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「小人閑居して不善を為す」なんて言葉がある。大陸の故事で、「小人」とは子供ではなく、小物・つまらない人間。その「つまらない人間」が暇を持て余していると言うと、碌な事はしない、と言うのが「不善を為す」だ。「下っ端は、こき使え。遊ばせるな。」と言う精神にも通じるから、労働基準法に引っかかりそうな故事ではあるが、労働基準法やその背景にある「労働者保護」なんて概念の方が新しいんだから仕方が無い。とは言え「故事」だけに「古い話/古臭い話」と言う感は否めない。
そんな「古臭い話」故事を思い出したのは、「こいつ等よっぽど暇なのか?」と疑わせるような「研究成果」が発表されたから・・・
転載開始=========================================
米国のネコ、数十億羽の鳥を毎年殺害 研究
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2924432/10189809
1月30日 AFP】米国内のネコが毎年、最高37億羽の鳥と207億匹のネズミなどの小動物を殺しているとの研究が、29日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。
論文によると、鳥や小動物が死ぬ人為的な要因として、生息地の喪失や農薬、狩猟などを上回り、ネコがおそらく最大の要因だという。
研究を行ったのは、米スミソニアン保全生物学研究所(Smithsonian Conservation Biology Institute)のスコット・ロス(Scott Loss)氏率いるチーム。研究チームはネコの捕食行為についての既存の研究を分析した。
欧州と北米の温暖な地域では、屋外に出ることのできるネコは、1匹あたり毎年30~47羽の鳥、177~299匹の小型哺乳類を殺していることが過去の調査で分かっている。
一方、ネコの総数について研究チームは、およそ8400万匹の飼いネコがおり、うち数百万匹は屋外に出ることができないと計算。また、野良ネコはおよそ3000万~8000万匹と見積もった。
「屋外に自由に出られるネコは合わせて年間14億~37億羽の鳥、69億~207億匹の哺乳類を殺していると推計した。この殺害の大半は野良ネコによるものだ」と論文は結論づけている。
国際自然保護連合(International Union for the Conservation of Nature、IUCN)が毎年更新しているレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)によると、島に生息するネコが原因で絶滅した種は鳥類、哺乳類、爬虫類合わせて33種に上る。(c)AFP
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小人、或いは学者バカ
さて、如何だろうか。
今更ながら、私はAFP通信と言う報道機関を高く評価していない。朝日新聞や三アカ新聞よりはいくらか見るところもあるが、大差がないところもあるし、酷いところもある。酷い方から言うならば、北朝鮮ベッタリの報道や、支那ベッタリの歴史認識や、反日テロ組織シー・シェパードの大本営発表を右から左に流して「アディ・ギル号沈没」と二回も報じた事が挙げられよう。
その一方で、当記事にも引用したように、少なくとも日本語電子版の記事は過去大分遡れるところまでリンク保存しており、上記の「アディ・ギル号二度沈む」報道記事へのリンクも保存している処は、大いに評価できる。誤報・虚報を訂正しないのは気に入らないが、誤報・虚報をそのまま保存しているのは次善の策と言えよう。無論、最悪なのは「誤報・虚報をなかった事にする」事で、朝日新聞みたいに「縮刷版の記事を差し替える」なんて悪質なのはあまり例が無いとしても、「都合の悪い記事へのリンクは早々に切る」位は幾らも例がある。それに比べれば、AFP通信はマシな方だ。
尤も、今回取り上げた報道記事の問題点は、AFP通信の報道や報道姿勢ではなく、記事の内容そのもの、当該研究成果及び研究の「意義」だ。
精一杯好意的に(※1)解釈すると、「米スミソニアン保全生物学研究所(Smithsonian ConservationBiology Institute)のスコット・ロス(Scott Loss)氏率いるチーム。」は、どうやら「人為的原因で絶滅した種について調査研究していた」らしい。あくまでも「らしい」なのは、どうも調査対象が「種の絶滅」ではなく、「種の個体の死因」に文字通り「焦点ボケ」しているから。或いはひょっとすると「種の絶滅」なんてハナッから問題にして居なくて、純粋に「種の個体の死因」を調査研究していたのかも知れない。
1〉 論文によると、鳥や小動物が死ぬ人為的な要因として、
2〉 生息地の喪失や農薬、狩猟などを上回り、ネコがおそらく最大の要因だという。
3〉 欧州と北米の温暖な地域では、屋外に出ることのできるネコは、
4〉 1匹あたり毎年30~47羽の鳥、177~299匹の小型哺乳類を殺していることが過去の調査で分かっている。
5〉 一方、ネコの総数について研究チームは、およそ8400万匹の飼いネコがおり、
6〉 うち数百万匹は屋外に出ることができないと計算。
7〉 また、野良ネコはおよそ3000万~8000万匹と見積もった。
8〉 「屋外に自由に出られるネコは合わせて年間14億~37億羽の鳥、69億~207億匹の哺乳類を殺していると推計した。
9〉 この殺害の大半は野良ネコによるものだ」と論文は結論づけている。
とまあ、尤もらしい数字を挙げての「結論付け」な訳だが、率直に言って二つの疑問が浮かぶ。
【Q1】 上記8〉の「結論」たる数字、「猫によって殺される鳥や小動物の数」を推算する事に、意義がどれほどあるのか?
「種の絶滅」を問題にしているのならば、まだわかる。種の絶滅を防ぐために、人為的要因で種の絶滅を招いているのならば、その人為的要因を分析し、特定するのは重要だろう。だが、「猫や、野良猫による虐殺」が「人為的要因による絶滅」と言い得るかは非常に疑問だ。
さらに言うならば上記4〉や上記7〉では実におどろおどろしい数字が並んで居る訳だが、頭冷やして考えれば明らかだが、その「殺した鳥や小動物」の相当部分を、殺した猫は食って居る筈だ。「捕食」とはそういう事。喰うために、エサにするために殺しているのだ。それは、猫以外の鳥や小動物の捕食者、例えば猛禽類等が捕食するのと同じ動機、同じ行動。ソリャ飼い猫は飼い主からエサをもらえば捕食の必要は無さそうだし(※2)、野良猫が食うためではなく「遊びで殺す」事だってあるかも知れないが(※3)、「猫による殺害」を「種の絶滅原因」として特別視する理由はサッパリ理解できない。「猫による殺害」は「人為的要因」と言う説も、上記9〉「この殺害の大半は野良ネコによるものだ」と結論付けられては、説得力が無い。
「種の個体の死因」を問題にしているのならば…私にはもはや理解不能だ。それはある種の「博愛精神」かも知れないし、ある意味「動物保護の精神」なのかも知れないが、先ず一体「どんな死因を人為的要因に依る死」と定義したかをつまびらかにした上で、「何故それが問題か」を説明しない限り、上記【Q1】の回答「当該調査研究の意義」は説明できないだろう。が…多分、「種の個体の死因を問題にしている人」の説明は、私には全く理解できないだろうな。
更なる疑問は・・・
【Q2】 当該調査研究結果は、どう活用されるべきなのか。
報じられる限りでは「猫を減らせ」が結論で、飼いネコよりも主として野良猫を減らせと言う主張とも取れるから、好意的に解釈するならば「野良猫を駆り集めて飼い猫化し、飼い主から十分エサを与えることで、猫による鳥や小動物の殺害を減らす」と言う事になりそうだ。一言で言えば「野良猫飼い猫化計画」だが…それは、飼い猫にとっても飼い主にとってもある種の強制である事は否めない。(※4)
或いはもっと手っ取り早く、「種絶滅の人為的主要因」に祀り上げられたらしい猫を「減らす」即ち「野良猫駆除計画」を推進しているのかも知れない。だがそれは、「鳥や小動物の死を減らすために猫を殺す」事に他ならない。ソリャ野良猫全滅させても種としての猫は安泰だろうが、種として安泰ならば(※5)虐殺して良い、って理屈にはなるまいが。
或いはもっと単純に、「結果は結果。活用はこれから/別の人」と言う考えかも知れない。ある意味中立的だが、その結果を公表する以上、一定の責任は免れないだろう。例えば、この研究結果を見て、近所の野良猫を虐待・虐殺する「正当な理由が見つかった」と考えるバカが、出て来ないとも限らない。
いささか邪推をめぐらすならば、この論文を書いた人/人達は余程「猫嫌い」なのではなかろうか。
そう考えると「猫の捕食行動」を「種の絶滅を引き起こす人為的要因」に祀り上げてしまった(らしい)事も、尤もらしくオドロオドロシイが実は当て推量の「推算」も、得られた結論の無責任さも、全部筋が通って見えて来るんだがね。
私は別に「猫好き」ではないが、斯様な不当な評価、不条理な冤罪は、見過ごせないな。
<注釈>
(※1) 無論、私ができる限りの「精一杯好意的」だから、おのずと限界はあるし、それが「人類の限界」などと主張する心算は毛頭ない。多分、ダライ・ラマ師なんかなら、私よりもはるかに好意的に解釈してくれるだろう。故・立川談志師匠なら…私なんぞより遥かに辛辣に酷評した、のではなかろうか。(※2) それとて、人間の方の一方的な理屈だろう。飼い猫は、いつ野良猫にされるか判らないし、選択も出来ないんだから。
(※3) 他の動物は「遊びで殺す」事をしないのだろうか。無論、人間がする事は広く知られているが。
(※4) そもそも野良猫を飼い猫化するのも大変そうならば、飼い主を見つけ出すのはもっと大変そうだが。
(※5) 「食う」と言うのならばまだしも。