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<2>【読売社説】沖縄の「領有権」 中国の主張は誇大妄想気味だ(5月10日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130509-OYT1T01673.htm
中国の膨張主義もここまで来たかとあきれ返る言いがかりである。
8日付「人民日報」が沖縄県の帰属について、「未解決」とし、中国に領有権があると示唆する研究者の論文を掲載した。
こんな誇大妄想的な暴論を、習近平政権の意向を忠実に反映する中国共産党機関紙が掲載した意図を怪しまざるを得ない。
論文は、日清戦争後の1895年の下関条約調印の際、「台湾と(尖閣諸島を含む)付属諸島、澎湖諸島、琉球(沖縄)が日本に奪われた」と指摘した上で、「歴史的に未解決の琉球問題を再び議論できる時が来た」と主張した。
菅官房長官が、「沖縄は歴史的にも国際的にも我が国の領土であることは紛れもないことだ」と述べ、論文が「中国政府の立場であるならば、断固として受け入れられない」と、中国側に厳重に抗議したのは当然である。
沖縄への「領有権」主張は中国で反日デモのスローガンや一部学者の論文には登場していた。だが中国政府が領有権を主張したり、具体的な行動を起こしたりしたことはない。さすがに根拠がないことを認識しているからだろう。
中国外務省の報道官は記者会見で論文に言及し、「学術界が長期間注目してきた問題だ」としただけで、領有権に触れなかった。
中国政府は日本政府に対し、「研究者が個人の資格で執筆したもの」と説明したという。
だが、今回の人民日報の論文を軽視するわけにはいかない。
沖縄県・尖閣諸島を、国家主権や領土保全など絶対に譲歩できない国益を指す「核心的利益」の対象に初めて位置づけたのが昨年1月の人民日報だったからだ。
その後、中国政府はこの言葉の使用を避けていたが、今年4月には、外務省報道官が公式に明言する事態となった。
それから2週間足らずで今回の論文を掲載した背景には、尖閣諸島をめぐって対立する安倍政権に圧力をかけて揺さぶろうとする習政権の狙いがあろう。
習政権は最近、日本の尖閣諸島に対する実効支配を切り崩そうと、尖閣周辺の領海に監視船を侵入させる示威活動を一段とエスカレートさせている。
中国が示威活動と並行して、尖閣と沖縄を組み合わせた独自の主張を展開する宣伝戦に出てくることを警戒する必要がある。
日本政府は中国の主張がいかに不当であるかを、国際社会で積極的に訴えていかねばならない。
(2013年5月10日01時39分 読売新聞)
<3>【沖縄タイムス社説】[人民日報論文]誤解を招く言動は慎め
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-05-13_49179
2013年5月13日 09時32分
中国国内のメディアで「琉球の帰属は歴史的に未解決」との主張が飛び交っている。
共同通信などの報道によると、8日付の中国共産党機関紙・人民日報は、「歴史的に未解決の琉球問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を掲載した。政府系シンクタンク・中国社会科学院の研究員らが執筆したという。
9日には人民日報系の環球時報がこの問題を報じ、日本の挑発に反撃する上で「中国のカード」になるとの専門家のコメントを掲載した。
中国系香港紙・文匯報も10日の社説で「琉球は古くから中国の領土であり、日本が武力と米国の庇護(ひご)を頼りに琉球と釣魚島を盗み取った」との主張を展開した。インターネットでも、こうした主張に呼応するように「沖縄は中国の一部だ」「沖縄をわが祖国に取り戻せ」といった過激な書き込みが相次いでいる。
この種の主張は今に始まったことではないが、尖閣諸島の領有権問題が表面化して以降、増えたという。
明、清の時代に沖縄が中国と冊封・朝貢関係にあったことは歴史的事実である。文化の面で中国の影響を強く受けてきたのも確か
だ。日本の敗戦後、蒋介石率いる台湾が琉球の帰属を問題にしたのも事実である。
だが、そういう事実と、「沖縄は中国のもの」だと主張することの間には、千里の隔たりがある。「沖縄を取り戻せ」という主張に至っては、礼節を欠いた暴言というしかない。中国政府がこういう論文を「黙認」していることにこの国の危うさを感じる。
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沖縄学の父と呼ばれた歴史家の伊波普猷は、1947年に刊行された晩年の著書「沖縄歴史物語」の中で、どんな政治の下で生活した時、沖縄人は幸福になれるかという問いに対し、「地球上で帝国主義が終わりを告げる時」だと書いた。伊波の言う帝国主義とは大国による小国支配のことを指す。
1880年、日清両国で進められていた「分島改約案」をめぐる交渉が妥結した。宮古、八重山両島を清国に割譲し、その代わりに日清修好条規に最恵国待遇に関する規定を盛り込むという内容だ。土壇場で調印は見送られたものの、国家エゴをむき出しにした交渉であった。
沖縄は戦後も冷戦の下で米国の軍事支配に翻弄(ほんろう)された。そして今、尖閣をめぐる日中対立や、米中の覇権争いの最前線に立たされている。
中国で沖縄帰属論が噴出している背景に、尖閣問題があるのは明らかだ。
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領土問題や歴史認識で主張が対立し、日中両国に偏狭なナショナリズムが広がっている。これ以上、問題を複雑にしてはいけない。対立をエスカレートさせるような行動は、厳に慎むべきである。
他者の立場を理解しようとせず、品位を欠いた言葉を投げ合うのは、問題解決を妨げるだけだ。
経済の相互依存や草の根の文化交流など、市民レベルでは健全な日中関係が息づいているはずなのに、一部の偏狭な言動だけが連日報じられ、加熱するのは好ましくない。
【沖縄タイムス】人民日報「琉球」論文:沖縄反応は複雑
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-05-10_49057
政治 2013年5月10日 09時30分
中国共産党機関紙、人民日報が8日、「琉球王国は独立国家で中国の属国」だったとして、日本の「強奪」を批判する論文を掲載した。政府は、中国に抗議したが、琉球処分で「武力を派遣して強制的に併呑(へいどん)」(同論文)したのは歴史的事実。沖縄の反応は複雑で、中国批判一辺倒ではない。
考古学者の安里嗣淳さん(67)は、自分で考えた中国名「孫中路」を名刺に刷っている。「琉球の士族は皆、中国名を持っていた。日中両国とうまく付き合った沖縄の歴史と文化にこだわりがある」からだ。
県による県民意識調査も同じ8日に発表され、中国への印象は89%が否定的だった。「県民は現在の中国には批判的だが、歴史的な親近感はある」とみる。「その沖縄だからこそ、冷静に日中友好の先導役を果たせる」と強調した。
「琉球民族独立総合研究学会」設立準備委員会のメンバーで、龍谷大教授の松島泰勝さん(50)は、「日本が琉球を暴力的に組み込んだ点は正当化できない」と論文の一部に同調する。
一方で、「中国と儀礼的な朝貢関係はあっても属国ではなかった。琉球は中国のものというニュアンスがあるが、日本、中国のどちらでもない」と反論。中国での報道を「琉球の問題を国際的な視点で捉える点で意義がある」と評価した。
北京出身で、日中関係に詳しい沖縄大教授の劉剛さん(55)は「論文には、新しい資料や見方が全くない。古い話の繰り返し」と指摘。「尖閣問題で日本側が妥協しなければ琉球の問題を取り上げますよ、というけん制で、中国側の戦術だ」と分析した。
その上で、「中国国内の研究者は琉球、沖縄の歴史的な変化や現状に詳しくない。もっと事情を理解して論文を書かなければ、国民同士の理解は生まれない」と話した。
<4>【琉球新報社説】人民日報論文 歴史の恣意的な曲解だ2013年5月12日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-206462-storytopic-11.html
中国共産党機関誌の人民日報が「琉球の帰属は歴史的に未解決」と主張し、沖縄の位置付けも議論すべきだとの論文を発表した。
尖閣諸島をめぐる問題で、日本に揺さぶりを掛ける狙いがあるのは疑いなく、歴史を恣意(しい)的に曲解していると指摘せざるを得ない。
仲井真弘多知事は「不見識の一言に尽きる」と不快感をあらわにしたが、至極当然の反応だ。それこそ、まともに反論する価値もないというのが本音のところではないか。
論文は「琉球は独立国家で、明初から明朝皇帝の冊封を受けた、明・清期の中国の藩属国だ」とした上で、「琉球処分」に触れ、日本が武力で強制的に併呑(へいどん)したと指摘。尖閣と同様、日本が敗戦を受け入れた時点で日本の領有権はなくなったとの認識を示した。
琉球が中国の冊封体制下にあったのは歴史的事実だが、外交儀礼的な朝貢関係であり、属国ではない。この理屈が通用すれば、ベトナムや朝鮮半島も中国領になってしまう。
確かに論文を冷静に読めば、中国が沖縄の領有権を主張しているわけではないことは分かる。
論文の執筆者の1人は「琉球は歴史的に独立国。『中国のものだから、取り戻せ』と主張するものではない」と中国紙に答えているが、日本を挑発しつつ、愛国心をあおる狙いが見え見えだ。実際、中国のネット上では「沖縄は中国領だ」「沖縄奪還」など過激な書き込みが相次いでいるという。結果的に日中間の無用な対立をあおり、自国民の反日感情をエスカレートさせていることは、極めて非生産的な行為だと認識すべきだ。
日本側にも冷静な対応を求めたい。中国の主張が筋違いであることは疑いないが、日本政府や大手メディアが過剰反応することは、人民日報系の環球時報が「(同論文が)日本を緊張させた」と報じたように、相手の思うつぼだ。
一方、論文が指摘するように、沖縄の歴史的な歩みは複雑だ。薩摩侵攻や「琉球処分」を源流とするような、苦難を強いられる状況は今なお続く。
普天間飛行場移設問題やオスプレイ配備などをめぐり、民主主義の適用、自己決定権を求める沖縄の機運はかつてなく高まっている。
日本政府が民主国家のらち外に沖縄を置き続けている現状が、中国側の要らぬ挑発を招いている面があることも忘れてはならない。