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【Bloomberg】トランプ米大統領の「大艦隊」、北朝鮮ミサイル撃ち落とせない  

--【1】  北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の暴走を抑えるため、トランプ米大統領が派遣した「大艦隊」の抑止力には決定的な瑕疵(かし)がある。弾道ミサイルを打ち落とせないのだ。

【2】  空母「カール・ビンソン」と護衛の駆逐艦隊、巡洋艦は今週中に朝鮮半島近海に到着する予定。巡航ミサイル「トマホーク」や対艦ミサイル、レーダーかく乱機、艦上戦闘攻撃機「スーパーホーネット」を搭載した完全武装で向かっている。

【3】  どんな戦闘でも大きな力を発揮するだろうが、この空母打撃群が弾道ミサイルに対する防衛力を備えていないことは、北朝鮮の新たなミサイル発射実験や核計画進展を抑止するためのトランプ政権の示威行為に、大きな穴があることを意味する。

【4】  地政学分析を手掛けるストラトフォーのシニア軍事アナリスト、オマー・ラムラニ氏はインタビューで、「空母1隻はそれだけで事態を大きく変えるものではない」とし、カール・ビンソンを中心とした艦隊は大きな注目を集めているが「それ自体で大きなことができるわけではない」と話した。

【5】  フィリピン海を経て日本の南を通り朝鮮半島に向かっているカール・ビンソンには、駆逐艦ウェイン・E・マイヤーとマイケル・マーフィー、巡洋艦レーク・シャンプレインが随行しているが、長距離弾道ミサイルを追跡できるイージス艦載システムや中・長距離弾道ミサイルを打ち落とせるSM3は搭載されていない。

【6】  トランプ政権が緊張をエスカレートさせるリスクを承知で北朝鮮への警告を強化することを望むならば、横須賀を母港とする弾道ミサイル防衛能力を備えた艦船を送り込むことも可能だ。ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は26日、下院軍事委員会での質疑応答でこれに触れ、弾道ミサイルに対する防衛能力を備えた艦船を配備していると述べた。

【】原題:Trump’s ‘Armada’ Sent to Deter Kim Can’t Knock Down His Missiles(抜粋)Trump’s ‘Armada’ Sent to Deter Kim Can’t Hit His Missiles (1)

(最終段落を追加します.): アムステルダム 木下晶代 akinoshita2@bloomberg.net.
翻訳記事に関するエディターへの問い合わせ先 Fumihiko Kasahara fkasahara@bloomberg.net, Akiko Nishimae anishimae3@bloomberg.net.
記事に関する記者への問い合わせ先: ワシントン Tony Capaccio acapaccio@bloomberg.net.
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Bill Faries wfaries@bloomberg.net, Larry Liebert c2017 Bloomberg L.P.


少なくとも半分嘘

1〉 カール・ビンソンには、
2〉駆逐艦ウェイン・E・マイヤーとマイケル・マーフィー、
3〉巡洋艦レーク・シャンプレインが随行しているが、
4〉長距離弾道ミサイルを追跡できるイージス艦載システムや
5〉中・長距離弾道ミサイルを打ち落とせるSM3は搭載されていない。

…さてもさても面妖なり。何しろ米海軍と言えば、アーレイ・バーク級DDGミサイル駆逐艦と言い、タイコンデロガ級CGミサイル巡洋艦と言い、イージス艦が数多ひしめいているばかりか、タイコンデロガ級CGは米海軍唯一級の現役「巡洋艦」だ。

 実際、CG-57 Lake Champlainはタイコンデロガ級CGの1隻であり、DDG-108 Wayne E MeyerもDDG-112 Michael Murphyもアーレイ・バーク級DDGのフライトⅡA、つまりは「米海軍現役DDGでは最新型」であり、いずれも「イージス艦載システム」を「搭載している」。何しろ、現用イージスシステム特有のSPY-1レーダが艦容=艦上構造物に影響するぐらい目立つモノなので、ちょっとやそっとじゃぁ「見落とし様がない」くらいだ。

 ああ、「長距離弾道ミサイルを追跡できる」為には、ソフトウエアの改修ぐらいは必要かも知れない。が、それはソフトウエアの改修でしかないから、必要とあれば短時日に可能だろう。何れにせよ上記4〉~5〉「長距離弾道ミサイルを追跡できるイージス艦載システム(中略)は搭載されていない。と上掲記事が断言する根拠は、サッパリ判らない。

 中・長距離弾道ミサイルを打ち落とせるSM3は搭載されていない。」の方は、まだ「本当である」可能性がある。SM-3の運用・発射にはやはりソフトウエアの改修は必要かも知れないし、イージス艦の甲板にひしめくVLSの各セルの中身は、外観からは判らない。セルの中身は、対地巡航ミサイル・トマホークだろうか、対潜ロケット・アスロックだろうか、はたまた対空ミサイルSM-2やESSMだろうか、問題の対弾道弾ミサイルSM-3であろうか、搭載後に外観からは判定できない。従って、上掲記事にあるイージス艦3隻に「中・長距離弾道ミサイルを打ち落とせるSM3は搭載されていない。」可能性はある。

 だが、これら「カールビンソン空母機動部隊」に含まれるCGミサイル巡洋艦およびDDGミサイル駆逐艦の最優先任務は「空母機動部隊の中核たる空母の護衛」である。従って「空母の護衛」に資する対空ミサイルや対潜ロケットを中心に搭載している、と考えるのが「妥当な推定」と言うモノだろう。これらカールビンソン空母機動部隊随伴艦に於ける対弾道ミサイル迎撃用SM-3の必要性は、相対的に低い。

 かてて加えて中・長距離弾道ミサイルを打ち落とせるSM3」は、「弾道ミサイルを大気圏外で迎撃するミサイル」であるから、「弾道ミサイル発射点から、発射方向に相応の距離離れた処からでないと、迎撃し難い。」

 即ち、「北朝鮮に対するミサイルや航空機による攻撃」をかけるための艦隊位置と、「中・長距離弾道ミサイルを打ち落とす」ための艦隊位置は「異なる」可能性が、相応にある。

 なーにしろ世界最大にしてダントツの米海軍の事だ。「空母機動部隊に、弾道ミサイル迎撃任務まで付与」しなければならない、事は無かろう。(※1)「弾道ミサイル迎撃任務」に必要なのは。イージス艦だけで、イージス艦は米海軍に数多あるのだから、「弾道ミサイル迎撃任務」は普通は別働艦隊に付与するだろう。
 
 即ち、タイトルにした通り。「北朝鮮ミサイル迎撃は、空母機動部隊の任務ではない(多分)」。従って、「カールビンソン空母機動部隊の随伴艦に、弾道ミサイル迎撃能力が無い」と批難するのは、筋違いである。多分、ね。

 左様な可能性に思い至らないのであれば(※2)、「地政学分析を手掛けるストラトフォーのシニア軍事アナリスト」って肩書きも、存外当てにならないな。
 
 それを言うならば、Bloombergも、だが。

<注釈>

(※1) 「北朝鮮に対する攻撃」と「弾道ミサイル迎撃」の二重任務の付与は、ミッドウエイの(我が帝国海軍の)悲劇の、二の舞となりかねない。 

(※2) 「ワザと、思い至らせていない/言及していない」可能性なら、ある。