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 いや、まあ、ある種「理想的政治家」ってのは、こういう主張を為すんだろうなぁ、と言う毎日新聞のオスプレイ配備反対社説。何故「理想的」で何故「理想的政治家」と「」(かっこ)付で表記しているかは後ほど述べるので、まずは毎日新聞社説、篤とご覧あれ。

 
転載開始========================================= 

【毎日社説】:オスプレイ安全宣言 不安拭えぬ見切り発車 
http://mainichi.jp/opinion/news/20120920k0000m070154000c.html
毎日新聞 2012年09月20日 02時30分

政府は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「安全宣言」を出した。一時駐機している米軍岩国基地(山口県)で近く試験飛行を行い、10月に沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画だ。

4月にモロッコで、6月には米フロリダ州で墜落事故を起こしたオスプレイの配備には、安全性について沖縄などで懸念が強い。住民の不安を拭えないままの見切り発車で、極めて残念な決定である。

政府は宣言で、二つの事故は「人的要因によるところが大きい」との米軍の調査結果を追認し、「機体自体に問題があるわけではないことが確認された」と述べている。

一方、安全性向上のため、日米合同委員会で運用ルールを決めた。両事故が垂直離着陸モードから水平飛行モードへの転換時に起きたことから、垂直離着陸モードの飛行を米軍施設・区域内に限り、転換モードの飛行時間をできるだけ短くするという。また、基地への進入・出発経路は人口密集地を避け、低空飛行訓練では高度約150メートル以上で飛行することとした。宣言は、これによって「運用に関しても最大限の安全性を確保できる」としている。

しかし、これらの対策で住民の不安が解消できるとは到底思えない。普天間は宜野湾市の中心部にある。住宅に囲まれ、近くには公共施設も多い。宣言は、飛行経路について「可能な限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定」し、「可能な限り海上を飛行する」としたが、普天間飛行場では、住宅密集地の上空を飛ばざるを得ない。

周辺住民の危険性除去こそ普天間移設の出発点だった。そこにオスプレイを配備する計画に、県民大会で10万1000人(主催者発表)が反対の声を上げたのは当然である。

墜落事故後も、海兵隊のオスプレイは、7月と9月に米ノースカロライナ州で緊急着陸するトラブルを起こしている。宣言はオスプレイ配備による「抑止力」の向上を強調しているが、事故におびえながら生活する普天間周辺住民の苦痛と引き換えにすることはできない。

宣言について福田良彦岩国市長は森本敏防衛相に「認められないという気持ちは変わらない」と不満を表明した。沖縄県の仲井真弘多知事も記者団に「基地周辺の県民に、落ちてくるかもしれないものを抱えておけという論理は成り立たない」と語った。

宣言は「(オスプレイの)事故率や件数は高い数字でない」と言う。しかし、普天間周辺では小さなトラブルも人命に関わる事故につながりかねない。そんなことになれば日米安保体制を揺るがす事態になることを、日米両政府は自覚すべきだ。


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善人面のしたり顔、そのくせ中身は何もない

 さて、如何だろうか。何が「理想的政治家の主張」かは理解頂けたろうか。

 以前取り上げた朝日のオスプレイ反対社説は実に巧妙であったが、毎日の社説は「あたかも良い事を主張して居るかのような印象を与える」と言う意味ではやはり「巧妙」であるが、中身がないこと甚だしいから、「空虚」通り越して「真空」に近い。
 何しろ約千字ほどのこの社説。煎じ詰めれば次の一行に要約できる。
 
〉 政府のオスプレイ安全宣言は、沖縄県民の不安を払拭できないから、オスプレイ沖縄配備反対。
 
 上記要約をさらに短縮すれば、当該社説タイトルになって居るのだから、タイトルとしては実によくできたタイトルと言える。が、千字をかけて言って居るのはこれだけである。
 
 まず、この主張がそのまま先日取り上げた朝日社説の「オスプレイ配備反対論」と合致していることに注目すべきだろう。「オスプレイ沖縄配備反対」の根拠を「沖縄県民の不安」に置いておけば、「沖縄県民が不安がる」限り「オスプレイ配備反対」を続ける事が出来るし、不安を煽るのはマスコミの十八番である。なーに沖縄県民の過半数が「不安がる」必要はなくて、一人でも不安がってくれれば「不安の声は消えない」と報じられるのだから、反対運動としては実に楽なものだ。
 
 ああ、「楽」と言う意味ならば、「オスプレイが実際に危険な航空機であると論証・検証する必要がない」と言うのはマスコミとして大きな利点であろう。沖縄タイムスが「崩れた安全神話」と銘打って「オスプレイ安全神話」を検証する姿勢を見せながらモノの美事に大失敗してネット上から削除してしまった教訓を学んでいるのだろう。或いはこれこそが「地方紙にはない全国紙としての悪知恵・巧妙さ」と言う事か。
 いずれにせよ「オスプレイの安全性検証」と言う、本来のマスコミとしての大役を免れているものだから、
 
1〉 宣言は「(オスプレイの)事故率や件数は高い数字でない」と言う。
2〉しかし、普天間周辺では小さなトラブルも人命に関わる事故につながりかねない。
 
なんて訳知り顔した頓珍漢な「解説」も出来てしまう。これはひょっとするとオスプレイはカテゴリーB,Cの軽微な事故率が高いから危険だ!と言う主張の根拠なのかもしれない。だが「カテゴリーAの自由大事故率がオスプレイより高く、カテゴリーB,Cの軽微事故率がオスプレイより低い」機体(※1)をオスプレイより安全だ!と主張するのは正気の沙汰ではない。故障を起こした場所によっては、「カテゴリーB,Cで済んだかもしれない事故がカテゴリーAに昇格してしまう」と言う可能性はあるが、あくまでも可能性だ。普天間基地周辺で普天間基地と言う立地条件故に「カテゴリーB,Cで済んだかもしれない事故がカテゴリーAに昇格してしまう」ケースが頻発しているかと言うと、そんなことは全然ない。カテゴリーA事故さえ久しく起きていないのだから。

3〉 宣言はオスプレイ配備による「抑止力」の向上を強調しているが、
4〉事故におびえながら生活する普天間周辺住民の苦痛と引き換えにすることはできない
 
と言うのも、随分と平和ボケし、国家の安全保障と言うものを全く重視も理解もしていない、間抜けで大衆迎合・沖縄追従な主張だ。上記4〉「普天間周辺住民の苦痛」の相当部分は毎日新聞はじめとするマスコミが作り上げた「オスプレイ危険説」によるものであるし、冷戦時代と言うのは全人類が人類ないし人類文明の滅亡の恐怖という「苦痛と引き換え」に世界大戦を抑止し、抑止しきった時代だ。
 逆を考えて見れば良い。「普天間基地周辺住民の苦痛」を和らげるために「抑止力」が低下し、尖閣諸島や沖縄本島が中国に占領されることを、是とするべきか(※2)。「オスプレイ配備中止による抑止力低下」から「中国の尖閣・沖縄占領」までには相応に段階は有ろうが、前者が後者に至る可能性を上げることは間違いないぞ。
 
 安全保障は国家の生存がかかった最優先目標だ。「基地周辺住民の苦痛」を斟酌するぐらいはあっても良いが、それこそ「引き換え」になぞ出来るものか。安全保障の方が優先だ!・・・・と、ふつうの、常識的な、まともなものは考えるだろうし、政治家だってそうだ。
 が、大衆迎合政治家ならば、「沖縄の民意」に阿り、上記3〉~4〉のような安保白痴な主張を為す事もあろう。
 
 然り。先述の、当該毎日社説を「理想的政治家の主張」とした表記には、記入漏れがあったと言うべきであろう。
 
 当該毎日社説は、「理想的衆愚政治家の主張」なのである。



<注釈>

(※1) 米海兵隊の平均的航空機はこの状態にある訳だが。 

(※2) 毎日新聞や朝日新聞、沖縄二紙なんざぁ「是とし」かねないが。