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 正直な処、私(Zero)は経済には「疎い方」と言わねばならない。一般的には軍事・外交・戦史なんてジャンルよりも内政・経済の方が身近な話題でもあるし、「実生活に直結」している人も多かろうから、関心の高い人が多そうであるが、私(Zero)は軍事・外交・戦史ジャンルの方が大好きで、自ずと内政・経済分野は「疎い方」となる。それは、当ブログの取り扱う「記事の偏り」にも、現れていよう。

 そうは言っても、現代日本に暮らす日本人の一人として、「経済的常識」ないし「必要最低限の経済知識」は心得ているつもり、なのだが、以下に掲載する週刊ポストの経済記事は、正直サッパリ判らない。単刀直入に「解説を乞う!」と本記事タイトルにしたのは、その為だ。正真正銘掛け値なし、読者諸兄の御指導鞭撻をお願いしたいのである。

【週刊ポスト】安倍政権 高い支持率維持のため「国民のカネ」に手をつけた
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130618-00000019-pseven-soci
NEWS ポストセブン 6月18日(火)16時6分配信

 参院選を前に「第2の株価大暴落」が起きれば、安倍政権の高い支持率も国民の期待も一気に弾ける。それを恐れた政府は、株価急落を食い止めるため、「国民のカネ」に手をつけた。株価が大暴落を続けていた6月7日、厚労省傘下の「年金積立金管理運用独立行政法人」が突然、株の買い増しを決めたのだ。

この組織はサラリーマンの厚生年金と自営業者の国民年金の積立金約120兆円を運用する「世界最大の年金ファンド」で、運用先は国債など国内債券が67%、国内株式11%、外国株式9%などと定められている。政府はその資産運用配分を見直し、国内債券の割合を60%に引き下げ、かわりに国内株式を12%に引き上げた。わずか1%でも金額にすれば1兆円を超える。

世界最大のファンドは市場を大きく動かした。この方針が伝わると300円近く下がっていた株価は一気に戻した。「株価PKO」と呼ばれる政府による事実上の市場介入だった。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏の指摘は厳しい。

「国民から預かっている公的年金の運用は手堅くすべきで、専門家の間にはリスクある株式での運用そのものに批判が強い。百歩譲って株を買うにしても、せめて株価が上昇を始めた今年1~2月までに決めるべきでした。それなのにわざわざ株価急落の真っ最中に買い増しを決めたのは、国民の財産を政権維持のために使っているも同然です。株価がさらに暴落したら、国民の年金資金を失うことになる。その責任を一体、誰が取るのか」


※週刊ポスト2013年6月28日号

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底値で株を買ったら、株高に転じた。それで、何の問題が?

 さて、如何だろうか。

 上掲記事から時事関係と経緯を拾うと、以下の様になろう。

(1) 6月7日、厚労省傘下の「年金積立金管理運用独立行政法人」が突然、株の買い増しを決めた

(2) 同法人は、厚生年金と国民年金の積立金約120兆円を運用する「世界最大の年金ファンド」である。

(3) 同法人の運用先は、国債など国内債券が67%、国内株式11%、外国株式9%などと定められている。

(4) 政府は、同法人の国内債券の割合を60%に引き下げ、かわりに国内株式を12%に引き上げた。

(5) この方針が伝わると300円近く下がっていた株価は一気に戻した。

 以上の事実関係には、多分、嘘はないのだろう(※1)。この事象に対し、当該週刊ポスト記事は、そのタイトルにもした通り”国民の金”に手を付けたと、相当強い調子で批難し、「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏とやらに、以下の様に「代弁」させている。

1〉  「国民から預かっている公的年金の運用は手堅くすべきで、
2〉 専門家の間にはリスクある株式での運用そのものに批判が強い。
3〉 百歩譲って株を買うにしても、せめて株価が上昇を始めた今年1~2月までに決めるべきでした。
4〉  それなのにわざわざ株価急落の真っ最中に買い増しを決めたのは、
5〉 国民の財産を政権維持のために使っているも同然です。
6〉 株価がさらに暴落したら、国民の年金資金を失うことになる。その責任を一体、誰が取るのか」

 上掲記事タイトルにも「「国民のカネ」に手を付けたとあり、上記5〉「国民の財産を政権維持のために使っているも同然とあり、安倍政権批判である事だけはハッキリわかるのだが、その批判根拠となると、皆目と言って良いぐらい、判らない。

 私(Zero)は先述の通り「経済には疎い方」であり、「年金積立金管理運用独立行政法人」なんて組織が有る事も、それが「世界最大の年金ファンド」である事も、上掲記事で初めて知ったぐらいであるが、同組織の運用比率を上記(4)の様に「変更出来てしまえた」と言う事は、「政府同組織の運用比率を変更できる権限がある/元々あった」としか、解釈のしようがない。今回新たな法律でも作って「同組織の運用比率を変更する権限が政府に与えられた」のならば、「国民のカネに手を付けた」なんて表現もあり得ようが、「元々有していた権限を行使した」だけならば、「政府にはハナから「国民のカネ」に手を付ける権限があった」と言う事ではないのかね?「遂に」もへったくれも無かろうが。それとも、かの「集団的自衛権」の如く、「年金積立金管理運用独立行政法人の運用比率変更権限を、政府は有してはいるが、行使すべきではない」と言う考えなのかね??

 週刊ポストの主張を代弁している( としか思われない )北村庄吾氏とやらの主張上記1〉~6〉も判らない。上記1〉~2〉の批判からすると、そもそも「国内株式11%、外国株式9%」としていた今回変更前の運用比率からして批難の対象の筈だ。「株式の比率を増やしたことが問題だ!」と言う主張と解釈しても、上記3〉~4〉百歩譲って株を買うにしても以降の主張が全然わからない。何故株を「株価の上がり初めに買うべき」且つ「株価暴落の真っ最中に買い増すべきではないのか(※2)。そりゃ「株価暴落の真っ最中に買い増す」人・組織は少ないだろうが、「底値で買って、高値で売る」のが株式運用の基本ではないのかね。そうであれば、「株価暴落の真っ最中に買い増す」事は、やって当然。やらねば不思議。ファンドの影響力が大きくて、「株を買い増す」だけで「「株価PKO」と呼ばれる政府による事実上の市場介入」であろうが何だろうが「株価が上昇に転じる」見込み/期待があれば、なおさらだ。「「株価PKO」と呼ばれる政府による事実上の市場介入」に対しては、為すべきか為さざるべきか議論の余地はあろうが、「株で儲ける」事が「株を運用する事」であると割り切れば、上記3〉~4〉の批難は、「意味不明」としか言いようがない解釈しようがない。何か、私の認識に根源的な欠陥でもあるのではないかと、不安になってくるぐらいだ。

 上記5〉「国民の財産を政権維持のために使っているも同然と言うのも、何を非難しているんだか。「株価を上げる」のは政府の目的ではないだろうが、「景気を良くする」のは長い事デフレ状態にあり続けた日本の政府が為すべき事であり、株その指標の一つだろう。実際上記(5)で週刊ポスト自身が認める通り株価は持ち直し、その後も乱高下が続くものの、「株下落に転じた」様子はない。さあればこその「政権維持効果」であろうが、「株下落に転じ」てはいないのだから、底値で買った株は「含み益」。上掲週刊ポスト記事が批難してやまない安部政権は、「国民のカネを増やした」と言う事だろう。それが「政権維持効果」につながるのは、理の当然ではあるが、「政権維持」を目的とせずとも、株価下落とそれに伴いかねない景気の腰折れを防ぐのは、正に、政府の仕事ではないのか?

 以上の訳の判らない、「安倍政権を非難している」としか判らない批難に比べれば、上記6〉「株価がさらに暴落したら、国民の年金資金を失うことになる。」と言う非難は、未だ理が有る、理屈が通る。だがそれは、「株価がさらに暴落したら」と言う仮定条件が付く。

 以上の如く、経済に疎い私(Zero)からすると、当該週刊ポスト記事は、要約すると、今後、株価がさらに暴落したら、国民の年金資金を失うことになるのに、年金積立金管理運用独立行政法人の運用比率で国内株を11%から12%に引き上げるとは何事か!」と安倍・自民党政権を非難している事になる、としか解釈できない。

 上記(5)「この方針が伝わると300円近く下がっていた株価は一気に戻した。」と、少なくとも一時的に「株価暴落が止まった」と言う事実を上掲記事に記載しつつ、だ。「「株価PKO」と呼ばれる政府による事実上の市場介入」が、奏功した事を報じつつ、だ。まるで、安倍政権が効果的な経済政策を取ってはいけないかの如くも読める。また、「今後、株価がさらに暴落する」と言うのは、自明の理か既定の事実、なのだろうか。「今後も株価の動きは予断を許さない」ぐらいの一文すらも、省略できてしまえるほどに。

 それとも…「高い支持率維持の為」と言う安倍政権の「意図」が問題なのだろうか。ソリャ安部政権だって歴代政権同様に「高い支持率」は欲しいだろうけれど、週刊ポストがこの経済政策に込められた「安倍政権の意図」=「高い支持率維持」を、断言できるのは何故かね。週刊ポスト記者の中には、テレパスでも居るのか、或いは北村庄吾氏の「断言」をそのまま鵜呑みにしたのか?

 テレパスならばまだ良かろうが、鵜呑みは、ジャーナリストとして、どうなんだい。
無論、週刊ポストに「ジャーナリズム」があり、週刊ポスト記者に「ジャーナリストと言う自覚」があれば、の話だが。


<注釈>

(※1) 国内債券:67% ⇒60%(-7%) 国内株式:11% ⇒ 12%(+1%) だから、単純に言って「6%」は何処へ行ったのか、外国株式に廻ったのか、この記事からは、判然としないが。 

(※2) ああ、一つだけ解釈があった。「株価の上がり初め」の株価が、「株価暴落の真っ最中」の株価より「安かった」と言う事。此れならば、今回の株買い増しの効果は「株価維持」が主で、「株運用による利益」は余り期待できない、と言えよう。
 だがそれは、「株価の高値維持に成功した」と言う事。「経済政策としては大成功」と言う事ではないのか??