AFP通信が報じるのは、日本政府の尖閣国有化報道に対する中国外務省の洪磊(Hong Lei)報道官の発言。何しろ外務省の報道官殿の公式発言だ。これ以上の公的発言はまれな位に公的な発言と言えよう。で、その報道官殿の発言に曰く。
 
1〉 「日本が日中関係をどこに導こうとしているのか、問わずにはいられない」と述べ、
2〉「中国政府は経過を注視しており、領土主権を守るために必要な措置をとる」と語った。
 
 普通に考えれば斯様な公式発言は挑発であろう。
 
 さて、上記1〉の中国外務省報道官殿御質問に対し、今の日本政府=現民主党政権がどう答えるか、どう考えているかは、私は知らない。正味のところ非常に怪しく、心もとないとは考えている。
 
 だが、日本政府が上記1〉の「質問」に対し、どう答えるべきか、どう考えるべきか、は知っている。断言できる。
 
 即ち、日本政府は、「日中関係を良好に保つ」=「日中友好」如きのために、わが領土領海領空主権、あるいは国益を、犠牲にすべきではない。「日中友好」は、そんな犠牲に値しない。それは、「日中国交回復40年」の「輝かしい実績」が、これ以上ないほど明白に示している。
 
 とまあ、私は考えるのだが、私とは「宗教が違う」朝日新聞は、全く別の考え、主張をしている。まあ、いつもの事だが。


転載開始========================================= 

【朝日社説】尖閣国有化―無用な摩擦打ち止めに 
平成24年09月06日(木)
政府は、沖縄県の尖閣諸島の三つの島を買い上げることで地権者と合意した。 

4月に購入計画を明らかにし、購入費の寄付を募っていた東京都の石原慎太郎知事も、政府の購入を認める考えだ。 

政府が島を買い上げるのは、「平穏かつ安定的に維持管理していく」(玄葉外相)のが目的だ。石原知事が求めていた、漁船が避難できる港の建設もしない方針だ。 

中国政府は、尖閣の国有化には断固反対すると繰り返してきた。今回の合意に、反発は避けられまい。 

それでも、中国を「シナ」と呼んで挑発し、自らの尖閣上陸を公言していた石原氏の主導による都の所有を防いだことになる。その意味でも、国有化は避けがたかったといえるだろう。 

これを、日中関係改善への転機にしなければならない。 

そもそも、東京都による尖閣の購入計画には無理があった。 

石原氏は「東京が尖閣諸島を守る」と語っていたが、外交交渉や領海の警備はもとより政府の仕事だ。 

石原氏は、先日都内であった北朝鮮による拉致問題についての集会で、領土問題でロシアや中国の攻勢に押される日本の姿を嘆きつつ、「この国の活力を失わせたもののひとつは憲法だ。これは捨て去ったらいい」と言い放った。 

石原氏がこうした政治目的のために、尖閣問題をつかってナショナリズムをあおっているのだとしたら、あまりに危険だし、責任ある政治家の行動とは言い難い。 

この夏、尖閣に上陸した香港の活動家を日本の警察が逮捕した。中国ではこれに反発した反日デモが相次いだ。 

さらに、丹羽宇一郎・駐中国大使の公用車が襲われ、国旗が奪われた。あってはならない蛮行である。 

中国政府も、さすがにまずいと思ったのだろう。北京市の公安局が容疑者2人を5日間の行政拘留処分にしたが、これまでにない迅速な措置には、日本への配慮もうかがえた。 

日中両政府は、8日からロシアのウラジオストクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせ、野田首相と胡錦濤(フーチンタオ)国家主席の会談を調整している。 

尖閣国有化について、胡主席がどういう態度をとるかはわからない。だが、国交回復40年の節目を迎えた日中関係だ。無用の摩擦は打ち止めにし、大局に立って築き直すよう、建設的な話し合いを求めたい。 


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中国無罪!友好有理!!


 さて、如何だろうか。
 
 章題についてはチョイと解説が要るだろう。こいつは文化大革命時代のスローガン「愛国無罪・造反有理」の捩りだ。

 「愛国無罪」ってのは、「動機が愛国心から出ていればいかなる行動も罪にはならない」という、大憲章も成文法も裸足で逃げ出す強引な理屈。ま、もともと大陸は「法治国家」と呼べる時期が極めて少なく(*1)、「人治主義」とか「徳治主義」とかの自称・美称はあるが要は賄賂と情実が大手振って罷り通る非文明国だ(*2)。だから、こんな強引な理屈も平気で通用してしまう。文革=文化大革命ってのが「大混乱」であったという背景を考慮しても、異常なスローガンである。
 と同時に、今でも大陸では通用してしまう理屈。だから「反日デモ」は中国当局のお目こぼしにあずかれるし、日本大使の公用車から日の丸を奪取したテロリストは最大5日の拘留で釈放されてしまう。
 
 「造反有理」とは、いわば「理由なき反抗の正当化」である。「有理」とは「理が有る」事であり、「正当な理由がある」事。「造反」は謀反・反乱・反抗であるから、「反抗の奨励」とも言えよう。「永久革命」なんて傍迷惑でしかない「理想」を掲げた毛沢東らしいスローガンではある。
 
 で、その文革のスローガンを捩った章題「中国無罪・友好有理」は、もちろん上掲社説を為す朝日新聞を揶揄したものである。平たく言えば「中国様万歳!日中友好はすべてに優先する(*3)!!」と言う朝日社説の主張を要約したのが章題だ。
 
 何しろ上掲社説、大凡千字程もあるが、煎じ詰めれば中ほどにある唯一行に尽きよう。
 
朝1〉  これを、日中関係改善への転機にしなければならない。 
 
 あとは「中国の蛮行」を一応非難するものの(*4)、しっかりフォローして、以下の一節で当該社説を〆ている。
 
朝2〉  尖閣国有化について、胡主席がどういう態度をとるかはわからない。
朝3〉 だが、国交回復40年の節目を迎えた日中関係だ。
朝4〉 無用の摩擦は打ち止めにし、大局に立って築き直すよう、建設的な話し合いを求めたい。 
 
 なんともはや。我が領土に侵略宣言がなされている(*5)というのに「無用の摩擦」とは、呆れるばかりの「友好有理」ぶりではないか。
 
 前記の通り、中国外務省広報官殿の挑発的言辞が報じられたのは9月5日の19時前。対する上掲朝日社説は9月6日付。「中国外務省報道官の発言は知らずに当該社説は書いた」とか、「当該社説を差し替えるだけの時間がなかった」とか言う「言い訳」「アリバイ」は成立しそうであるが、ちょっと信じがたい。もし左様な「アリバイ」を主張するつもりならば、当該社説を否定する別の社説を掲載すべきであるが…おそらく、そうはならないだろう。
 
 何故ならば、朝日新聞が、当該中国外務省報道官発言を承知で上掲社説を掲げ、上掲社説を主張して居り、「アリバイ」も「言い訳」も、朝日は主張するつもりがない、と、私には思われるからだ。
 
 如何に、朝日新聞。



<注釈>

(*1) 今だって、「都合の良い時しか国際条約も慣例も守らない」のが基本であるから、法治国家とは言い難い。 

(*2) そのくせ、「自国コソが唯一の文明国」と盲信できてしまう中華思想のご本尊なんだから、度し難い。 

(*3) 当然、領土領海領空主権国益よりも優先する。 

(*4) 「非難するべきところは非難している!」って、アリバイ作りだろうな。 

(*5) それは、尖閣諸島を「核心的利益」と言い出した時点でなされているから、上記AFP報じる中国外務省広報カン発言より、遥か以前だ。