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 私はテレビなんてモノを殆ど見ないので、「猫ひろし」なる芸人はこの件、即ち「カンボジア国籍を取得する事でオリンピックの出場権を獲得しようとしている」事でしか知らない。芸名からするとコメディアンの「ようだ」と推定するが、どんな芸や芸風なのか全く知らない。
 
 無論オリンピックに出場する選手は、その国を代表して出てきているのだから、幾らカンボジアのマラソン選手だからとて「猫ひろし」氏もコントやりながらマラソンする訳ではあるまい。即ち、猫ひろし氏の芸人としての芸や芸風は、マラソンともオリンピックとも一切無関係だろう。
 
 さはさりながら、そんな「私の全く知らない芸人」猫ひろし氏の「カンボジア国籍を取得してのカンボジア代表としてのオリンピック・マラソン競技出場」を題材にして、毎日新聞が社説を、東京が「私説・論説室から」と銘打つコラムを書いている。三アカ新聞に準じる二紙で「意見が合う」事の多い二紙だが、今回は一寸勝手が違うようだ。
 
 先ずはその二紙、御一読願おうか。

転載開始========================================= 

①【毎日社説】:視点:猫ひろしと五輪=落合博(論説委員)

毎日新聞 2012年04月23日 02時30分

 ロンドン五輪に出場するためにカンボジア国籍を取得したお笑い芸人が批判にさらされている。昨秋に国籍変更した後も日本に生活の拠点を置いていることもあり、「五輪のために国籍まで利用するのは卑しい行為」などの声がやまない。

 カンボジア五輪委員会は先月25日、ロンドン五輪の男子マラソン代表に猫ひろしさんを選んだと発表した。猫さんの自己ベストは2時間30分26秒で、五輪参加標準記録B(2時間18分0秒)に届いていない。だが、陸上では全種目で参加標準記録を突破した選手がいない場合、男女1人ずつがいずれかの種目に出場できる特例があり、猫さんがこれに該当する。

 今回の事態についてマラソン五輪メダリストで、ランニング大会などを通じて長年カンボジア支援を続けている有森裕子さんは「日本人に代表を譲る若い選手の心中を思うと悔しい」と涙声で話した(3月31日読売新聞夕刊)。猫さんも「カンボジアの人がどう思っているかとか、いろんな厳しい意見はある」と話し、批判は承知の上だ。

 ただ、猫さんのようなケースは決して珍しくない。陸上ではオイルマネーで潤う中東諸国に誘われて国籍を変更するアフリカ出身の選手が絶えない。

 カンボジア国内には、猫さんの記録を上回る選手がいる。前回北京五輪のマラソン代表で、今月15日のパリ・マラソンでは2時間23分29秒のカンボジア新記録をマークした。それでも五輪代表に選出されなかった理由として、カンボジア陸連との確執が挙げられている。

 カンボジアの五輪委や陸連の決定について日本の私たちが口を出すことには慎重でありたい。ただ、カンボジア五輪委のスポンサー企業の一つが、猫さんの活動を支援する日本の企業であることは指摘しておく。

 今年から国籍変更選手の国際大会出場資格に関する国際陸連の規則が厳格となり、国籍取得1年未満の猫さんは出場できない可能性も残されている。

 五輪はスポーツの祭典だ。レース中やゴール後のパフォーマンスによっては侮辱されたと感じる人もいるだろう。尊敬と感謝の気持ちを持って42.195キロを駆け抜けてほしいと願う。

 陸上四百メートル障害で4大会連続の出場を目指す為末大選手がツイッターでつぶやいていた。「猫さんがせっかく国籍を変えたなら、カンボジアに日本のマラソンを伝えて、スポーツの父になってほしいと思っている」と。初マラソンから4年で1時間以上も記録を伸ばした努力家でもある猫さんへのエールだ。



②【東京・私説・論説室から】
五輪にはふさわしくない  

2012年4月23日
 
 オリンピック本来の意味を考えよう。そうすれば答えはすぐに出る。

 さまざまな国・地域の代表が、多様な歴史や文化、特長などから生まれる独自の個性を競う場所。それがオリンピックだ。いうなれば、それぞれが培ってきたスポーツ文化を披露する舞台なのである。そうした背景を持たないまま、ただ国籍を変えただけの選手が出るべき大会ではない。

 カンボジア国籍を取得してロンドン五輪のマラソン代表に選ばれた猫ひろし選手。これには賛否両論があり、国際陸連の判断によっては出場が認められない可能性があるが、いずれにしろ、この点だけははっきりしている。こんな形の出場はオリンピックにふさわしくないということだ。

 現行のルールに反しない限り、本人の決断を否定はできない。が、これはルールだけでなく、心の問題でもある。このやり方はオリンピックの精神にふさわしくないと、多くの人々が思っているはずだ。

 こうしたケースは中東などで目立っているが、日本でもサッカーW杯のたびに外国人ストライカーに国籍を取得させようという話が出てくるし、国籍主義でないラグビーW杯では外国出身選手がずらりと並ぶ。いずれもスポーツの心にふさわしい話ではない。

 五輪出場は確かにすごい出来事だ。が、それがのちにどう記憶されるかは、また別の話である。

 (佐藤 次郎)



=================================転載完了

毎日社説の主張は、「唯、応援しろ」なのか


 さて、如何だろうか。
 
 先ずは私にとって「判り易い」方から行こう。上掲②・東京新聞コラムの主張は私にはすんなり理解できるし、同意できる。とてもじゃないが「脱原発原理主義」に頃固まって「未だに原発推進論」を唱える私とは天と地ほども乖離した主張を為す東京新聞のコラムとは俄かには信じ難いほどだ。その東京コラムは、次の数行こそが胆であろう。
 
東1>  現行のルールに反しない限り、本人の決断を否定はできない。
東2> が、これはルールだけでなく、心の問題でもある。
 
 正に然り。
 猫ひろし氏がマラソン選手として研鑽を積んでいる努力は本当だろう。年齢の割には驚異的とも言って良い記録の短縮がそれを示している。だが、その努力も、「日本の五輪代表としてロンドンオリンピックのマラソンに出場する」には圧倒的に不足である。
 問題は、そこで「ロンドンオリンピックのマラソンに出場する」為に「日本人である事を辞める」と言うのが「心の問題」を含めて至当かどうか、だ。
 
 無論、「至当な訳が無い」と言うのが私の主張だ。カンボジアでもラオスでも北朝鮮でも、日本以外の国の国籍を取得して、そうする事でその国の五輪代表選手になり果せる/成りすますと言うのが至当な訳が無い。「国籍を変える」と言う事は単に「本籍地が変わる」と言うだけではない。「祖国を変える」と言う事であり、この場合は「元の祖国である日本を捨てる」と言う事だ。
 イヤそんな事は無い。今後も日本に住むし、活躍の場も日本だ。」猫ひろし氏が主張するならば(*1)、それこそ正しく東京コラムの言う「心の問題」だ。基本的な生活基盤を日本に置いたまま、カンボジアの国籍だけ「借りて」五輪切符を手に入れるという、ある種策略ではあろうが、正道ではなく裏技。詭計と言うより奸計。スポーツマンシップともフェアプレイとも縁遠い話しだ。
 
 故に、上掲②東京コラムに、私は「東京新聞掲載記事とは思えないほどに」賛同できる。
 
 対して、良く判らないのが上記①毎日新聞社説だ。そもそもこの社説は、一体何を言いたいのだ。
 全体のトーンとして、猫ひろし氏のカンボジア国籍取得しての五輪出場を応援している。それだけは判る。伝わる。だが、その根拠なり猫ひろし氏擁護理由なりが、一読したぐらいではサッパリ読み取れなかった。
 
 ニ、三回読んで、漸く以下の部分が「猫ひろし氏擁護理由」と読み取れた。
 
毎1> 猫さんも「カンボジアの人がどう思っているかとか、いろんな厳しい意見はある」と話し、批判は承知の上だ。

毎2> 陸上ではオイルマネーで潤う中東諸国に誘われて国籍を変更するアフリカ出身の選手が絶えない。

毎3>  カンボジアの五輪委や陸連の決定について日本の私たちが口を出すことには慎重でありたい。
毎4> カンボジア五輪委のスポンサー企業の一つが、猫さんの活動を支援する日本の企業であることは指摘しておく。
 
 上記毎1>「猫ひろし氏当人の覚悟」でしかない。「批判は承知の上」だから、批判したところで今更「カンボジア代表としての五輪出場」は取りやめない、と言うこではあろうが、それは非難すべきか、すべからざるかの判断材料足り得ない。従って今更非難しても無駄だ」と言う以上の「擁護理由」ではない。
 
 上記毎2>赤信号皆でわたれば怖くない」或いは「お互い、悪よのうとしか言っていない。大体その「皆」が「オイルマネーで潤う中東諸国に国籍変更するアフリカ出身選手」なのだから、説得力無い事夥しい。せいぜいが猫ひろし氏のやろうとしている事は、中東諸国に国籍変更するアフリカ出身陸上選手と同じ事だ。」と言うだけ。お役所じゃあるまいし、「前例」さえあれば許される訳ではあるまい。上掲②の東京コラムに従えば、「どっちも心の問題」だろう。
 
 上記毎3>は、あからさまな論点ずらしだろう。なるほどカンボジアの五輪委や陸連の決定に日本が口出しするのは「内政干渉」になりかねない。が、日本人である事を辞めてカンボジア人となってカンボジア代表選手としてオリンピックに行くつもりである(*2)元日本人・猫ひろし氏に対しては、如何様にもモノが言えるはずだろう。
 
 挙句の果てに・・・上記毎4>。これは何だ。日本のスポンサー企業が目に入らぬかぁとでも言いたいのだろうか。日本のスポンサー企業が猫ひろし氏を応援し、カンボジア五輪委員に圧力をかけて五輪選手に仕立てた」と言う主張ならば、これは「汚された五輪旗」とかナントカ銘打ってスキャンダル記事になるところだろう。事がカンボジアと外国だから記事の切れは悪くなるかも知れないが、その「スキャンダル」を応援してしまうとは、気は確かか、毎日新聞。
 
 しかも・・・改めて見直してため息が出る。これが毎日新聞の、社説なのである。それも論説委員とご大層な肩書きを持つ、落合博なる方の署名入り社説で、斯様な稚拙な「猫ひろし氏擁護論」しか出ないようでは、毎日の社説がスカばかりなのは、理の当然だな。
 
オマケ: 上掲①毎日社説の最後に引用している為末大選手がツイッター、

毎5> 「猫さんがせっかく国籍を変えたなら、カンボジアに日本のマラソンを伝えて、スポーツの父になってほしいと思っている」

は、猫ひろし氏は、五輪マラソンに出場せずにカンボジアの後輩育成に当たれとも読めるのだがね。
 それとて、日本に生活の拠点を置いていては、ままなるまいに。



<注釈>

(*1) 大いに主張しそうに、私には思われるが。 

(*2) そのくせ、活躍の場は今後も日本であるらしい・・・イヤ、今までも日本でどんな活躍していたのか知らないから、確信は無いんだが。