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 原発ゼロ」。何とも嫌な言葉だ。
 
 いや、私(ZERO)が原発について大いに論じ、今なお原発推進論者と公言・断言する事に対して付いた仇名が原発ZEROと言うのであれば、それはむしろ私の望むところであり、名誉称号とも考える。
 
 だが、昨今世上を騒がしている「原発ゼロ」とは、「原発依存度ゼロ」即ち我が国で全原発が稼働せず、原発がその存在理由であり目的である発電を行わない状態を指す。別けても今回各紙が社説に取り上げるのは、先日の大飯原発再稼働前に現出していた「(定期点検に伴う)全原発稼働停止による一時的”原発ゼロ”」ではなく、エネルギー政策としての「脱原発成就」である「恒久的全原発稼働停止たる”原発ゼロ”」だ。無論これは、「脱原発成就」状態であるから、「今なお原発推進論者」と自認する(※1)私の意見とは真っ向から対立する概念だ。
 
 そんな私にとっての嫌な言葉であり、愚挙にして暴挙としか思われない「原発ゼロ」なる「方針」が、国のエネルギー政策に盛り込まれてしまいそうな頃に、各紙が社説に取り上げた。時期は少々ばらけているし、焦点が「原発ゼロ」ではない社説もあるが、各紙社説タイトルとURLは以下の通り。
 
(1)産経 原発比率 安易なゼロは亡国の道だ   http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120905/plc12090503300007-n1.htm

(2)日経 「原発ゼロ」提言はあまりにも無責任だ   http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45836620X00C12A9EA1000/
     原発ゼロを性急に選んでいいのか   http://www.nikkei.com/article/DGXDZO45577540R30C12A8EA1000/

(3)読売 再処理稼働へ 「原発ゼロ」は青森への背信だ  http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120904-OYT1T01589.htm

(4)毎日 将来の原発比率 ゼロへの工程表を示せ  http://mainichi.jp/opinion/news/20120906k0000m070105000c.html

(5)朝日 関西の節電―大飯を止めて検証を    平成24年09月05日(水)
     原発のごみ―総量規制を急ぐべきだ   平成24年09月14日(金)

(6)東京 原発ゼロ社会 電気代高騰は本当か   http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012090402000113.html 
   原子力規制委 首相も「ムラ」の住人か  
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012090602000150.html 
 
 URLへ飛ぶまでもなく、タイトルで大凡内容は知れるが、朝日、東京、毎日の「アカ新聞」共が「原発ゼロ=脱原発成就」を手放しに絶賛しているのに対し、産経が真っ向から反論、日経、読売がこれに続いている社説比較シリーズ始まって以来の定番(※2)「産経グループ対朝日グループ」の対立図式は明確だ。さらにいえば、日経、読売には産経に対し一歩引いている感もあるから、私の原発推進論(※3)には産経が最も近い、とも言えよう。
 
 先行実施されたパブリックコメントだの、意見聴取会だの、各種世論調査だのの「脱原発支持率の高さ」は朝日、毎日、東京のアカ新聞にして脱原発原理主義者共の意を強めていよう。また、脱原発原理主義者共の意を強めてしまうような実に情けない限りの「民意」であり、「民度」である。
 
 繰り返すが「情けない限りの「民意」であり、「民度」」だ。私は我が国民の民度の低さを非難し、その低い民度に基づく民意を否定している。ある種非民主的な主張であるとは百も承知だ。民主主義とは所詮絶対善ではなく次善の策であり(※4)、その「次善」すら衆愚政治と堕した民主主義体制下では期待できない。それ故に「民意の暴走を食い止めるのが議会の役目」と言う主張に相当程度の説得力を与えて居る。
 
 平たく言えば、「手前ぇら、ちったぁ手前ぇの頭ぁ使って、考えて、『脱原発』とぬかしやぁがってんのかよ。」と言う事である。
 
 さはさりながら、
 
 世論調査結果だろうが、パブリックコメントだろうが、それはある種「民意の表れ」かも知れないが、それを具体的な政策にするのは政府の仕事で、責任である。今回の場合は現・民主党政権によって「中長期のエネルギー・環境戦略」の中に「2030(平成42)年代に原発ゼロとなるようあらゆる政策資源を投入する」と盛り込んだことである。
 
 2030(平成42)年代に原発ゼロとなるようあらゆる政策資源を投入するこの一文だけで件の「中長期のエネルギー・環境戦略」なるものが「エネルギー戦略」と呼ぶに値しない事は自明である。
 何故ならば、「エネルギー戦略」や「エネルギー政策」の目的ないし前提条件は「電力の安定供給」であるからだ。ここで言う「安定供給」には、停電も計画停電も引き起こさない事は勿論の事、安価に供給することも含まれる。それ故に「電力の安定供給」と言うのは単純に実現できるものではないが、これを実現することが「エネルギー戦略/政策」の眼目であり、これを実現できる目途のない戦略/政策は、「エネルギー戦略/政策」と呼ぶに値しない。「絵に描いた餅」どころかデッサンすらできていないのだから。
 然るに上記一文は、敷地面積当たりの発電量が格段に高く、発電量が可制御であり、電力の安定供給に資すること大である原発を否定し、その否定のために「あらゆる政策資源を投入する」と言うのだから、エネルギー戦略/政策としてはモノの美事に本末転倒している。従って、「環境戦略」(※5)と抱き合わせにしようとも、「エネルギー戦略」と呼ぶことさえ恥ずかしいほどのものだ。
 
 それを、「中長期のエネルギー・環境戦略」と銘打って決定してしまった事は、タイトルにもした通り、民商党政権最大の愚策である。管直人の政権維持に一定の効果があった「脱原発」を、今度は政権浮揚と次回選挙に利用しようという魂胆だろうが、「民意の暴走」に乗じた典型的な衆愚政策。無論、そんな衆愚政策に乗って「民主党とその脱原発を支持する」ようならば、我が国民もまた衆愚であることを自ら証明する訳だ。前回衆院選挙で圧倒的に民主党を支持して見せた我が国民の事だ(※6)。大いにありうる話、と考えなければなるまい。
 
 一方、現民主党政権発足=先の衆院選挙による民主党大勝以来、民主党に愚策はつきものだ。何しろその衆院選挙で掲げていた「マニュフェスト」でさえ、政権発足当初は「国民の命令書」とかナントカ息巻いていながら、ハナッから財源は事業仕分け頼みで、その事業仕分けは「実施しただけ、実効は皆無に近い」始末。その実施しただけの事業仕分けが「マニュフェスト」にあって実施された数少ない項目の一つなんだから、あまりに人気取りで実効性のない愚策が「マニュフェスト」だったと言う事だ。
 「マニュフェスト」以外でも、同じく先の衆院選挙で「民主党党首の(勝手な口)約束」として唱えられた「(普天間基地移設先)最低でも県外」は”Trust Me!(※7)”だの”腹案”だのの数々の迷言を残しつつ鳩山政権の致命傷となり(※8)、そのくせ現行日米合意=普天間基地の辺野古移設が普天間基地継続使用になるか否か程度の愚策であったし、尖閣諸島沖中国「漁船」体当たり攻撃の処置(※9)も、中国「民間人」尖閣上陸の処置も、愚策以外の何物でもない。斯くも愚策だらけの現・民主党政権であるが、今回の「中長期のエネルギー・環境戦略」に掲げた「脱原発」こそが、まず、現時点においては最大の愚策であろう。
 
 尤も、いつまでもこの「2030年代に原発ゼロ」が「民主党政権最大の愚策」であるかどうかは、予断を許さない。
 
 現首相たる野田はちょっと前に「近いうち解散」を宣言したはずだが、未だ民主党政権は続いているから、「2030年代に原発ゼロ」が最後の愚策とは、全く期待できないからである。

<注釈>

(※1) 「自他ともに認める」とまでは、言って良さそうだな。私の原発擁護論を「イデオロギーに利用している」と言う非難はあったと思うが、「実は脱原発だろう」と言う非難は無いようだから。 
 
(※2) 「定番」に当てはまらない場合もあるが 
 
(※3) 私の原発推進論―または私が福島原発事故を経てなお原発を推進する理由。―前進せよ、人類。   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35630668.html 
 
(※4) 民主主義概論民主主義は絶対善ではない。だが次善ではある。 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/34312605.html  
 
(※5) 事故を起こさずに稼働している原発の環境に対する影響は、火力よりも低い。まともに稼働している原発は、火力よりも「地球にやさしい」のである。東日本大震災とその後の津波に対しても、福島第一以外の原発は環境に影響するような事象を発生していない。
 従って、「環境戦略」としても、原発は推進されるべきであろう。 
 
(※6) 失望すれども、絶望せず1-衆院選自民惨敗民主大勝を受けて-   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/29646281.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/29646287.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/29646294.html 
 
(※7) 鳩山由紀夫以前は、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネーターの決め台詞だったんだが・・・ 
 
(※8) ただし、鳩山由紀夫の致命傷にはなって居ない。当初は「今期限りで議員を辞める」と公言してた鳩山由紀夫は、この公言をまたしても反故にしている。バカにつける薬は無いな。 
 
(※9) それは「那覇地検の判断」と言う事にされているが。