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 東京新聞に準じる脱原発原理主義と当ブログが断じる毎日新聞の、呆れ返るほど脳天気な「脱原発社説」は先日「斬った」ばかりだが(*1)ひき続いてその脱原発脳天気振りを社説にしてしまったらしい。今度は、風力発電が題材だ。
 
 まあ、先ずは問題の社説、御一読願おうか。

<注釈>

(*1) 「精神論と言うより脳天気」 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/37365380.html  
 
転載開始=========================================

【毎日社説】:風力発電 潜在力もっと生かそう
  http://mainichi.jp/opinion/news/20120808k0000m070150000c.html
毎日新聞 2012年08月08日 02時30分
 風力発電は設置に手間ひまがかかる。家庭に1台というわけにもいかない。だが、国際的にみると成長は著しい。この10年で世界の導入量は10倍に増えている。
 その中で、日本の累積導入量は世界13位。1位の中国の25分の1に過ぎない。国内の全発電量に占める割合も0.4%程度。完全に出遅れた状況だ。
 風力の適地がないわけではない。陸上と洋上をあわせると住宅以外の太陽光発電の10倍以上の潜在力(導入ポテンシャル)がある。これを生かさない手はない。特に北海道や東北は潜在力が高い。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度開始で事業者の関心も高まっている。にもかかわらず導入を阻む壁がある。
 適地の多くが過疎地で送電網が整備されていない。不安定な電源を入れたくない電力会社の事情も加わり、買い取り枠に上限が設けられている。結果的に発電したくても断られる。北海道電力では申し込みが買い取り枠の1.5倍を超えた。東北電力も同様の状況と見られる。
 政府は送電網などインフラ整備の支援を表明している。早急に前に進めてほしい。電力会社も前向きに取り組んでもらいたい。気象予測をしながら不安定な出力を調整したり、調整用の火力発電を効率よく使う技術も日本で開発できるはずだ。
 国土が起伏に富む日本では大規模陸上風力の適地は限られる。一方で、海岸線が長く洋上風力の潜在力が高い。実際、導入ポテンシャルの8割を洋上風力が占める。積極的に増やしていく必要があるが、その際に大事なのは地域との連携だ。
 茨城県神栖市の風力発電会社「ウィンド・パワー」は鹿島港の太平洋岸に洋上風車7基を設置し、約7000世帯分の電力を生み出す。年度内にはさらに8基を稼働させる。沖合に100基を並べ中型原発1基分の電力を生み出すのが目標だ。
 洋上は障害物がないため風力が有効に利用でき、低周波などの騒音問題が起こりにくい。一方で、漁業権の調整や環境アセスメントなど解決すべきハードルは多い。ウィンド・パワーは地元の漁業者との信頼関係構築に時間をかけてきた。風車も県内メーカーのものを使う。
 風車は部品が1万~2万点あり、産業振興や雇用への効果も期待できる。発電事業者と地元企業が協力しあえば、資金を地域で循環させることにもつながるはずだ。
 産業界の中には過大な期待との声もあるが、今はマイナス面よりプラス面を考える時だ。後発の利点を生かし海外の事例にも学びたい。

=================================転載完了

アリバイ工作はしっかりと

 さて、如何だろうか。
 
 先ず目立つのは、先行する「太陽光発電礼賛社説 (*1) 」に負けず劣らずの脳天気ぶりだ。例えば、以下のようにして風力発電を絶賛する。
 
1>  (日本に)風力の適地がないわけではない。
2> 陸上と洋上をあわせると住宅以外の太陽光発電の10倍以上の潜在力(導入ポテンシャル)がある。
 
 上記1>~2>が実に巧妙な表現であることに気付かれようか。
 上記2>では風力発電の潜在力は太陽光発電の10倍だぁぁぁ!」とブチ上げる。それ即ち「太陽光発電のポテンシャルは風力発電の1/10しかない」なのであるが、其処は巧みに「住宅以外の太陽光発電」と限定しているから、先行する社説でブチ上げた太陽光発電を導入していない住宅は2600万戸もあるぅぅぅぅぅ!」とリンクし、「住宅に設置すれば、太陽光発電にも十分なポテンシャルがある」と言い抜けられる様になっている。
 
3>  (風力発電)適地の多くが過疎地で送電網が整備されていない。
 
と言う問題に対しては、
 
4> 政府は送電網などインフラ整備の支援を表明している。
 
と「回答」しているが、送電網も無いような過疎地に風力発電させる為だけに送電網を整備し、さらにそこから電力消費地まで送電する事による損失には、全く言及しない。
 
 尤も、そんな心配は不要なのかもしれない。何しろ、
 
5>  国土が起伏に富む日本では大規模陸上風力の適地は限られる。
6> 一方で、海岸線が長く洋上風力の潜在力が高い。
7> 実際、導入ポテンシャルの8割を洋上風力が占める。

 
と、当該毎日社説が認める通り、陸上の過疎地なんぞに風力発電所とそれに付随する送電網を建設するより、洋上風力発電所を建設した方が、条件は良さそうだ。無論、後段で当該毎日社説が触れる「漁業権の調整や環境アセスメントなど解決すべきハードル」の「など」には、送電海中ケーブルの敷設から、航路の確保まで、実に種々の問題が含まれている。だが、そんな問題は置いといて、当該毎日社説はブチ上げる。
 
8>  茨城県神栖市の風力発電会社「ウィンド・パワー」は
9> 鹿島港の太平洋岸に洋上風車7基を設置し、約7000世帯分の電力を生み出す。
10> 年度内にはさらに8基を稼働させる。
11> 沖合に100基を並べ中型原発1基分の電力を生み出すのが目標だ。
 
 上記8>~11>に述べられている「ウインドパワー」の洋上風車は、ローター直径80m、定格出力2000kW( http://komatsuzaki.co.jp/windpower/kashima.php )であり、現在稼働中の7基で合計14000kW =14MWとなり、所謂「メガソーラー」一箇所分の定格出力に相当しよう。無論、それは定格出力であり、この風車で言うと13m/sと言う都合の良い風が定常的に吹きつけた場合の出力だ。
 尤も、天気・日照任せで夜間発電不可能な太陽光発電・メガソーラーと、風任せの風力発電はどちらが発電設備として不安定かは定かではない。が、どちらも火力発電・原子力発電・水力発電と言う発電量が制御できる現在の主力発電設備より遥かに不安定であることは原理的に間違いようがない。だからこそ、太陽光や風力のような「今をときめく」再生可能エネルギーを発電の主役とするには、大容量蓄電技術が不可欠なのである(*2)が、当該毎日社説と来た日には・・・
 
12>  気象予測をしながら不安定な出力を調整したり、
13> 調整用の火力発電を効率よく使う技術も日本で開発できるはずだ。

 
 上記13>は、表現は気に入らないが未だ判る。「調整用の火力発電を効率よく使う」と言う表現は「あくまでも主役は風力発電」と言いたいが為だろう。実際、「電力需要に対し風力発電では不足する分を火力発電で補う」と言う運転法になるのは、「火力発電が発電量を制御できるから」だ。わがまま気ままな風力発電に火力発電が振り回されるのは、原理的に大容量蓄電技術が完成普及するまで仕方がないとしても、電力消費のピークと風力発電との相関が薄いのは大問題だ。早い話、電力消費ピークである真夏の昼間に、無風・当該風車の場合風速4m/s以下 になってしまったら(*3)、風力発電量は皆無となり「調性用」の筈の火力発電がフル稼働する事になる。これ即ち、「風力発電の発電量は全く当てに出来ず、代替の制御可能な発電手段=火力/原子力/水力発電が不可欠であると言う事。
 
 それはつまり、燃料代や貯水量を気にしなれければ、風力発電所なんて無くても構わない体制である。逆に言えば「調性用の火力発電を必要とする風力発電所」は、「その発電量を火力/原子力/水力発電所の燃料代/貯水量節約のためにしか使えないと言う事である。それは「太陽光発電の10倍のポテンシャル」を完全利用する風力発電体制を敷いたとしても変わりようがない。
 
 上記12>に至っては、一体何の事を言っているのか私には理解できない。気象制御で風を吹かすと言う事でもしない限り、「気象を予測して不安定な風力発電量を調整」なんて出来そうにない。さもなければせいぜい「強風・突風を予想して、風車に安全策をとらせ、破壊を免れる」ぐらいだろう。が、ソリャ発電できない状態ではないか。
 
 況や上記11>にある通り「中型原発1基分」の代替にローター径80mの風車百台(*4)ズラリと並ばないといけない(*5)。洋上とは言え、日本沿岸である。漁業権もさることながら、航路上も邪魔臭くてしかたがあるまい。尚且つ、その邪魔臭い洋上風力発電には、大容量蓄電技術の完成普及まで、「調性用」と称するバックアップの火力/原子力/水力発電所が不可欠である。
 
 燃料代や貯水量を節約する為の風力発電所に、一体どれぐらい意味・意義があろうか。
 「再生可能なエネルギーで発電した」と言う自己満足を、高い電気料金で買おうというのか
 
 だが、当該毎日社説は気にしないようだ。次の一文で、その社説を〆る。
 
14>  産業界の中には過大な期待との声もあるが、今はマイナス面よりプラス面を考える時だ。
15> 後発の利点を生かし海外の事例にも学びたい。
 
 チャンと「逃げ道」は用意してあるわけだ。上記14>「マイナス面よりプラス面を考える限り、如何な大法螺大風呂敷脳天気も許容される。先行して斬った毎日の脱原発社説も、上記14>を免罪符とすることが出来よう。
 
 章題にした通り、アリバイ工作はしっかりやっている訳だ。
 だが、どうも、しっかりやっているのはアリバイ工作だけな様だぞ。
 
 如何に、毎日新聞。
 

<注釈>

 
(*1) 太陽光発電 再生エネの先導役に    http://mainichi.jp/opinion/news/20120806k0000m070123000c.html 
 
(*2) 私の「自然エネルギー推進論」―フクシマ後も原発推進の立場から― http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778036.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778053.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778071.html  
 
(*3) 「そんなことは滅多にない」とは言えても「そう言う日もある」のが風力発電ではないのかね。 
 
(*4) 定格2000kW の風車が100台で定格0.2GW。原発どころか原子炉としても相当小型なようだが・・・ 
 
(*5) それも、理想的には風向に対し垂直方向に一直線