【Q2】 人類は果たして安全でいられるのか
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話がすり替わっての後半は、東京新聞得意の脱原発のはずなんだが、実はあんまり中身が無い。以下①「脱原発に転じたドイツ礼賛」②「福島原発事故の「惨状」」の2点があるのみだ。
①脱原発に転じたドイツ礼賛
5> ドイツは、代替エネルギーがあるのなら原発は不要という明快な結論に早々と達しました。
6> それがたとえ困難な道であろうとも、です。
②福島原発事故の「惨状」
7> 福島の事故で放出された放射性物質は、セシウム137(半減期約三十年)換算で広島原爆の一六八・五個分だったといいます。
8> しかし私たちが今実感しているのは、原発過酷事故が人や社会、また自然に与える影響の途方もない大きさと深刻さなのです。
9> それは世界共通の潜在的な不安だともいえるでしょう。
先ずは後半、上記②「福島原発事故の「惨状」」から行こう。
上記7>「広島原爆の一六八・五個分」は確かにショッキングな数字だが、ショッキングなだけで殆ど意味がない。「セシウム137(半減期約三十年)換算」としているが、「半減期約三十年」なんぞ全く意味がない数字だ。「換算」と言うのだから半減期が違う他の放射性物質をセシウム137の相当量に置き換えているだけ。「半減期30年のセシウム137が広島原爆168.5個分も拡散したのだから、今も殆ど減っていない筈!!」と言う誤解を生じさせようと言う魂胆であろう。これが半減期8日間の放射性ヨウ素に換算したならば、換算した量は変わるだろうが「半減期は8日で、既に約1年半を拡散時期から経ているのだから、自然崩壊で放射性物質は10のマイナス20乗ほどまで減じており、殆ど残っていない」と計算する事も出来る。
無論「セシウム137換算量を以って半減期30年で計算する」のも「放射性ヨウ素換算量を以って半減期8日間で計算する」のも、同じぐらい意味がない。実際の放射性物質は複数の半減期も異なる物質の混合物であり、さらには「放出された総量」ではなく密度が人間や動物の受ける被爆量に効く。放射性物質の密度は、拡散発生以来、局所的な集中はあろう(*1)が全体的には時間と共に拡散し、密度は低下している。
で、肝心なのは人体に、健康に影響するか、と言う事。
未だ福島原発事故により避難を余儀なくされている人々が居るのは事実だ。が、福島原発事故では誰一人放射線では死んでいない。
上記8>で言う「原発過酷事故が人や社会、また自然に与える影響の途方もない大きさと深刻さ」と言うのは、可也の部分が非科学的な風評被害であり、それを助長しているのが上記7>を含むマスコミのセンセーショナル煽りの報道である。AERAが防護スーツの顔面アップに赤字で「放射能が来る!」と大書して表紙にしたのがその好例だ。ソリャ「来る!」には「来た!」が、それが何だというのだ。放射性物質は、マーカーとしても使われる事を、知らないないし無視している。
蝶に異常が増えたと言う報告もある(*2)ようだが、体重何百分の一でライフサイクルは何十分の一である蝶と人間では、同じ被爆量でも受ける影響は全く異なる。第一、福島原発事故以来既に1年半近くが過ぎているのだから、この「蝶の異常例」も、発生地域こそ未だ増える可能性はあるものの、発生率は今後低下するしかないはずだ。
上記9>では「世界共通の潜在的な不安」と言う。だが、その不安を煽って食い物にし、風評被害を拡大しているのは、東京新聞はじめとするマスコミであると言うのに、当該社説は「潜在的不安」を正当化し、これを楯にして反省する気振りすらない。正に食い物にしている。
上記①「脱原発に転じたドイツ礼賛」の5>~6>については、以前にも記事にしたが、以下の諸点・視点が全く欠如している。
(1) 福島原発事故後に「脱原発」に転じたのは、ドイツとスイスのみである。
(2) 福島原発事故後も新規・更新の原発を計画している国は、アメリカ、フランス、ベトナム、トルコ、中国等等
(3) ドイツが脱原発に転じた為に、ドイツ・シーメンス社は原子力技術を放棄した(*3)。
(4) ドイツもスイスも欧州電力網にあるため、電力が不足すれば外国から買える。例えばフランスの原発から。
(5) 日本は島国である上、対岸の半島大陸の方が電力不足であるから、「電力輸入」の見込みは全くない。
ドイツが脱原発と言う「困難な道」を選ぶのはドイツの勝手であるが、我が国が「脱原発」を実施するには上記(4)、(5)と言う「ドイツ以上の困難さ」がある事を明示しなければ、詐欺というものだろう。まあ、「脱原発なんてハナカラ詐欺だ」と断じてしまえばその通りだし、「脱原発原理主義の東京新聞社説が、脱原発を「困難な道」と認めた」と言うだけでも特筆大書して絶賛すべきところなのかも知れないが。
さらには、「人類が脱原発」となると、上記(3)が大きく効いて来る。
10> 原子力の研究はもちろん続けなければなりません。
11> 純粋な科学的知見はより深めねばならず、医療などの民生利用にも必要です。
12> 原発の廃炉や核廃棄物処理のためにも不可欠です。
と、当該社説は脳天気にも「核兵器も原発も無い世界の原子力技術」を夢想し上記12>「原発の廃炉や核廃棄物処理のためにも不可欠です。」とのたまう。
が、現実は上記(3)の通り。「純粋な科学的知見はより深める」技術は多寡が知れており、「我が国が脱原発」するとしたら、外国の原子力技術で廃炉にしなければならないだろう。況や「人類が脱原発」しようとしたら、「原発を擁する原子量技術保護国」に拠って先ずそれ以外の国の廃炉を済まし、最後にその原子力技術保護国の原発を、補助金ドブ付けの「原子力技術保護機構」に拠って実施する必要があろう。その後の「原子力技術保護機構」の末裔に拠って「純粋な科学的知見はより深め」た原子力技術だどれ程役に立つ物かはわからないが。
だが、上記(1)、(2)の現実からすると、そんな心配は、少なくとも「人類が脱原発する」心配はなさそうだ。(*4)
【A2】 原発なしで原子力技術は維持できない。原発を廃炉にするのにも原子力技術は不可欠である。
故に、人類の安全は、原子力技術の向上とそれに拠ってより安全化される原発に拠って確保すべきである。
脱原発では人類の安全は確保できない。
<注釈>
(*1) 一時大いに話題になったホットスポット、ってのはこいつ・・・である事もある。違法管理されていた工業用放射性物質、何て例もあったが。(*2) 原発周辺のチョウ、羽や目に異常 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2895149/9363331 但しAFPの報道は「これが人体への影響を意味しない」と言う事を併記しつつ、「放射線の影響については引き続き監視が必要」と言う医師の言葉で〆ている。(*3) ドイツ降伏-独シーメンス社 原子力事業から撤退 http://www.afpbb.com/article/economy/2828751/7793213 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36006950.html
(*4) 我が国が誤って脱原発してしまう可能性は、未だ残されている。何度も繰り返すが、我が国の脱原発なぞ、愚挙にして暴挙である。
結論
① 当該社説は、核兵器による人類滅亡の恐怖を想起させているが、戦争放棄の方策どころか目途すら示していない。
② 当該社説は、原発事故の恐怖を煽り、ドイツの脱原発を絶賛しているが、我が国脱原発のドイツ以上の困難さにも触れず、「人類脱原発」の方策も示していない。
③ 当該社説は、戦争にも原発にも向き合っていない。