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 一説によると「女が政治に関わるとロクな事にならない」と言うのは、儒教の根幹を成す思想なんだそうだ。(※1)「傾国の美女」なんて言葉に端的に表れ、唐時代の楊貴妃や、神話時代(※2)の女禍に至るまで、「女が政治に関わった/女が政治に影響した」為に国・政治体制が衰退し、さらには滅ぶ話が古代支那にはたんとある。近代に至っても清帝国は西太后と言う典型的事例があるから、「女が政治に関わるとロクな事にならない」と言う思想ないしジンクスは、殆ど「大陸伝統の思想」であるらしい。
 無論、「女性は男性の肋骨から作られた」なんて創世伝説を持つキリスト教を基盤とするとは言え、欧米諸国にはそれほどの「女性差別」は無く、先ごろ亡くなったイギリスはサッチャー首相がフォークランド紛争初期段階に「この内閣には、男は唯一人(サッチャー首相自身)しか居ない!」言い放ったと言う伝説(※3)があるぐらい。故に、少なくとも現代欧米諸国では、「女が政治に関わるとロクな事にならない」と断言・公言する者は少ないのだろう。

 再三繰り返す通り、私は逆立ちしてもキリスト教徒ではなく、欧米諸国人ではもっと無いが、「女が政治に関わるとロクな事にならない」とは全く思わない。

 それ故に、ドイツの女性首相「メルケルの闘い」は、「女性首相の闘い」ではなく、「ドイツ首相の闘い」ひいては「ドイツ人の闘い」であろうと断じる。

 ならばこそ、「メルケルの愚挙・愚行」は「ドイツ人の愚挙・愚行」であろうとも、断言する。

 無論、一国の首相が為す愚挙・愚行を、修正出来る事が、民主主義の偉大な利点である事も、承知しつつ、だ。


<注釈>


(※1) 確か、渡辺昇一の文書だった・・・かなぁ。

(※2) 封神演義 

(※3) ないし冗句 



メルケルの闘い:/1 「フクシマから学んだ」 脱原発派に急変 合理的発想で「解」導く  http://mainichi.jp/select/news/20130514ddm007030038000c.html
毎日新聞 2013年05月14日 東京朝刊


ドイツ原発の現状
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2011年3月11日、ブリュッセルで欧州理事会に出席していたドイツのアンゲラ・メルケル首相(58)の携帯電話に1本のSMS(ショートメッセージサービス)が入った。ベルリンの首相府からだ。「日本で大地震発生」。関係者によると、首相はその後、周囲が声をかけても気付かないほど夢中でインターネットにかじりつき、情報を集め続けた。

翌12日、福島第1原発1号機の水素爆発を受け、原発維持派だった首相はあわてた。夕方、急きょ政権幹部を首相府に集めて対応を協議したが、ここでウェスターウェレ外相は明確に「性急な反応は必要ない」と原発停止案に反対。迷う首相はその後、電力業界トップにも電話して意見を聞いたが、業界側は回答を避けた。与党筋によると、その後は今後の選挙への影響を気にする閣僚から「原発を止めないと、ツナミが今度はわが与党を襲う」などと感情的な発言も相次いだという。

15日、首相は決断する。「国内17基のうち老朽原発7基を停止」。独誌シュピーゲルはこの決定を「考え抜かれた計画のように見えて、実はひどくあわてた構想だった」と評した。6月には、22年までの全原発停止が連邦議会で承認された。

ドイツの脱原発は福島事故以前から決まっており、02年にはシュレーダー前政権が「20年ごろまでの脱原発」を法制化している。だが原子力業界への配慮などから、10年9月に「40年ごろまで稼働延長」に変更したのが、メルケル首相自身だった。このため再度の方針転換には困惑の声もあった。「急な脱原発は産業界へのダメージも大きいと訴えたが、私は孤立した。フクシマ事故直後は議員も皆パニックで、自由に議論できる雰囲気はゼロだった」。与党にいながら下院採決で脱原発に最後まで反対票を投じた自由民主党のフランク・シェフラー連邦議会議員は振り返る。

11年5月、首相は会見で「あり得ないことがあり得る。それをフクシマから学び、私は従来の意見を変えた。(事故の)映像が脳裏から離れない」と当時の心境を明かした。
首相の決断は、原発におびえる国民の支持を得た。世論調査機関フォルザのマンフレート・ギュルナー代表は「2期目の政権運営で、首相は国民の不安回避に一定の成功を収めた。欧州債務危機でも、ユーロ崩壊を防ごうと努力する姿が国民に安心を与えた。派手な政治家ではないが、不安だらけの時代にはかえって彼女の実務的な特質がプラスに映った」と分析する。

物理学者でもある首相のギムナジウム(日本の中高一貫校に相当)時代の恩師で、数学と物理の担任だったハンスウルリヒ・ビースコウさん(74)は語る。「あの子の発想は、今も合理的な物理学者のまま。状況や前提が変われば、『解』も変えるんです」

◇ ◇ ◇

9月のドイツ連邦議会選(総選挙)まで半年を切った。堅調な経済力を背景にドイツの国際的な存在感が高まる中、脱原発やユーロ危機に対処した2期目(09?13年)のメルケル政権を振り返る。【ベルリン篠田航一】=つづく


メルケルの闘い:/2 風力発電、いばらの道 送電線、環境保護派が反対  http://mainichi.jp/select/news/20130515ddm007030142000c.html
毎日新聞 2013年05月15日 東京朝刊  

 「脱原発に投資する人々は今、州の自然保護当局にいじめられています」??。

文面は穏やかではない。ドイツ南部バーデン・ビュルテンベルク州のクレッチマン州首相(緑の党)のもとに今年2月に届いた手紙だ。差出人は、同州で緑の党と連立を組む社会民主党のシュミーデル州議会議員。脱原発を進めるため風力発電用の風車を造ろうとすると、今度は環境保護派の人々に反対され、設置が進まない。そんな現状を嘆いた「告発文」だ。

福島第1原発の事故を受け、2期目(2009?13年)のメルケル政権が2022年までの「脱原発」を決めて以降、何が起きているのか。

ドイツでは今、急ピッチで風力発電への投資が進む。約2万基の風車が稼働する陸上は既に満杯のため、北海・バルト海の6カ所で「洋上」風力発電所を運転し、さらに29カ所の建設を急ぐ。この計画で政府が「国家的課題」(メルケル首相)と位置付けるのが、電気を国内各地に届ける送電網の整備だ。

海がある北部から産業拠点が集中する南部まで、20年ごろまでに国内全土で全長約3800キロの送電線の増設が必要になる。だがここで、森を愛する民・ドイツ人の別の一面が現れる。景観破壊への反対運動が各地で起き、工事が年数十キロしか進まないのだ。このままでは「脱原発」の22年までにとても間に合わない計算になる。

メルケル首相が育った旧東ドイツ・ウッカーマルク地方でも反対運動がある。「脱原発には賛成だが、自然破壊も深刻。さらに、送電線の電磁波による健康被害も心配だ。送電線は地下に埋めるべきだ」。高圧送電線設置に反対する住民団体のリーダーで、元教師のハルトムート・リントナーさん(66)は語る。だが送電会社側はコスト増を理由に地下埋設を拒否し、建設は立ち往生。ドイツ最大の自然保護団体「ドイツ自然保護連盟」も脱原発を歓迎しつつ、「送電線の地下埋設を検討すべきだ」との声明を出した。

苦肉の策としてアルトマイヤー環境相は昨年11月、「送電線事業に投資する人は高利の配当金を受け取ることができる」との構想を提案。建設反対派への明確な「懐柔策」で、独紙によると、法制化も視野に入れているという。

内閣府原子力委員会の秋庭悦子委員(64)が、エネルギー関連の特定のNPOが絡む行事に繰り返し参加していた。行事の大半は放射性廃棄物の処理を巡るもので、原子力政策への中立性が疑われると同時に、参加を「公務」とする原子力委の見解を疑問視する声も出ている。

秋庭氏が設立し、今は顧問を務めるNPO法人「あすかエネルギーフォーラム」が、原子力発電環境整備機構(NUMO)から受託した「放射性廃棄物ワークショップ」事業。秋庭氏は委員就任後、22回のうち11回に参加し、旅費はNUMOが負担した。NUMOは高レベル放射性廃棄物を地中に埋める「地層処分」を業務とする。電力各社などが出資し東京電力元常務が理事長だ。

今年1月、大阪市内のホテルで開かれたワークショップには、あすかが集めた28人が参加。放射性廃棄物に関するNUMOの説明や研究者の講演後、4班に分かれて討論を行った。秋庭氏は講師に付き添って案内役を務めたり、討論会のテーブルに参加者を誘導したりするなどしていたという。討論会では「原発が駄目になると、生活が成り立たない」などの意見をグループごとにまとめた。秋庭氏は少なくとも3会場で司会を務めていた。

新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)は「利害関係のある団体の会合に参加し、運営に携わる行為を公務と認めるべきではない。原発事故後は特に、原子力委の中立性が注視されているのに、自覚が足りない」と話す。

原子力委は昨年12月、放射性廃棄物の処分に関し「多様な意見を十分踏まえる仕組みが大切」とする見解を出した。原発に否定的なNPO法人「原子力資料情報室」の西尾漠・共同代表は「原子力委員が電力会社の関係法人とばかり密接に関わると偏った意見しか収集できないし、原子力政策への判断もゆがみかねない」と指摘する。
【杉本修作、向畑泰司】