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 マスコミと言うものは、本質的に「センセーショナル喰らい」である。センセーショナル、ショッキングなインパクトの強い主張・報道を為して、新聞なりニュースなりが売れさえすれば良いのである。
無論、これは歓迎すべき事態ではない。マスコミたるもの、ことに民主主義体制下のマスコミたるものは、社会の木鐸としての大任を果たし、民主主義の主体である処の国民を啓蒙するのが理想である。だが、世に「叶わぬ理想」、「現実に反する理想」は数多あれども、これほど顕著且つ事例多く理想と現実が懸絶している理想も稀有であろうと、私には思われる。

以上の前振りの下、以下の東京新聞社説を御一読願いたい。

その先の、当ブログ記事を読む前に、下掲東京新聞社説について、「自分は何を思ったか、どう思ったか」を是非ともまとめ、できればメモにでもしてからその先を読まれたい。
(A)【東京社説】電力料金 家計にツケを回すのか

転載開始========================================= 

【東京社説】電力料金 家計にツケを回すのか  

 
家庭向け電力は全販売量の38%なのに電力会社の利益は69%に上る。企業向けは62%を占めるのに利益は31%にすぎない。企業に安く、家庭は高く。黙っていては家計へのツケ回しが続いてしまう。
 この数字は経済産業省が集計した二〇〇六~一〇年度の全国十電力会社の平均値だ。初の全国レベルの公表という。東電にいたっては家庭からの利益が91%。もうけは取れるところから取る。家庭狙い撃ち同然であり、多くの人々が驚いただろう。
 取れるところから取るとは、値切りを要求してくる相手はそれなりに低価格で、黙っている家庭などは高い価格で-ということだ。
 企業向けなどの大口料金は既に自由化されており、徐々に新規参入の発電事業者との競争が促され、利用量が多い東電管内の上位十位の料金は一キロワット時当たり平均十一円八十銭まで下がってきた。
 家庭向けの一キロワット時平均二十三円三十四銭と比べると半額だ。家計をやり繰りする主婦でなくても、ばかにするなと言いたくなる。
 家庭向けの割高料金を続けられるのは、電力会社が総括原価方式で守られていることが第一の理由だ。総括原価方式とは小口向け料金制度であり、燃料費や人件費などに一定の利益を上乗せして料金が決まる。経産省に認可されれば利益が確実にころがりこんでくるので、電力会社はコスト削減を怠り家庭に割高料金を強いてきた。
 第二の理由は小口は自由化されていないので、電力会社がそれぞれの営業区域で独占的に販売し、家庭は電力販売先を自由に選べないことだ。言い値で買わされる窮屈な環境に置かれている。
 さらに原燃料費調整制度も見逃せない。火力発電用の液化天然ガスなどを世界最高値で輸入している日本の電力業界は、上がった分を料金に上乗せできるので、ツケが消費者にそっくり回される。
 過保護としか言いようのないこれらの仕組みは、すべて政府のお墨付きを得て整えられた。電力業界にとどまらず、政府も「共犯」のそしりを免れないだろう。
 今月、学者らで構成する電力システム改革専門委員会が家庭用も含めた電力小売りを全面的に自由化することで一致した。これを受け、経産省は実現に向けた準備を進めるというが、これで安心してはいけない。
 沈黙せず、パブリック・コメントなどを通じて政府を動かさないと「取れるところから取る」のあしき構造が温存されかねない。

=================================転載完了

注意!この先を読む前に

 さて、如何だろうか。

この先を読む前に、貴方自身の考えはまとまっただろうか、メモはしただろうか。
未だならば、この先を読む前に、考えをまとめ、メモをすることをお勧めする。

上掲東京社説を再読するのも、また一興である。
 

注意!「自分の考え」を明確化出来たなら、この先をどうぞ

 さて、読者諸兄自身の考えはまとまり、メモか何かになっているはずだな。

くどい様だが、「読者諸兄自身の」と言うところがポイントだ。テレビのニュース解説者だか、新聞の論説委員だか、或いは私自身の当ブログ記事だかの(*1)受け売りではなく。稚拙だろうがなんだろうが、兎にも角にも自分自身の頭で考えている事がポイントだ。

さてその上で、

「ウム、東電はじめとする電力会社はケシカラン!一般家庭から多大な利益を上げるとは許し難い!!」と、憤った人。貴方は素直な良い人かも知れないが、酷くマスコミの影響を受け易い傾向にある。マスコミにして見れば「良い鴨」であろうが、それでは民主主義体制下にあるわが国としては、大いに困った事になる。
私としてはそんな貴方に「健全な猜疑心」を養う事をお勧めする。「他人を見て泥棒と思わなかった」事で被害を被るのは、貴方一人で済むかも知れないが、マスコミ報道に載せられて踊る者ばかりでは、民主主義体制は衆愚政治へ一直線だ。

 「東京新聞社説の言う事も判るけど、なんか変だな。」と違和感を覚えた人。貴方には見所がある。「健全な猜疑心の芽がある」と言う見所が。貴方が「なんか変だ」と考えたのなら、何が変なのか、どうへんなのかをじっくり考えて見て欲しい。その「なんか変」は、例えば当該東京新聞社説に対する異論の萌芽であり、新たな主張・意見への出発点である

では、私のような、「健全な猜疑心の塊である」と自身は思っている私ならば、こう考える。
 
「丸い卵も切り様で四角、モノも言いようで角が立つ」と言う。マスコミなんてのは前述の通り「センセーショナル喰らい」なのであるから、モノの言いようで角を立てるのが、いわば商売だ。そのマスコミの東京新聞は、上掲社説で以下の点を主張している。

 ① 各電力会社は家庭向け電力料金を割高に設定して、利益のを上げている。
 
 ② 家庭向け割高料金が設定でき理由は三つある。
(1) 総括原価方式で、コストアップは電力料金アップに転化出来、コスト削減努力を怠れる
(2) 家庭向け小口電力は電力会社が独占している
(3) 原燃料費調整制度により、火力発電用液化天然ガスなどを世界最高値で輸入している

③ 以上のように電力会社は政府に過保護にされている。

④ 政府を動かし、「取れるところから取る」電力会社ののあしき構造を打破せよ!
 
上記の通りの東京新聞社説の主張に対し、先ず上記①からして「センセーショナル喰らい」=煽り=「丸い卵の角立て切り」の臭いがぷんぷんする。「家庭向けの小口電力が割高だと言うのは、裏を返せば工場・産業向け大口電力は割安だと言う事に他ならない。

「だから電力会社は弱い者いじめで、庶民の敵だ!」と当該社説は言いたそうだ。これが「赤旗」ならば「大企業優遇!」の文字が躍りだしそうだ。が、「工場・産業向け大口電力な割安だ」と言う事は、我が国産業の国際競争力上プラスに働く要因だ。

言い換えれば、我が国の国策として「工場・産業向け大口電力は割安にし、家庭向け小口電力を割高に」設定すると言うのは、一つの政策だ。我が国の国際競争力を確保するための。
逆に社会主義・共産主義張りに「工場・産業向け大口電力な割高にし、家庭向け小口電力を割安に」設定する事は、我が国の競争力を低下させ、国益損ねる道であろう。とても得策とは思われない。
「大口も小口も電力料金の利益率は同等」と言うのも一つの選択肢だろうが・・・今度は「平等」なばかりで、政策としての効果は何ら期待できない。

無論、電力会社は民間企業で営利団体。国策を立てる主体ではない。だが、その電力料金値上げに政府の承認が要るように、公共性・「官性」の高い民間企業だ。東京新聞社説が「家庭向け割高電気料金を設定できる理由」3つのうち二つ、上記(1)総括原価方式上記(2)独占体制 は、その公共性の高さ故に認められた制度だ。

その「特権制度」を「家庭向け割高料金粉砕」のために否定するならば、電力会社の公共性もまた相応に緩和=低下させなければならないだろう。真っ先に懸念されるのは、公共性ゆえに義務付けられている、電力の安定供給だ。そうでなくても原発全機稼動停止で危ぶまれ、計画停電まで取り沙汰されているのだが・・・・その現状の電力供給不安を招いている「原発全機稼動停止」を「再生可能エネルギーで豊かな社会」への入口とばかりに寿いで見せた、脱原発原理主義筆頭は他でもない、東京新聞ではないか。

尚且つ、その寿いで見せた「原発全機稼動停止」を受けてフル稼働している火力発電所と言う背景を無視して、「家庭向け割高料金の理由」の残り上記(3)「世界最高値の火力発電用燃料」と堂々と抜かせるとは、マッチポンプも甚だしい。「原発全機稼動停止」と言う状況に対し、東京新聞社説の言う「再生可能エネルギーで豊かな社会」なんてのが俄かには現出しない(*2)からこそ、「世界最高値」でも何でも火力発電用燃料を輸入しているのである。「コスト削減努力が足りない」なんて科白は、少なくとも現状に於いて、脱原発論者が吐ける科白ではない筈だ。

> 「取れるところから取る」のあしき構造が温存されかねない。
 「叩けるところだけ叩く」のあしき構造は、ずっと温存されっ放しなのだがね。

 如何に、東京新聞。
如何に読者諸兄
 

<注釈>

(*1) そんな奇特な奴は、当ブログの読者の中のさらに一部の筈だから、ソリャ居るとしても数少なかろうが。 
 
(*2) それどころか、50年でも無理だろう、と、私は考えている。