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平成26年、皇紀2674年、西暦2014年、明けましておめでとう御座います。
今年の干支は午(うま)である。が、我が国は古くは縄文時代より海山の幸に恵まれて且つ平地には恵まれない国土(※1)の為もあり、騎馬や騎乗、さらには馬に対して縁が薄かった。一説には古代日本には騎馬民族が渡来して大和王朝を作ったなんて説もあるそうだが、渡辺昇一が指摘するとおり我が国最古の文献・記紀=古事記・日本書紀に殆ど馬が登場しない(※2)や、万葉集に馬に関係する和歌が殆ど無いことなどから、荒唐無稽な説と言うほか無かろう。
我が国の馬は、まず第一に武士の地位を表す象徴であり、ついで農耕馬。騎兵の集団運用は源義経を最初とせざるをえないほど、馬・騎乗・騎兵には縁がない。
だから、平家物語に登場する名馬も、記憶に残るのは「擦墨(するすみ)」「生食(いけずき)」ぐらい。前者は「色が黒いから擦墨」なのはまだしも、後者は「近づくものは人でも馬でも喰ってしまうほど気が荒いから生食」というのだから、後者は「遊星からの物体X」並の扱い。騎馬武者が多く登場する平家物語でさえ、馬というものが如何に「特殊な存在」であるかが分かろう。
そんな馬が「午」として干支の一つに入っているのは、当然ながら干支が大陸渡来であるため。北方に凶奴はじめとする騎馬民族の脅威・恐怖を抱える大陸、特に中原・中華にとって「午/馬」は身近でもあれば、「深刻な脅威・恐怖」でもあったのだろう。前漢の武帝が馬の品種改良(=騎兵部隊の強化)目指して遠く北方に汗血馬を求めたのも、北方騎馬民族・凶奴の「深刻な脅威・恐怖」故。干支の一つにもなろうというものだ。
翻って洋の西=西洋はと言うと、古くは古代ローマのヌミディア騎兵から始まり、フン族などという一大東方よりの脅威もあったから「深刻な脅威・恐怖」となるのは古代ローマ滅亡直前でありそうだが、相当馬は身近なものであったろう。騎兵が貴族の兵科として「戦場の花形」となったのは中世まで遡れるし、第2次大戦に於いても「戦場の徒花」に近いが、まだ華々しい存在たりえている。
それやこれやで英語をはじめとする西洋言語には「馬」を表す多くの名詞がある。日本語では「牝馬」「子馬」「野生馬」などと説明を付け加えねばならないが、英語ではPonyで「子馬(※3)」、Mustangで「(北米原産の)野生馬」をそれぞれ一語で表し、Coltで「5歳ぐらいまでの若い雄馬」なんて単語まである。さらには「乗り馴らされていない、あるいは調教不十分なMustang」を「Bronco」と呼んで区別・識別してしまうのだから、「名を与えることは、力を与えること」とは言うものの、言葉というモノは面白いというか、恐ろしいと言うか。
左様な意味合いからすると、兵器につける制式名やあだ名というモノも、仇や疎かにはし難くなる。ことに我が国のように「○○式」とか「M××」とか「△号」とか、数字程度でつける名前ではなく、何らかの意味を持つ名前をコードネームでもニックネームでもつける場合は。(※4)
そこで、兵器名に「馬の名前」を使ったモノと考えると・・・案外なくて、ノースアメリカンP-51ムスタング戦闘機がメジャーなぐらい。

「究極のレシプロ戦闘機」とも評される、第2次大戦末期の米空軍(※5)主力戦闘機。速いわ、安いわ、遠くまで飛ぶわ。おまけに空戦性能も相応にあり、これを液冷とはいえ1750馬力のエンジンで実現しているのだから「究極のレシプロ戦闘機」と言われるのもむべなるべし。「2個1」にしてクッツケたような双発戦闘機「ツインムスタング」は朝鮮戦争でも運用されている。おそらくは、「最も有名な馬の名前がついた航空機」であろう。
さてその次はと言うと・・・いきないりロックウエルOV-10 Broncoとかなりマイナーな航空機になってしまう。

ターボプロップ双発のCOIN(COunteer-INsurgency)機と呼ばれる軽攻撃・偵察・輸送の「万能機」。地上部隊と連絡・連携をとりながら、空爆目標を指示したりする前線統制機としてベトナム戦争でも活躍したが・・・機種も任務も機体そのものも、かなりマイナーだ。そりゃまあBroncoと言うのは先述の通りMustangの一部「乗り馴らされていない」方なのだから、マイナーに決まっているんだが。
他にないかと思いめぐらしても、AV-8ハリアーシリーズに搭載されているペガサス「天馬」エンジンぐらいしか思い浮かばない。

夢の「VTOL攻撃機」を実現した画期的なエンジン。なにが画期的って「ジェットエンジンのくせに4方に4つのノズルがある」のだから、他に例が無いぐらいに画期的だ。この4つのノズルの吹き出し方向を回転できるからこそ、AV-8シリーズは「垂直離着陸」なんて芸当が出来るのだから、「4つのノズルを持つジェットエンジン」には、技術的必然性があるのだが。イギリス人得意の「ゲテモノ趣味」ではなく。
コレぐらいしかないのだから、今年の干支「馬/午」と航空機というのは相性が良いとは言いかねる、のかも知れない。
もっとも、兵器としてみるならば、アメリカにCOLT社があり、Mー16自動小銃もM1911A1自動拳銃もSingle Action Army45回転式拳銃も量産しているから、それこそ「無数にある」のだが。
本年が我が国にとって、また皆様にとって、良い年でありますように(※6)。
<注釈>
(※1) 後者については今もあまり変わりがない。幸いなことに、前者についてもだが。(※2) スサノオノミコトが皮を剥いだ馬を投げ込むという「御乱交」の一つとして登場するきり、だそうだ。(※3) 「肩までの高さが147センチ以下」だそうだから、正確には「小馬」か。(※4) その典型はアメリカ人であり、NATOコードであろう。イギリス人やフランス人も通称がないと気が済まない傾向にある。案外数字程度で平気なのは、日本人とロシア人。ドイツ人は、両刀使いかな。(※5) 当時はまだ、米陸軍航空隊だが。
(※6) 無論、優先されるのは「我が国にとって」であるが。