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 「敵前逃亡、敵前反抗は銃殺」は、軍隊にのみ適用される軍法の通り相場。軍法会議と呼ばれる一審制の簡易裁判を経て判決が下され、どこぞの政府と違って「法相のサイン」も必要ないから、可及的速やかに刑執行、即ち一番近い壁の前で銃殺刑が執行されると言うのが通り相場だ。
 
 こんな過酷と言っても良い罰則制度があるのは、「戦争に勝つため」、より正確には「戦争に負けないため」。当然ながら敵前逃亡や敵前反抗が多発するようではその軍隊は忽ち負けてしまうし、勝ち戦ならまだしも負け戦、友軍劣勢となるほど敵前逃亡・敵前反抗は発生しやすくなる。だから、軍隊は「敵前逃亡、敵前反抗は銃殺」と言う強力な軍法を執行することで軍隊の士気や戦勢を保つのが当然。そうなけれけば忽ち組織的戦闘能力を失う軍隊は、この世に掃いて捨てるほどあろう。
 
 所が、我が国の自衛隊三軍にはこの軍法が無い。自衛官は戦時平時の分かち無く、民間人も従う普通の法律でしか裁かれない(*1)。故に、我らが自衛隊三軍は、敵前反抗や敵前逃亡と言う、普通の軍隊ならば即刻銃殺にされる大罪を犯しても、銃殺にされる気遣いは無い。
 
 だから・・・・こんな具合になる。
 

<注釈>

(*1) これは、「自衛隊は軍隊ではない」と言う主張に対する、最も説得力ある根拠だと、私には思われる。 
 
転載開始=========================================

「現実逃避したかった」無断欠勤66日、23歳女性自衛官クビ 

 http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120425/waf12042508150003-n1.htm
2012.4.25 08:14 [westナビ]
 陸上自衛隊伊丹駐屯地(兵庫県伊丹市)は24日、正当な理由なく66日間欠勤したとして、中部方面会計隊の女性陸士長(23)を懲戒免職処分にしたと発表した。
 駐屯地によると、陸士長は1月25日から休暇を取ったが、同30日の期限になっても戻らず行方不明になり、両親が31日に伊丹署に捜索願を提出。3月29日に新潟県長岡市内のホテルにいるのが分かり、両親が連れ帰り、4月6日に帰隊した。
 陸士長は「将来の不安から現実を逃避したかった」と話し、山陰から中国、九州、東海地方などを転々としていたという。
=================================転載完了

軍の矜持

 さて、如何だろうか。
 
 誤解があると少々困るのだが、私はこの「敵前逃亡」した中部方面会計隊の女性陸士長(23)を「銃殺にしろ」と主張している訳ではない。幾つかの記事にした通り、私は死刑制度を肯定し、確定した死刑は全て粛々と執行されるべきだと主張している(*1)が、別に「死刑が好き(*2)」な訳ではない。私が好きなのは法秩序であり、その結果ないし目的としての治安だ。
 
 また、本件を契機として「自衛隊に軍法を!」と訴える心算も、今のところ、無い。「軍法が無い」と言うのが「自衛隊は軍隊ではない」と主張する強力な根拠と認めつつ、且つ「自衛隊は軍隊であるべきだ」と主張しつつ、だ。この我ながら矛盾した主張は「軍法の目的・存在理由」が「戦争に勝つ事、ないし負けない事」にあるためだ。
 
 早い話、「敵前逃亡・敵前反抗は銃殺」なんて厳しい「軍法」が無くても、敵前逃亡・敵前反抗が相応に防がれ、戦争に勝つ無いし負けないことが出来るのならば、それは一種の理想状態であり、今の「軍法なき軍隊」我らが自衛隊は、そんな理想状態にあるのではないかと、判断ないし希望的観測しているからだ。
 
 無論、我らが自衛隊はその誕生以来未だに本物の戦時・有事は経験していない。が、先の東日本大震災後の救援復旧や、世界各地の平和維持活動などで、相応の修羅場・擬似有事は経験しており、その折々に示された「軍法なき軍隊」自衛隊の士気と練度は、賞賛に値こそすれども懸念材料となった事がないからだ。
 
 「軍法が無く、敵前逃亡・敵前反抗も銃殺にされる事は無く、今回事例のように懲戒免職になる程度。にも拘らず高い士気を保ち、敵前逃亡・敵前反抗を(今回のように)稀にしかしない軍隊・自衛隊」。これを理想状態と言わずして、なんと言おうか。
 
 だが、その理想状態は、軍法のような制度ではなく、自衛官一人一人の矜持と言う、「軍の矜持」にかかっている。従ってその理想状態が、今後も継続できるか、本物の有事にも維持できるか、と言うのは懸念材料である。
 
 今回のような事件報道に触れると、「それは稀有な事例である」事を望みつつ、懸念が大きくなる事は否めない。
 
 一方で、軍法と言う制度によって未だある(と思われる/願われる)「軍の矜持による高い士気」と言う理想状態が崩れるのは、誠に惜しい。その高い士気、世界的に見ても稀に見ると言って良い高い士気は、それだけでも強力な抑止力である。
 

<注釈>

(*1) 序でに付け加えるならば、神ならぬ身の人が為す事故、今確定している死刑囚の中に冤罪による者が居ると言う可能性を認めつつ、だ。
 冤罪の可能性は常にある。否定はし切れない。が、確定した死刑は執行する。その事を含めて死刑制度だと思っており、その死刑制度を私は肯定する。 
 
(*2) そう言う特殊な趣味な者も、世の中には居るのだろうが。