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 薬の副作用に苦しんでいる人に出会ったとする。薬の効果=治療ナリ予防ナリ健康増進に期待して薬を飲んだと言うのに、副作用でひどい目に逢っている。そんなモノを薬とした与えるとは何事か!許せない!!」と憤る。ありそうな話だ。

 だが、ちょっと冷静に考えるべきではある。「良薬口に苦し」なんて言葉もあるが、この世にある薬で、「副作用が無い薬」なんてものがあるだろうか(※1)。大概の薬は処方投与法を間違えれば、明白に毒になるし、爆薬になる薬もある。それどころか、糖分や塩分は我々人類の生存に不可欠な食品成分であるが、これらとて過剰に摂取すれば、糖尿病や高血圧を引き起こし、健康を害するばかりか命を危うくすることだってありうる。極論するならば、「口から入るモノは全て毒」と断じることだってできるぐらいだ。
 それでも、副作用が明白に「ある」にも拘らず、世に薬として流通し、治療や予防に投与されるのは、実際に副作用よりも薬効の方が顕著になる加減・量があるから。要は、薬もまた放射性物質と同様に、リスクを定量的に評価しなければ、まともな評価は出来ないと言う事だ。

 まあ、放射能や放射性物資についてすら定量的評価が出来ない/しない、「鉛の部屋に住む男」の同類はこの世に掃いて捨てるほどある。だが、「反副作用原理主義」は、リスクを減らすどころか増やす場合もある。その場合「反副作用原理主義」に従って特定の薬を「禁止する」などと言う事は偽善とか愚挙とかのレベルではなく、非人道的な暴挙となる。


<注釈>


(※1) 漢方は生薬だから、副作用が無いなどと嘯く者も在る様だが、酪酸は生体起源だから人体に無害だと主張するSS並みに信用できない。無論、生体起源とは言え酪酸は環境汚染物質だし、蛇毒虫毒に限らず天然自然生体起源の毒物と言うのは、いくらも例がある。 



「ワクチン接種中止を」 子宮頸がんで民間団体
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130408/bdy13040820000003-n1.htm
2013.4.8 20:00
 今月から定期接種となった子宮頸がんワクチンの副作用事例を収集している民間団体が8日、ワクチン接種後に重い健康被害に苦しむ中高生が出ているとして、接種中止を求める嘆願書を厚生労働省に提出した。嘆願書を出したのは、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会(東京)。

接種中止に加え、副作用に対応可能な病院などの情報提供▽事例の追跡調査と公表▽相談窓口の設置▽被害救済制度の充実-を要望した。同団体は記者会見を開き、接種した女子生徒が体の痛みやけいれん、歩行障害などの症状を示して入院するなどのケースが相次いでいるとして「ワクチン接種の見合わせは急務」と訴えた。

厚労省によると、子宮頸がんワクチンで平成21年12月発売の「サーバリックス」と、23年8月発売の「ガーダシル」を接種したのは昨年12月現在で計約829万人。副作用報告は1166件あり、うち101件が重症だった。




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0.014%の副作用例と0.0012%の重症例で、「ワクチン接種中止」とは、恐れ入る

 さて如何だろうか。

 民間団体とか言う奴バラの主張は明白だろう。「子宮頸がんワクチンは副作用が”ある“から禁止しろ。」

1〉  厚労省によると、
2〉 子宮頸がんワクチンで平成21年12月発売の「サーバリックス」と、23年8月発売の「ガーダシル」を接種したのは
3〉 昨年12月現在で計約829万人。
4〉 副作用報告は1166件あり、うち101件が重症だった。

 上記から当該ワクチンの副作用が発生する確率は、

 副作用発生確率 1166件 ÷ 829万人 = 0.014%  式(1)

 副作用重症確率  101件 ÷ 829万人 = 0.0012% 式(2)

となる。「薬の副作用」と言うモノは、接種直後に発生するものと考えて良さそうだから、子宮頸がんワクチンによる副作用発生確率は上式(1)0.014%。そのうち重症となるのは上式(2)0.0012%と、タイトルにもした数字と考えて良かろう。

 一方で http://shikyu-keigan.com/cervical-cancer/index.aspx によれば、子宮頸がんは「日本でも毎年約7000人が罹患し、約2500人の命が失われているのです。」とある。単純に「日本の人口1億。半分は女性」で「子宮頸がんの罹患率」を計算すると、【推算1】「毎年0.014%の罹患率で、毎年0.005%の死亡率」と出る。これに女性の平均寿命85.90歳(2011年で  http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/07/26/kiji/K20120726003765260.html  )を掛けると、【推算2】「日本女性の子宮頸がん罹患率は1.2%で死亡率は0.37%」と計算できる。非常に荒い計算であるし、非常に洗いモデルではあるが、章題にもした「0.014%の副作用発症率と0.0012%の重症例」に比べれば、発症率対罹患率で86倍。重症率対死亡率では300倍以上の差が出ている上、「101件が重症だった。」と言う表現は、「副作用による死亡例が無い」と言う事を間接的に示している。

 「10万人当たりの罹患率」のグラフも上掲サイトにはあるが、年齢別では35-39歳女性が最も高く、2001年で人口10万人当たりで22人。同じく全年齢女性の子宮頸がん罹患率は2001年で人口10万人当たり12人。比率に直すと、「35-39歳女性が毎年0.022%」で「女性全年齢でこの年0.012%」。後者の数値は上記【推算1】の罹患率が相応に良い近似である事を示している。尤も、上記の通り「一人の女性の生涯を通じての子宮頸がん罹患率/死亡率」に「女性の平均寿命」を掛けてしまうのは、繰り返しになるが可也荒っぽい推計ではある。

 一方で、上掲HPでは、

H1〉  日本では2種類のワクチンが日本国内での承認を申請中でしたが、
H2〉 2009年にそのうちの1種「サーバリックス(グラクソ・スミスクライン社)」が、厚生労働省に正式承認されました。
H3>  これらのワクチンは、約7割のHPV感染を予防するといわれ、
H4>  海内で2万人以上を対象に行われた臨床試験では5年間感染を防ぐことが確認されています。

とされ、ワクチンとて万全でもなければ、薬効も種痘とは異なり一生モノではない、と明記している。

 そこで、一回の接種で効果があるとされる上記H4> 5年間に、①「ワクチンを接種しなかった場合の全年齢平均女性の子宮頸がん発症確率」と②「ワクチンを接種しても子宮頸がんに罹患する確率と副作用の発症する確率の和」を比較しよう。

 ① 毎年の子宮頸がん罹患率 0.012% × 5年 = 0.06%   式(3)

 ② (1- ワクチン接種効果 0.7)× 0.012% × 5年 + 副作用発症率0.014% = 0.0176% 式(4)

 上記【推算2】程の圧倒的な効果ではないが、やはりワクチン接種による効果は明白だ。上掲記事の「民間団体」が「副作用による死亡例」すら挙げていない事と、子宮頸がんでは一定割合で死に至る事を考え合わせれば、これで「ワクチン接種を禁じると」言うのは・・・「子宮頸がんによる死は、神意である」とでも考えない限り、上掲記事に登場する「ワクチン接種中止を訴える民間団体」の主張は説明し難い。

 さもなければ、「絶対安全」を追求して居る心算で「子宮頸がんワクチンの副作用リスクを回避して、子宮頸がんリスクを高めている」大間抜け、と言う事になる。

 まあ、子宮頸がん死を望む子宮頸がん信者であろうが、大間抜けであろうが、どちらであろうが「ご自由にどうぞ」何だが、「子宮頸がんワクチンの接種を受けて、副作用リスクを引き受ける代わりに子宮頸がんリスクを回避すると言う選択肢」を奪うような「子宮頸がんワクチン接種中止を願う嘆願書」などと言うモノは、誠に非人道的であり、「似非人道主義」と言うさえおこがましいシロモノである。

5〉 ワクチン接種後に重い健康被害に苦しむ中高生が出ている

 だから、どうした。

 ワクチンや薬品に限らず、副作用と言うものは薬効との相対比較で評価され、上記の粗い推算式の示す通り、「副作用に苦しむか人よりも多くの人が子宮頸がんを免れ、子宮頸がん死に至らない」ならば、薬効としては十分だ。

 その副作用を知らしめて、子宮頸がんワクチンを接種するか否かの判断材料に供するのは宜しかろうが、接種を禁じる事を嘆願するなぞ、言語道断にして傲岸不遜と言うべきである。

 当人たちは恐らく、「善き事をしている」つもりなのであろう。だがその「善き事」は、偽善どころか非人道的な暴挙であり、自己満足どころか狂気の沙汰である。