくぬくさん。
<注記>
(*1) 恐らくは、我が国独自の打上でなければならず、現状我が国の種子島打上げ場は年に2回しか使えない・・・