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以下に掲載するのは、東京新聞コラム「筆洗」である。先に言って置くが、下掲コラムが扱うのは「脱原発」でも「オスプレイ日本配備だけ反対」でも「消費税値上げ反対」でもないから、弊ブログで散々槍玉に挙げている「原理主義ぶり」は見られない。一見したところは、だが。
当該コラムを読む前に、弊ブログでも紹介している「ハチはなぜ大量死したのか」を御一読されることを、お勧めする。
【東京新聞コラム】筆洗
2013年8月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013082102000115.html
うちわであおぎ、打ち水をまいて…。ミツバチも、そうやって猛暑をしのいでいるらしい
▼『ミツバチの世界』(タウツ著、丸善)などによると、気温が三五度あたりを超えると、卵やサナギを守るため、働き蜂は水を巣の中にまいて羽であおぎ、温度を下げる。実験では巣の表面が七〇度になっても、巣の中は三五度に保たれるというから、すごい性能のエアコンだ
▼この「働き蜂エアコン」は、暖房も可能だ。羽を動かすために使う強力な筋肉をただ震わせて、熱を発することができる。ちょうど、車のエンジンを空吹かしするようなものだ
▼さらに驚くべきことに、ニホンミツバチは、この発熱の技を天敵のオオスズメバチ退治にも使うという。スズメバチが巣に侵入してくると、数百匹の働き蜂が一斉に殺到し、天敵を包み込む球になる
▼球の中の温度は四六、七度。ミツバチは約四九度まで耐えられるが、スズメバチは約四五度で昇天。玉川大学の小野正人教授らが発見した蒸し殺しの技「熱殺蜂球形成」である
▼そんな高度な生き残りの術を持つミツバチも、最近は謎の大量死に見舞われている。犯人と疑われるネオニコチノイド系農薬が、市販の蜂蜜からも検出されたという。人間には害のないレベルというが、問題はミツバチの健康。ミツバチが暮らせないような世界では、人間も生きてはいけないだろう。
このコラムだけからは、多分、判らない
さて、如何だろうか。
先述の通り、一読した処は「原理主義ぶり」は無く、すんなり読めてしまうし、納得してしまいそうなコラム。それだけ「説得力のあるコラム」という事が出来るだろう。
冒頭で一読をお勧めした「ハチはなぜ大量死したのか」にも書かれているニホンミツバチのスズメバチ撃退法「熱殺蜂球形成」には、私も感心した。そんな戦術が人類に発見されたのがつい最近であると言う事実にも、だが(※1)。
上掲コラム最後のパラグラフにある「謎の大量死」と言うのは、正しく「ハチはなぜ大量死したのか」の主たる題材であり、CCD・蜂群崩壊症候群と呼ばれる養蜂界の大問題である。
だが、この著作では、CCD・蜂群崩壊症候群の原因を特定するに至っていない。上掲コラムにある「犯人と疑われるネオニコチノイド系農薬」が、「犯人と疑われ」、実際に規制した国もあるが、「犯人と断定」されてはいない。
さらなる問題は、「ハチはなぜ大量死したのか」によれば、ニホンミツバチにはCCD・蜂群崩壊症候群を発症した事例が、無い事である。ロシアのセイヨウミツバチ共々、CCD・蜂群崩壊症候群に対する切り札、生物多様性確保(※2)の手段として紹介されている。
一方で同じく「ハチはなぜ大量死したのか」によれば、「熱殺蜂球形成」はニホンミツバチ独特の戦術であり、上掲コラムも「熱殺蜂球形成」は「ニホンミツバチ」としっかり特定・限定している。
なるほど、上掲コラム最後のパラグラフ、CCD・蜂群崩壊症候群を紹介し、人類の未来と結びつける部分では、「そんな高度な生き残りの術を持つミツバチ」と記述しており、「ニホンミツバチがCCD・蜂群崩壊症候群を発症している」とは、言って居ない。先述の「犯人と疑われるネオニコチノイド系農薬」と同様に、「嘘は吐いていない」訳だ。
1〉 人間には害のないレベルというが、問題はミツバチの健康。
2〉ミツバチが暮らせないような世界では、人間も生きてはいけないだろう。
などと、したり顔の「生命礼賛」で上掲コラムは〆られているが、「ミツバチ」と「ニホンミツバチ」の表記を切り替えつつ、両者の事象を混同させようと言う意図=悪意が見えてしまうのは、私(ZERO)の邪推であろうか。
ああ、無論、上掲コラムを書いた東京新聞記者自身が、単に「ニホンミツバチにはCCD・蜂群崩壊症候群を発症した事例が無い」事を知らなかった、だけかも知れないが(※3)。
<注釈>
(※1) それは、ニホンミツバチのスズメバチ撃退戦術が進化発展した…って可能性は低いから、多分、「人類がつい最近まで、そんな戦術をニホンミツバチがとっている事を知らなかった」という事。
(※2) 結局のところそれが、自然界の持つ自己修復力や冗長性・抗堪性を高めるものとして。
(※3) 或いは、「ハチはなぜ大量死したのか」発刊後に「ニホンミツバチにCCD・蜂群崩壊症候群を発症する」事例が起き、それを私(ZERO)が知らないだけ、かも知れない。