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 アメリカ合衆国は、少なくとも一面「実験的な人工国家」であろう。「西部開拓時代」を経て「新大陸」に成立したアメリカ合衆国は、その「出自」故か、理論・理想が先走って妙な事になる事が在る。「禁酒法」なんてのは、その典型だろう(*1)。
 
 急いで付け加えるべきだろうが、「酒を法律で禁じている国」は何も1920年代のアメリカばかりでは無い。今でも回教国の多くでは販売を中心に酒類が禁じられている。だが回教国含め多くの「禁酒法国」が宗教的禁忌≒伝統に立脚した禁酒であるのに対し、アメリカの禁酒法は「社会の進歩に貢献する(筈)」と言う「論理(*2)」に立脚したのが一つの特徴であろう。「理屈の上なら、良い筈です」と言う処。無論、酒呑みたる私(ZERO)には、そんな「論理(*3)」には大いに異議がある処だが。実際当時の「進歩的な(筈の/心算の」アメリカ人の多くもそう考えたらしい。執行された禁酒法は、密造密売酒による莫大な利益を犯罪組織にもたらし、治安は悪化するわ、密売飲み屋は増えるわ、「酒の消費量は減らなかった」なんて説まであるぐらい(*4)で、社会は「ちっとも進歩しなかった」。このためアメリカの禁酒法(*5)は、執行後10年ほどで停止され、「禁酒法なる壮大な社会実験」は失敗に終わった(*6)。今から百年ほど前の話だ。
 
 その「禁酒法の失敗」に「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹いた」訳でもない、と思うのだが…

 

<注釈>

(*1) と、酒呑みである私(ZERO)は思っている。 
 
(*2)と、恐らくは主張者たちにとっての「倫理」。 
 
(*3) と「倫理」 
 
(*4) これは「説がある」と言うに留まる。密造密売酒の消費量なんて統計は、当てになるまい。 
 
(*5) 正確には、「国家禁酒法」と「アメリカ合衆国憲法修正第18条」からなる、そうだ。 
 
(*6) 共産主義よりは、実害は相当少ないな。 
 
①【NW】マリフアナ解禁の莫大な経済効果
Why the IRS Loves Legal Pot
  http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2014/01/post-3160.php
時代遅れになったビール、タバコに続く新産業として期待され、全米解禁も時間の問題
2014年1月22日(水)15時18分
アナ・バーナセク
既に解禁 コロラド州デンバーで「マリフアナの日」の祝日を祝う人々 Rick Wilking-Reuters
 アメリカで、マリフアナを解禁する準備が着々と進んでいる。嗜好品をめぐる動きとしては、1920年代の禁酒法以来の試みだろう。

 コロラド州とワシントン州は嗜好品としてのマリフアナ使用を既に合法化した。この調子なら、全米で解禁されるのは時間の問題だ。

 興味深いのは、マリフアナの使用禁止が禁酒法と非常に似た弊害をもたらしたこと。犯罪は急増し、税収が減り、違法な利用を減らす効果はほとんどなかった。

 そのことは現在の闇市場の規模を見れば一目瞭然だ。マリフアナがどれだけ違法に消費されているかを正確に把握するのは困難だが、1オンス(約28グラム)の末端価格を185ドル、年間消費量を1億8000万オンスとする政府の麻薬管理政策局(ONDCP)によるデータに基づいて算出すると、少なくとも330億ドルの規模に上る。

 ほかにも、700億ドル(米マリフアナ栽培反対運動)というものから、1000億ドル(米シェパード大学講師のジョン・ゲットマン)と、推定値は幅広い。
 その中の最大の数字で比較すれば、マリフアナの市場規模はたばこ(910億ドル)のそれに匹敵する。アメリカ国民のビール年間消費量(970億ドル)と比べても遜色ない。

 ビールの消費が減り、たばこが時代遅れになっている現状を考えれば、全米でマリフアナが合法化された暁には消費量が急拡大しそうだ。
 税務政策センターによれば、マリフアナが解禁されて取り締まり費用が要らなくなれば、90億ドル程度の節約効果が期待できるという。
 さらに大きな可能性もある。カリフォルニア州査定平準局が09年に行った研究によれば、マリフアナに課す売上税から微収できる税収はカリフォルニア州だけで14億ドルにも上る見込みという。

 しかもこうした推計には、マリフアナ解禁で拡大するだろうマリフアナ栽培から加工、流通等の幅広い産業からの税収は含まれていない。
 好むと好まざるとにかかわらず、マリフアナは今やアメリカ最大の金のなる木であり、その規模はトウモロコシと小麦の合計を上回るということだ。地下経済から表に出ることで大規模栽培による効率化も期待できる。有望産業の誕生に備えよう。
[2014年1月21日号掲載]
 
【NW】インドネシア  たばこ会社を門前払いしたバリ島の勇気
Bali Has Awesomely Refused to Host the World's Largest Tobacco Trade Fair
  http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/01/post-3170.php
たばこの国際見本市開催を拒んだバリ島の決断は「たばこ天国」変化の兆し?
2014年1月30日(木)18時09分
ピーター・ゲリング
規制なし インドネシアでは子供の喫煙者も多い Enny Nuraheni-Reuters
 国民の3分の1が喫煙者の「たばこ天国」インドネシアでは、町中至る所でたばこの広告を見かける。たばこ産業の存在が当たり前すぎて、米フィリップ・モリス社が子供向けコンサートや難民キャンプを支援していても、誰も気にしない。
 インドネシア最大のたばこメーカー、ジャルム社がジャカルタ市内に設置した人気銘柄「L.A.ライツ」の看板には「Don't Quit(禁煙するな)」の文字が。しかも、「Do」と「it」は赤字で書かれており、「Do it(吸え)」の文字が浮かび上がる。
 子供への広告を規制する仕組みもないため、13~15歳の2割が喫煙者だ。たばこのせいで命を落とす国民は、毎年22万5000人にのぼる。
 2010年には、インドネシア人の2歳の男の子がたばこを毎日40本吸う様子がYou Tubeに公開されて、大きな話題になった。これを受けて国内からもたばこ規制を求める声が上がったが、政府に汚職が蔓延し、たばこ業界が絶大な富を握っているこの国では、そうした動きはすぐに立ち消えになった。
 欧米諸国がたばこへの規制と課税を強化するなか、たばこメーカーはかなり前から東南アジア市場に軸足を移してきた。その戦略は大当たりし、各社とも利益を伸ばしている。
 それだけに、世界有数のリゾート地として知られるインドネシアのバリ島がたばこ産業にノーを突きつけると、大きな衝撃が走った。バリ州のマンク・パスティカ知事が、2月末にバリ島で予定されていた世界最大のたばこ見本市「インター・タバコ・アジア2014」の開催を拒否したのだ。
 たばこの健康被害などに取り組む活動家からは称賛の声と、こうした動きがインドネシア全土に広がるよう期待する声が上がっている。東南アジアたばこ規制連盟(SEATCA)は「知事は州民の利益を何より優先した」と褒めたたえる声明を出した。
 地元が失うものは小さくない。大型の国際会議はこの地域の観光業の目玉であり、見本市を開催しないことで巨額の収入源を失うことになる。
 そんななかで下されたバリ州の決断は、インドネシア人とたばこの関係が変わる大きな一歩になるかもしれない。

From GlobalPost.com特約

 

自殺幇助とダブルスタンダード

 さて、如何だろうか。
 言うまでも無かろうが、上掲二本の記事はいずれもNews Week誌から上掲①は「コロラド州、ワシントン州でマリファナが合法化された」事を報じ、「この分ではマリファナの全米解禁も時間の問題」と断じ、「マリファナ産業」が経済的・税収的に如何に良い事かを報じ、
 
①1〉 好むと好まざるとにかかわらず、マリフアナは今やアメリカ最大の金のなる木であり、
①2〉その規模はトウモロコシと小麦の合計を上回るということだ。
①3〉地下経済から表に出ることで大規模栽培による効率化も期待できる。
①4〉有望産業の誕生に備えよう。
 
と断じている。「功利主義もここまで来れば見上げたモノ」と言うべきか。
 
 「金の為なら何でもする」ならば、麻薬売買も人身売買も「あり」だろうさ。
 
 事実、帝国主義華やかにして人種差別が常識化・当然視された頃には、国を挙げての麻薬貿易・人身貿易が、「公然と」と言うのも恥ずかしくなるほど公に行われていた。アヘン戦争の発端はイギリスが清の銀を得るために輸出したアヘンであるし、「アメリカ人」の相当部分が黒人である理由の一つは、アフリカ大陸から「輸入」された黒人奴隷である。今では国名である「コート・ジボアール」は「象牙海岸」であるが、その近所には「奴隷海岸」があり、命名の由来はいずれもそこから「出荷」された「アフリカ大陸の特産品」のため、だ。
 私(ZERO)は何も人類(*1)の悪行・愚行蒸し返して糾弾しようと言うのではない(*2)。だが、「国を挙げての麻薬貿易・人身売買」は現代では悪行・愚行どころか(幸いな事に)犯罪になるであろう事と、「国内向け麻薬売買公認」は「国としての自殺」と断じるまでだ。
 
①5〉 興味深いのは、マリフアナの使用禁止が禁酒法と非常に似た弊害をもたらしたこと。
①6〉犯罪は急増し、税収が減り、違法な利用を減らす効果はほとんどなかった。
 
と、「禁酒法の失敗との類似」からマリファナ解禁の正当性上掲①NW誌記事は訴えるが、合法化したら「マリファナ利用者はさらに増える」事は一寸疑いようが無いし、それで「犯罪が減る」因果関係は私(ZERO)の想像を絶する。因果関係が複雑で再現検証も先ずできない人文科学分野で因果関係をつなげるのは、少なくとも単純では無かろうが、上記①6〉の言う「犯罪急増」「税収減」の原因(の相当部分)が「マリファナ使用禁止」であると言うのは、極めて疑わしい。
 
 アメリカに自殺されると、同盟国としての我が国は大いに困るんだがね。
 
 他方で上掲②「たばこの国際見本市開催を拒否したバリ島」を称賛し、未成年どころか幼児の喫煙さえロクに規制されないインドネシアを非難する同じNW誌の記事だが・・・NW誌は、インドネシアがマリファナを自由化し、インドネシアの未成年・幼児がマリファナを吸っていたならば、これを絶賛したのかね?犯罪の増減は不明としても「マリファナ税による増収」は期待出来、「マリファナ産業の興隆」に期待する記事を書いたのかね?ああ、「マリファナ国際見本市開催」までには、まだ相当時間がかかるか。
 
 NW誌よ、規制対象と国と記者が異なるとは言え、上掲①②記事は、ダブルスタンダードではないか?

 

<注釈>

(*1) この場合、その大部分は西欧列強人=白人なのだが
 
(*2) 況や「謝罪や賠償を要求」しようと言うのでもない。僥倖と先人たちの努力により、我ら日本人は奴隷とされることも麻薬漬けにされることも、かなり免れたのだから。
 それでも高橋是清は奴隷としてアメリカで売買されて居たな。ウイキペディアによると「Slaveではない」らしいが。