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 歴史上の人物たちが、たいていは死の間際に(*1)タイムスリップして現れるレストラン「ヘブンズ・ドア」。そのオーナーシェフ・園場凌が毎回お客さんの出す「無理な注文」というか「無理難題な注文」を、鮮やかに・・・とは限らないが、まあ名前の通りなんとかかんとか「注文に応える料理を提供する」マンガ(但し、「グルメマンガではない。」繰り返す「グルメマンガではない。」(*2))「最後のレストラン」。その最新刊がこの7巻だ。

 ご来客されるお客様方は、別表の通り、「第1次大戦下のドイツの女スパイ・マタ・ハリ」「19世紀の猟奇殺人犯・切り裂きジャック」「渋谷駅の銅像で有名な忠犬ハチ公」それに番外編とも言うべき園場凌の従兄弟・成雪(なりゆき =成り行き)を主人公とした「最後の小料理屋」。こちらへのご来店は日本人(*3)限定で、文豪(*4)・太宰治」「関ヶ原の戦い西軍首謀者・石田三成(*5)」「最初の総理大臣・伊藤博文」

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 この7巻の白眉は、なんと言ってもミステリ仕立てになっている「切り裂きジャック」だろう。

 なにが「ミステリ」かと言うと、「切り裂きジャックではないかと疑われる容疑者」が大挙して「ヘブンズドア」へご来店になり、未遂ながらも犯行に及ぶから。さて、真犯人=真の「切り裂きジャックは?」と言うところに、乱入気味に主人公・園場凌のお見合い相手・茂野月好美さんが登場し、鮮やかに真犯人を推理、したりはしないが(*6)、見事に本事件を「解決」する・・・ああ、見方によっては「
解決したのは(*7)ロシアの怪僧ラスプーチンだが(*8)。

 「アホか!
 ハエやウジだって、生まれて来たら自分の生き方を全うして死んでいきますよ。
 まともな人間として生きることも出来なかった人が、なにを言ってるんです!」
 園場シェフ

 この回で、茂野月好美さんの新たな側面、巨乳。もとい、「合気道の達人」が顕著となる。作者によると「手足が地雷原」なんだそうで、「我に触るる者は死せん」ってのはトゥト・アンク・アメン(ツタンカーメン)王の墓碑だが、そんな感じ。白刃振りかざす切り裂きジャック相手に徒手空拳で単身立ち向かうその美しさ、凛々しさは、「本話におけるメインヒロイン」と呼びたくなるほど。
 
 「鬼にも悪魔にもなれば、
  神様にも仏様にもなれるのが人間。
  自分で選べるから、
  人間は、素晴らしい
。」 茂野月好美
 
 「番外編」と言うべき「最後の小料理屋」は、ちょっと趣向を変えている。「死の間際に来店されるお客様=歴史上の人物」を「日本人のある意味ダメ男」に限定し、毎度毎度「ダメ男にだまされている」主人公・成雪(なりゆき)ときんどーさんみたいな女将の二人と「お客様」の3人芝居(*9)舞台も店の中だけ(*10)。「原型に近い」とは作者コメントにもある。元々はこういう、芝居の舞台のような(*11)マンガにしたかった、らしい。

 なるほど、川原の草野球から、小学校の運動会、果ては洋上の戦艦大和まで、舞台も拡張すれば、登場人物も随時新登場(*12)する本編は、「作者の思わぬ方向」だったのだな。

 でも「最後の小料理屋」だと、ハンニバルとスキピオの酒盛りや、物言わぬ戦艦大和の存在感や、「あくまでも善人」として描かれるアドルフ・ヒトラーなんてのは登場しないことになる。ああ、そもそも後にレギュラーとなる(*13)ジャンヌ・ダルクが来店しない。そりゃイヤだなぁ。



<注記>

(*1) 例外あり。天才画家ダリは「瀕死の状態」ではあったが「死の間際」ではなかった。 

(*2) と、主人公は主張している。 

(*3) かつ何らかの意味で「だめ男」限定、らしい。 

(*4) 以外、あまり表現がない。作品は短編「走れメロス」ぐらいしか読んでいない。一応の水準にある日本語は書けた、様だ。ノーベル文学賞受賞者・大江健三郎とは違ってね。 

(*5) 今年の大河ドラマ「真田丸」では、結構格好良い役なんだが。 

(*6) 「真犯人をあぶり出す」仕掛けを拵えたのは主人公・園場シェフだから、この場合「名探偵」は園場シェフってことになる。 

(*7) 以前の回でも登場した 

(*8) 真犯人=切り裂きジャックに精神的ダメージを与え、再犯を不可能にした功績がある、らしい 

(*9) 後に、「お客様」以外も登場するが。 

(*10) これも、軒先ぐらいまでは登場する。 

(*11) 登場人物3人、店内だけ。大道具も大して要らない。 

(*12) 思い出すままに数えれば、ジャンヌ・ダルク、ヴォルフ(犬)、御奴心シェフ、安徳天皇、茂野月好美と、レギュラーだけでも倍以上に増えている。 

(*13) 話によってはメインヒロインをつとめる 


最後のレストラン 紹介シリーズ



No お客様 国籍 生年 没年 ご来店日 ご注文 代価
29 マタ・ハリ 1876 1917   大切なものを示す料理 ダイヤの指輪(自称)
30 切り裂きジャック 19世紀末     食べたくて仕方なくなる料理 凶器
31 忠犬ハチ 1923 1935   ハチであることを証明する料理  
32 上野英三郎 1872 1925   1円札
最後の小料理屋
No お客様 国籍 生年 没年 ご来店日 ご注文 代価
33 太宰治 1909 1948      
34 石田三成 1560 1600      

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伊藤博文 1841 1909