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 当ブログにはすでに捕鯨に関する記事をいくつもアップしており、私(ZERO)の捕鯨に対する考えは既に明らかにしているが、それを脇に置いて、下掲の東京新聞、読売新聞、産経新聞社説を御一読頂きたい。何れも先日、国際司法裁判所が下した南極海調査捕鯨中止判決を受けての社説だ。

 
①【東京社説】調査捕鯨敗訴 段階的縮小もやむなし
2014年4月3日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014040302000179.html
【1】 日本が南極海で実施する調査捕鯨に国際司法裁判所(ICJ)が中止命令を出した。科学的調査だとの主張が退けられ、鯨料理が伝統的な食文化であることも理解されず、完全な敗訴となった。

【2】 ICJは「調査捕鯨に名を借りた商業捕鯨だ」とのオーストラリア政府の主張を認め、国際捕鯨取締条約に違反するとの判断を示した。一審制で上告はできず、判決が確定した。

【3】 日本政府は判決を受け入れ、一般財団法人「日本鯨類研究所」が行う南極海での調査捕鯨を本年度は実施しないことを明らかにした。
 
【4】 日本は調査捕鯨を通じて、種類によっては十分な資源量があることを科学的に証明し、三十年以上モラトリアム(一時停止)が続く商業捕鯨の再開を目指してきたが、今回の判決で戦略の立て直しを迫られる。

【5】 ICJ判決では調査捕鯨そのものまでは否定しなかったため、水産庁などは北西太平洋での調査捕鯨を実施する考えだが、各国の批判が高まるのは必至だ。捕獲頭数の大幅削減や時期の短縮など、段階的な縮小もやむを得まい。

【6】 戦後の一時期、貴重なたんぱく源であった鯨肉の国内流通量は年間約五千トンで、ピーク時、一九六二年の2%にしかならない。調査捕鯨の捕獲枠はクロミンククジラで約八百五十頭だが、実際の捕獲は百頭程度にとどまっている。「シー・シェパード」など反捕鯨団体が激しい妨害行為を続けて十分な操業ができないことも原因だが、鯨肉そのものの消費が伸びないのが現実だ。

【7】 一方、和歌山県太地町などでは、国際捕鯨委員会(IWC)が規制していない「沿岸小型捕鯨」を実施している。南極海での調査捕鯨ができなくても、沿岸捕鯨の水揚げとアイスランドなどからの輸入により、国内消費はまかなえる見通しだ。

【8】 豪州やニュージーランドは捕鯨自体が残虐だと非難するが、太地町は博物館をつくり、千葉県南房総市和田町ではクジラの解体作業を地元の小学生に見てもらい学習に活用している。今後は沿岸捕鯨の保存に力を入れ、伝承すべき固有の食文化であることを海外にも広く訴えていきたい。

【9】 今回の敗訴をきっかけに、国際的に規制が強まるマグロなどほかの種の資源管理にも影響が出る恐れがある。日本側は精度の高い調査をする体制を再構築せねばならない

 
②【読売社説】調査捕鯨敗訴 水産資源の管理を戦略的に
2014年04月03日 01時34分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140402-OYT1T50112.html
【1】 限られた水産資源を有効利用するには、国際社会の理解を広げる努力が欠かせない。

【2】 南極海における日本の調査捕鯨の合法性が争われた裁判で、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は、国際捕鯨取締条約に違反すると判断し、中止を言い渡した。

【3】 豪州が「調査捕鯨の実態は鯨肉を売って利益を得る商業捕鯨だ」と訴えたのに対し、日本は条約が認める「科学的研究」であり、鯨の分布や増減など実態を調査する必要があると反論していた。

【4】 日本の主張の正当性が認められなかったのは、残念である。
 
【5】 日本は「法の支配」の重要性を唱えてきた。韓国には、島根県・竹島の領有問題のICJ付託を呼び掛けている。政府がICJの判決を受け入れ、現行の調査中止を決定したのは、やむを得ない。

【6】 判決は、日本がクロミンククジラの年間捕獲枠を約850頭に設定しながら100頭ほどしか捕っていないため、研究という目的は満たされていないと指摘した。

【7】 反捕鯨団体「シー・シェパード」の違法な妨害が原因なのに、それを考慮しないのは疑問だ。

【8】 反捕鯨国出身の裁判官が多いことが判決に影響した、との見方もある。国際政治の冷徹な現実を浮き彫りにしたと言えよう。
 
【9】 今後、日本が北西太平洋で実施している調査捕鯨についても、反捕鯨国から中止を求める圧力が強まる可能性がある。

【10】 ICJの判決内容についての検証を踏まえ、捕獲頭数や調査手法などを見直す必要がある。国際世論対策も講じねばなるまい。
 
【11】 政府は、1988年に中断を余儀なくされた商業捕鯨の再開を目指している。そのために調査捕鯨が必要という面も否めない。
 
【12】 ただ、鯨肉の国内消費量が低迷する中、数十億円もの国費をかけた調査捕鯨を続けることを疑問視する声は、国内にもある。

【13】 調査捕鯨の意義が薄れたわけではないが、捕鯨政策を総点検する必要もあるのではないか。

【14】 無論、和歌山県太地町などで行われている、沿岸の小型捕鯨は、国際規制の対象外だ。ICJの判決の効力はまったく及ばない。日本固有の伝統的な食文化は、後世に継承していきたい。

【15】 一方で懸念されるのは、今回の判決が、日本で高級魚として好まれるクロマグロなどの漁獲規制の強化につながりかねないことである。政府は、国際社会の動向を見極めつつ、水産資源の維持・管理を戦略的に進めるべきだ。
2014年04月03日 01時34分 Copyright c The Yomiuri Shimbun
 

 
③【産経社説】国際捕鯨裁判 生態把握の手段が消える
2014.4.2 03:35  [主張]
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140402/erp14040203350002-n1.htm
【1】 明らかに公平さと合理性を欠いた結論だ。

【2】 日本が国際捕鯨取締条約に基づいて南極海で行ってきた調査捕鯨に対し豪州が中止を求めて国際司法裁判所(ICJ)に提訴していた裁判で、日本の活動を条約違反とする判決が下された。

【3】 ICJの判決には上訴の手段がなく、日本政府は従わざるを得ないが、鯨類の生態解明などに貢献してきた調査捕鯨の科学性が十分に理解されなかったことは、極めて遺憾だ。

【4】 日本は世界に向けて、これまで以上に調査捕鯨の意義を明確に説明しなければならない。そうしなければ「科学を装った商業捕鯨」という豪州や反捕鯨団体による不当な誹謗(ひぼう)が定着してしまう。

 
【5】 日本の敗訴理由のひとつは、調査捕鯨の捕獲目標数と実際の捕獲頭数の開きである。

【6】 南極海での調査捕鯨の主な対象はクロミンククジラで、日本は約800頭の捕獲枠を持っているが、実際の捕獲は昨漁期の場合、約100頭に減っている。

【7】 これは調査計画がずさんであったためではなく、反捕鯨団体の執拗(しつよう)で悪質な妨害があったからである。あえて強硬策を避けた日本の配慮が裏目に出た形だ。判決を機に、鯨を神聖視して感情に訴える反捕鯨団体の活動が、北西太平洋での調査捕鯨に対してもエスカレートすることが危惧される。

【8】 国際捕鯨委員会(IWC)が、各種の鯨の生息数についての科学的データの不足を理由に商業捕鯨を一時凍結したのは1982年のことだ。日本はこれを受け入れ、87年から開始した調査捕鯨でデータの補充に貢献してきた。

【9】 最大種のシロナガスクジラの個体数の伸び悩みは、食性で競合するクロミンククジラの急増に圧迫されて生じていることなども明らかになっている。近年はザトウクジラやナガスクジラの増加傾向がうかがえるものの、正確に推定するには捕獲し、年齢や栄養状態などを調べる研究が欠かせない。

【10】 日本が南極海の調査捕鯨から撤退すれば、主要鯨種の生息数や鯨種間の競合状況など資源管理の基本データが不足していく。日本の鯨食文化にも影が差す。

【11】 世界の人口増加で、遠くない将来、動物性タンパク源として鯨類の本格利用が始まるだろう。そのとき正確な資源情報がなければ、強国による乱獲が起こり得る。継続性のある科学調査が必要だ。

捕鯨取締条約に従い鯨850頭捕獲と投棄を推奨する矛盾

 さて、如何だろうか。
 何度か繰り返している事だが、「知性と理性こそ人類最強の武器」と私(ZERO)は信じている。だが、同時に「知性と理性の方が敗れる事もある」のもまた事実だ今回の国際司法裁判所が下した「南極海調査捕鯨中止判決」もまた、「知性と理性が敗北した事例」として史実に記されるだろう【と、私(ZERO)は確信している】。
 
 上掲三紙社説①~③が共に取り上げている、「南極海調査捕鯨中止判決」の判決理由(の一つ)は、
 
②1> 判決は、日本がクロミンククジラの年間捕獲枠を約850頭に設定しながら100頭ほどしか捕っていないため、
②2> 研究という目的は満たされていないと指摘した。
②【6】( ①【6】、③【5】~【6】)
 
即ち年間捕獲枠850頭に対し、100頭ほどしか捕獲していないので、学術調査としてはサンプル数が少な過ぎるという事である。
 
 一方、やはり上掲三社説共(①【2】②【3】③【4】)取り上げる今回「南極調査捕鯨」が起訴された訴因、「調査捕鯨の実態は鯨肉を売って利益を得る商業捕鯨だ」②【3】である。
 
 以上から得られる論理的帰結、「年間捕獲枠壱敗の850頭まで鯨を捕獲し、且つ調査後の鯨をそのまま洋上投棄していれば、"南極海調査捕鯨中止"と言う判決は下らなかった」。
 
 「年間捕獲枠壱敗の850頭まで鯨を捕獲し、且つ調査後の鯨をそのまま洋上投棄」と言う状況は、「サンプル数が十分である」分、現状よりも「調査捕鯨らしい」とは言い得よう。だが、その状況が今回訴訟根拠たる国際捕鯨取締条約の趣旨にそうとは全く思えない。
 
 さらに言えば、上記状況、「調査の為に落命した850頭の鯨」の魂に対し実に申し訳ない事態である。尊い鯨の命を犠牲にした以上、その肉は食用とし、髭一本に至るまで有効活用するのが、鯨に対する供養でもあれば「鯨道主義」的にも正しかろう。その際に鯨肉や髭を「売買した」なんてのは、些事だろう。
 
 然るに、上掲の通り国際司法裁判所は「南極海調査捕鯨中止判決」を下し、国際捕鯨取締条約に従って「年間捕獲枠の850頭まで鯨を捕獲し、且つ調査後の鯨をそのまま洋上投棄」を推奨している。非論理的で矛盾し、「知性と理性の敗北」である事は、一寸疑いようが無い。
 
 尤も「知性と理性の敗北」と言う点では、上掲①東京新聞社説も負けてはいない。そのタイトルやパラグラフ①【5】に表れる通り、「年間捕獲枠850頭に対し、100頭ほどしか捕獲していないので、学術調査としてはサンプル数が少な過ぎる」と言う判決を受けて「捕獲頭数の大幅削減もやむなし」と主張するのだから、気が違ったとしか思えないぞ…東京新聞らしいと言えば、東京新聞らしいが。