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 「卒原発」をキャッチフレーズに小沢新党「国民の生活が第一党」が看板を架け替えた「未来の党」が、その旗揚げに際し公言していた「原発から卒業できる道」(*1)とやらが、「卒原発工程表」「卒原発カリキュラム骨子」として公開されたらしい。前者は東京新聞の記事から、後者は「日本未来の党」公式ホームページから引用し後掲するが、予想通りの凄まじいシロモノなので、本記事は「東京新聞以下」と銘打った。意味するところは、「”未来の党”は、東京新聞以上の脱原発原理主義者だ!」と言う意味だが、どうも、それだけでは済まないようだ。

<注釈>

(*1) 「未来の党」は「現在の党」たり得るか?1-東京新聞vs産経 社説対決

【1】未来の党「卒原発」工程表―これは、工程表ではない
A)仕組み
A1)原子力損害培養金額の大幅引き上げ(20兆円規模)
A2)使用済み燃料の総量規制と100年の乾式貯蔵場所決定
A3)建設中含む原発の新増設禁止

B)3年間の経過措置
B1)電力会社に値上げ相当分の差額を交付国債で給付
B2)東京電力は法的に整理し①電力供給 ②損害賠償 ③福島原発事故処理対応 に
三分割
B3)発送電分離を含む電力システム改革を実施

C)中後期プログラム
C1)開かれた競争力ある電力・エネルギー市場の確立
C2)再生可能エネルギーの飛躍的な普及

注意:「A)」、「B2)」等は、筆者が便宜上振ったもの。

【2】卒原発カリキュラム骨子―空虚な長文
http://www.nippon-mirai.jp/curriculum/index.html
平成24年12月02日(日)更新

注意:「Ⅰ」、「(2)」「③」等は、筆者が便宜上振ったもの。一部はオリジナルにあったものを踏襲

Ⅰ卒原発とは?

「卒原発」とは、スローガン的に即時原発ゼロをいうのでなく、また、遠い未来の原発ゼロを適当に言うのでもなく、『原発稼働ゼロから原発完全ゼロへの現実的なカリキュラム』を修了するという意味です。
日本未来の党は、現在が実質的に「原発稼働ゼロ」であるという現実から出発して、「エネルギーシフト」という未来に向けた助走と離陸を経て、どんなに遅くとも10年後には完全に原発から卒業するためのカリキュラムを、皆さまとともにつくって参ります。以下は、そのための骨子です。

Ⅱ卒原発の二段階

「卒原発」は次の二段階で進めます。

(1)未来への助走期~原発稼働ゼロの混乱と危機からの離陸に向けて
実質的に「原発稼働ゼロ」の現在からおよそ3年間は、卒原発の前提環境をつくるとともに、卒原発を可能にする仕組み作りと電力システム改革の道筋をつける、「未来への助走期」となります。

(2)未来(エネルギーシフト)への離陸期
「助走期」のあとは、加速度的に「未来へのエネルギーシフト」をする、最長7年間の「離陸期」となります。「助走期」で整えた前提環境に基づく着実な廃炉と電力システム改革をさらに進めます。

(1)未来への助走期

未来への助走期
当面の3年間は、原発と電力システムの大混乱期であり、それを円滑に乗り切り、卒原発と新しいエネルギー未来への離陸に向けた政策集中期間とする。原発をなくし、電気料金の値上がりを抑制し、再生可能エネルギーの普及を可能にする経済社会システムを設計する。

①前提環境の整備
~動かさない、造らない、ゴミを増やさない、値切らない~
1.大飯原発は即時に稼働停止する(他の原発再稼働も認めない)。
2.大間等の建設中を含む原発新増設を禁止する。
3.高速増殖炉もんじゅと六カ所再処理工場は即時に廃止する。余剰プルトニウムは不動化処分にする。
4.核拡散と原発リスク拡大を促す原子力輸出を禁止する。
5.使用済み核燃料の総量規制を実施し100年間の乾式貯蔵場所の社会的合意をつくる。
6.原子力損害賠償金額を大幅に引き上げる(最低20兆円規模にする)。
7.世界最高水準の放射性物質・廃棄物規制体制の確立と安全基準の改訂・適用。
8.各原子炉の危険度総合評価の実施とランク付けに沿った廃炉計画を策定し実施体制を構築する(炉の寿命は最長でも40年)。

②電力システム改革の断行
発送電分離を含む電力システム改革を断行し、競争による電気料金の引き下げ、再生可能エネルギーの普及、新しいエネルギー産業の創造の基盤をつくる。

③電力危機への対処
電気料金値上げや電力経営危機への当面の対処として、電力会社に値上げ相当の
差額分を交付国債で給付する。国債発行費用は、送電料に上乗せして回収する。そ
の額は、発送電分離等を通じて見込まれる電気料金の低下分で相殺する。安定的で
公平な料金回収が見込まれる送電料に。

④東京電力の法的整備
東京電力株式会社は、現在の実質国有化を見直し、法的整理(破綻処理)して3分割する(グッド=電力供給・バッド=損害賠償・ワースト=福島原発事故処理)。合理化努力を怠り、賠償が不十分で経営責任・貸手責任を問わないまま、事故のツケを税金と電気料金値上げという国民負担に転嫁し続ける状態に終止符を打つ。

⑤国の責任で損害賠償と被ばく防護
国が直轄して福島第一原発からの放射能汚染の拡大を防ぎ、一人ひとりの被ばく防護と生活再建を最優先しつつ、行政区画により差別的取扱をすることなく、福島県を中心とする損害賠償や被ばく防護(避難の権利保障、除染、健康管理)に責任をもって対応する。

⑥震災復興のための震災がれき処理
震災復興のために被災地のガレキ処理が重要かつ不可欠だが、全国各地の国民に不安を与えている現状の広域処理は見直す。放射能汚染の拡散リスクを最小化することを最優先した上で、廃棄物処理の原則(3R=減らす・再利用・リサイクル)や化学物質・重金属汚染のリスクを慎重に見極めながら、柔軟に多様な処理方法を適用しつつ、迅速に進める。

⑦廃炉地域経済シフトプログラム
原発停止及び廃炉に伴う原発立地地域の雇用や経済への影響緩和と活性化のための地域経済シフトプログラムを実施する。

⑧廃炉・廃止に伴う財政支援措置
過渡期の混乱を避けるため、発送電分離を含む電力システム改革を前提に、原発廃炉や六カ所再処理工場の廃止措置に伴う財政支援措置を実施する。

(2)未来(エネルギーシフト)への離陸

未来(エネルギーシフト)への離陸
当面数年間の混乱期を乗り越えた後には、公正な競争による電力・エネルギー市場の形成を通して、地域分散ネットワーク型のエネルギーシフトを加速させます。①着実な廃炉の推進と使用済み核燃料の乾式中間貯蔵を実施する。
②開かれた競争的な電力・エネルギー市場の確立を通じて電気料金を低下させる。③節電発電所の普及拡大とエネルギー効率化を進める。無理のない節電・省エネがむしろ経済・経営に良い環境をもたらす仕組みを整備する。
④天然ガスなどの分散型発電・コジェネレーションの普及促進を通じ、石油・石炭への依存度を減らす。
⑤地域分散型の再生可能エネルギーの飛躍的な普及環境により、内発的・創造的なエネルギー産業を創発し地域の雇用拡大と経済の活性化を図る。

判定1:「未来の党」は、東京新聞以上の脱原発原理主義者である

 さて、如何だろうか。

 先ず上掲二つの文書により「未来の党」を「東京新聞以下」=「東京新聞以上の
脱原発原理主義者」と断じた理由を述べよう。先行記事で取り上げた東京新聞社説「「脱原発」新党 民意のよき受け皿に  http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012112802000128.html」には、次の一文があった。

東1〉 原発ゼロまでのスケジュールや代替エネルギー、電力供給地域の経済・雇用対策について、
東2〉大きな枠組みとして統一的な考えを示せないものだろうか。

 上記東1〉~東2〉の意味するところは、当ブログで散々「脱原発原理主義」と槍玉に揚げている東京新聞ですら、上記東1〉「原発ゼロまでのスケジュールや代替エネルギー、電力供給地域の経済・雇用対策」を示す必要性を認め、上記東2〉「大きな枠組みとして統一的な考え」レベルであれ早急に示す事を「未来の党」に求めているのに対し、それにこたえる形の上掲【1】及び【2】が、後述の通りあまりにお粗末であり、とてもその必要性を認めているとは思えない、から。逆に言えば「大きな枠組みとして統一的な考え」レベルとして「原発ゼロまでのスケジュールや代替エネルギー、電力供給地域の経済・雇用対策」を未だ有さないまま「未来の党」が発足し、候補を立て、今や衆院選挙戦に突入していると言う「実に恐るべき事実」故である。東京新聞よりも酷い「脱原発原理主義」=「脱原発が全てに優先すると考えている」と、判定する他あるまい。

 ああ、もう一つ解釈があるな。

 卒原発」と称する「過激な、急速な脱原発」と言う「未来の党」の唯一にして当然ながら最大(*1)の金看板が、先の衆院選挙に於ける民主党党首だった鳩山由紀夫の「普天間基地移設先、最低でも県外」と同じぐらい、裏付けも方策も根拠もない唯の「選挙向けリップサービス=口約束」である、と言う解釈がある。

 上記何れの解釈を取るにせよ、問題は上掲【1】~【2】として示された「未来の党」の「卒原発計画」だ。ではその「卒原発計画」に、どの様に「原発ゼロまでのスケジュールや代替エネルギー、電力供給地域の経済・雇用対策」が示されているか、見て行こう。


<注釈>

(*1) 「唯一の看板」なのだから、理の当然ながら「最大の看板」だ。と同時に「最小の看板」でもあるが。