応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
「ドリフターズ」といえば、真っ先に思い出されるのは、いかりや長介をリーダーとし、一世を風靡したコント集団。彼らを主役とする「8時だよ、全員集合」は凄まじい視聴率を叩き出していた・・・そうだ。私にとっては殆ど伝聞だ。多分「8時だよ、全員集合」はほとんど見たことが無い。
一世を風靡したドリフターズであるが、そのメンバーでまだ存命・現役なのは加籐茶と志村けん、この間結婚したという仲本こうじぐらい。後はいかりや長介、荒井注、高木ブーと、粗方鬼籍に入ってしまった。それぐらい昔の話しだ。
尤も「ドリフターズ」と言うのは洋楽のグループの先輩が居て、こちらのほうがメジャーだと知ったのは大分後の事。
それはさて置き、漫画「ドリフターズ」は、洋楽ともコント集団とも関係ない。何しろオープニングは関が原の合戦終盤、島津義弘の烏頭坂退却戦と言う、コントとも洋楽とも無縁の渋さだ。井伊の赤備えを迎え撃つ島津の捨てがまり戦法。その先陣を切って指揮を取るのは義弘が甥、家久が息子、島津豊久だ。この激戦の後に異世界にすっ飛ばされた豊久が、先に飛ばされていた織田信長、那須与一と出会う事から物語は始まる。エルフやドワーフ、ドラゴンやゴブリンが闊歩するこの異世界では、北方の化け物たちを束ねてやはりこちらの世界から送り込まれた「廃棄物」を指揮する「黒王」なる者が、全人類滅亡の「御親征」を開始しようとしており、これに対抗するためこちらから送り込まれた漂流物・ドリフターズを組織しようと言う「十月機関」が苦闘していた。
折角送り込まれたハンニバルと大スキピオの名将コンビ(※1)も指揮権を渡されず手勢も無いままでは、火を吐くドラゴンをてなづけ、異形の力を手にした廃棄物たち土方歳三、ジャンヌ・ダルク、アナスタシアらと怪物軍団の前には為す術も無く逃亡、って処までが一巻。
その裏で先ずは恩人であるエルフを助けて村を解放した豊久、信長、与一らドリフターズは、二巻では領主の館を占領してエルフの蜂起を促し、オルテ帝国の簒奪を目論む。
一方黒王は、その「世界廃滅の御親征」の邪魔になるのは漂流物のみと断じ、廃棄物たちに漂流物抹殺を命じる。その命を受けた廃棄物・ジャンヌ・ダルクと「青ヒゲ」ジルドレが、豊久らと対峙する、って処までが二巻。
なにしろ、カッコ良いのである。豊久も、信長も、与一も。
豊久は、もうこれ以上はなさそうなぐらいの薩摩兵児ぶり。井伊忠政への一騎がけの冒頭から、「森に入る事も弓を作ることも禁じられ」種として絶滅させられようとしていたエルフたちを指揮しての領主館襲撃まで。
豊久「こいが、薩州の刀法じゃ。一撃に何もかもこめ、後のことなぞ考えるな。」
エルフ「その一撃が、外れたり、よけられたら、どうすれば・・・」
豊久「さぱっと、死せい。
黄泉路の先陣じゃ。誉れじゃ。」
いや、もう、言葉もないほどカッコ良い。その後「エルフにおいの刀法は無理じゃ。どうも向いてると思えん。」とボヤくのもご愛敬。まあ、薩摩示現流が「向いている」兵ってのも、そうザラには居ないだろうが。
「刀捨てておる。
殺すは戦法度じゃ。
降伏首(くだりくび)は、恥じゃ。」
典型的な熱血ヒーローである豊久に対し、信長は冷静な参謀というか副官と言うより黒幕役だ。豊久の気性に惚れ込んで、「王にする」と宣言し、自分は権謀術数を弄し、作戦を立て、「第六天魔王」を称し、「我こそは絶対悪よ」と断じる。自らは汚れ役に徹して、豊久を盛り立てる。これはこれで、実に男らしい。
「家中ぅ?
虚けを抜かせ。
俺が織田で、織田とは俺よ。」
「合戦そのものは、それまで積んだことの帰結よ。合戦に至るまで、何をするかが俺は戦だと思っている。猿(秀吉)以外、本質は誰も理解せんかったがな。」
以前記事にもしたところだが( ハードファンタジー?http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36449979.html )この信長がこの異世界でご執心なのが鉄砲であり、その必需品・火薬だ。敵兵の死体を利用して硝石丘を築くのも、便所と家畜小屋の土を集めさせるのも、火薬=黒色火薬を作るため。史実から言うと「信長時代の日本で硝石丘」と言うのは疑問があるようだが、「一向宗が使った手」と信長自身が語って居るから、相応の説得力はある。「ハードファンタジー(仮称)」の「ハード」たる所以だ。
那須与一が19歳でやたら美形なのもご愛嬌だ。何しろ弓術に長けたエルフたちの目の前で、的のど真ん中で次々継矢(先に的に刺さっている矢に後から射た矢を当てる )と言う芸当を見せて荒肝をひしぎ、弓を教える教官になってしまうもの凄さ。「人間以上」とはこのことか。
「私は与一。
那須資隆与一に御座います。」
「嘘をつけぇぇい!源平合戦の頃じゃねぇかっ!四百年も昔の話ぞ!
そんな馬鹿な話があるものか!!」
「んー、馬鹿な話と申されましても。私は私で御座いますれば。」
そのゴルゴ13ばりの必殺の弓術で「不死身」のジルドレ(ジル・ド・レイ 「青ひげ」のモデルとなった、猟期的殺人者)と対峙してしまう、その武者ぶりよ。
漂流者としては、ほかに、山口多聞、管野大尉、などが来ているらしい。今後の展開も楽しみな作品だ。
<注釈
(※1) 但し、当然ながら仲は悪い。お互い、相手の実力は認めているようだが。スキピオ「こいつはなぁ、お前ら何ぞ何百万人いても勝てないんだよ。こいつは、こいつは!こいつはハンニバル。ハンニバル・バルカ。俺の国(ローマ)は百万の敵は恐れないが、こいつ唯一人を恐れた!!」