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烏賊と言えば、日本じゃポピュラーな食材だ。寿司のネタにもなれば、胴体を輪切りにした「イカリング」は煮物でもフライでも天ぷらでもイケるし、バーベキューで焼いても良い。勿論胴体ばかりでなく足の方も喰える。刺身にもなれば、細切りの刺身で「イカソーメン」にもなるし、干せば酒の肴に持って来い。つまり烏賊は、生でも煮ても焼いても揚げても干しても喰える。
烏賊がかくも多彩な食材に化けるのは、日本が島国で、海洋国で、さらには親潮と黒潮の塩境が近く、豊かな海に囲まれているからであろうが、烏賊は「食べておいしい」ばかりではないと、AFP通信が報じている。
①空飛ぶイカ、北海道大学が仕組みを解明
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2927114/10242887
2013年02月12日 13:19 発信地:東京
太平洋で撮影された、イカが空を飛ぶ様子(2011年7月25日撮
影)。(c)AFP/Hokkaido University/Kouta MURAMATSU
【2月12日 AFP】外洋性のイカが30メートル以上の距離を飛行することを確認したと日本の研究チームが8日、発表した。
北海道大学(Hokkaido University)の山本潤(Jun Yamamoto)助教はAFPの取材に、イカの飛行は以前から目撃されていたが、その仕組みはわかっていなかったと語った。飛ぶ理由については、捕食者から逃げるためとみられている。
研究チームは2012年7月、東京の600キロ東方沖で、およそ100匹のアカイカ科のイカの群れに遭遇。船が群れに近づくと、体長20センチメートルほどのイカの群れが空を飛んだ。研究チームの撮影した写真には、上空を飛ぶ20匹以上のイカが映っている。
山本氏によると、イカは高圧の水を吐き出して海から飛び出し、ひれと腕の間の膜を広げて揚力を獲得し、最高時速40.3キロメートルで滑空。着水時にはひれをしまい、衝撃を最低限に抑えたという。研究チームは報告書で、イカが水面から飛び上がるだけでなく、飛行中は高度に発達した飛行行動を持つことが明らかになったと述べている。イカの飛行のメカニズムを解明したのは世界で初めてとされる。
研究は前週のドイツの専門誌「マリーンバイオロジー(Marine Biology)」に掲載された。(c)AFP/Harumi Ozawa
②世界の深海に住む巨大イカ、全て同一種か DNA解析で判明
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2934985/10470240
2013年03月21日 15:07 発信地:パリ/フランス
オーストラリア・メルボルン(Melbourne)の博物館に展示される体長10メートルのイカの標本を眺める女の子(2005年12月15日撮影)。(c)AFP/William WEST
関連写真1/1ページ全2枚
【3月21日 AFP】船乗りたちから何世紀にもわたって恐れられてきた巨大イカ「ダイオウイカ」の謎に包まれた正体を解明するべく行われたDNA解析の結果が、20日に英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」で発表された。
新発見の一つは、ダイオウイカは1種しか存在しない可能性が高いというものだ。専門家の中には、複数の種が存在するという説を唱える者もいた。また、ダイオウイカは実は希少種ではなく、深海に多くの数が生息しており、その幼体は暖流に乗って、極地域を除いた世界中の海に広まっている可能性があるという。
DNA解析を行った生物学者らは、「ダイオウイカ属には『Architeuthis dux』の1種しか存在しないということを強く示す」証拠が得られたと述べている。もし事実ならば「この種は汎存種で、相当な数が生息している可能性が高い」という。
バスほどの体長と、暗い深海で獲物を見つけるためのビーチボール大の目を持つダイオウイカは、地球上に存在する無脊椎動物の中でも最大級。9年前に初めて自然界で生息している姿が確認されるまでは、マッコウクジラの胃の中や海上で見つかったり、浜に打ち上げられたり、トロール船の網にかかったりする死骸でしか確認されていなかった。
研究チームは、オーストラリア、スペイン、フロリダ、ニュージーランド、日本の海域で発見された43体の死骸を対象に、雌の親から受け継がれるミトコンドリアDNAを解析した。すると、DNAの特徴の差があまりにも小さかったことに驚いたという。「このデータは、世界には1種類のダイオウイカしか存在しないことを強く示している」とチームは述べている。(c)AFP
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イカヒコーキを超えて
さて、如何だろうか。AFP通信が報じる烏賊二題。
改めて解説するほどもなく明白だが、上掲①はイカが水面から飛び出して、トビウオよろしく「30メートル以上の距離を飛行すること」事が確認されたと言う記事。
①1〉 イカは高圧の水を吐き出して海から飛び出し、
①2〉 ひれと腕の間の膜を広げて揚力を獲得し、
①3〉 最高時速40.3キロメートルで滑空。
①4〉 着水時にはひれをしまい、衝撃を最低限に抑えたという。
と報じられており、写真で見ると上記①2〉「腕の間の膜」を主翼とし、頭の方の「ひれ」を尾翼とした「先尾翼」型式で飛ぶようである。正に折り紙ヒコーキである「イカヒコーキ」の如し。
尤も、「ひれの尾翼」は「腕の間の膜の主翼」に対し半分以上の結構な大きさがあるから、主翼2枚を前後に配置した「変形複葉機」ないし「串型翼機」と見る事も出来る。「ひれの尾翼」がこれだけ大きいのは、多分、翼面積を稼ぐためと、飛行時の姿勢制御をうまくやるため。イカの重心はどう考えたって胴体にあるのに対し、「ひれの尾翼」も「腕の間の膜の主翼」もその胴体の前端と後端にあるんだから、主翼ばかりでなく尾翼も揚力を稼いで「胴体を前端と後端の揚力で吊る」形にしないと、姿勢が安定しない。その意味で、主翼尾翼共に揚力を稼ぐ先尾翼型式としたのも、尾翼を大きくして主翼に準じる面積として「変形複葉機=串型翼機」としたのも、実に合理的選択だ。
無論、烏賊が「どうも、鳥みたいな重心近くの主翼は持てそうにないし、ここはひとつ先尾翼式で行こう。」などと考えた訳でもなければ、造物主が先尾翼式を選択した訳でも無く、「飛ぶのに適した先尾翼式が一番うまく飛べた」と言う事だろう。
第一、「先尾翼式」なんて、せいぜい遡れてもライト・フライヤーまでで、百年ちょっと前でしかない(※1)。烏賊の方がライト・フライヤーより先に飛行していたことは、賭けても良いぐらいだから、「先尾翼式」の方こそ「烏賊式」とか「アカイカ式」とか呼ばれるのが筋と言うモノだろう。まあ、飛行機ファンとしては大いに抵抗があるから、せめて「エンテ(※2)式」としたい処だが。
さらに付け加えるならば、烏賊の飛行高度は相当に低く、トビウオと同様に海面効果も利用している可能性が高い。もしそうならば、「空飛ぶ烏賊」は、飛行機よりもWIG「地面効果翼機」に近いと言える。(※3)
「空飛ぶ烏賊」と言うのも視角的にはインパクトあるが、実質としてそれよりインパクト大なのは、上掲②に報じられる「世界中のダイオウイカは全て同一種の可能性がある」と言うDNA解析結果だろう。
巨大イカ「ダイオウイカ」は、怪魔クラーケン(※4)や邪神クトゥルーのモデルでもあり、半ば伝説上の生物だが、深海に棲むため目撃例も少なく、いまだ謎に包まれている生物だ。それを研究したチームの曰く。
②1〉 オーストラリア、スペイン、フロリダ、ニュージーランド、日本の海域で発見された43体の死骸を対象に、
②2〉雌の親から受け継がれるミトコンドリアDNAを解析した。
②3〉すると、DNAの特徴の差があまりにも小さかったことに驚いたという。
…つまり極端に言うと、豪州、欧州、北米州、アジアで発見されたダイオウイカが、皆「兄弟」であるらしい、と言う事。
②4〉 ダイオウイカは実は希少種ではなく、深海に多くの数が生息しており、②5〉 その幼体は暖流に乗って、極地域を除いた世界中の海に広まっている可能性があるという。
と言う、なかなか壮大な説に説得力を与える所以だ。個体数が少なく生息域が孤立分散していると「元は同じ種」であっても「別の種」に分化し得る(※5)。それがダイオウイカは、これだけ広い範囲で「同一の種らしい」事から、上記②4〉~②5〉と言う「壮大な説」が説得力を持つ訳だ。
無論、「実は希少種なんだが、生活圏がやたらに広い」とか、「生息域は孤立しているんだが、孤立してからの期間がまだ短い」とか、「ダイオウイカは進化がやたらに遅い(※6)」とか、他の説明もありそうだし、今回のDNA解析結果も「ダイオウイカ属は唯一種」と断定した訳でもない。
だが、全世界の深海にはダイオウイカがうようよ居る、と、想像するのは別に構うまい。そうであれば、潜航捕烏賊船でダイオウイカを捜索捕獲し、洋上の捕烏賊母船に吊り上げて、解体・冷凍して持ち帰り、「旬のダイオウイカ刺で一杯」なんて事が、実現するかも知れない。
「やっぱりダイオウイカは、日本海溝モノに限るねぇ。」
「いや、最近じゃマリアナ海溝モノも、引けを取らないぜ。」とか(※7)・・・・
<注釈>
(※1) それでも、動力飛行としては人類初なんだが。(※2) ドイツ語で「鴨」の意味。「飛ぶ姿が鴨に似ているから」と言うが、確かに鴨の首は長く主翼前方に突き出ているモノの、「先尾翼」では無いよなあ。いっそ「プテラノドン式」か。あれは垂直のみ先尾翼と見なせるから・・・(※3) そうならば、「先尾翼式」と言う呼び名れた呼称について、悩む必要は無さそうだ。(※4) まあ、巨大な「タコ」として描かれる事が多いが、ダイオウイカ級に大きなタコは、発見されていない。
(※5) 豪州にコアラやカンガルーのような固有種が多いのは、このためだと言う。
(※6) ダイオウイカだけ進化が遅いと言う可能性は、考えにくいが…深海の環境が非常に安定していて、進化・変化を必要としないと言う可能性は、一応あり得よう。
(※7) おや、「ダイオウイカを舐めている」のは、私(Zero)か。御後が宜しいようで。