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東京新聞のコラム「茶色に染まり始めた朝 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2013032002000124.html 」を取り上げた記事(※1)で私(Zero)は、「安倍政権のタカ派色を以ってナチス党扱いする」同コラムを大いに非難した。と同時に、同コラムで取り上げられた政治寓話「茶色の朝」の荒筋も知る事が出来た。直接原典を読んだ訳ではない、どころか当該コラムでしかこの小説を知らないから、多くは語れないが、ジョージ・オーウエル作「1984」ばりの反ユートピア小説で、「人々の無関心に起因する民主主義の危機」を描いたものらしい。当該コラムには、その粗筋が以下の様に紹介されていた。
東1〉 ある日、毛が茶色以外のペットは法律で禁止された。
東2〉これを批判した新聞が廃刊となり、本や服装、政党名に茶色が強制されていく。
東3〉しかし、不自由のない日々だからと声を上げないでいると、過去に茶色以外のペットを飼った者まで逮捕される法律ができ、主人公に危険が迫る…。
上記1〉~3〉を受けて、ふと思いついたのが、タイトルにした「”脱原発”の朝」と言う小説の構想だ。文章にすると、以下の様になろう。
1>> ある日、脱原発以外の発言は法律で禁止された。
2>> これを批判した新聞が廃刊となり、本や服装、政党名に”脱原発”マークが強制されていく。
3>> しかし、不自由のない日々だからと声を上げないでいると、過去に原発擁護や原発推進の発言を行った者まで逮捕される法律ができ、主人公に危険が迫る…。
こんな発想が働いたのは、未だ世上かますびしい脱原発アレルギーの放射線ヒステリーもさることながら、原発公聴会からの電力関係者締め出しだとか、類似の公聴会に対する電力関係者参加促進メールを親の仇か何かのように報じる(※2)「報道」に接したから。
それでも、半分ぐらいは冗句の心算だった、のだが・・・
<注釈>
(※2) 電力会社や原発容認・推進派の公聴会出席を「やらせ」と批難するならば、脱原発・反原発派の組織的運動もまた批難の対象である筈だ。電力会社は電力会社として、企業努力の余地がある筈だし、片方だけ「やらせ」と批難する事は、言論の弾圧に他ならない。事もあろうにマスコミが、言論の弾圧に加担するとは…往々にして、ある事ではあるが、あってはならぬ事に相違はない。
原発容認で出演中止 NHK番組 「意見変えて」要請
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/130401/ent13040108160002-n1.htm
2013.4.1 08:14 (1/2ページ)[エネルギー]
東京・渋谷のNHK放送センター
NHKのLNG(液化天然ガス)高騰問題に関する番組で、出演依頼を受けた研究者が取材過程で原発再稼働を容認する発言をしたため、出演取りやめになっていたことが31日、分かった。NHKは「原発ゼロを前提にしており趣旨にそぐわない」と説明したという。研究者は「ビジネス交渉のカードとして最初から原発ゼロを前提にするのはおかしい。公正・中立に疑問を感じる」としている。
問題となった番組は昨年11月28日放送のクローズアップ現代「“ジャパンプレミアム”を解消せよ~密着LNG獲得交渉」。
日本エネルギー経済研究所顧問の十(と)市(いち)勉(つとむ)氏によると、NHKは十市氏に出演を依頼、同21日にディレクターらと打ち合わせた。国内では関西電力大飯原発以外の原発は停止しておりNHKは、輸入が急増し高騰するLNG価格をどう下げるかコメントを求めた。
これに対し、十市氏は(1)LNGの輸入源と調達方法の多様化(2)交渉力強化のため、共同購入やLNG火力の代替手段の確保が重要。そのためには安全が確認された原発は地元の同意を得たうえで再稼働させたり、石炭火力の活用が有効(3)電力制度改革で発電市場の競争の促進-を挙げた。
だが取材翌日、ディレクターから「番組に出演するには意見を変えていただくことになる」と電話があり、理由として「原発ゼロを前提にどう価格を引き下げるかを趣旨にしており、再稼働に関する発言はそぐわない」と述べたという。
十市氏はNHKに説明を要求。チーフプロデューサーから連絡があり「原発ゼロを前提にしていない。総選挙前であり放送の公正・中立に配慮した」と釈明した。十市氏の発言のどの部分が、放送の中立に反するか説明はないまま、出演は取りやめになった。
砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)は「番組の中でいろんな意見をどう生かすのかも公共放送として問われる」と指摘する。
NHK広報局は「番組は再稼働の見通しが立たないなか、日本のLNG調達の現実を伝えたもので、再稼働の是非を議論する内容でない。出演交渉の際に番組の趣旨が十分伝わらず誤解を招いたことは残念」とコメントした。(原子力取材班)
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ある意味「NHKの対応」は正しい
さて、如何だろうか。
章題でネタバラシしてしまったようなものだが、ある意味で、上掲記事におけるNHKの対応は「正しい」と言い得る。「クローズアップ現代」なる番組は、少なくともニュースではなさそうだし、報道番組でない限り(※1)、「番組の主旨・首長が先に在り、それに沿って番組を作る」事は放送局の職掌だろう。この場合、
N1> 「原発ゼロを前提にどう価格を引き下げるかを趣旨にしており、再稼働に関する発言はそぐわない」
と言う「出演拒否理由説明」には、一応の理が有る。「番組の主旨・首長が先に在り、それに沿って番組を作る」事が許される限り、ある意味「NHKの社説」であり、「NHKの宣伝番組」である限り、だ。
だが、当該「クローズアップ現代」が、「NHKの社説」であり、「NHKの宣伝番組」であったとしても、
> だが取材翌日、ディレクターから
N2> 「番組に出演するには意見を変えていただくことになる」と電話があり
と言うのは奇怪千万である。NHKの主張に沿わないならば、そもそも出演を依頼しない、取材しないのが本来であって、取材後に「意見を変えろ」とは、言論弾圧以外の何事であろうか。これで取材された十(と)市(いち)勉(つとむ)氏が「意見を変えた」ならば、NHKは、クローズアップ現代なる番組で「十市勉氏の意見」として番組に出演頂いた筈なのだから。

さすがに天下の偏向報道NHKでも「これはまずい」と言う事になったのだろう。
> 十市氏はNHKに説明を要求。
> チーフプロデューサーから連絡があり
N3> 「原発ゼロを前提にしていない。総選挙前であり放送の公正・中立に配慮した」と釈明した。
> 十市氏の発言のどの部分が、放送の中立に反するか説明はないまま、出演は取りやめになった。
言うまでも無かろうが、上記N1> と上記N2>は、当該番組が「原発ゼロを前提とするか否か」で真っ向から対立している。而して十市勉氏の「原発再稼働擁護発言」を結局封殺したのであるあるから、出来上がった番組は「原発ゼロを前提とした」モノになったに違いない。
先述したとおり、NHKがその主張を番組化し、その主張に沿わない者はその番組に出演させない、と言うのはNHKの勝手である。
だが、NHKが、その番組出演者に特定の主張を強制すると言うのは、言論の弾圧であり、上記N2>が為している事は正にその言論弾圧である。
因みに、Wikipediaの「クローズアップ現代」の項に曰く。
> 『クローズアップ現代』(クローズアップげんだい、英称:Today'sClose-up)は、NHKで放送されているニュース・報道番組である。
・・・思いっきり「ニュース・報道番組である」と断言されている。即ちこのwikipedia記述が正しいならば、先述の通り当該番組では、「主義主張による出演者の取捨選択」は本来為されるべきではない。
その為されるべきではない「主義主張による出演者の取捨選択」を「ニュース・報道番組」で為し、その理由を上記N3>「総選挙前であり放送の公正・中立に配慮した」のならば、その番組は総選挙前に放映されるべきではない。何故ならば上述の通り、十市勉氏の出演を拒否する事で、当該番組は、結果としてはか否かは兎も角、「原発ゼロを前提とした」番組となり、放送の中立に反する筈だから、だ。 然るに、上掲記事冒頭近くにいわく。
> 問題となった番組は昨年11月28日放送のクローズアップ現代「“ジャパンプレミアム”を解消せよ~密着LNG獲得交渉」。
・・・因みに先回衆院選挙は、昨年12月だ。言い訳も何にも通用しない。
以上の考察からすると、NHKは、
(1) 特定の意見を有する者の出演を、報道番組から締め出す事による言論弾圧
(2) 特定の主張に基づいた報道を総選挙前に放映した事による「放送の公正・中立性」侵犯
の、いずれかの大罪を犯している、筈である。
ああ、NHKらしいと言えば、実にNHKらしいのだが。
<注釈>
(※1) いや、ひょっとすると報道番組の類である可能性が、相当にあるんだが。