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「離島奪還訓練」。
「訓練が役立つ日など、来ない方が良い。」とは海上自衛隊観艦式ポスターの実に渋くも含蓄在るフレーズ(*1)だが、そんな「役立つ日が来てほしくない訓練」の中でも上位に位置するのが、この「離島奪還訓練」だろう。何しろ「奪還」であるから、一度は奪われ、占領されている事が前提(*2)。「そんな事態は起きないようにする!」と言う人もありそうだが、そもそも戦争と言う非常事態に備え、ただ一日の為に百年兵を養うのが軍隊であり、自衛隊であるのだし、島嶼防衛が常に成功するとは限らないのだから、離島奪還訓練もあって当然。無ければ不備と言うべきだろう。
無論、「離島奪還訓練」と一言で言ってもレベルは種々ある。何しろ上陸作戦の一種だし、敵前上陸(*3)さえ想定されるのだから、実際の作戦は非常に大規模。「史上最大の作戦」と言われるのが米軍主体(*4)の第2次大戦ノルマンディー上陸作戦なのだから、実戦規模の実動演習は、そうおいそれとはやれない。規模を縮小したり、図上演習・机上演習で済ますことも多かろう。とは言え必要な訓練であるから、機会を見つけ、予算資材期日等の許す限り実施されるべきなのが「離島奪還訓練」である。
報じられているのは、日米共同による離島奪還訓練を巡る報道。報じているのは沖縄タイムスと産経新聞。まずは両記事、ご一読あれ。
<注釈>
(*1) http://www.mod.go.jp/msdf/formal/kankan/2012/poster.html 他にも「誰よりも強くなる。誰とも戦わない為に。」何て感涙モノのポスターもある。(*2) 無論、我が国の場合この訓練を「役立てて」、竹島や北方四島を奪還するというシナリオも考えうるが。(*3) 私の知る限り、現代戦で敵前上陸を成功させたのは、我が国と米国、辛うじて英国を数えるのみである。それほどの難事でもあれば、稀有な事象でもある。(*4) 英軍は助太刀、と言うところ。策源地は提供しているが。
①【沖縄タイムス】日米政府、離島奪還訓練見送りへ
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-20_40420
政治 2012年10月20日 10時27分
【東京】日米両政府は19日までに、渡名喜村の入砂島で予定していた自衛隊と在日米軍による共同の離島奪還訓練を見送る方向で調整に入った。地元からの反対が主な理由だが、米兵による暴行事件を受け県内で日米両政府への不満が高まる現状への配慮も要因の一つとみられる。
日米両政府は当初、11月月5日から16日まで予定している日米共同統合演習の一部として、入砂島での訓練を想定。島しょ部の奪還を想定した共同訓練を国内の離島で初めて実施する背景には、尖閣諸島問題の意識もあった。
一方で、同村の上原昇村長は17日に沖縄防衛局を訪れ、武田博史局長に訓練中止を求めていた。
②【産経】【防衛オフレコ放談】米政府もビビる奪還訓練 首相は「ホワイトハウスに…」
2012.10.21 12:00 [防衛オフレコ放談] http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121021/plc12102112010003-n1.htm
沖縄県・尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島
ようやく沖縄を舞台にした日米共同での離島奪還訓練が実現する。南西方面で中国による離島侵攻の脅威が高まる中、事態が起きる危険性の高い沖縄での訓練が不可欠であることはいうまでもないが、奪還訓練を行うかどうか確定させる最終段階でもめた。日米とも政府内で中国を刺激しかねないとして慎重論も根強かったためで、「米側もかなりビビっている」(政府高官)という。野田佳彦首相は異を唱えなかったが、最終判断はホワイトハウスにげたを預けるという丸投げぶりだった。
■演習の最大の目玉
離島奪還訓練は11月上旬から中旬に行われる日米共同統合演習(実動演習)の中のシナリオの一つ。日本国内の離島での共同奪還訓練は初めてで、今回の演習の最大の目玉だ。
訓練には沖縄県・尖閣諸島をめぐり高圧姿勢を強めている中国を牽制(けんせい)する狙いがある。
奪還訓練の舞台は沖縄県渡名喜村(となきそん)の入砂島(いりすなじま)だ。那覇の西北約60キロにある無人島で、米軍は島を「出砂島(いですなじま)射爆撃場」と呼称し、戦闘機やヘリコプターによる爆弾投下訓練などに使っている。
訓練では島嶼(とうしょ)防衛の中核である陸自西部方面普通科連隊(長崎)と、在沖縄の主力戦闘部隊の第31海兵遠征部隊(31MEU)が中心になる。
共同統合演習の内容は開催の1カ月ほど前に確定させるのが通例で、今回でいえば10月上旬。ところが、まさにその時期に迷走が始まった。
■唐突な「非公開」指示
「離島奪還訓練は非公開にしろ」
防衛省内で唐突に指示が下った。(1)奪還訓練を含む海上・航空作戦(2)弾道ミサイル対処(3)統合輸送-。それらの主要演習のうち、入砂島を使う奪還訓練だけは事前発表から除外し、訓練の様子もマスコミに公開しないというのだ。
防衛省内では当初、内局(背広組)、自衛隊(制服組)とも「淡々と訓練を行うべきだ」との認識で一致しており、もちろん公開も前提にしていた。
なのに突然、非公開の指示が出たのはなぜか。「外圧」を受けたからにほかならない。
まず、日本政府内では外務省に奪還訓練の実施に否定的な意見があった。対中配慮からだが、これは今に始まったことではない。
防衛省にとって想定外だったのは米政府からの外圧で、ある情報が伝わってきた。
「国務省は訓練自体を中止にしろと主張している」
米オバマ政権の対中政策の特徴は「ステルス封じ込め」と指摘され、対立を表面化させないことに重きを置く。それを踏まえれば、訓練による刺激を嫌う国務省のスタンスは容易に想像できる。しかし、「訓練中止」まで求めてきたことに防衛省内では衝撃が走った。
■訓練中止の“前科”
この時点で、訓練を実施するかどうかは野田首相の判断を仰ぐことが決まった。これも極めて異例の措置だ。
「わかった」。首相は防衛省側から共同統合演習について説明を受けると、奪還訓練を含め演習内容を了承した。ただ、こうも強調したという。
「まだホワイトハウスは結論を出していないんだな…。とにかく向こうの意向をよく聞いてくれ」
あきれるばかりの判断丸投げだ。国務省も最終的に訓練実施を認め、ホワイトハウスも反対しなかったため事なきをえたが、仮にホワイトハウスが「ノー」と回答すれば、首相は奪還訓練を中止させるつもりだったのだろうか。
奪還訓練を公開とするか非公開とするかも定かでなく、さぞ首相の無責任ぶりにいらだっているであろうと防衛省幹部に連絡をとると、予想に反し安堵(あんど)していた。
この幹部は民主党の“前科”を目の当たりにしている。
平成22年12月、陸上自衛隊は大分県の日出生台(ひじゅうだい)演習場で島嶼防衛訓練を行うことを計画していた。だが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を受け、同年10月、北沢俊美防衛相(当時)が「中国を刺激する演習は控えろ」と命じ、演習内容を変更させたのだ。
中国との対立といい訓練内容といい、今回は2年前のケースと酷似している。
先の幹部は「余計な口を挟まれるより、よほどましだ」と話す。たしかに北沢氏の悪しき決断力に比べれば、野田首相の丸投げはベターと思えてくる。
余談ながら、そんな北沢氏がいまだに防衛省で院政を敷こうとしているというから、これまたあきれる。(半沢尚久)
日米共同離島奪還訓練。実施? /中止?
さて如何だろうか。
如何も何もないな。明白だ。日米共同離島奪還訓練について、沖縄タイムスは「見送る方向で調整に入った。」と報じ、一方の産経は「揉めはしたが、実施」と断じている。産経報道の方が一日後の記事であり、同記事によれば、
産1〉 「国務省は訓練自体を中止にしろと主張している」
産2〉 国務省も最終的に訓練実施を認め、ホワイトハウスも反対しなかったため事なきをえた
と、米国務省が当初「訓練中止」の意向であったことを報じており、上掲沖縄タイムス記事はこの情報に則ったものと解釈できる(*1)。つまりは後発記事である産経記事の「揉めたが実施」が正である、と思われる。
ああ、私の希望・願望が投射されて居ないとは言い難い。先述の通り島嶼奪還訓練も我が国に必要な訓練である。日米共同の実動訓練であれば、規模の大小は有れども、願ったりかなったりと言うところだ。
中国を刺激するぅ?反日暴動で日本資本の工場を襲撃する以上の刺激が、この訓練にあろう筈がない。
寧ろ、中国は刺激すべきであろう。
<注釈>
(*1) 一応。それ以上に「沖縄タイムスの主張・願望」であるような気がしてしょうがないが。
③【沖縄タイムス】日米両政府、離島奪還訓練を断念
政治 2012年10月23日 09時14分
日米両政府が渡名喜村の無人島「入砂島」で計画していた自衛隊と在日米軍による共同の離島奪還訓練を断念したことが22日、判明した。尖閣諸島をめぐって対立する日中関係と地元自治体の反発に配慮した。訓練そのものは沖縄本島の近海で模擬演習を実施する方向で調整している。日本政府関係者が明らかにした。
「島への上陸訓練は中止」と言う事?「離島奪還訓練は実施」か。
沖1〉 訓練そのものは沖縄本島の近海で模擬演習を実施する方向で調整している。
と言う事は、先述の「様々なレベルでの離島奪還訓練」の内、「島への上陸作戦実動訓練」は中止されたが、「離島奪還訓練」は養生詭道を含む模擬演習として実施される、らしい。つまりは沖縄タイムス記事のタイトル「日米両政府、離島奪還訓練を断念」と言うのは少なからずミスリードで、「離島奪還訓練を縮小」が至当な表現であろう。
無論、この記事タイトルには沖縄タイムスの願望が、而して上記の評価には私に希望が投射・投影されている事は間違いないが。
「島への上陸実働訓練」も含めて実施すべきなのであるが、沖縄タイムスの願望路通り「離島奪還訓練断念=中止」とならなかっただけ、マシでもあれば、見付けモノでもあるな。