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WSJ紙の報道を元にした記事はいくつもアップしているが、ひょっとすると「社説を斬る」シリーズにはWSJ紙は初登場かも知れない。斬り甲斐がある、と言うものだ。
the Wall Street Journal(略称WSJ)と言えば、相応に知られたアメリカの新聞。名前からすると「アメリカの日経」と呼びたくなるような経済紙のようだが、実はアメリカで1、2を争う発行部数を誇る新聞(*1)。その「アメリカの有力紙」が今次衆院選に大勝した自民党の安倍総裁(もうすぐ首相)を取り上げているのだが…まあ、まずは御一読の程を。
<注釈>
(*1) ま、発行部数が多ければ良い、と言う訳ではないが。日本の新聞なんざぁ世界的には有数の発行部数。2005年のデータで日刊紙の上位5紙を日本の新聞が占める( http://www.wan-press.org/article2825.html )。が・・・・あの体たらくだ。因みに、上位10紙の内7紙が日本の新聞で、堂々の10位が「東スポ」こと東京スポーツなんだから、笑える。ほ、かの新聞じゃ受け付けぬ。な、にがなんでも東スポさ。 ―ラブユー東京スポーツ―
転載開始=========================================
【WSJ紙社説】日本の新首相は昔からのタカ派
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324222904578186113942934372.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsFirst
〈 〉はブログ主によるパラグラフ番号
〈1〉 12月16日、日本の有権者は与党だった民主党を政権の座から引きずり下ろした。しかし、これで何が変わるというのか。今回の選挙では外交政策がより重要な争点になったので、経済面ではおそらくそれほど変わらないだろう。
〈2〉 衆議院の全480議席中、自民党は294議席を獲得し、安倍晋三総裁が再び日本の首相となる。ところが自民党の比例選(定数180)での得票率は27.62%と振るわず、全体の投票率も前回の衆院選(2009年)の69.28%から大きく落ち込んで59%台前半となり、戦後最低だった1996年をも下回った。
〈3〉 安倍氏が提案する経済政策は、日本銀行による建設国債の直接引き受けで賄われる財政出動が柱となっている。言い換えると、物価上昇率を新たな目標値である2-3%に引き上げるために紙幣を増刷するということだ。日銀の現在の物価上昇率目標は1%である。
〈4〉 ところが、日銀はすでに資金供給量を大幅に拡大してきており、デフレに歯止めがかけられないのは信用需要があまりにも低いからである。経済の再生には、ケインズ主義的、あるいはマネタリスト的措置よりも、規制緩和や貿易の自由化の方がよっぽど効果がありそうだが、自民党はいまだに企業や農業の既得権を守ろうとしている。
〈5〉 1つ良い面があるとすれば、それは現政権が提案した消費増税が実現しないかもしれないということだろう。5%から8%への最初の引き上げは2014年4月の実施が予定されているが、経済状況が上向いていれば、という条件が付いている。安倍氏がこの条件を利用して大惨事を防ぐことも可能なのだ。
〈6〉 安倍氏の今回の勝利は、いろいろな意味で中国の胡錦濤国家主席、韓国の李明博大統領のおかげとも言える。両者はこの1年間に日本との領有権争いを激化させてきた。中国政府は先週、尖閣諸島上空にパトロール機を派遣、日本の領空を侵犯し、緊張をエスカレートさせた。内閣府の最近の調査によると、日本人の93%が日中関係を「友好的ではない」と感じているという。
〈7〉 安倍氏の勝利と「日本維新の会」の台頭で、学者たちのあいだではすでに日本の右傾化を心配する声が上がっている。新総理となる安倍氏は、従軍慰安婦問題に関する1993年の河野洋平官房長官談の取消し、歴史教科書の検定手順の見直し、靖国神社への参拝、憲法9条の改正などを行うつもりだと述べてきた。
〈8〉 仮に安倍氏がこうした多分に象徴的な計画を最後までやり抜くとすると、大半のアジア諸国との関係は悪化するだろう。だが、こうした言動は、国益を守るためには毅然とした態度を取るつもりだという同氏のアピールだった可能性が高い。かつての安倍首相(2006-2007年)は、実際的な路線を歩み、中国訪問後は同国との関係も改善した。日本国民は外国との争いに興味がなく、平和国家という戦後の自己像に深い愛着を持っている。
〈9〉 安倍氏は中国の好戦的な態度に対抗するための軍事力強化プログラムで建設的なナショナリズムを擁護することもできる。国内総生産(GDP)の1%を上限とする日本の防衛予算は、1990年代以来、景気と共に伸び悩んできた。自衛隊は新しい武器を買い続けるために、代価の支払いを将来に持ち越す後年度負担という仕組みを利用している。つまり、防衛費1%枠が撤廃されないと、新たな防衛支出を企てる能力はさらに制限されるのである。
〈10〉 それよりも喫緊の課題は日米同盟の強化である。沖縄の米海兵隊基地移設をめぐる最近の混乱の責任は民主党にあるが、この問題に関しては自民党にも誇れるような実績はない。これまでは地元の利益に配慮してきたが、今や最終合意案で事を進めることこそが国益となる。
〈11〉 オバマ政権が喧伝した「アジアへの軸足」が軍事資源不足に陥っている以上、戦力強化には同盟国間のより良好な協調が必要となる。米国が日本と韓国に軍事情報共有協定の締結を促したのもそのためだが、機嫌を損ねた李明博大統領が署名直前にこれを延期した。今週、韓国では新たな大統領が選出されるが、このことは日韓関係において新たな一歩を踏み出すチャンスとなり得る。
〈12〉 しかし、安倍氏が第2次世界大戦の傷口をほじくり返せば、それも台無しになってしまうだろう。衆議院の大多数議席を利用して日本を「普通の国(元民主党幹事長、小沢一郎氏が主張する国のあり方)」にすることができれば、安倍氏が自民党への負託を取り戻すことも可能だ。逆に党内の過激論者たちに迎合すれば、安倍氏は負託を手放すことになるだろう。
=================================転載完了
.ピンボケしているのは、WSJ紙社説か? 私か?
さて、如何だろうか。
一読した位では、一体何を言いたいのか判らなかったので、上掲の通りパラグラフ番号を振って再読して見た。どうやら、「一読した位では何を言いたいのか判らなかった」のは、タイトルと社説本文の相関が希薄であるためらしい。
何しろタイトルは「日本の新首相は昔からのタカ派 」と言うから、結構なインパクトだ。そのくせ本文の方で「タカ派」と結びつくのは、全部で12あるパラグラフの内、<6> <7> <8> <9> <12> の5つと半分以下。その内「昔からタカ派」となるとさらに減って・・・なんと<7>しか残らない。
〈6〉は「この1年間」と明確に区切っているから最近の話。
〈8〉は第1次安部政権の2006-2007年の話をしているが、その時は「タカ派はポーズにしか過ぎなかった」と言うスタンス。
〈9〉と〈12〉は間もなく発足する第2次安部政権が何を為すかと言う話だから、今現在と今後の話。
これでタイトルが「日本の新首相は昔からのタカ派」と言うのは、何かの誤訳ではないかと原文を当たろうとしたら、元のタイトルは「Japan's New Old Hawk 」。直訳すると「日本の新しくて古いタカ派」と言うところで、決して「日本の新首相は昔からのタカ派 」と訳せない事は無い。
気を取り直して、ではその「昔からのタカ派」部分<7>に目を向けると、全文を掲載しても以下の通り。
1〉 安倍氏の勝利と「日本維新の会」の台頭で、学者たちのあいだではすでに日本の右傾化を心配する声が上がっている。
2〉 新総理となる安倍氏は、従軍慰安婦問題に関する1993年の河野洋平官房長官談の取消し、歴史教科書の検定手順の見直し、
3〉 靖国神社への参拝、憲法9条の改正などを行うつもりだと述べてきた。
上記1〉~3〉では「安倍新首相がいつからタカ派か」と言うのは判然としない。上記の通り、その後の〈8〉で、
4〉 かつての安倍首相(2006-2007年)は、実際的な路線を歩み、中国訪問後は同国との関係も改善した。
5〉 日本国民は外国との争いに興味がなく、平和国家という戦後の自己像に深い愛着を持っている。
と上記4〉で「第1次安部政権は実質タカ派ではなかった」と断じているのだから、益々判らない。一体、タイトルにも在る「日本の新首相は昔からのタカ派」の「昔から」と言うのは、原題で言う「Japan's New Old Hawk」の「Old」と言うのは、具体的に何年の事を指しているのか。上記4〉からすると、それは2007年以降でなければ辻褄が合わないんだが、だとすれば高々7年前。7年前を‘Old’とは言うのかも知れないが、「昔」と言うかぁ??
と、ここまで考察して、別の可能性に気付いてしまった。即ち当該社説タイトルの「日本の新首相は昔からのタカ派」と言うのは言葉足らずで、正確には「日本の新首相は昔からのタカ派のポーズ」であり、「タカ派のポーズ」は第1次安部政権時代2006-2007より以前に遡れる、と言う解釈。同時に、〈8〉は今度の第2次安部政権でも「タカ派主張はポーズのみに終わる/終われ(*1)」と言う期待。それが上記5〉の日本国民観=日本人観ともつながり、以下に示す当該社説の〆とも関連している、と言う解釈。
6〉 しかし、安倍氏が第2次世界大戦の傷口をほじくり返せば、それも台無しになってしまうだろう。
7〉 衆議院の大多数議席を利用して日本を「普通の国(元民主党幹事長、小沢一郎氏が主張する国のあり方)」にすることができれば、
8〉 安倍氏が自民党への負託を取り戻すことも可能だ。
9〉 逆に党内の過激論者たちに迎合すれば、安倍氏は負託を手放すことになるだろう。
何しろ、上記9〉「党内の過激論者に迎合」せず、上記7〉「(元民主党幹事長、小沢一郎氏が主張する国のあり方)普通の国」にすることが「日本国民の負託を取り戻す事」であり、その日本国民は上記5〉の通り「平和国家という戦後の自己像に深い愛着を持っている」とWSJ紙は断じているのだから、これでどうやら意味が通りそうだ。
早い話、WSJ紙社説は安倍晋三氏の唱える「従軍慰安婦問題に関する1993年の河野洋平官房長官談の取消し、歴史教科書の検定手順の見直し、靖国神社への参拝、憲法9条の改正などを」実行せず、言葉のみに止めろと主張して居る訳だ。それこそが、恐らくは「自称人民解放軍野戦司令官」我が敵・小沢一郎の言う「普通の国」なのだろう。小沢一郎の言う事はころころ変わる事もあり、WSJ紙の言う「普通の国」ってコンセプトは正直判らないんだが、当該社説から「逆算する」とそうなる。また、我が敵・小沢一路ならば如何にも主張しそうなコンセプトでもある。
だが、そうだとすると、少なくともこのWSJ紙タイトルは、大いに誤解を招く「悪い翻訳」であろう。
<注釈>
(*1) 「鳩山由紀夫に成れ」と言う事か