応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
中国共産党が鳴り物入りで開催した中央委員会第3回全体会議(3中全会)は、コミニュケを発表して終結した。理の当然ながら、中国共産党の宣伝機関たる中国「マスコミ」はその「コミニュケ」を絶賛している。
これに対する朝日新聞社説と石平氏のコラムを比べると、結構興味深い。
①【人民日報海外版コラム】中国の改革への断固たる決意を読み解く
http://j.people.com.cn/94474/8459133.html
「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」は発表後、海外メディアの盛んな議論の的となった。世界の主要通信社はいずれも直ちにこのニュースを配信。主要メディアはいずれも大きな扱いで報道し、論評した。大きな反響を呼んだと言えよう。(文:華益文・国際問題専門家。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
【1】 それまで海外メディアは三中全会とそのコミュニケを注視し、全体的に肯定的な評価をしてきたが、一部メディアはコミュニケについて「言い回しが曖昧」「十分に具体的でない」「改革措置は慎重で予想を下回る」との認識を示し、さらには中国が具体的な改革措置を講じるのかどうかまで推測の対象とした。さらにごく一部のメディアはコミュニケの内容の一部だけを取り上げて勝手に解釈したり、いくつかの言葉について行き過ぎた解釈をしたり、特定の改革を取り上げて全体を当て推量したりした。
【2】 三中全会は早急な解決を要する重大な問題について検討した。コミュニケはその要点を取り上げ、改革の重点分野、方向性、目標、構想、原則を5000字で明らかにした。三中全会自体が、新たな改革について綱領的方針を定める意味合いが強く、方向性、指導性、戦略性を際立たせるものであり、具体的改革措置の各々について詳細に述べることはあり得ない。一部海外メディアがまだ「決定」を見ないうちから、矢も楯もたまらずに中国の改革について結論を出したのは、明らかにやや偏りのある、性急すぎる行動だった。
【3】 果たして、2万字の「決定」は15分野、60余りの改革課題を打ち出した。その多くが中国の改革過程における極めて困難な課題であり、「急」「難」「険」「重」という特徴を備える。これを受けて、少なからぬ海外メディアが中国の改革を見直し始め、今回の改革措置は「予想を上回る」との認識を示した。世界はこの「決定」に、新たな改革が「空前の規模かつ驚くほど広範」で、「大きな決意を持ち、勇敢な一歩」であることを目の当たりにした。多くの海外メディアは中国の発表した改革計画を「意気込みにあふれている」と表現し、実行されれば、中国に「天地を覆すような変化」をもたらすとの認識を示した。中国の今回の改革は「かけ声は大きいが、行動が伴わない」ものではなく、「かけ声が大きく、行動も伴う」もののようだ。
【4】 中国の庶民が三中全会に関心を持つのは、三中全会の描き出す改革の青写真が、中国国民一人一人の切実な利益に関わり、改革が誕生、進学、就職から老後の生活までと、生涯の各ステージに関わるものだからだ。海外メディアが三中全会を注視するのは、中国の改革の成否が中国の前途・命運に関わるだけでなく、世界全体にも影響を与えるからだ。ある海外メディアの言葉を借りれば「世界経済は中国という大国の発展の歩みに大きく依存しており、いかなる大きな変化も世界経済に重要な影響を与える」のだ。
【5】 グローバル化と情報化の時代にあって、世界各国はすでに「運命共同体」となっている。「一国が栄えれば共に栄え、一国が損なわれれば共に損なわれる」との言葉で多くの国家間の関係を形容しても、少しも行き過ぎではない。他の多くの大国と同様、中国の発展も際立った試練や挑戦に直面し、少なからぬ困難や問題を抱えている。中国は35年間の改革開放の道によって、こうした問題を解決するカギが、やはり改革の深化にあることを証明した。中国には改革の全面的深化という雄心があり、平和的発展に尽力する壮志がある。中国は任務を引き受け、自らの発展を通じて周辺諸国と国際社会に恩恵を及ぼすことを望むと同時に、周辺諸国と国際社会が歩調を合わせることも必要としている。
【6】 中国の改革は深く困難な領域、難関攻略の時期に入りつつある。改革深化への中国の決意によって世界の懸念は解消された。同時に、外国が中国の改革を辛抱強く待つことも必要だ。次の35年間で、今日の中国の雄大な志によって世界の面前に異なる中国が現れるだろう。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年11月18日
②【朝日社説】中国の改革―かけ声で終わるのか
改革を全面的にすすめる。中国共産党のそんな誓いごとが、かけ声だおれに聞こえる。
中央委員会第3回全体会議(3中全会)で、習近平(シーチンピン)体制がめざす基本政策が示された。
5年ごとの党大会で指導部を選ぶ中国共産党は、最初の中央委で党人事、2回目で国家人事を決め、3回目で政策を話し合う。そこで新指導部が何をしようとしているのかがわかる。
今回の発表文書によると、経済については「市場が資源配分の中で決定的役割を果たすようにする」と明記した。
企業の公平な競争、消費者の自由な選択、金融市場の整備。そんな健全な自由市場化につながるテーマを列挙した。
ところが、それと並んで「国有経済に主導的役割を発揮させる」とある。明らかに矛盾しているというほかない。
国有企業は一時期まで整理されたが、胡錦濤前政権下で再び肥大化した。特にリーマン・ショック後の対策で多くの資金が注がれ、過剰投資となった。
国有企業の幹部たちへの優遇ぶりは、庶民が憤る格差問題の要因でもある。その代表格、中国石油天然ガスは汚職で経営陣が摘発されたばかりだ。
それでなくとも中国は経済成長が鈍る曲がり角に来ている。国有企業のような非効率要因を維持する余裕はないはずだ。
それでもメスを入れられないのは、国有企業が共産党幹部に昇進や優遇のポストをばらまくシステムであり、党の基盤そのものだからではないのか。
今回の発表文書は、経済以外にも行数を割いたのが特徴だ。政治では「社会主義民主政治の発展」をめざすとした。
だが、各地方の議会である人民代表大会では、非共産党系の候補を排除してきた。首長選挙も村長レベルではあるものの、市や県では皆無だ。
そんな現実を変える意志は文面からはうかがえない。
司法改革にも言及しており、「裁判権、検察権の独立を確保する」という。だが、それが本気なら、党の司法介入を禁じると宣言すべきだろう。
中国現代史で最も有名な3中全会とは、トウ小平(トウは登におおざと)の指導による改革開放の起点となった1978年12月の会議だ。今回は、それ以来の大きな改革、というのが中国側の前宣伝だった。
だが、発表文書を見る限り、単にこれまでの路線を強めることが趣旨であり、改革と呼べるものではなさそうだ。
強固な一党支配を温存したままの改革とはどこまで可能なのか。疑問は結局そこに尽きる。.
③【石平のChina Watch】「やるやる詐欺」に終わった3中総会
2013.11.21 12:20
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131121/chn13112112200005-n1.htm
【1】 12日に閉幕した中国共産党中央委員会(第18期3中総会)は、まったく期待外れの結果となった。政治・経済と社会全般が危機的な状況にある中、今回の会議は当初、国有企業の独占打破や土地売買の容認など、「大胆な改革」の提起によって危機打開の突破口となるのではないか、と期待されていた。
【2】 だが、採択したコミュニケは結局「改革」という言葉の空疎な連呼に終始する以外に、具体案や日程表を何一つ打ち出すことなく、改革断行の気概をまったく感じさせなかった。「改革」は単なる見せかけのパフォーマンスに終わったのである。
【3】 これではまるで改革の"やるやる詐欺"であろう。会議閉幕翌日、上海と香港の株式市場で失望売りが広がり、株価が下落したことは市場の正直な反応ではないか。
【4】 なぜ改革ができないのだろうか。今の体制下で作り上げてきた利権構造が改革によって失われることを恐れる党内勢力の抵抗が大きかったことは事実だ。
【5】 9日の全体会議(全会)開幕から数日間、中国の官製メディアが会議進行状況を一切報じなかったことから、会議中に激しい対立と論争が起きたことが分かる。おそらく、既存の利権構造に深く関わっている江沢民派の幹部たちが改革に猛反発したのではないか。
【6】 それ以外に、改革を骨抜きにしたもうひとつの大きな要因はやはり、共産党総書記(国家主席)習近平氏その人の態度であると思う。
【7】 13日、中央テレビ局のニュースサイトは、習氏が全会で決定した改革方針をめぐり「改革は一度に成し遂げることはできない」と述べていたと伝えた。全会閉幕の翌日に、最高指導者の発言としてそれが報じられたことの意味は実に大きい。
【8】 「上に政策あれば下に対策あり」の中国では、たとえ最高指導部が「改革を急げ」と大号令をかけたとしても、やる気のない官僚たちがその通りに動くことはまずない。なのに、最高指導者の習氏自身が改革に関して「一度に達成できない」という消極的な発言をすれば、全国の幹部たちは当然、「改革は別に急がなくても良い」と受け止めるに違いない。
【9】 つまり、「改革」を連呼したコミュニケを横目にして、習氏が間をおかず改革の推進に事実上のブレーキをかけた。改革なんかやりたくもないというのは彼の本心ではないか。
【10】 なぜなら、習氏の政治的支持基盤のひとつは改革反対の江沢民派と既存利益保持者の太子党の面々である。それに加えて、国有大企業の独占構造や土地に対する国家の支配は習氏が死守しようとする独裁体制の経済的基盤そのものであるから、それらにメスを入れるような改革を進める気は当然ない。
【11】 改革をやらない代わりに、習氏が大急ぎでやろうとしているのは、独裁体制強化のための国家安全委員会の創設だ。それが出来上がれば、習氏自身は絶大な権力を手に入れるだけでなく、国内のあらゆる不満と反発を簡単に抑圧できる。
【12】 つまり、習氏は改革の推進によって社会的矛盾を解消する道を自ら断ってから、力の論理で民衆の反抗を抑え付け、政権の安泰を図る道を選んだのである。
【13】 だが、改革の放棄は結局大きな失望とよりいっそうの反発を招き、力任せの抑圧は反抗運動のさらなる激化を呼ぶに違いない。
【14】 習近平政権は、国内問題を平和的に解決する最後のチャンスを逸した。後に残されるのは、改革を志す党内勢力による政変の断行か、もしくは民衆による革命的反乱の暴発だろう。
【15】 いずれにしても、習政権下の中国が今後、激動の「乱世」に突入していくのは間違いないようだ。