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 AFP通信が報じるのは、福島第一原発事故の後「脱原発」を宣言し、為にドイツ・ジーメンス社が原発事業から撤退したそのドイツで、太陽光発電が好調だと言うニュース。先ずは朗報と言ってよかろう。
 
1> ドイツの太陽光発電量が史上最大を記録した。一時は2200万キロワットに達し、ドイツの電力需要の半分近くが太陽光発電で供給された。
 
 と言うから一寸した事だし、それこそ「出羽之守」あたりから「それ、ドイツに続け、脱原発で自然エネルギーだ!!」と大騒ぎを始めそうだ。
 
 しかしながら、
 
2>  太陽光発電で断続的に発電された電気をどの程度までなら大規模な停電を起こさずに送電網に供給できるのかといった、
3> 原子力発電から太陽光・風力・バイオマス燃料など再生可能エネルギーへの転換を図る中で持ち上がっていた重要な問いに答えを出した形になった。
4>  少なくとも今回のことで、
5> 脱原発で失われる発電量のかなりの部分を太陽光発電で埋めることができるという主張に新たな根拠が加わったことになる。
 
とは、吹きも吹いたり、大法螺だ。
 
6> ドイツの太陽光発電の設備容量は2600万キロワット以上と世界でも群を抜いている。
 
とも同じ記事で報じているのだから、上記1>の「一時は2200万キロワット」と言うのは「全ドイツの太陽光発電設備容量が実に85%の発電稼働率を叩き出した」と言う事であり、タイトルにもした通り①良く晴れたと言う事。ドイツ全土、と言うと一寸言い過ぎかも知れないが、太陽光発電設備を設置したところは尽くと言って良いほど快晴に恵まれたと言う事だろう。
 
 逆に言えば、それほどの幸運・僥倖・偶然が無い限り、「全ドイツの太陽光発電所が発電稼働率85%を達成する」なんて事は無い。日本と違って梅雨も無ければ台風も来ないドイツとは言え、「曇り」だけでも発電稼働率は落ちるのだから。
 
 さらには、上記報道はシレッと報じているが・・・
 
7>  近年ドイツでは固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ、FIT)によって太陽光発電が急速に普及したが、
8> 太陽光設備設置のスピードや、補助金支払いによる政府負担増大への懸念から、議会は関係者の予想を超える大幅な買い取り価格削減に動いている。
 
 即ち上記7>「固定価格買い取り制度」には、上記8>「補助金支払いによる政府負担」があるのである。早い話が、税金の投入だ。
 
 考えて見れば当たり前だ。我が国で7月から始まる「再生可能な自然エネルギーによる発電は全発電量強制買い上げ」制度では、太陽光発電の電気は42円/kwhと言う、火力や原子力の4倍ほどの高価格で買い上げられる。逆にそれぐらい高価格で買い上げないと、太陽光発電が経営的に成立しない。つまりは太陽光発電が高コストなのだ。事情は「脱原発を宣言し、再生可能な自然エネルギーが先行普及している」ドイツとて、根源的には変わりがない。変わりがないから上記8>「補助金支払いによる政府負担」である。AFP報道からは、その補助金がどんな形で支払われているか、日本で始まるような「発電量に従って支払われる」とは限らないが、上記1>「太陽光発電量2200万キロワット」がタイトル②税金大投入 の結果であることに、疑いの余地はない。
 
 さらに、もっと疑いようが無い、どころか殆ど原理的に不可避なのが、タイトル③「夜は(太陽光)発電量ゼロ」である。以前当ブログでも取り上げた「溶融塩に熱の形でエネルギー蓄積する」ヘマソラールなんて半ば詐欺のような太陽熱発電設備が「注目」されてしまうのはそのためだ。如何に「昼間の電力消費量ピーク時」に上記1>「ドイツの電力需要の半分近くが太陽光発電で供給された。」とて、それが太陽光発電であり、大容量の蓄放電技術がコンセプトがあるかどうかも怪しい現状では、タイトル③「夜は(太陽光)発電量ゼロ」は救いようがない。(*1)
 
 さらに言えば、年間を通じての電力需要ピークが真夏の暑い昼間であることは、ドイツも日本も変わらないだろうが、それに次ぐ電力需要ピークは、日本の場合寒い冬の明け方前後。これも多分、どいつでも変わりあるまい。而して冬の明け方前後では、如何に世界一の発電容量を誇るドイツの太陽光発電とて発電稼働率は低レベルないしゼロなのである。
 
 もっと言うならば、そんな寒い冬の明け方前後には、ドイツはフランスから電力を買える。フランスはその電力の8割を原発で賄う原発大国であり、尚且つヨーロッパはその送電網整備宜しきを得て、脱原発方針を打ち出しているドイツも、脱原発方針を止める事を止めたイタリアも、不足した分の電力をフランスから買えるのである。
 
 大陸から海を挟んで隔てらた島国であり、尚且つ海の向こうの半島や大陸が電力不足に悩んでいる、我が国とは事情が全く異なる。
 
 端的に言えば、ドイツの言う「脱原発」は、「フランスに原発も原子力技術も電力供給を押し付けた」ナンチャッテ脱原発に過ぎないのである。而して、それは今後さらにドイツの太陽光発電量が増えようとも、変わりようがないのである。
 
 

<注釈>

(*1) 大容量蓄放電技術があれば、「昼間の間に発電した電気を夜に使う」事が出来るから、「救いよう」はある。それでも、「夜間に発電できるようになる」訳ではない。 
 

当ブログの「脱原発」関連記事【抜粋】

(1) ドイツ降伏-独シーメンス社 原子力事業から撤退   http://www.afpbb.com/article/economy/2828751/7793213  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36006950.html
 
(2) 脱原発への一歩だが、一歩のみ-孫正義の「赤字にならないメガソーラー経営法」 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35344184.html
 
(3) 私の自然エネルギー推進論 
http://www.blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778036.html 
 
 
【世界の原発は今】
(5完)原発オプションは捨てず ドイツ「脱原発」のしたたかさ
 
 http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/topics/west_economy-16792-t1.htm
2012.6.24 21:00 [節電・原発]
2つある原子炉のうち1つが停止されたドイツのネッカーベストハイム原発。福島第1原発の事故を受けて、脱原発が進む
 東京電力福島第1原発事故などをきっかけに、脱原発を決めたドイツとイタリア。日本でも脱原発依存の動きが進むが、両国と日本ではエネルギーを取り巻く環境が全く異なる。日本は島国のため電力の輸出入ができないのに対し、欧州は各国間で電力を融通できる送電網が存在するためだ。
 ドイツは昨年7月、原発17基を2022年度末までに全廃することを決定。再生可能エネルギーの割合を2050年に80%まで引き上げる目標を掲げるが、これが不調でも、フランスから電力を買って不足分を補うことができる仕組みが出来上がっている。
 イタリアはもともと原発依存度が低く、火力発電に頼っているが、不足が生じれば、ドイツ同様にフランスから輸入することができる。つまり、両国とも脱原発を掲げているものの、他国の原発に依存する状況に変わりはない。
 脱原発を本気で目指す方針でも、そのハードルは大きい。とくにドイツは核廃棄物の最終処分場問題、原発による安定・安価な電力供給がなくなることによる産業界のダメージなど、日本と共通した悩みを抱えている。脱原発へと舵を切ったドイツだが、「いつでも方向転換できるように原発の研究を続けるしたたかさを持つ」(原子力工学研究者)との指摘もある。