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 歴史上の人物が、大抵はその死の直前(*1)にタイムスリップして「最後の食事」を注文する(*2)レストラン「Heaven's door」。オーナーシェフ・園場凌(そのばしのぐ)が、そのご注文を「鮮やかに」とは限らないが、まあ「何とかかんとか」クリアして「お客様にご満足いただく」マンガ「最後のレストラン(*3)。その最新刊がこの6巻だ。

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 今回ご来店するお客様は・・・悲劇の南極探検家・スコット。唐の「傾国の美女」楊貴妃。実在はちょっと怪しいが伝説ははっきりしている司祭ウァレンティヌス(聖バレンタイン)。それに「人じゃぁないんだけど許す」帝国海軍戦艦・大和。

 なんと言っても。誰がなんと言おうと。誰も何とも言わなかろうとも。本巻の白眉は「帝国海軍戦艦・大和」である[強く断言]。ご多分に漏れず「死の直前」、沖縄特攻で沖縄へ向かう途中に「ご来店」ではないが(*4)タイムスリップして、映画撮影用1/1スケール 大和(*5)を姉妹艦・武蔵と誤認する。

 いつものことながら見事なのは(*6)、「死を目前にしたお客様」有賀艦長以下大和乗組員の態度である。「70年後の日本から来た」と言う前田あたり(*7)の主張を、ある程度理解納得した上で、元の時代の沖縄へ、死地へと赴く。

 「彼らが居ると言うことは、70年後に日本が存在して居るということではないか。
 たとえ夢でも嘘でも、この中にそれを否定したい者は居るかね。」
有賀艦長

 「我々の戦いは無意味ではなかったということだ。
  明日を決めるのは我々だ。
  我々は祖国の歴史の一部となるのだ。
  上出来。」
賀艦長

 「大和の一部・・・か。
 それは理解できるが、それでも本艦がその力を発揮できる舞台を作ってやれなかったのは、心残りだな。」
有賀艦長

 この有賀艦長の言葉を受けての、この回の「ご注文」は、「大和らしい料理」・・・注文主は、やはりというか案の定というか、「帝国海軍戦艦大和」ってことになるのだろう。物言わぬ鉄の塊・大和であるが・・・園場シェフ、今回は珍しいぐらいにスンナリとこのご注文に答え、有賀艦長以下乗組員一同の賞賛を得る。と言うことは、「物言わぬ鉄の塊」大和の賞賛も、おそらくは得たのであろう。

 「もしも、かつての船乗りが言うとおり、船に魂というモノがあるならば」ーアリステア・マクリーン作 H.M.S Ulyssesー

 さて、我が国・日本国の古名を冠する戦艦・大和のご来店だ。「言君」こと言仁様・安徳天皇陛下のお出ましが、無い訳がない。大和との接触は夜遅くだった為か、安徳様はだいぶオネムのご様子。そこで大和乗員の水兵が安徳様を背負って大和艦内を移動する事になり・・・「日本国を背負っている気がする」そうである。
 さらには、園場シェフの料理の臭いで目覚めた言仁様。「皇国のために戦う勇士たちに、お労いを。と前田あたりに促されて、一言。

 「大義である。」

 いや、まあ、この一言が、例によって良く「効く」のだが。流石は勅語。 

 大和以外の本巻の見所はと言えば、どうも園場シェフに対する「神への愛(信仰心)(*8)」が「異性への愛」に、昇華だか転化だか堕落だか(*9)し始めた(らしい)ジャンヌ・ダルクが挙げられよう。ことに、「楊貴妃」編では料理を通じて「愛を示し」、楊貴妃をして感涙に咽ばせている。一方で最終話「聖ウァレンティヌス編」には「園場シェフのお見合い予定相手」も(まだ、ジャンヌにも園場にも知られぬまま)登場しているから、今後「園場シェフを巡る三角関係」なんて展開も予想される・・・決して、期待はしていないが。

 「グルメマンガではない」と、園場シェフ自身何度か本巻でつぶやいて(ぼやいて)いるが、「”最後のレストラン”がラブコメ化してしまう」のも、私(ZERO)としてはゴメン被りたい処なんだがな。

<注釈>

(*1) マハトマ・ガンジーなんざぁ、凶弾が命中する直前だったもんなぁ 

(*2) 多くは無理無体な難題 

(*3) とは言え、本巻で何度か園場シェフがつぶやいて(ボヤいて)いる様に、「グルメマンガではない」ようだが。 

(*4) 7万トンの戦艦では、Heaven's Doorに入りきるまい。 

(*5) 大和乗組員は、姉妹艦・武蔵と誤認。夜だし、無理もないが。

 いや、マンガのカットからすると、1/1=実物大ではないかも知れない。最初に全員でセットを見学するシーンと、後に本物の大和と遭遇するシーンでは、迫力が違う。

 ああ、スケールは怪しいものの、実在した「男たちのYAMATO」映画撮影用セットとは異なり、主砲砲身も前楼もちゃんと復元しているところが、重要だ。「男たちのYAMATO」映画撮影セットでは、「武蔵と誤認」しようがない。 

(*6) そりゃマンガの中の話だから、所詮フィクションなのであるが。
 
(*7) てな荒唐無稽な話を、「トップに全部話した方が話は早い」と、有賀千恵の学生証を利用して「有賀艦長の娘だ」と偽る機転と度胸は、惚れ惚れする。
 それを言うなら、「有賀千恵」って名前は「ありがち」の洒落からつけたと以前の巻にあったが、「戦艦大和最後の艦長・有賀幸作大佐」と結びつけるのが、以前からの意図であったならば、作者の深謀遠慮にも、敬意を表するべきだな。 

(*8) 火炙りの刑から救出されたジャンヌは、少なくとも当初は、現代日本を「天国」、園場シェフを「父なる神」と信じていた。 

(*9) その評価は視点に依ろう。