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この内容で、このタイトルとは、恐れ入るしかないな


 さて、如何だろうか。

 何度か書いたところであるが、虚偽ではない事実だけを並べても、事実を取捨選択することで誤った印象を与える事は出来る。場合によっては「事実を重ねて嘘を吐く」事だって、可能だ。上掲記事のタイトル米専門家「小さいが発がんリスクある」』は、正にその見本、と私(ZERO)は見たが、如何だろうか。

 上掲記事冒頭にある通り、

1> 「原発事故による放射線被ばくは、健康にいかなる差し迫った影響も及ぼさなかった。
2> 将来も、被ばくが原因で、一般の人々や大半の(原発)労働者に健康面への影響が及ぶと認められる可能性は低い」
3>  5月31日、国連科学委員会は、オーストリアの首都ウイーンで記者会見を開き、
4> 東京電力の福島第1原子力発電所での原発事故による健康への影響について、こう結論づけた。

と言う事を受けての「低線量被ばくに詳しい、コロンビア大学医学大学院のデービッド・ブレナー教授(同大学放射線医学研究センター所長)」に対するインタビューが上掲記事である。だが、そのタイトルは、「米専門家「小さいが発がんリスクある」―影響なしとの国連原発調査受け 」とあり、「国連原発調査」の「影響なし」と「米専門家」の「小さいが発がんリスクある」を、明らかに対比したタイトルである。「なし」と「ある」が対比されているのだから、このタイトルだけからすると「米専門家は、国連原発調査結果を否定している」との印象を受けないだろうか?

 「そんな印象は受けない」と言う方は幸いだ。何故ならば、そのタイトルに続く上掲記事の末尾でデービッド・ブレナー教授は、

5> 低線量による個人の発がんリスクの上昇が非常に小さいことを考えると、報告書案の要旨は、科学的に見て妥当だと思う。

と結論付けており、当該国連原発調査結果を、(前段があるので全面的とは言えないまでも)肯定しているのだから。

 私(ZERO)は、その浅学非才ゆえか、はたまたタイトルにもした「偏見/公式」=「WSJ+日本人女性記者=ダメ故か、上掲記事タイトルを 「米専門家は、国連原発調査結果を否定している」と解釈してしまった。「さて、その米専門家とやらは、何を言い出しているのか?」と上掲記事を読みはじめ、デービッド・ブレナー教授の如何にも科学者らしい冷静かつ秩序立てた回答に「あれ、なんか違うぞ??」と思っている内に、ラストの上記5〉で「どんでん返し」を喰らった形。その意味では肥田美佐子のつけた「誤解を招きかねないタイトル」に、ものの見事にひっかけられた、と言えよう。

 だが、逆に、上掲記事デービッド・ブレナー教授の発言から上掲記事タイトル『米専門家「小さいが発がんリスクある」』につながるブレナー教授の発言を上掲記事から拾うと、【A6】内の、

6〉 繰り返すが、低線量被ばくのリスクは、はっきり解明されておらず、影響を測るのは難しい。
7〉だが、リスクがないわけではない。今回の発表は、その点で、やや紛らわしいという感は否めない。

と言う、上記5〉と「そうは言っても」と言う逆説でつながる前段部分しか、直接的には、無い。

 上記6〉に「繰り返すが」とあるので、遡ると、【A1】の、

8〉  がんになる可能性など、福島の原発事故による影響が検出されにくい点については同意見だが、
9〉 だからと言ってリスクがないわけではない。

に「漸く」行き当たる。が、上記9〉に続いてブレナー教授は、

10〉そもそも、人間ががんになるリスクは約40%ある。
11〉だから、被ばくで少しそのリスクが高まっても、放射線の影響だと検知するのは至難の業、ということだ。

と明言している。即ち上記9〉で言う「無いわけではないリスク」上記11〉「あったとしても計測できるかどうかも危ういほど小さい」と断言している。その事は、上記6〉でも「繰り返し」述べられている。

 で、このインタビュー結果を以って、記事タイトルを米専門家「小さいが発がんリスクある」―影響なしとの国連原発調査受けとしてしまえる処に、私(ZERO)は、「肥田美佐子の文才」よりも「福島原発事故に対する悪意」を感じてしまうのだが、如何なものだろうか。

 上掲記事インタビューにて肥田美佐子記者が発する質問の内、【Q2】【Q3】【Q5】【Q6】には、やはり「福島原発事故に対する悪意」が感じられる。「あわよくば、”米専門家”に国連調査結果を否定させ、”専門家には異論もある=福島原発事故の影響は深刻だぁぁぁぁ!”とぶち上げてやろう」と言う”悪意”が。

 だが、流石は「低線量被ばくに詳しい」デービッド・ブレナー教授。肥田美佐子記者の「悪意ある(とZEROには感じられる)」質問に、真摯に冷静に回答し、以って「その悪意を尽く粉砕している( と、ZEROには思われる )」。いや、実に、美事なものだ。これぞ曲学阿世の徒ならぬ、真の学者の姿であろう。

 さて、ブレナー教授の真の学者ぶりは、恐らく異論は殆ど無い処だろうが、上記「肥田美佐子記者の福島原発事故に対する悪意」は、私(ZERO)の推定・推論でしかない。
 だが、左様な「悪意」・予断を以って報道記事を書く記者があるならば、その記者は「ジャーナリスト失格」であり、その報道記事は「駄目記事」と糾弾されて然る可きだろう。

 であるならば…上記「ZEROの推定・推論」が正しければ、上掲WSJ紙記事は、「WSJ+日本人女性記者=ダメ」と言うタイトルにも引用した「公式/偏見」を強化する「新たな事例」とせざるをえまい。

 如何に、Wall Street Journal紙。

 如何に、肥田美佐子記者。