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それだけ自信があれば、何も騒ぐことはあるまいに
さて、如何だろうか。
最初に断わっておくべきだろう。と言うよりちゃんと読めば明らかだろうが、上掲記事①は中国共産党政権のチベット人強制移住を報じるAFP通信報道。中国共産党政権の公式統計から、2006年から6年間に200万人のチベット人が強制移住させられ、「その影響から伝統文化や生活様式が著しく失われている」と言う国際人権団体の報告。これに対し上掲記事②は新疆維吾爾(ウイグル)自治区で起きた事件を「暴力テロ事件」と定義し、「テロ」と「テロ支援」及び「テロ美化」を非難する人民日報海外版コラム。従って、上掲①は中国共産党政権のチベット人支配の非人道性を訴えるのに対し、上掲②は中国共産党政権のウイグル人支配の正当性を強弁している。従って、上掲①と上掲②の共通点は「中国共産党政権の少数民族統治法」ではあるが、上掲①の「チベット人に対する非人道的支配」が上掲②が非難する「ウイグル人(※1)の『暴力テロ事件』」に直接結びついている訳ではない。
だが、ある民族が「6年間に200万人」と言う凄まじい速さで強制移住させられ、「その影響から伝統文化や生活様式が著しく失われている」状態に置かれたとしたら、少なくとも何らかの抵抗・摩擦は生じるのが当然だし、それが暴動に発展するのも中国共産党政権下ならば容易な事だろう。言い換えれば、上掲①報道が正しいのならば、ウイグル人ではなくチベット人が、中国共産党政権言うところの「暴力テロ事件」を惹起する公算大、という事である。幸か不幸か(※2)チベット人の抵抗は「暴力テロ事件」と言う形を取らず「抗議の焼身自殺」と言う形をとっているのだろう…今のところは。
一方、上掲②記事の取り上げる「(ウイグル人)暴力テロ事件」に対し、中国共産党は、(1)非人道性を非難 (2)背後の黒幕(一部は外国勢力)を非難 (3)「ウイグル人テロ」を「中国民主運動の始まり」と美化する米国を非難 (4)新疆ウイグル自治区のGDP発展を根拠に統治正当性の強調 しているが、要は上記(4)「統治正当性」=「新疆ウイグル併呑の言い訳」を主張したいのであろう。
とは言え、「革命は銃口から」とは毛語録にもある処。「暴力テロ事件」と「革命」ないし「民主運動の始まり」を画するモノは何か、と考えれば、「現政権の革命性」もしくは「現政権の民主性」であり、詰まる所は「現政権の統治正当性」の一言に集約出来そうである。それこそ正しく上記(4)で人民日報コラムが強調する処である。同時に「現政権の統治正当性」さえ十分であれば、それに対する反抗が「暴力テロ事件」に至らずとも、上記(1)のように非人道的ではなく上記(2)のように黒幕が居らず上記(3)米国が賞賛せずとも、「国内」統治としても「対外」宣伝としても、まず問題無い筈である。「米国の悪意ある宣伝」は、気に障るかも知れないが、「気に障る」と言うだけ、の筈だ。
然るに、上記人民日報コラムは、上記(1)非人道性と上記(2)黒幕の存在を以って「ウイグル人暴力テロ事件」を糾弾し、上記(3)それを擁護する米国まで「人類の敵」と言わんばかりに非難している。控えめに言って「ウイグル人暴力テロ事件とその擁護者をを声高に強く非難」しながら、「新疆ウイグル自治区統治正当性」を「GDPの向上」でしか訴えていない。無論、GDPの向上も重要ではあろうが、「GDPを向上させさえすれば、反乱も暴動も起きるはずがない。
それで起きる反乱・暴動は黒幕扇動による暴力テロ事件だ。」では、如何に唯物論者だとて、人間理解が浅薄に過ぎよう(※3)。「人はパンのみにて生きるに非ず」とは、聖書にも在ろうが。
逆に言えば、外国だかどこかに黒幕が居て、米国が「民主運動の始まり」と擁護するぐらいで「非人道的な暴力テロ事件」が頻発するようならば、それだけ「中国共産党政権の新疆ウイグル自治区統治正当性が揺らいでいる」という事。
事実、上掲コラムの〆は、
1〉 暴力テロ犯罪事件は新疆の改革、建設、発展の歩みを阻むことはできず、
2〉 発展促進と安定維持への各族幹部・大衆の揺るぎない決意と自信を揺るがすことはできない。
3〉 テロ暴力襲撃事件によって新疆を混乱させ、中国を混乱させようとするいかなる陰謀も思い通りになることはない。
であるが、上掲コラムの中に
4〉 悪辣な性質、残忍な手段の事件であり、新疆各族人民大衆の生命と財産の安全および新疆社会の安定が深刻に損なわれた。
とあり、上記2〉と上記4〉の間に相当な乖離(※4)が生じている。
即ち、上掲人民日報コラムから、その〆部分上記1〉~3〉は相当な大言壮語=法螺であり、「中国共産党政権の新疆ウイグル自治区統治正当性が揺らいでいる」が示されている。
如何に、中国共産党。
<注釈>
(※1) とは、上掲②記事には表記されていないが。(※2) おそらくは、中国共産党政権にとってはこの上ない位幸運なことに、(※3) そりゃ「唯物論」なのだから、人間的要素は軽視ないし排斥されてしまうのだろうが。(※4) 「矛盾」と断言できるほどではないが