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 「烈風」と言えば、大日本帝国海軍が零式艦上戦闘機・所謂「ゼロ戦」の正当な後継機として開発していた艦上戦闘機。設計も「ゼロ戦」と同じ三菱の堀越二郎技師に委ねた「零戦を継ぐ者」として期待されながら、発動機選定とか開発コンセプトとかの迷走もあって「幻の名機」に終わった機体。その開発迷走は、大西画伯作「烈風が吹くとき」に、文字通り「絵巻物語」の如く鮮やかに描写されている。

 或いは、川又千秋作の仮想戦記「ラバウル烈風空戦録」を想起される方もあるかも知れない。史実では危うく烈風を葬りそうになった中島製「誉」発動機(※1)の改良型「勲」発動機と、史実では紫電改以外に採用されていない自動空戦フラップを、これまた改良して(※2)装備したために史実より遥かに早期に実戦配備された川又千秋版「烈風」は、「グラマンF6Fヘルキャットに対する有力優勢な対抗馬」として活躍している。惜しむらくは、「ラバウル烈風空戦録」と銘打つ割には烈風の出番が少なく、双発単座と言う一風変わった型式の「二式双戦」や、風防を手直しして迎撃戦闘機として活躍する雷電(※3)の方が印象的なくらいだ。

 閑話休題(それはともかく)

 左様に架空戦記でも花形になる( 事もある )烈風の、それも高高度性能向上型(
になる筈だった )「烈風改」の図面が発見された、と言うニュースが、毎日と産経からもたらされた。

 ところが…


<注釈>

(※1) ちゃんと整備されて良い燃料食わせれば、良いエンジンなんだが… 

(※2) 水銀柱を使った史実の自動空戦フラップは、水銀が酸化すると真面に作動しない恐れがあった。「ラバウル烈風空戦録」では「空盒式」と表記されていたから、メカニカルな変形を利用した加速度センサになったのだろう。 

(※3) 雷電は、史実でも使い方を誤らず、数を揃えればかなり有力な迎撃戦闘機になった筈だが。風防の手直しなんてのは、些事だ。 



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①<烈風改>幻のゼロ戦後継機…設計図、群馬で発見
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130322-00000051-mailo-l10
毎日新聞 3月21日(木)15時1分配信
  終戦間際に開発が進められた「烈風改」の設計図。名称が書かれていたとみられる右下は破り取られていた=藤岡歴史館で、奥山はるな撮影
 太平洋戦争で使われたゼロ戦の設計などで知られる航空技術者、堀越二郎氏(1903~82)の出身地である群馬県藤岡市の親戚宅から、同氏が手掛けた「烈風改(れっぷうかい)(A7M3)」の詳細な設計図17枚が見つかった。同機はゼロ戦の後継機とされたが、試作機すら造られず終戦を迎えた「幻の戦闘機」。設計図の寄贈を受けた同市は、堀越氏を主人公のモデルにしたスタジオジブリの映画「風立ちぬ」の公開に合わせて今夏、企画展で展示する。
【「風立ちぬ」主人公モデル】堀越二郎氏が隠した?資料とは
 ◇設計者の映画、今夏公開
 同市によると、設計図はいずれもA1判(横約84センチ、縦約60センチ)。製図日は1944年6月から45年7月となっており、機体の先端部分やエンジン付近のタンクなど4種類の部品が描かれていた。情報漏れを防ぐためか、機体の名称部分は破り取られていた。
 設計図は05年2月、市内に住む堀越氏の親族が「蔵で見つけた」として同市に寄贈した資料約500点の中にあった。今年2月、専門家に鑑定を依頼し、開発の時期や部品の形状から烈風改と判明した。同機については、全体像の図面などが確認されるにとどまっていた。
 烈風改は、三菱重工業が開発を進め、社員だった堀越氏が設計主任を務めた。地上1万メートル以上で米爆撃機B29との対戦を想定していた。44年12月~45年1月の空襲で名古屋市にあった同社工場は壊滅し、数百人の従業員が死亡。同社によると、堀越氏は疎開先の長野県松本市で開発を目指したという。堀越氏は同社を定年退職後、防衛大教授などに就任した。資料を保管する藤岡市文化財保護課の軽部達也課長補佐は「終戦の間際まで、より高度な技術を追い求めた様子が伝わる」と話す。
 20世紀の航空開発資料を収集する日本航空協会航空遺産継承基金(事務局・東京)の長島宏行氏によると、GHQ(連合国軍総司令部)は日本の航空機開発を禁じ、機体や資料を没収した。「これだけの設計図が一般の家から見つかるのは、非に珍しい。設計者の思い入れが強く、終戦後も手放せなかったのでは」としている。【奥山はるな】


.②「幻の戦闘機」設計図発見 ゼロ戦の後継、技術者が保管
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130404/trd13040408500006-n1.htm
2013.4.4 08:48

航空機設計者、堀越二郎氏の遺品から見つかった、幻の戦闘機「烈風改」の設計図=3月25日、群馬県藤岡市
太平洋戦争中に零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の後継機として計画されながら、製造されずに終戦を迎えた幻の戦闘機「烈風改」の設計図が、群馬県藤岡市出身の航空機設計者、堀越二郎氏(1903~82年)の遺品から見つかった。

戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は航空機の開発資料の廃棄を命じていた。遺品の寄贈を受けた藤岡市の担当者は「個人的に持ち帰って保管するほど、技術者として強い思い入れがあったのだろう」と話す。

烈風改は、米軍のB29爆撃機に対抗し飛行高度1万メートル以上を想定。日本海軍が三菱重工業に発注し、堀越氏が開発を統括した。

親族が2005年、資料や手紙など遺品約千点を市に寄贈。専門家が鑑定した結果、設計図17枚が烈風改のものと確認された。製図日は1944年6月~45年7月。ゼロ戦の設計も手掛けた堀越氏は、スタジオジブリの新作アニメーション映画「風立ちぬ」(今夏公開)で主人公のモデルになっている。


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.産経報道、なぞの「遅れ」


 さて、如何だろうか。

 毎日も産経も、報道している事象はほぼ同じ。と言うよりは、記事自体が「瓜二つ」と呼びたくなる位。
 記事が「瓜二つ」になるのは、「同じ事象を報じている」以上起こり得る事、ではあるが…タイトル及び章題にもした通り、妙なのは報道された時期だ。

 上掲①毎日記事に主として従って、時系列順に事象を整理すると、以下の様になる。

 (1) 2005年2月 堀越氏の親族が「蔵で見つけた」として藤岡市に堀越氏が残した(と思われる)資料約500点(※1)を寄贈した。

 (2) 2013年2月 藤岡市が上記(1)の資料を専門家に鑑定依頼した。(※2)

 (3) 上記(2)の結果、烈風改の詳細な設計図17枚が含まれている事が判明した。

 (4) 2013年3月21日、上記(3)を受けて毎日新聞・奥山はるな記者が、記者自身撮影の写真と共に記事で報道した。(上掲①記事)

 (5) 2013年3月25日 幻の戦闘機「烈風改」の設計図を群馬県藤岡市で撮影(上掲②記事にに添付)

 (6) 2013年4月4日 上記(3)を受け、上記(5)の写真と共に、産経新聞が記事で報じた(上掲②記事)

 つまり、上掲②産経記事は、上掲①毎日記事に遅れること実に2週間で、写真も上記(5)で撮影された「借り物」であるか、もしくは上記(5)で産経新聞が写真撮影・取材しながら記事は10日近く後に掲載されたか、何れかと言う事である。

 無論、「烈風改の図面、発見される!」なんて事象は、ごく限られた範囲内でしかスクープ性・特ダネ性は無いから(※3)、上掲記事①を「毎日新聞のスクープ・特ダネ」とは、多分、産経も考えないだろう。考えたならば即座に後追い報道した筈だ。より詳細な情報を付けるなどして付加価値を高めるのが常道だろう。だが、上掲の通り、上掲②産経記事よりも、先行した上掲①毎日記事の方が記事としては詳しいぐらい。

 であるならば…産経は、ライバル会社である筈の毎日の上掲①記事を、知らないまま上掲②記事を書いた【Case1】、か…毎日の奥山はるな記者が、同じネタで産経に記事を売り込んだ(※4)【Case2】、か。或いは、産経は先行する毎日記事を敢えて無視して同じ事象を報道した【Case3】、か。何れかだろう。

 だが、「報道の遅れ」を考えると、【Case3】はやはり考え難い。前述の通り「付加価値の少なさ/なさ」も【Case3】ではない事を示唆している。

 【Case2】は、奥山はるな記者が身元を隠して/偽って、ならば在るかも知れないが、そうでなければ無さそうだ。仮に匿名・偽名で奥山はるな記者が斯様な事を実行したとしたら、それは新聞社に対する忠誠と言う点では問題有ろうが、「事実を報じる」と言う点では、情状酌量の余地があろう。

 一方で【Case1】は、上掲①記事の毎日おける扱いに相当左右されそうだ。例えば極端な話、上掲①記事が毎日新聞トップを飾って居たら(※5)、同じ国内のライバル紙だから、産経が見落とすと言う事は一寸なさそうだ。一方で、地方面の隅の方にホンの一時期だけ掲載されていただけならば、産経が見落とす事もあろう。

 となると、まだありそうな【Case1】にせよ、【Case2】にせよ、斯様な「ごく限られた範囲のスクープ記事ネタ」を見落とした産経新聞の情報収集能力は、大いに糾弾されて然る可きではなかろうか。


<注釈>

(※1) 上掲①毎日記事による。他方、上掲②産経記事では、「資料や手紙など遺品約千点」となっている。
 「約500点は手紙など」と考えれば、矛盾や齟齬は生じないが、差異ではある。

(※2) 直接記載はないが、今夏公開の堀越氏をモデルとしたジブリ映画「風立ちぬ」に合わせた企画展へ出展するためと、推測できる。 

(※3) ついでに書けば、その「ごく限られた範囲内」に私(Zero)が入っている事は、認めないといけない。 

(※4) またその記事に、産経が飛びついた…産経ならば、飛びつきそうな記事、ではあるが。 

(※5) それこそ「考え難い」ことではあるが。