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【WSJ】再生可能エネルギーにまつわる6つの神話
 (承前)

http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303529604579094530442450354.html

神話その6:再生可能エネルギーは数百万の雇用創出を意味する

 08年の大統領選挙で、オバマ大統領はクリーンエネルギーへの投資は500万の「グリーンジョブ」を生むとの見通しを触れ回った。雇用創出のアイデアは09年の900億ドル(約8兆8900億円)規模のクリーンエネルギー刺激策やその後の取り組みの根拠となる一助となったほか、今でもオバマ政権が繰り出す大げさな発言の主な要素として残っている。

 しかし、再生可能エネルギーはその支持者が予想したようには雇用創出分野にはなっていない。オバマ大統領が就任してから風力や太陽光発電の数は倍増以上の伸びを示したが、雇用はそうではない。

 再生可能エネルギー分野の雇用数を増やす上で最も困難な部分は、何が「グリーンジョブ」かを見極めることだ。労働統計局は広い定義を思いついた。つまり、環境に利点をもたらす、もしくは企業をより環境にやさしいものにさせる財やサービスということだ。同局の最新データによると、米国には11年に340万件のグリーンジョブがあった。しかし、その範囲は控えめに言っても広い。民間セクターのグリーンジョブには石油・石炭製品の製造業が含まれる(3244件)。学校と正規のバスドライバー(16万6916件)、伐採搬出(8837件)、製紙工場(1万8167件)、鉄鉱所(3万3812件)といった具合だ。数字があまりにあいまい過ぎるため、クリーンエネルギー分野から創出される雇用数を示す指標としては全く意味のないものだ。

 再生可能エネルギー分野の直接雇用数のほうが明確だ。12年に風量発電業界は約8万1000人、ソーラー業界は約11万9000人、地熱業界は約2万人を雇用したと言う。水力発電協会は今日、20万人から30万人を雇用していると推計する。

 これらの数字はかなり少なめであるばかりではなく、大きく見ると最近の急激な成長を見る前の08年からあまり増えていない。08年に風力業界は8万5000人を雇用していた。つまり、風力発電能力が2倍以上になった一方で、雇用数は減ったのだ。ソーラー発電では10年の雇用数が約9万3000人だ。その2年後、ソーラー発電所の数は9倍に増えたが、雇用数はわずか28%の伸びにとどまっている。

 他のエネルギーセクターと比較するとグリーンジョブを巡る約束と現実の対比がより明確になる。例えば、石炭による火力発電は米国の発電手段としてそのシェアが縮小したが、雇用数は約15万人と90年代中盤以降、最大規模となっている。

 またエネルギー分野で雇用数が最も伸びているのは石油と天然ガスの分野だ。エネルギー業界のコンサルタント業務を手がけるIHSセラの最新の研究によると、水圧破砕もしくはフラッキングといった非伝統的な石油・天然ガスの生産手段を用いる業者の直接雇用は約36万人だ。

 

.要約 6つの再生可能エネルギー神話と実際

(1)神話その1:再生可能エネルギーは電力源としてはささいなものだ
 水力発電は米国でも10%以上を占めている
 
(2)神話その2:再生可能エネルギーはすべての化石燃料と取って代わることができる
 設置場所が困難
 
(3)神話その3:再生可能エネルギーはコストが高すぎる
 現状は高い太陽光・風力発電コストも技術の進歩で低減できる可能性がある
 二酸化炭素排出量による総合コストを勘案すれば、火力は風力・太陽光と大差なくなる。
 
(4)神話その4:多様性が再生可能エネルギーを運命づける
 風力・太陽光発電は発電量を制御できないから、バックアップ電力が恒常的に必要
 
(5)神話その5:安い天然ガスは再生可能エネルギーの敵だ
 天然ガスと再生可能エネルギーは実際、ライバル同士ではなく相互補完的なものだ。
 火力発電は発電量可制御で、レスポンスも速いのだから、当然だな。
 
(6)神話その6:再生可能エネルギーは数百万の雇用創出を意味する
 再生可能エネルギーは増えているが、雇用はさして増えていない。
 エネルギー分野で雇用数が最も伸びているのは石油と天然ガスの分野だ。
 
 

新味は無い。それ即ち「我が意に近い」という事

 さて、如何だろうか。
 正直なところ、章題にした通り、殆ど新味は無い。上掲記事は当然ながら米国の電力事情を扱っており、それ故に発電コスト等も我が国と異なっているが、本質的な議論に差異は無いから。
 
1〉 ジャーナル・オブ・エンバイロメンタル・スタディーズ・アンド・サイエンシズに掲載された電気の卸売価格の新たな総合比較によると、
2〉石炭による発電コストは1キロワット時当たり3セント、新規の天然ガス発電所は6.2セント、風力8セント、そして太陽光が13.3セントだ。
3〉 この最新の研究によると、これらの隠れたコストをすべて計算に入れれば、異なる発電方法の総合コストはかなり違って見えてくる。
4〉 既存の石炭による火力発電所のコストは1キロワット時当たり6セント上昇し、本当のコストは9セントになる。
5〉 新規の石炭火力発電所では同4セント上昇し、13.2セントになる。
6〉 新規の天然ガスによる火力発電所は1.3セント上昇し、総合コストは7.5セントとなる。
7〉 一方、風力や太陽光、原子力はコストが上がらない。これらは、ぜんそくの原因にもならなければ、二酸化炭素も排出しないからだ。
 
と、上掲記事にあるから、「隠れたコストを計算に入れない」特に石炭火力の「1キロワット時当たり3セント」は、我が国の火力・原子力の「1キロワット時当たり約10円」より偉く安いが、「風力8セント、そして太陽光が13.3セント」共々、国情天候風況地勢の差異も影響するのだから、これは仕方が無いのだろう。
 
8〉 100メガワットの発電能力のある風力発電所が生み出す電力量は稼働期間全体で平均34メガワットだ。
 
と言う記述もあるから、「風力発電の稼働率34%」と言う、我が国からすると羨ましい限りの風況(※1)が米国では実現する様だ。
 そうで無くともBig Country米国は、我が国とは比較したくなくなるほど国土も広ければ平地も広大だ。それでも上掲記事「神話その2」解説の通り、風力発電/太陽光発電で「火力発電を代替する」には、設置場所が足りそうにない、そうだ。また、上掲記事「神話その5」解説の通り、シェールガス火力との相互補完が再生可能エネルギーの「良いコンビ」となるものであり、再生可能エネルギーを火力(※2)がバックアップする以上、「再生可能エネルギー100%」と言うのは、あり得ない(※3)。
 上掲WSJ記事は、「太陽光や風力発電は、発電量を制御出来ない」と言う点にあまり重きを置いていないが(※4)、大凡下掲の「私(ZERO)の原発推進論&自然エネルギー推進論」に沿っている…と、思われる。従って、上掲WSJ紙記事を書いたKEITH JOHNSON記者は、「我が同志」と言っても良いのかも知れない。
 いや、随分非難批判の的としてきたWSJ紙の中に、「我が同志」たる記者が居るとはな。
 やるじゃないか、WSJ紙。

 

<注釈>

(※1) 我が国の浮力発電では、稼働率は2割程度である。 
 
(※2)あるいは原子力。特に、風力や太陽光のバックアップは、発電量が制御可能な発電方式でなければ勤まらない。 
 
(※3) 「電力需要を、発電量に強制的に合わせる」と言うような統制経済制でも実施しない限り。 
 
(※4) それでも「太陽光・風力発電量が無駄に捨てられる」可能性を明示している。 
 

私の原発推進論&「自然エネルギー推進論」

① エネルギー政策の目的は、見通せる将来に渡って「電力の安定供給」である。電力を電力需要にあわせた必要充分な電力量を停電させずに安価に安定した電圧で給電する事である。
 
② 現時点においては大容量の電力を蓄電する技術は、無い。精々が揚水式水力発電の上の方のダムに水として蓄える程度である。また、将来的に大容量蓄電技術が確立普及したとしても、蓄電して取り出す電力には必ず損失が付きまとう。
 
③ 大容量蓄電技術が普及するまで、電力は、必要量に応じて発電し送電しなければならない。
 
④ 必要に応じて発電できる、制御可能な発電力は、火力、原子力、大分落ちて水力である。
 
⑤ 「再生可能な自然エネルギー」太陽光、風力、地熱、潮汐力などは、「態と発電しない」ことしか出来ず、原理的に制御不可能な発電力である。これは、発電コストが如何に安くなろうと変わりようが無い。
 
⑥ 従って、大容量の蓄電技術が普及するまで、「再生可能な自然エネルギー」は発電の主役たり得ない。
 
⑦ 少なくとも大容量の蓄電技術が普及するまで、発電の主役は、火力、原子力、大分落ちて水力である。これに付け加えられるとすれば、バイオマス火力発電ぐらいである。この中で原子力は、制御のレスポンスが鈍い恨みはあるモノの、比較的狭い敷地で大きな発電量を二酸化炭素排出なしで発電できる利点を持つ。また発電コストとしても、「福島原発事故に対する補償や対策を加味して漸く火力に負けるかも知れない」程度であり、水力に対しては依然優位である。
 
⑧ 従って、火力と原子力は共に不可欠な発電方であり、水力以外の「再生可能な自然エネルギー」の発電量は、全体の1割程度とすべきであろう。尚且つ我が国では、水力発電の開発が進んでおり、水力発電の劇的増加は望めない。
 
⑨ 以上から当然ながら、我が国に原発は不可欠である。我が国の現時点での脱原発なぞ、愚挙にして暴挙である。
 
⑩ ドイツやベルギーがお気楽に「脱原発」を実施できるのは、電力が足りなければフランスの原発から電力を輸入できるからである。これら西欧諸国の「脱原発」は、「ナンチャッテ脱原発」と呼ばれるべきであろう。