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 「冷たい計算式」シリーズは、主として我が国の「メガソーラー」や風力発電関連記事からその稼働率を計算したシリーズ記事。「冷たい推算式」シリーズはその発展型で、「1世帯当たり年間消費電力量」を他の記事から逆算して、「○世帯分の家庭の消費電力」と言う記述を電力量に換算し、稼働率を求めたシリーズ。これらを通じて、大凡太陽光発電の日本での稼働率は1/7~1/8であり、日本での一般家庭年間消費電力量は約3600kWhである事も判ってきた。

 だが、1/7~1/8、ひと声「1割」と言うのは「日本における太陽光発電所の稼働率」でしかない。外国に行けば、日照条件からして違うのだから、もっと高い稼働率の国はあろう。例えば、雨なんか滅多に降らず、赤道に近い国ならば、太陽光発電にとって好条件な筈。なのだが・・・

 AFPが報じるのは、アラブ首長国連邦(UAE)はアブダビで操業開始した、世界最大級の集光型太陽熱発電。我が国で最近話題の「メガソーラー(※1)」とは形式が異なる様だが、発電量も段違いで、

1> 砂漠地帯に6億ドル(約570億円)が投じて建設された「シャムス1」の発電規模は100メガワットで、
2> 2万世帯に電力を供給する計画だ。

・・・100MWと言うから、「冷たい計算式/推算式」シリーズで取り上げたメガソーラーの実に50倍の発電容量だ。

 この発電容量に従って、例によって「1年間24時間連続定格発電出来た場合の発電量(※2)」を計算すると、以下の式となる。

 100MW × 24h × 365日 = 100000kw×24h×365日= 876000000 kWh …式(1)

 一方、上記2〉「2万世帯に電力を供給する」を電力量に換算するのは「1世帯当たり年間電力消費量」が必要だ。UAEでの「1世帯当たり年間電力消費量」が不明なので、此処は「日本並み」と(かなり強引に)仮定すれば、先行記事「冷たい計算式―風力発電1(淡路島)、稼働率2割」で取り上げた淡路島の例から(※3)

 2000万kWh ÷ 5500世帯 = 3636kWh/世帯  …式(2)

となって、今回のUAE集光型太陽熱発電所の年間発電量が推算できる。

 2万世帯 × 3636kWh/世帯 = 72720000kwh …式(3)

 上式(3)及び上式(1)から、稼働率が計算できて…

 72720000kWh ÷ 876000000kWh =0.08301 ≒ 8.3% …式(4)

実に12分の1と、我が国における「メガソーラー」よりもさらに低い稼働率と、計算されてしまう。

 これは俄かには信じがたい。現地は砂漠だと言うから、年間降雨量は我が国より格段に低い筈で、その分日照量はあるのが道理。低緯度で赤道に近い事も、日照量としては有利な筈だ。集光型太陽熱発電と言う我が国ではあまり馴染みのない方式が、稼働率の低さ≒発電効率の低さの原因となる可能性もあるが、それよりもありそうなのは、「UAEの1世帯当たり年間消費電力量が、日本よりも大きい」事。

 ソリャ砂漠だから冷房かければ電気は食うだろうし、UAEの家電製品は日本ほどには省電力化が進んでいなさそうだから、ありそうな話、ではあるが。そうなると上式(3)及び(4)は「誤った仮定に基づく、誤った計算」と言う事になる。

 さはさりながら…淡路島風力発電の50倍の発電容量を持ちながら、4倍弱の世帯しかまかなえない「シャムス1」集光太陽熱発電所は、「役立たず」とは言わぬまでも、大げさ過ぎる仕掛け」とは言い得そうだ


<注釈>

(※1) 我が国の「メガソーラー」は集光型ではなく、並べた太陽光発電パネルで個々に発電するタイプがい様だ 

(※2) くどい様だが、これは太陽光発電や、風力発電にとっては非現実的な条件だ。だが、火力や原子力ならばこれに近い条件を実現できるし、「稼働率」を計算するための「理想的年間最大発電量」としてはこの条件を設定するのが正しかろう。無論、火力や原子力を比較する際には、やはり同じ条件で「稼働率」を計算すべきである。尤も、火力・原子力・水力はその発電量が可制御で、需要に応じて発電量を加減できるから、太陽光や風力の稼働率が「目一杯発電した実力」であるのに対し、火力・原子力・水力の稼働率は「需要に応じて加減した発電量」になる。