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 以下に列挙するのは、安保法案の参院・特別委員会「強行採決」を受けての「日本新聞業界左半分の社説」。何しろシールズを持ち上げ、「民意」と称する世論調査結果に阿り(*1)、国会周辺デモを絶賛(*2)して見せて来た「日本新聞業界左半分の社説」だ。「殆ど生まれながらの右翼」たる私(ZERO)からすれば突っ込み所満載なのだが、此処は敢えて突っ込まず、タダ、「歴史を記録」するために、各紙社説を列挙するに止めよう。

 これら、「安保法案反対論」の誤り、否、愚劣さは、必ずや「今後の日本の歴史」が明らかにするであろうから。

<注釈>


(*1) そのくせ、「安保法案を争点に持ち出した地方選挙の結果には一切触れる事無く。 

(*2) その様相(の一端)は、転載させて頂いた記事の動画 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/40083122.htmlに見ることができよう。「安保法案反対デモ」と言うよりは「安倍首相・安倍政権反対デモ」で、別にその主張は主張で構わないが、「安倍はぁやめろぉ」と呪文のように繰り返すばかり。否、実際に「呪文」なのだろう。当該デモ参加者たちにとっては。
 まあ、呪文であればこそ、「サッパリ効果が上がらない」のは、当たり前だな。


①【朝日社説】「安保法案、採決強行―日本の安全に資するのか
」2015年9月18日(金)付

【1】 与野党の激しい対立と市民の反対デモのなかで、新たな安全保障関連法案が、自民、公明の与党などの賛成多数で参院の特別委員会を通過した。政権は成立を急いでいる。

【2】 この法案は、憲法9条の縛りを解き、地球規模での自衛隊の海外派遣と対米支援を可能にするものだ。

【3】 成立すれば、9条のもと、海外の紛争から一定の距離をとってきた戦後日本の歩みは大きく変質する。

【4】 法案がはらむ問題は、その違憲性だけではない。

■9条の資産を生かす

【5】 政権が強調するように、新たな法制で日本は本当により安全になるのか。そこに深刻な疑問がある。

【6】 確認したいのは、安全保障政策は抑止力だけでは成り立たない、ということである。

【7】 軍事的に一定の備えは必要だが、同時に、地域の緊張をやわらげる努力が欠かせない。

【8】 無謀な戦争への反省から、戦後日本は近隣国との和解を通じて地域の安定に貢献してきた。その歩みこそ「9条がもたらした安全保障」である。専守防衛はそのための大原則だ。

【9】 中国の軍拡や海洋進出にどう向き合うかは日本の大きな課題だ。だがそれは、抑止偏重の法案だけで対応できる問題ではない。仮に南シナ海での警戒・監視に自衛隊を派遣したとしても、問題は解決しない。

【10】 これからの日中関係を考えるカギは「共生」であるべきだ。日中は経済はもとより、環境、エネルギー問題など、あらゆる分野で重要な隣国同士だ。

【11】 必要なのは協力の好循環である。対立の悪循環に陥ることはお互いの利益にならない。

【12】 もし東シナ海や南シナ海で日中が衝突すれば、米国を含む世界の悪夢となる。抑止と緊張緩和のバランスをとりつつ、アジア太平洋をより安定させる外交努力こそ、日本がなしうる最大の貢献である。

■新たな「安全神話」

【13】 日米同盟を考えるうえでも、法案の問題は大きい。

【14】 戦後の日本政府は、米国の数々の戦争に対して、真っ向から批判したことはない。

【15】 イラク戦争という誤った戦争を支持し、復興支援のため自衛隊を派遣した。日本政府はまともな検証をしていない。法案にも、自衛隊の派遣に事後の検証を義務づける規定はない。

【16】 米国が大義なき戦争に踏み込んだ場合、自衛隊の海外活動の縛りを解く日本が一線を画していけるか。これまで以上に難しい判断と主体性が問われる。

【17】 安倍首相は審議でこう強調してきた。「日本が戦争に巻き込まれることはあり得ない」「自衛隊のリスクは高まらない」

【18】 新たな「安全神話」である。

【19】 法案が成立すれば、自衛隊は海外での戦闘を想定した組織に変質する。米軍などとともに、より踏み込んだ兵站(へいたん、後方支援)に参加し、発進準備中の航空機への給油や弾薬の提供も請け負えるようになる。リスクが高まらないはずがない。

【20】 首相は過激派組織「イスラム国(IS)」に対する軍事作戦には「政策判断として参加する考えはない」と述べた。だが、法案では可能になっており、将来的に兵站で戦闘に巻き込まれる可能性は排除できない。

【21】 海外で一人も殺さず、殺されないできた自衛隊が、殺し殺される可能性が現実味を帯びる。

【22】 それなのに、自衛官が人を殺した時に対応する法制に不備がある。拘束された時に捕虜として遇される資格もない。そんな状態で自衛隊を海外の紛争地に送り出してはならない。

■揺らぐ平和ブランド

【23】 国際社会における日本の貢献に対しても、軍事に偏った法案が障害になる恐れがある。

【24】 貧困、教育、感染症対策、紛争調停・仲介など、日本が役割を果たすべき地球規模の課題は多い。いま世界が直面している喫緊の問題である難民対策も、日本がどう貢献していくかの議論が迫られている。

【25】 こうした活動に世界各地で携わる日本のNGO(非政府組織)には、自衛隊の軍事面での活動が拡大すれば、日本の平和イメージが一変し、NGOの活動が危険になるとの声がある。

【26】 混乱が続く中東では「戦後、海外で一人も殺していない」という日本の平和国家ブランドへの評価が根付いてきた。海外での武力行使に歯止めをかけてきた9条の資産といえる(*1)。

【27】 法案によって、かえって日本の貢献の手足が縛られるとすれば、政権が掲げる「積極的平和主義」とは何なのか。

【28】 法案には、国連平和維持活動(PKO)の拡充など検討に値するテーマも含まれる。ところが11本を2本にまとめた法案の一括成立にこだわる政権の姿勢で、議論は未消化のままだ。

【29】 安全保障政策の面からも、この法案には危うさがある。広範な「違憲」との指摘に耳を貸さず、合意形成の努力も欠いたまま、成立させてはならない。

【注釈】

(*1) 「爆笑」。ああ、突っ込んじまった。

そいつは「違憲」以前の、上位の問題だろう。今頃今さら何言っている?


.②【毎日社説】社説:安保転換を問う 参院委採決強行
―タダの手続き論毎日新聞 2015年09月18日 02時30分

◇民意に背を向けた政権 

【1】 参院平和安全法制特別委員会は安全保障関連法案の採決を強行した。野党が抵抗する中、採決が行われたかどうかすらわからない、不正常な可決だった。

【2】 衆参両院で200時間を超す審議を経ても、政府は法案の合憲性や「なぜ必要か」について納得できる説明ができなかった。にもかかわらず、与党は民意との乖離(かいり)を自覚しながら採決に踏み切った。これでは安倍晋三首相らが強調していた「民主主義のルール」を尊重した結論とは言えまい。 ◇正常な手続きではない 

【3】 委員長の姿が見えない、異様な採決だった。鴻池祥肇委員長の不信任動議が否決され鴻池氏が着席すると、いきなり与党も含めた議員が取り囲んだ。委員長が採決する声も聞き取れなかった。国民の目にどう映っただろう。

【4】 参院審議の状況は16日の地方公聴会の終了を境に一変した。与党は質疑の終結と採決を図り、野党はこれを阻止しようと対立した。

【5】 国会周辺のデモなどの抗議活動は連日続き、各種世論調査では今国会成立に反対する意見が賛成派を大差で上回っている。27日の会期末を控え、与党が18日までの成立を急ごうとしているのは、週末や連休にかけて反対デモなどの運動が一層拡大することを警戒したためだとされる。世論をおそれたのであれば、ここで踏みとどまるべきだった。

【6】 今回の法整備のそもそもの誤りは、中国の台頭など安全保障環境の変化に対応した冷静な議論もないまま、集団的自衛権の行使容認という結論を押し付け、実現しようとした安倍内閣の姿勢にある。

【7】 議会制民主主義の下では、国民の代表である国会議員の手に立法機能が確かに委ねられている。だが、それはあくまで熟議を重ね、合意形成の努力が尽くされるのが大前提だ。

【8】 しかも今回の法案の中身は平和国家を規定する憲法の根幹に関わる。政府は集団的自衛権行使を否定していた1972年の政府見解をねじまげて、行使に道を開いた。このため、憲法学者の多くは法案を違憲だと断じている。

【9】 法整備の必要性も、政府は最後まではっきりと説明できなかった。最初は強調していたホルムズ海峡での機雷掃海は「具体的に想定していない」と後退した。審議が進めば進むほど説明はほころんだ。

【10】 国会での議論を通じ、主要な野党と修正協議で接点を探る選択肢も与党にはあったはずだ。安保関連法案は11本もの法案をたばねたものだ。国連平和維持活動(PKO)に関する部分などは切り離すべきだった。

【11】 そもそも、首相は国民と正面から向き合い、理解を得ようとする発想に乏しかったのではないか。

【12】 昨年末の衆院解散・総選挙を首相は「アベノミクス解散」と命名し、「アベノミクスを前に進めるか、止めてしまうのかを問う」と訴えた。安保法制は多くの公約のひとつとされ、首相は今国会の施政方針演説でも安保関連法案を強調しなかった。 

◇国民の分断を避けよ 

【13】 法案提出前から説明が不足していたうえ、国会で理解を深めようとする姿勢もあまり感じられなかった。

【14】 安倍内閣は2013年、自民党公約になかった特定秘密保護法も強引に成立させた。あるべき安全保障の姿が現行憲法の枠を超えると仮に判断したのであれば、主権者である国民の投票による憲法改正というゴールを追求すべきだった。

【15】 法整備に対し、学界、法曹界、地方議会に加え、幅広い世代を巻き込んだ広範な反対運動が起きている。選挙の争点ともならないまま政府が国の骨格を変えようとすれば、有権者が平和的なデモで意思表示することは限られた抗議の手段となる。学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基(あき)さんが特別委の中央公聴会で「現在の状況を作ったのは与党のみなさんだ」と指摘したのは的外れではない。

【16】 民主党など大半の野党は採決に強く反発している。論戦を通じ、野党が法案の中身や政権の姿勢の追及に一定の役割を果たしたのは事実だ。

【17】 ただ、採決を阻止できなかった原因は議員の数不足だけではない。民主党は集団的自衛権の行使について結局、対案を示さなかった。法案への批判にもかかわらず、有権者の野党への期待はふくらんでいない。不正常な強行採決も与党が「政権を失うほどの打撃にならない」と野党の足元をみたことは否定できまい。

【18】 首相にとって、批判の中での強行劇は祖父、岸信介首相がかつて実現した日米安保条約改定の再現なのかもしれない。

【19】 だが、合意をないがしろにした政治は、国民を分断してしまう。政権の目的を優先させ、国民の理解を二の次にするような手法は政治への信頼を根底から損なう。

【20】 国のありかたに関わる法律をこれほど乱暴な手続きで作っていいのか。成立に改めて強く反対する。

③【東京社説】「違憲」安保法制 憲法を再び国民の手に
Tweet 2015年9月18日

2015年9月18日

【1】 政府が憲法解釈を勝手に変えてしまえば、国民が憲法によって権力を律する「立憲主義」は根底から覆る。憲法を再び国民の手に取り戻さねばならない。

【2】 安全保障法制をめぐる安倍政権の強硬姿勢は最後まで変わらなかった。国会周辺や全国各地で響きわたる「九条壊すな」の叫びに、耳を貸さなかったようだ。

【3】 他国同士の戦争に参戦する「集団的自衛権の行使」を法的に可能にするのが安倍政権が進める安保法制の柱である。多くの憲法学者らがどんなに「憲法違反」と指摘しても、安倍内閣と与党側は「合憲」と強弁し続ける傲慢(ごうまん)さだ。

◆歴代内閣が見解踏襲

【4】 そもそも集団的自衛権の行使を「憲法違反」としてきたのは、ほかならぬ政府自身である。

【5】 戦後、制定された日本国憲法は九条で、国際紛争を解決するための戦争や武力の行使、武力による威嚇は行わないと定めた。

【6】 日本国民だけで三百十万人もの犠牲を出し、近隣諸国にも多大な損害を与えた先の大戦に対する痛切な反省に基づく、国際的な宣言でもある。

【7】 その後、実力組織である自衛隊を持つには至ったが、自衛権の行使は、日本防衛のための必要最小限度の範囲にとどめる「専守防衛」政策を貫いてきた。

【8】 一方、国連憲章で認められた集団的自衛権は有してはいるが、行使は必要最小限の範囲を超えるため、憲法上、認められないというのが、少なくとも四十年以上、自民党を含む歴代内閣が踏襲してきた政府の憲法解釈だ。

【9】 この解釈は、国権の最高機関である国会や政府部内での議論の積み重ねの結果、導き出された英知の結集でもある。一内閣が恣意(しい)的に変えることを許せば、憲法の規範性や法的安定性は失われる。そんなことが許されるはずはない。

◆「禁じ手」の解釈変更

【10】 しかし、安倍晋三首相の内閣は昨年七月の閣議決定で、政府のそれまでの憲法解釈を変更し、違憲としてきた集団的自衛権の行使を一転、合憲とした。

【11】 集団的自衛権を行使しなければ国民の生命や財産、暮らしが守れないというのなら、その賛否は別にして、衆参両院でそれぞれ三分の二以上の賛成を得て改憲を発議し、国民投票に付すのが憲法に定められた手続きだ。

【12】 その労を惜しみ、憲法そのものではなく、閣議決定による解釈変更で、それまで「できない」と言い続けていたことを一転、「できる」ようにするのは、やはり「禁じ手」だ。憲法軽視がすぎる。

【13】 首相は、徴兵制は憲法が禁じる苦役に当たるとして否定したが、一内閣の判断で憲法解釈の変更が可能なら、導入を全否定できないのではないか。現行憲法が保障する表現の自由や法の下の平等ですら、制限をもくろむ政権が出てこないとも限らない。

【14】 政権が、本来の立法趣旨を逸脱して憲法の解釈を自由に変えることができるのなら、憲法は主権者たる国民の手を離れて、政権の意のままに操られてしまう。

【15】 国民は、一連の国政選挙を通じて安倍首相率いる自民党に政権を託したとはいえ、そこまでの全権を委任したわけではない。

【16】 報道各社の直近の世論調査でも依然、安保関連法案への「反対」「違憲」は半数を超える。今国会での成立反対も過半数だ。

【17】 首相は十四日の参院特別委員会で「法案が成立し、時が経ていく中で間違いなく理解が広がっていく」と語った。どんな根拠に基づいて決めつけることができるのか。

【18】 国会周辺をはじめ全国各地で行われている安保関連法案反対のデモは収束するどころか、審議が進むにつれて規模が膨らんだ。

【19】 憲法破壊に対する国民の切実な危機感に、首相をはじめ自民、公明両党議員はあまりにも鈍感ではないのか。

【20】 憲法はもちろん、国民のものである。特に、膨大な犠牲を経て手にした戦争放棄の九条や国民の権利を定めた諸規定は、いかなる政権も侵すことは許されない。

◆絶望は愚か者の結論

【21】 私たちは違憲と指摘された安保関連法案の廃案を求めてきた。衆院に続いて参院でも採決強行を阻止できなかった自らの非力さには忸怩(じくじ)たるものがある。

【22】 しかし、今こそ、英国の政治家で小説家であるディズレーリが残した「絶望とは愚か者の結論である」との言葉を心に刻みたい。

【23】 憲法を私し、立憲主義を蔑(ないがし)ろにするような政治を許すわけにはいかない。ここで政権追及の手を緩めれば権力側の思うつぼだ。

【24】 憲法を再び国民の手に取り戻すまで、「言わねばならないこと」を言い続ける責任を自らに課したい。それは私たちの新聞にとって「権利の行使」ではなく「義務の履行」だからである。

現状認識は戦術の第一歩、だぜ


④【沖縄タイムス社説】社説[安保法案採決強行]解散し国民に信を問え
2015年9月18日 05:30 注目 社説 サクッとニュース

【1】 2015年9月17日という日付を、憤りを込めて胸に刻みつけたい。今、問われるべきは、名護市辺野古の新基地建設とも相通じる「安倍政治」の独断的な手法そのものである。

【2】  安全保障関連法案は17日、参院の特別委員会で強行採決され、自民、公明などの賛成多数で可決された。

【3】  鴻池祥肇委員長に対する不信任動議が否決され、鴻池委員長が委員長席にもどったとたん、与野党委員が怒号とともに委員長席に殺到し、大混乱に陥った。

 【4】  締めくくりの総括質疑もなく、議会ルールも無視され、いつ可決したのかさえ判然としないような混乱状態の中で、採決が強行されたのだ。

【5】  審議の過程で最高裁長官、最高裁判事、内閣法制局長官などの経験者や裁判官OB、弁護士、憲法学者らがこぞって法案を違憲だと断じた。前代未聞のことだ。

【6】  女性や学生など各層の人々が全国各地で連日、大規模な反対行動を展開し、廃案を求めた。だが、法案成立を憂える人々の声は無視された。「違憲立法」のために議会制民主主義が踏みにじられたのである。     

■    ■

 【7】  憲法解釈には「論理的整合性」と「法的安定性」が要求される。集団的自衛権の行使容認に踏み切った昨年7月の閣議決定で、政府も、そのことを認めている。

【8】  ところが、どうだ。専門家から相次いで法案の違憲性を指摘されると、「学者の言うことを聞いていたら日本の平和は守れない」と傲慢(ごうまん)な態度を示したり、「わが国を守るために必要な措置であるかどうかが問題で、法的安定性は関係ない」と、言いたい放題である。

【9】  これが一番、危ない。昭和10年代の日本もそうだった。

【10】  政府・自民党は「違憲かどうかを判断するのは最高裁」だと憲法学者らの発言をけん制し始めた。

【11】  だが、最高裁長官を経験した山口繁氏は、共同通信の取材に応じ、「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反」だと断じている。

【12】  「従来の解釈が国民に支持され、9条の意味内容に含まれると意識されてきた。その事実は非常に重い」

    ■    ■

【13】  審議を重ねれば重ねるほど、政府の答弁が二転三転し、首相と防衛相の答弁にも食い違いが生じるのは、この法案が「違憲立法」という性格を持っているからだ。

【14】  発進準備中の航空機に対し、自衛隊が後方支援の名目で給油することは可能なのか。政府は、武力行使との一体化にあたらず合憲だと主張するが、大森政輔・元内閣法制局長官は、8日の参考人質疑で、違憲だと指摘した。

【15】  そんな法案が参院の特別委員会で可決されたのである。 憲法の解釈変更による集団的自衛権の行使容認は、安倍晋三首相のブレーンだった外務省出身の岡崎久彦氏(故人)が、早い段階で安倍首相にアドバイスしていた。

【16】  米国の知日派がまとめた「アーミテージ・レポート」も、日米同盟を強固にするためには集団的自衛権の行使が欠かせない、と主張していた。

【17】  日米で表面化した集団的自衛権行使の考えが安倍政権に流れ込み、安保法案という形で具体化したというわけだ。

【18】  安倍首相は、国会審議の途中から、中国脅威論を前面に打ち出し、安保法案によって抑止力が向上する、と主張するようになった。そのほうが、国民の理解が得られやすい、と判断したのだろう。

【19】  だが、ほんとうに抑止力が向上するのか。検証するのは難しい。

 【20】  「対話」が語られず、「抑止」だけが強調されれば、地域の安全保障環境は今以上に悪化する恐れがある。

【21】  法案成立によって予想されるのは、戦争体験者の急激な減少と、解釈改憲による憲法9条の空洞化と、軍事力への過信が同時に進行し、戦争を起こさせない社会的な力が急速に弱まる恐れがあることだ。

【22】  議会制民主主義を踏みにじって「違憲立法」を通す。これが政治の暴走でなくて、なんであろうか。安倍首相は選挙で国民に信を問うべきである。


⑤【琉球新報社説】<社説>安保法案可決 道理なき違憲立法だ 今国会成立は許されない
2015年9月18日

 【1】 70年間、国としてただの1発も他国に向けて撃たなかった誇るべき歴史がついえようとしている。 

【2】 国会議事堂前に市民の抗議が響く中、与党は参院平和安全法制特別委で安保関連法案の採決を強行した。委員長が何を発言したか、何が起きているか分からない採決劇だった。民主主義が崩れる光景を目の当たりにした思いだ。 

【3】  与党はきょう参院本会議で採決し、成立させる構えだが、専門家の多くが違憲と断言する法案だ。立法事実も法的安定性も怪しい。どこをどう見ても道理の通らぬ違憲立法なのである。このまま今国会で成立させてはならない。

撤回に次ぐ撤回

【4】  それにしても、前々日、前日の公聴会は何だったのか。そこで出た疑問や意見について何ら審議がないままの強行採決だ。これでは公聴会は「国民の声を聴いた」と装うためのアリバイにすぎない。  

【5】  特別委の鴻池祥肇委員長は職権で「締めくくりの総括質疑」開会を決めた。職権で決めるなら議論は要らないし、そもそも委員会自体が不要である。言論の府が自ら存在意義を否定したに等しい。  

【6】  法案をめぐる政府答弁のずさんさは目に余った。  

【7】  自衛隊が他国へ出て機雷掃海をするという。安倍晋三首相は、5月には中東のホルムズ海峡封鎖を挙げたが、9月になると「ホルムズ海峡封鎖は想定していない」と言い始めた。首相は「日本人母子を乗せた米国軍艦の護衛」も持ち出していたが、中谷元・防衛相は「(米艦防護は)邦人が乗っているかは絶対的なものではない」と言い出した。それならなぜ自衛隊が他国で活動するのか。必要性を裏付ける「立法事実」は存在しないと白状したに等しい。  

【8】  公聴会で公述した学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基氏はこう述べた。「前日の答弁と全く違う説明を翌日には平然とし、国会審議は何度も速記が止まるような状況で、一体どうやって国民は納得したらいいのか」。まさにその通りである。  

【9】  中谷氏の答弁は撤回に次ぐ撤回だった。だがそれを一閣僚の資質の問題に帰していいのか。  

【10】  憲法審査会で出席した憲法学者全員が違憲と断じ、元内閣法制局長官も憲法逸脱と指摘すると、首相は「違憲立法かどうか最終判断は最高裁が行う」と強弁した。だがその最高裁の元長官が違憲と言うと、今度は中谷氏が「引退した私人の発言」と述べた。  

【11】  法案がおよそ合理性を欠き、筋の通らぬ苦しい説明を終始余儀なくされたからこそ、後で撤回するレベルの答弁をしないといけなかったのではないか。

 論証の欠如

【12】  この法案は、日本が攻撃を受けていないのに、他国へ出向いて軍事力を行使できるようにする法案だ。あるいは他国に武器弾薬を提供し、戦闘機の燃料も補給する。普通はこれを参戦と呼ぶ。常識的に考えて、戦争に巻き込まれる危険性が跳ね上がるのは明らかだ。  

【13】  政府は「戦闘に巻き込まれることはない」と繰り返すだけで、なぜ巻き込まれないのか、具体的な論証をまるで欠いていた。

【14】  歴代政権が否定した集団的自衛権行使を、一内閣の判断でなぜできるのかも、説得力ある説明はついぞ聞かれずじまいだ。となると論理的には、別の内閣では逆の判断も可能ということになる。まさに法的安定性の欠如だ。これでは法治国家でなく人治国家である。  

【15】  首相は「決める時には決めるのが民主主義のルールだ」と述べる。総選挙で信任を得たと言いたいようだ。だが国民は生死に関わる権能を与党に白紙委任した覚えはない。数を頼んでの強行採決は民主主義のあるべき姿ではない。

【16】  世論調査では一貫して国民の過半数が反対である。「国民の理解が得られてない」というのは間違いで、むしろ専門家も国民も、政府の説明の結果として反対なのである。結論は明らかだ。この法案は廃案にするほかない。