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東京都知事選で、脱原発を掲げる細川氏も宇都宮氏も敗退した。以下に掲げるのは、その都知事選当日と、結果の出た翌日の東京新聞社説である。
①【東京社説】週のはじめに考える 日本の未来問い続けて
2014年2月9日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014020902000119.html
【1】 東京都知事選の投票日を迎えました。わが国総人口の一割を超す都民の選択です。選挙戦は課題が山積する「日本の未来」への問い掛けでもありました。
【2】 都知事選は、きのう十七日間にわたる選挙運動を終えました。一自治体の首長選とはいえ、有権者数は一千万人を超え、スウェーデンやインドネシアの国家予算に匹敵する予算規模を持つ日本最大の自治体のリーダー選びです。
【3】 日本の首都であり、国政にも無視し得ない影響力があります。だからこそ全国の関心を集めています。都民の皆さんには棄権せず、貴重な一票を投じてほしい。
◆「生き方」を問う選挙
【4】 立候補者十六人の訴えはさまざまですが、公約を読み、街頭演説や政見放送を聞き、新聞やテレビなどの報道に接すると、東京だけでなく、日本が直面している課題が浮かび上がってきます。
【5】 少子高齢化や社会保障、エネルギー、防災など、重くのしかかる課題にどう対処するのか。従来の政策をそれほど変えずに対応できるのか、別の方法を考えるのか。
【6】 各候補の公約は対処法を示した一つの「未来図」です。都知事選は私たちの未来への投票、生き方を問い直す選挙でもあります。
【7】 都内の人口は東京五輪が開催される二〇二〇年以降、減少に転じます。都の推計では一〇年に20%だった六十五歳以上の割合は二五年に25%、六〇年には39%まで上昇します。超高齢化社会の本格的な到来です。
【8】 都内の介護施設不足にどう対応するのか、人間関係の希薄さが指摘される大都会で、どうやって支え合い社会を築くのか。そのための財源をどうするのか。
【9】 東京が先進的な取り組みを打ち出し、それを軌道に乗せることができれば、同じ悩みを抱えるほかの自治体の参考にもなります。国の政策をも動かすでしょう。
◆「脱原発」こそが争点
【10】 そしてエネルギーです。
【11】 東京電力福島第一原発事故後、原発稼働を継続するのか否かは、国民的な議論になっています。
【12】 原発はいったん事故が起きれば取り返しがつきません。人々から平穏な暮らしだけでなく、故郷をも奪います。事故の補償や除染費用などを考えれば、そもそも安価なエネルギーなのか疑問です。
【13】 都知事選では、複数の候補者が「脱原発」を掲げましたが、安倍内閣は、原発の是非が争点になることを嫌がったようです。
【14】 都知事選の結果に関係なく、原発維持政策を継続し、再稼働に道筋をつけたいのでしょう。
【15】 しかし、東京はエネルギーの大消費地です。事故が起きた福島第一原発を含めて原発の多くは立地地域でなく、大都市圏に電力を供給するためのものです。
【16】 立地地域に危険性を押し付け、恩恵だけを大都市圏が享受し続けるのか、大量の電力を消費する生活の仕方を改め、自然エネルギーの開発にも力を注いで、原発に依存しない社会を目指すのか。
【17】 原発・エネルギーは国の政策とされますが、私たちの生き方の選択でもあります。一千万人を超す都民の「民意」を、国は無視してはならない。原発こそ都知事選にふさわしい争点なのです。
【18】 当落のみならず「脱原発」を掲げる候補が合わせて、どの程度の票を集めるのかにも注目したい。
【19】 政権与党の自民党は衆参両院で多数を確保しています。安倍晋三首相が衆院を解散しなければ、国政選挙は補欠選挙を除いて一六年夏の参院選までありません。
【20】 それまでの間、政権がどんなに悪政や暴走を繰り返しても、国民は意思表示できないのか。そうではありません。
【21】 米軍普天間飛行場の沖縄県内移設に反対する候補が当選した名護市長選を例に挙げるまでもなく、地域から政府の政策に対して声を上げることは可能です。
【22】 都知事選だけでなく、原発建設計画のある山口県では知事選の真っ最中です。石川、福島、愛媛の原発立地県でも今年、知事選があります。十二月に任期満了を迎える沖縄県知事選では、米軍基地の県内移設を容認した仲井真弘多知事の判断が問われるでしょう。
【23】 さまざまな選挙での、われわれ主権者の問い掛けと選択の一つ一つの積み重ねが、日本の未来を決めていくのです。
◆民主主義をより強く
【24】 都知事選で大きな争点になった政府の原発政策への問い掛けは、まだ始まったばかりです。われわれの負託を受けた人たちが誤った政策を進めようとするのなら、声を上げるのは当然です。
【25】 選挙結果は尊重しなければなりませんが、選挙は主権者による白紙委任の儀式ではないからです。
【26】 自分たちの暮らしのありようを見つめ直し、粘り強く問い掛ける。それが私たちの未来を拓(ひら)き、民主主義をより強くするのです。
【東京社説】脱原発に耳を傾けつつ 東京都知事に舛添氏
2014年2月10日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014021002000195.html
【1】 景気好転の兆しの中で、東京都民は大きな変化を望まなかった。しかし、再びフクシマを顧みる好機にはなった。その積み重ねが脱原発の灯を広げる。
【2】 徳洲会グループからの五千万円の提供問題が発覚し、猪瀬直樹氏が知事を辞職したのは去年の暮れ。投票日まで一カ月半という慌ただしい東京都知事選だった。
【3】 候補者の出馬表明も正月をまたぎ、論戦が尽くされたとは言い難い。三年間で三度目となった首都決戦はうんざり感も漂い、知名度争いに終始した面も否めない。
◆景気が選択を左右
【4】 まずは足元の暮らし向きを落ち着かせたい。安倍政権を担ぐ自民、公明両党の支援を受けた舛添要一氏が選ばれたのは、そんな思いが先行したからかもしれない。
【5】 最近は失業率が下がり、有効求人倍率が上がってきた。好条件の雇用機会を求め、東京への流入組も増えている。賃金底上げの期待がかかる春闘も幕を開けた。
【6】 一方で、四月には消費税増税が控える。景気復調の矢先に、経済政策アベノミクスを手がける安倍政権とにらみ合うような知事では不安だ。そんな心理と論理が働いたとも読み取れる。
【7】 かつて厚生労働相を務めた豊富な経験に、一票を託した都民も少なくないだろう。一月の本紙の都民世論調査で、重視する政策分野として医療や福祉が一番だったことからも推測できる。
【8】 地域では高齢化が速度を上げて進み、医療や介護の手だてが追いつかない。共働き家庭を支える子どもの保育環境も貧弱だ。非正規労働の待遇改善も見通せない。
【9】 好況の恩恵にはあずかりたいし、喫緊の課題は早急に片づけてほしい。それが都民の素直な心情なのだろう。閉塞(へいそく)感が拭い切れない時代だからこそ、目の前の利害得失に関心を奪われがちになったとしても無理はない。
◆脱原発の争点外し
【10】 「東京を世界一の都市に」と売り込み、約束したのだ。どんなモデル都市を地方へ、世界へ発信するのか。手腕が厳しく問われる。
【11】 バラ色の美辞麗句を振りまいた舛添氏と、後ろ盾になった安倍政権。その狙い目は、都民の意識をフクシマからそらすことにあったという見方もできる。
【12】 「国家存亡の問題」として原発ゼロを掲げ、細川護熙氏が名乗りを上げた瞬間の狼狽(ろうばい)ぶりはその証左だ。小泉純一郎氏の後押しとあって衝撃が広がったようだ。
【13】 政権からは「エネルギー政策は国政の課題だ」と批判する発言が相次いだ。原発を「重要なベース電源」とし、再稼働する考えを示したエネルギー基本計画の閣議決定も先送りした。
【14】 原発を堅持したいらしい政権にとって、その是非が単一争点となる事態だけは極力避けたい。そんな危機感の表れだったのだろう。
【15】 それは取りも直さず、国民の多くがフクシマに学び、脱原発を志向しているという現実を知っていての警戒からにほかならない。
【16】 元首相二人のそろい踏みと、前日弁連会長の宇都宮健児氏。それぞれの言葉で、原発の再稼働反対や即時廃絶を訴えた。
【17】 いま一度フクシマと向き合った都民も多かったのではないか。
【18】 過酷事故から三年近く。いまだ十四万人が避難生活を送る。被災者の賠償や生活の立て直し、地域の除染、廃炉まで気の遠くなるような費用と時間がかかる。
【19】 福島に危険性を押しつけ、東京は発展した。核のごみの再利用システムも、最終処分場も欠いたままで。この地震列島には、同様の電力供給構造がいくつも組み込まれている。それが国策だった。
【20】 原発の立地地域や未来世代に目をつぶって生きるのか。自然エネルギーの開発に知恵を絞り、暮らし方を見直す道へとかじを切るのか。その選択でもあった。
【21】 舛添氏も「原発に依存しない社会を構築する」と主張した。けれども、代替エネルギーの確保を条件とし、原発廃止までの道筋は示していない。再稼働の可否も、国の仕事だとして語らなかった。
【22】 除名された古巣に支えられての勝利だ。独自路線は難しかったのかもしれない。とはいえ、東京は新潟の柏崎刈羽原発に再建を頼る東京電力の株主だ。再稼働反対の声にも耳を傾けねばならない。
◆原発回帰ではない
【23】 民主党政権も、安倍政権も、事故の責任や原発の限界を明確にすることから逃げてきた。今知事選であらためて浮き彫りになったのは、そんな曖昧体質だった。
【24】 フクシマと身の回りの深刻な課題との板挟みで、苦渋の選択を迫られた都民も多いだろう。
【25】 舛添氏も脱原発を公約したのだ。東京流の取り組みを披露してほしい。都民はフクシマ以前への回帰にお墨つきを与えたわけではないのだから。
恨み節の浪花節
さて、如何だろうか。
言うまでも無かろうが、上掲①都知事選当日の東京社説では、「「脱原発」こそが争点」と小見出しにも掲げ、「民意の表明」としての投票を訴えている。東京都知事が何をどうやって「脱原発」を実現するかと言う公約ではなく、「脱原発の象徴」としての都知事、恐らくは「細川都知事」を望んだ社説であろう。
上掲②は選挙結果の出た翌日細川・宇都宮両名とも敗れて、枡添氏当選後の社説であるが・・・
「◆景気が選択を左右」「◆脱原発の争点外し」「◆原発回帰ではない」と、小見出し並べても東京新聞の悔しさ・恨み節が聞こえてくるようだ。
挙句の果ての〆が、
②1〉【25】 舛添氏も脱原発を公約したのだ。東京流の取り組みを披露してほしい。
②2〉 都民はフクシマ以前への回帰にお墨つきを与えたわけではないのだから。
②2〉 都民はフクシマ以前への回帰にお墨つきを与えたわけではないのだから。
…枡添氏が「脱原発を公約」したのならば、東京新聞の支持応援がありそうなものだが、あったのかね?
もし、無いのならば、上掲②社説は「勝者に対する追従」以外の何なのかね?