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 ヤマザキ・マリ原作のマンガ「テルマエ・ロマエ」については以前記事にしたところ。この映画はその実写版であり、公開当時は相当に話題となったようだが・・・見に行く間もなく公開は終わってしまった。DVD&BDが発売されたのをきっかけに、「最近のDVDとしては高いよなぁ」と思いつつ購入し、ようやく鑑賞の機会を得た。

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 正直、冒頭のオープニングでいきなり(一人)大爆笑してしまった。荘厳な音楽をバックに、古式ゆかしい字幕と重厚なナレーションで始まるオープニングは、まさしくワーナーブラザースか20世紀フォックスの大スペクタクル映画のパクリ。具体的に映画名を挙げるならば、「ナバロンの要塞Guns of Navalon」のオープニングにそっくりだ。古き良き「映画未だ華やかなりし頃」へのオマージュに、「思わずニヤリ」ではなく、大爆笑だ。

 (((BILINGUAL)))


 全体を通じては、「うまく一つの話にまとめたな」というのが印象。原作は5巻まで通読しているが、そのエピソードを要所要所に利かせて、設定何ぞも主人公ルシウス技師以外はあれこれいじって、上手いこと一つのストーリーにまとめている。この脚本だけでも、ちょっとしたものだ。

 最大の設定変更は、ヒロインだろう。
「伊東温泉の天才」ではなく、「漫画家志望で昼は派遣社員だが、どちらもクビになって田舎(※1)の温泉宿に帰る」と言う、あまりヒロインらしからぬヒロイン。そうは言ってもヒロインで、主人公ルシウスとそれ相応の事がある/事になる。が、何がどうなるかは、見てのお楽しみ、としよう。
 大いに影響する皇帝ハドリアヌスも、だいぶ原作とイメージが違う。どちらかと言うと「暴君」というのを前面に出している。まあ、ローマ皇帝ぐらいの絶対権力者は、多かれ少なかれ「暴君」的であることは免れないだろうが。それでも最後にはルシウス技師を認め、その才を群衆の前で賞賛する(※2)から、「絶妙な脇役」と言うところ。

 「余と波長が合うとは。そなた、暴君の素質があるようだな。」


  古代ローマ式泡風呂

 実は一番気に入らないのは、ルシウスの親友、原作では彫刻家になっていたマルクスだ。出番が少ないのはまだしも(※3)、あの情けない行動では、原作にあった「良き友人ぶり」が欠片しか見られないではないか。身長190センチの阿部がルシウスを演じては、「大男」を演じる俳優は居そうにないから、原作通りの「大男」とは行くまいが。(※4)

 先述の通り対照的に原作に相当忠実なのが、主人公・ルシウス技師だ。最初のタイムスリップでの「平たい顔族」との劇的な出会い。ラストにも登場する「ケロヨン」洗面器は、DVDのデザインにもなっている。そして何より、「テルマエ技師にしてローマ人という誇り」と「浴場と入浴に対する情熱」。そう、この二つがなければ、ルシウスはルシウスでなくなるし、我ら「平たい顔族」との接点すらなくなってしまう(※5)。

 「だとしたら、悲しき民族だな。」


 「私は、己を殺してまで、生きていたくはない。」

 
 特筆大書したいのは、特に最初の銭湯へのタイムスリップ時の我ら日本人・「平たい顔族」の「平たい顔ぶり」である。これまた「原作通り」と言えるし、比較対象が主人公・ルシウス・阿部ちゃんだから、大概の日本人は「平たい顔」に違いないのだが、それにしても、笑ってしまうぐらいの「平たい」顔ぶり。これもキャスティングの巧さ。「古代ローマ人側」に彫りの深い・濃い俳優を揃えた見事なキャスティングともども、「俳優を知っていれば配役見ただけで笑えてきそう」である。まあ、私は芸能ネタに非常に疎いので、配役だけで笑うことはなかったが。

 ストーリーの秀逸さは先述したが、それはラストシーンからエンディングにまで及んでいる。オープニングと同様に重々しいナレーションで、ハドリアヌス帝他の「その後」を紹介しながら、その実・・・まあ、これも見てのお楽しみだ。

 全体として、感涙にむせぶとか、号泣するとか言う映画ではない。が、大いに笑える、見終わってスカッとする映画。

 見る前は確かに「最近のDVDとしては高い」と考えたが、見終わってからは、
DVDの値段は全く高いとは思えない。最近の映画館なら2、3回分の値段でしかないし、これはオススメ、お買い得だ(※6)。

 「ローマには、全ての道が通じているのだから。」



<注釈>

(※1) 訛からすると、東北か北関東らしい。 

(※2) ついでに、タイムパラドックスを「修正」する。 

(※3) ラスト近くの”ルシウス脚光”シーンでは拍手していたが。 

(※4) でも原作通りの「師匠思い」ではあるな。 

(※5) その意味で「月見の湯」がハドリアヌス帝の発案になってしまったのは、少なからず残念だ。あのエピソードは、原作の中でも私のベスト5に入るエピソードなのだが。この映画にはちょっと入りきるまい 

(※6) ブルーレイディスク化する価値は、ちょっと認めがたいが。それをいうならDVDよりもBDで見たいなんて映画は、滅多にない。