応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/  
 
 東日本大震災とその後の福島第一原発事故以来、特に菅直人の「脱原発」宣言以来、そうでなくても猖獗を極めていた放射能アレルギー反原発ヒステリーは「脱原発論」として結実しているように私には思われる。
現状をこのように要約する私自身は、散々繰り返すとおり「福島第一原発事故を経て尚原発推進論者」であり、その主旨に従って幾つもの記事を当ブログにもアップしている。
一方我が世の春を謳歌している「脱原発論者」たちの相当数は、以前記事にも取り上げた東京新聞社説(※1)の次の一節を「信じて」いるらしい。

東1> 明日訪れる(原発稼動)ゼロ地点から、持続可能で豊かな社会を生み出そう。私たちの変わる日が来る。
 
 同社説がその「持続可能で豊かな社会を生み出す」手段として例示しているのが「『エネルギー市民会議』の話し合いによる電力不足解消」である事は先回記事で大いに笑わせてもらった処だが、その東京新聞社説の言う「持続可能で豊かな社会を生み出す」手段たる「エネルギー自治」と言う言葉が指すのは、恐らくは「太陽光、風力などの再生可能エネルギーによる発送電の地産地消」であろう事は想像に難くない。

以下に挙げた二本の記事は、米国でその「再生可能な自然エネルギー」に取り組んだ事例。是非とも世の脱原発論者達、特に、「再生可能な自然エネルギー」に期待している脱原発論者たちに読んでいただきたい記事だ。

先ずはリンク先の記事、御一読願おうか。
 
① 再生可能エネルギーに取り組む小さな町、エネルギー自給を目指して 米国(上) http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2878097/8946153

② 再生可能エネルギーに取り組む小さな町、エネルギー自給を目指して 米国(下)  http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2878227/8950943
 
 

<注釈>

(※1) 四大紙+四紙社説比較-原発稼動ゼロ-  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35327763.html 
 

教訓は、「現実的な望みを持とう」という単純なことかもしれない


さて、如何だろうか。

先ずは再生可能エネルギーの取り組んだ「米国の小さな町」に敬意を表するべきだろう。「小さな町」故に小回りも利くのであろうが、米国の開拓者精神未だ健在なり、と。

だが同時に、その表すべき敬意に比例して、その「米国の小さな町」の取組みから得られた貴重な教訓は、重視すべきである。

「再生可能エネルギーに取り組んだ米国の小さな町」として挙げらているのは、コロラド州ファウラーとインディアナ州レイノルズ。それぞれの取組みとその結果を報じられている範囲でまとめたのが以下の表だ。「考察【報道事実からの推定】」には私の推定・憶測も入っている事を明言せねばなるまいが、それ以外は基本的に上掲記事にある報道事実を並べている。 
イメージ 1

ファウラーは人口1087人と言うからその意味では確かに「小さな町」ではあるが、何しろ「蓄牛50万頭」を擁すると言うから一寸した物である。農林水産省 畜産統計調査( http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan/index.html )によると、「牛が50万頭」と言うのは日本なら北海道の全肉牛数に匹敵する数である。放牧ではなく畜舎につながれて飼料を食べさせる分には牛とてさほど面積を必要としないだろうが、それでも50万頭という数からすると、ファウラーが広大な土地を擁した町であろう事に疑いは無い。
そのファウラーは、電力コスト削減目指して、表の通り公有地に太陽光パネルを設置し、「既存電気料金の半分」で電力を供給させ、初年度で2万ドルのコスト削減に成功した、と言う。
だが、この「成功」は、「グリッドニュートラル=消費電力以上の発電量」の旗手として脚光をファウラーに浴びせるまで、に止まっている。太陽光パネルを設置して半額電力をファウラーに供給した会社は、「州政府の太陽光発電補助金がなくなったあと解散した」と言うから、この太陽光発電所経営も半額電力も「州政府の太陽光発電補助金」があってこそ成り立っていた物と、可也の確信を以って推定出来る。日本でとうとう始まった「太陽光発電量強制買取」の買い取り価格が42円/kw時 と火力始めとする発電主力の発電コストに対し約4倍である、逆にそれぐらい高価買取しないと太陽光発電が(※1)経営的に成立しない日本の現状からすれば、妥当な推論だろう。
であるならば、町の公有地に続いて計画されていた「町の南の2000kw級太陽光パネル」計画もまた「州政府の補助金頼み」であったろう事は想像に難くなく、計画が実行されたとしても補助金終了と共にやはり会社解散に終わったであろう事は、疑いようが無い。
言い換えれば、「太陽光発電による半額電力」で節約した「初年度2万ドル」の節約は、州政府の補助金をファウラーが間接的に受け取っていた事に他ならない。「間接的」である事に拠って、太陽光発電パネルを設置し、一定期間だけ半額電力を供給した会社に利益をもたらした事も間違いない。不当な利益かどうかは報じられている限りの事実では判断できないから、推定無罪が適用されるべきだろうが。

報じられ表にもした通り、ファウラーは牛糞を利用してメタンガスを発生させ、そのメタンガスで発電する計画もあった。これまた計画のみに終っているのだが、「蓄牛50万頭」と言う「地の利」を利用したこの計画と、一部( 1/4ほどだが )は実施された太陽光パネル設置を以ってしても「グリッドニュートラルに近づく」だけと表明されている事に注目すべきだろう。即ち、蓄牛50万頭の牛糞によるバイオメタン発電と、合計2600kwに達する太陽光パネルを以ってしても、人口1087人を擁するファウラーの電力需要を満たすには足りない、と言う事だ。バイオメタン発電が火力発電と同等の発電制御性を有する(※2)事を勘案すれば、「ファウラーは、計画された全ての自然エネルギー発電を実施したとしても、常に外部からの電力供給を必要とした」と言う公算大である。

それでも、これらの取組みにより「グリッドニュートラルの旗手」として脚光を集めたのは、ファウラーにとっての幸いではあろうが、同時にファウラーが取り組んだ再生可能エネルギーの限界でもある。補助金頼みの太陽光発電と、50万頭の蓄牛をバックにしたバイオメタン発電でも「グリッドニュートラル」には至らないのだから。

レイノルズの方はバイオメタン発電に取り組んだ。「半径15マイル圏内に豚15万匹」と言うのがこのバイオメタン発電の支援材料であるが、「(電力を含む)エネルギー全てを再生可能エネルギーで自給する」プロジェクトを立ち上げたというから、さすがはBig Countryと言うべきか。因みに「豚15万匹」と言うのは日本全国の蓄豚合計の約16%、6分の1近い。
こちらの方はバイオメタン発電でレイノルズの消費電力以上の発電に成功したそうだから、「グリッド・ニュートラル」を曲りなりにも達成した事になる。豚15万頭から発生させらえるバイオメタンガスの量が牛50万頭から発生させられる量より少ないとは一寸考えられないから、レイノルズの人口がファウラーの1087名より少ない可能性は高いが、「バイオメタン発電でグリッド・ニュートラル達成」だけでも一寸した事だ。実際、広報効果は大きかったと報道記事は伝えている。

その割には・・・「ただ、それは当初の計画とは違っていた。」「物流がネックになった。」と、否定的な表現が散見される。その理由を推理するカギは、以下の報道にありそうだ。

1> (バイオメタン)発電した電気は既存の送電網に送られている。
2> 「電力の自給ができなくても、今より安い料金で電力を提供できるようになれば、
3> この町に移住したいという人が現れるくらい人々をひきつけるはずだ」
4> と(ファウラーの)スナイダー氏は語る。
 
 無論後者は、ファウラーで自然エネルギーを推進したスナイダー氏の発言だが、上記1>と「物流がネックになった」と言う表現を合わせて考えると、「レイノルズのバイオメタン発電は、電力コスト削減には貢献しなかった」のではないかと推定される。それが「当初の計画とは違っていた」であり、上記1>の表現になったのではないか、と。

上掲記事と、以上の考察からすれば、「米国の小さな町が取り組んだ再生可能エネルギー」の最大の成果は宣伝効果である。電力コスト削減は補助金頼みに終っているようだし、「グリッドニュートラル=電力地産地消」は広大な土地(※3)を必須とする。

AFP通信の結論は、章題に取ってきたとおりだ。「現実的な望みを持とう」、実現可能な目標を立てよう、と言う事だ。

無論、今尚原発推進論者である私に言わせれば、脱原発なんて論外で、原発再稼動による電力確保が「実現可能な目標」である。が、「脱原発論者」達は違うのだろう。

で、タイトルに返って、「脱原発論」者たち、「脱原発依存」論者達に問おうではないか。諸君らは原発を止めて、一体何を以ってどのレベルで電力を確保するつもりか、と。

東京新聞は「話し合い(エネルギー市民会議)」と再生可能エネルギーで事足れりとするようだ。米国での「再生可能エネルギー」がその広大な土地と言う好条件にも拘らず上記の体たらくであるのに、だ。

朝日新聞はもっと凄くて、「節電努力」で充分だと思っているらしい(5/18社説)。強制執行や計画停電を伴うような「節電努力」は、「電力の安定供給」と言う各電力会社に課された義務に反するのだが、「原発停止」なる大義名分が優先なのだろう。

「電力不足と言うのは、原発再稼動を企む政府・電力会社の陰謀だ!」と言う説も巷間流布しているようだが、電力会社が電力不足を印象付けるのに手段を選ばなければ、何も「電力需要予想」の数字を操作するまでも無い。今動かしている老朽火力発電所を「故障」させるなり「点検」するなりして止めれば良い。それで一時的なり地域的なりに電力不足を引き起こせば、「計画外停電」が発生する。

 肝心なのは、電力需要の当たり外れではなく、節電努力も経済発展も余裕を持って実行できるだけの、電力発電量を確保する事だ。それも少なくともある範囲で、安価に、だ。 

太陽光は補助金頼みで補助金無しでの既存電気料金では全く商売にならず、バイオメタン燃料は蓄糞に頼る限り10万頭単位の家畜が要る。上掲記事の示す米国に於ける「再生可能エネルギーの取組み」の教訓を踏まえて、是非とも検討頂きたいものだ。

ま、「脱原発」を金科玉条と崇める原理主義者には、何を言うても無駄ではあろうが・・・

 

<注釈>

(※1) 孫正義提唱の「メガソーラー」を含め 
 
(※2) 牛糞を回収してから発電するまでに相当期間が必要だが、メタンガス化してしまってから後は火力発電とと同等のレスポンスを期待出来る。発電量としては、再生可能エネルギー屈指の優位さだ。ああ、コストは、別だが。
 
(※3) レイノルズで実証されたところでは、15万等の蓄豚を養えるだけの