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記事を引用する前に、二つの話をしておくべきだろう。「民意と民主主義の関係」が一つ。「事実と真実の関係」がもう一つ。
「民主主義」が「民意に基づいた政治体制である」とは、少なくとも一面の真実だろう。議員を選挙で選出して議会に送り込む間接民主主義でも、それは変わらない。だが民意とて絶対ではありえないし、無謬でもあり得ない。それは議会・議員でも同じことであるが、議会の議決は「民意に従った」例えば国民投票・住民投票なんかに比べて「責任の所在が明確である」。従って、誤判断・誤決断の責任を取らせてつるし上げるなり銃殺に処するなりも、実施しやすい。無論、「誤判断・誤決断の責任による処断」が重要なのではなく、左様な処断もあり得る緊張感によって「誤判断・誤決断を減らす」のが目的だ。何でもかんでも「民意を問え」「民意に従え」で、民意を絶対視しては、誤判断・誤決断は増えよう。それでは「民主的」ではあるかも知れないが「優れた政治体制」ではないから、あれこれ不利であり、早晩淘汰されてしまうだろう。
「事実」と「真実」は言葉としても似ているし、ほぼ同義である場合も無論あるが、注意すべきは『「事実」の集合体が「真実」とは限らない』という事だ。単純な話「事実」のサンプリングを片寄らせて集めた集合体ならば、「真実」から引き離すのは容易だ。
例えば、「街の声」や「ネットの声」。「こんな声が聞かれました」と紹介するに当たり、サンプリングを片寄らせて意見徴収したり、もっとてっとり早く集めた「声」を恣意的に取捨選択すれば、「街の声/ネットの声」を賛成論とも否定論とも賛否両論とも紹介出来よう。しかも、その賛成論/反対論/賛否両論は、どれも「事実の集合体」には違いない。
以上を踏まえた上で、以下の記事を御一読頂きたい。
真の敵は中国にあらず 国防弄ぶ「民意」を追う
2013.8.15 18:00[防衛オフレコ放談]
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130815/plc13081518000039-n1.htm
下地島空港でタッチ・アンド・ゴーの訓練を行う全日空機=8月9日、沖縄県宮古島市
陸上自衛隊「沿岸監視部隊」の配備が争点となった沖縄県与那国町長選で、部隊を誘致した現職の外間守吉氏が3選を果たした。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺など東シナ海で示威行動を拡大する中国をにらみ部隊配備は不可欠だが、配備に反対する相手候補との票差はわずか47票。国防という国政の最重要課題の成否が自治体の選挙で左右されかねなかったが、こうした脆(もろ)さは与那国だけの事例ではない。この1カ月、沖縄で体感した「民意」のありようをリポートする。
■北部訓練場
「自分の目で見て、本当の住民の声をよく聞いてきてください」
7月9日、防衛省幹部に念押しされ、沖縄本島北部の東村に向かった。海兵隊のジャングル訓練で知られる米軍「北部訓練場」に近い高江という集落では、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設をめぐり工事車両の通行を阻む激しい妨害行為が続いている。
生まれも育ちも高江の50歳代の男性がインタビューに応じてくれた。
「過激な妨害活動をしている住民は、ごく一握りにすぎません」
高江には50世帯ほどが居住しているが、過激な妨害活動を行っているのは3世帯だけだという。ところが工事が始まると50人ほどが集まってくる。
「本島中南部や県外から来ているんです」
反対運動の現場に行ってみた。訓練場の外周にバリケードや車両が置かれ、工事車両の出入り口が封鎖されていた。
監視するようにイスに座っていた男性に「どちらからですか」と聞いた。
「わし? 大阪やけど」
この人には、ほかに帰るべき家がある。
住民男性の言葉を思い出しながら現場を後にした。
「抑止力のために犠牲になろうという考えはありませんが、米軍がこの訓練場を手放すはずがない。生まれ育ったこの土地で生きていくためには、安全対策や防音について国と現実的な話し合いをしていくしかないんです」
■与那国島
8月5日、町長選の告示を翌日に控えた与那国町に入った。ここでは現職の外間氏の3選に向け、周到な策をめぐらせていた男性に会った。
与那国島を回ると、陸自誘致に反対するノボリを目にする。男性は、反対運動をあおるために島外居住者がやってきてはノボリを立てているとみる。
「島民のうち本音で自衛隊アレルギーが強いのは5%ぐらいじゃないかな」
つまり島外居住者がエスカレートさせる反対運動に引きずられている島民が少なくないとの見立てだ。
町長選で警戒したのも島外居住者の動向だった。投開票日の3カ月前までに住民票を移せば投票できるため、反対派が大挙して与那国町に住民票を移しかねないからだ。
それを封じるため、陸自誘致派の「内紛劇」を演出した。
外間氏が3月、陸自配備に伴う「迷惑料」として10億円を防衛省に要求したのがきっかけだった。この法外な要求が誘致派の住民に不信感を抱かせたのは事実で、誘致派内で外間氏とは別の候補を擁立する動きも取り沙汰された。男性はこれを逆手にとり、反対派の油断を誘った。
「誘致派が分裂すれば票が割れ、住民票を移転させなくても勝てると反対派は楽観するはずだ」
内紛劇を続け、外間氏の一本化を決めたのは告示まで約1カ月という7月4日。島外居住者は住民票を移す時期を逸していた。
取材の合間に寄った飲食店で出会った女性は、ある体験談をしてくれた。
昨年4月、与那国町と姉妹都市を締結している台湾・花蓮市の交流団73人が、水上バイク35台で洋上150キロを渡り与那国に到着した。
女性は波しぶきをあげながら次々と浜に近づいてくる水上バイクを高台から見物しているうち、背筋が凍る思いがしたという。
「中国軍が同じように押し寄せてきたら、あっという間に占領されちゃう」
いま与那国島を守っているのは、2人の警察官と彼らの携行する拳銃2丁だけだという現実を知るからこそ、交流事業さえ恐怖体験に変わってしまうのだ。
■下地島空港
8月9日、与那国町長選の取材を終え、宮古島(宮古島市)に移動した。宮古空港から一路、平良港に向かい伊良部島行きのフェリーに乗った。伊良部島に隣接する下地島の「下地島空港」を見るためだ。
「素晴らしい滑走路だった。あそこを使えるようになれば…」
10年近く前、下地島空港の視察から帰ってきたばかりの航空自衛隊幹部の言葉と表情を今もよく覚えている。軍事専門家がそこまで惚(ほ)れ込む施設を自分の目で確かめたかった。
南西方面の防空拠点は空自那覇基地。ただ、昨年12月に中国機が尖閣周辺で領空侵犯をした際、那覇基地から緊急発進したF15戦闘機が到着したときには中国機は領空を出ていた。
下地島空港は那覇基地よりも尖閣に近く、3千メートルの滑走路も備えている。
下地島空港はANA(全日空)などのパイロット訓練に使われているが、かねて東シナ海での航空優勢を確保する上で自衛隊にとって欠かせない空港だと指摘されていた。
しかし、自衛隊の使用に道は開けていない。地元では空港に自衛隊を誘致する動きもあったが、頓挫した経緯がある。
空港わきに着き、タッチ・アンド・ゴーを間近に見物できるポイントでカメラを構えていると、40歳代の男性に声をかけられた。
聞けば、伊良部島出身で帰省中だという。
「JAL(日本航空)は訓練から撤退したし、そのうちANAだって撤退するかもしれない。自衛隊を誘致しなければ、空港機能は維持できないかも」
男性は問わず語りで続けた。
「でも自衛隊を誘致すれば、ダイビングポイントという貴重な観光資源を失うことになるかもね」
まるで複雑な住民感情を両面から説明してくれたようだった。
一連の取材で自衛隊や米軍に対する強いアレルギーを口にする住民もいた。さまざまな立場の声をまんべんなく拾えたわけではないし、沖縄の基地負担とそれに重きを置いた主張を軽視するつもりもない。
与那国町の外間氏が要求した「迷惑料」に象徴されるように、基地問題には振興策も絡み合う。そこへ中国の攻勢に伴い抑止力という要素の比重が高まり、住民の判断材料は複雑さを増している。
本当の「民意」はどこにあるのか-。それをつかむための取材もますます難しくなっているが、声高にスローガンを叫ぶ人たちに注意すべきことは身を持って確信した。(半沢尚久)
民主主義は、ある意味「国民皆兵制」だ
さて、如何だろうか。
産経の記事である。しかも「基地反対論では無い沖縄基地問題」を(※1)扱っているから、人によっては毛嫌いする様な記事かも知れない。事実、上掲記事に幾人か登場する沖縄県民は、尽く「米軍沖縄基地容認派」…と断定すると語弊がありそうだが、少なくとも「米軍沖縄基地反対派」ではない。「米軍沖縄基地反対派」と断定できる者は一人だけ登場するが、
1〉 「どちらからですか」と聞いた。
2〉 「わし? 大阪やけど」
と言うのだから、半ばギャグだ。
何れにせよ昨年の「県民大会(※2)参加者10万人」を呼号し、何かにつけて米軍基地反対運動を取り上げ盛り上げる沖縄二紙や、その親分たる朝日・毎日(※3)報道との違いは、明白であろう。
ここで冒頭に話した二つの事の内、後者を想起されたい。「事実」も取り扱い方で「真実」ならざる事が有る事を。例えば上掲産経記事の集め/紹介した「事実」に偏りがあれば、「真実」には遠かろう。
但し、
3〉 一連の取材で自衛隊や米軍に対する強いアレルギーを口にする住民もいた。
4〉さまざまな立場の声をまんべんなく拾えたわけではないし、
5〉沖縄の基地負担とそれに重きを置いた主張を軽視するつもりもない。
として、「事実の偏り」が「あり得る」と認めている事は評価すべきだろう。
一方で、兵力の配置は安全保障上の要求から決まるのが常道である。何しろ安全保障上の失敗は、敗戦亡国に直結しているから、先ず譲れない。
而して上掲記事の通り「一地方の民意が兵力配置に影響する」ならば、その「地方の民意」が、少なくとも一面、国家安全保障上の観点から「兵力配置を考える」事が期待される。章題にした通り。
であるならば・・・
上掲記事タイトルにもある通り、「真の敵は中国にあらず」と言うのは正しい。真の敵は、国民の平和ボケであり、衆愚化である。
以前にも書いた通り、衆愚化こそが民主主義最大の敵にして、宿敵。而して、それを宿痾としない事こそが、民主主義の宿願である(※4)。
<注釈>
(※1) ある意味、産経らしく(※2) 何度か記事にも取り上げている通り、「オスプレイは危険だから、沖縄配備だけ反対」と言う非人道的なまでに利己的な主張を明文化し、公言した「歴史的」県民大会。(※3) ああ、「新聞が義務として言わねばならない事」の一つに「オスプレイ反対」を挙げる東京新聞も忘れてはいけないな。尤も、残りの二つが「脱原発」と「消費税値上げ反対」である事を思い出すたびに、私(ZERO)なんざぁ力が抜けるんだが。「義務として言わねばならない事」繋がりとは言え、節操無さ過ぎだろう。(※4) 最後の一つは今回追加、だな。「宿」つながりで。