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 そりゃ私(Zero)は福島第一原発事故を経てなお原発推進論者であり、脱原発原理主義である東京新聞とは「宗教が違う」。だから、東京新聞の主張である社説やコラムとは、相容れないのが当たり前で、意気投合するなんて事は滅多にない(※1)。だから、東京新聞コラム「私説・論説室から」なんてのは、私(Zero)にとっての異論・異説の宝庫なのであるが、それにしてもこのコラムは…まあ、御一読の程を。

<注釈>

(※1) それでも、「カンボジア国籍を取ってオリンピックマラソン出場を目論んだ」猫ナントカ言う芸人については、珍しく見解が一致した覚えがある。 



転載開始=========================================


【私説・論説室から】茶色に染まり始めた朝
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2013032002000124.html
2013年3月20日 ( 〈〉番号はブログ主による段落番号 )

〈1〉「事なかれ主義」がファシズム台頭を許すと警鐘を鳴らし、フランスでベストセラー、多くの国でも翻訳された短編寓話(ぐうわ)『茶色の朝』。作者のフランク・パブロフ氏を仏グルノーブル市の自宅に訪ねたのは、邦訳が出版された九年前のこと。欧州で移民排斥など右傾化の嵐が吹き荒れ、日本も教科書検定問題など息苦しさが漂う時期だった。

〈2〉“茶色”とはナチスの象徴の色だ。あらすじはこうだった。ある日、毛が茶色以外のペットは法律で禁止された。これを批判した新聞が廃刊となり、本や服装、政党名に茶色が強制されていく。しかし、不自由のない日々だからと声を上げないでいると、過去に茶色以外のペットを飼った者まで逮捕される法律ができ、主人公に危険が迫る…。

〈3〉パブロフ氏は諭すように解説してくれた。民主主義を花瓶に例えて「少しだけ欠けたのをほっておくと、ひびはだんだん大きくなる。まあいいかと思っていると、いつの間にか割れてしまう」。毎朝起きたら注意を払い、時には行動しないと守れないものだ、と。

〈4〉そう、夏の参院選まではタカ派色を隠し、「国のかたち」を変えにかかるのは選挙後だろうと油断していると…。武器輸出三原則は例外の積み重ねですでに骨抜きに。集団的自衛権行使を模索する動きも、自衛隊の国防軍への改編や交戦権を認める新憲法づくりも、この国ではもう相当に前のめりなのだ。 (久原穏)


=================================転載完了

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朝は「茶色に染まり始めて」いるか


 さて、如何だろうか。

 最初に告白しておくべきだろう。私(Zero)は当該コラムに取り上げられた「茶色の朝」なる短編寓話は読んでいない。それどころか、そんな小説はこの東京新聞コラムで初めて知ったぐらいで、このコラムでしか知らないほど。その範囲で判断する限りは、ジョージ・オーウエルの最早古典と呼べそうなデストピア(反ユートピア)小説「1984」に似て居る様だ。その主旨は上掲コラムの4パラグラフの内前3パラグラフに縷々述べられており、一言で言うと最初のパラグラフ〈1〉にある「「事なかれ主義」がファシズム台頭を許す」にあるようだ。
 で、最後のパラグラフ〈4〉でいきなり現・安部政権が取り上げられ、

1〉集団的自衛権行使を模索する動きも、自衛隊の国防軍への改編や交戦権を認める新憲法づくりも、この国ではもう相当に前のめりなのだ。

と言う一文で締めくくる。これと当該コラムタイトル「茶色に染まり始めた朝」の意味する処は、殆ど自明であろう。

(1) 安倍自民党政権はファシズムだ。

 で、そのように判断する根拠を上掲コラムから拾っていくと、いくら数えても以下の通りでしかない。

 ① タカ派色
 ② 武器輸出三原則の骨抜き
 ③ 集団的自衛権行使を模索する動き
 ④ 自衛隊の国防軍化
 ⑤ 交戦権を認める新憲法

 上記②~⑤は、に集約されそうである。言い換えれば、上掲東京新聞コラムは「茶色の朝」なる短編寓話をダシにして、以下の一文を「言いたい」だけだ、と断じ得よう。

(1)’ 安倍自民党政権は、タカ派だから、ファシズムだ。

 なんとも単純明快だが、単純明快なだけに「判り易く」、それだけに俗耳に入りやすい主張といえよう。ああ、これは「私説・論説室から」と銘打った東京新聞のコラムであるから、社説ほどには論理や論拠も求められず(※1)、書く記者にしてみれば気楽であるに違いない。

 が…あまりに単純化が過ぎよう。

 なるほど、「茶色の朝」の「茶色」は「ナチ党=独逸国家社会主義労働者党の象徴」なのだろう(※2)。而してナチ党が第1次大戦後の賠償と大恐慌以来の不況にあえぐドイツ・ワイマール共和国時代に再軍備やラインラント進駐のような「タカ派的政策」で人気を博し、当時「世界で最も進歩的な憲法」と言われたワイマール共和国憲法下で権力を簒奪し、ついには民主主義を蹂躙したのも歴史的事実だ。

 だが、上掲東京新聞コラムの前半〈1〉~〈3〉に縷々紹介されている「茶色の朝」の「茶色の政権」は、民主主義を蹂躙する強権的独裁政権ではあるが、ここに紹介される限り「タカ派的」或いは「右翼的」ではない。上掲パラグラフ〈3〉の作者の言や、冒頭の紹介でも強調されているのは「事なかれ主義」「政治的無関心」であり、広義に言えば「衆愚政治」ないし「国民の衆愚化」であって、タカ派も右翼も左翼も関係ない。

 然るに、安倍自民党政権をその「タカ派色」を以って「茶色の朝」の「茶色の政権」と結びつけ、ひいてはナチ党扱いすると言うのは、少なくとも牽強付会。下手すりゃ名誉棄損で裁判沙汰だ。

 大体、上掲コラム冒頭にもある「事なかれ主義」と言うならば、上記②~⑤と言う主権国家として当然(少なくとも)考え議論しなければならない事を、「平和主義」の美名の元、「平和憲法」を振りかざして、議論自体すら封じてきたことこそ、「事なかれ主義」である。
 而して左様な「事なかれ主義」を主導し、議論の材料さえ提供しない事で「国民の衆愚化」の一翼を担って来、今も担おうとしているのは、東京新聞はじめとするマスコミであろうが。

 衆愚政治/国民の衆愚化こそ、民主主義の宿敵。而してそれを宿命や宿痾にしない為には、国民自身の不断の努力が必要である(※3)。

 その国民の衆愚化防止/阻止のための努力を、補助・教導する事は、本来マスコミの使命なのだが・・・マスコミの実態は往々にしてその逆であり、衆愚政治・国民の衆愚化を扇動・先導している。

 上掲東京新聞コラムの暴論、論理的飛躍、印象操作も、そんな先導・扇動の一例であろう。

<注釈>


(※1) いや、散々当ブログで取り上げてきたとおり、東京新聞社説の論理論拠ですら、あの体たらくなんだが。 

(※2) 厳密に言うならば、SA突撃隊の制服の様な「茶色」と言うより「茶褐色」であって、赤よりも黄に近い「茶色」であるように思うが、細かい事は良かろう。 

(※3) この点は、恐らくは「茶色の」作者パブロフ氏にも同意頂けよう。