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約10万キロの「宇宙エレベーター」、40年後に実現?大林組が構想 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2860270/8526156
「楽園の泉」と言えば、作者がA.C.クラークと言う時点で「古典的SF」と確定のSF小説だ。何しろクラークと言う人は戦前からのSF作家であるから、SF作家としては老舗中の老舗。彼より古いSF作家と言うと、私はジュール・ヴェルヌぐらいしか思いつかない。「SF小説」を広義に捕らえれば、浦島太郎だって竹取物語だってSFと捉えられない事はないから、「SF小説家」ももっと遡れそうに思うが、これは一SFファンの我田引水と見なされるのが普通だろう。
閑話休題(それはさておき)、そのクラーク作「楽園の泉」は、「軌道エレベータ建設の苦闘を描いた優れたハードSF小説」である。つまりクラークは、今回引用したAFP通信報じる大林組の大先輩にあたると言う事だ。
「楽園の泉」と言えば、作者がA.C.クラークと言う時点で「古典的SF」と確定のSF小説だ。何しろクラークと言う人は戦前からのSF作家であるから、SF作家としては老舗中の老舗。彼より古いSF作家と言うと、私はジュール・ヴェルヌぐらいしか思いつかない。「SF小説」を広義に捕らえれば、浦島太郎だって竹取物語だってSFと捉えられない事はないから、「SF小説家」ももっと遡れそうに思うが、これは一SFファンの我田引水と見なされるのが普通だろう。
閑話休題(それはさておき)、そのクラーク作「楽園の泉」は、「軌道エレベータ建設の苦闘を描いた優れたハードSF小説」である。つまりクラークは、今回引用したAFP通信報じる大林組の大先輩にあたると言う事だ。
なにしろクラークは、「24時間で一周する安定軌道にある衛星を赤道上空に周回させれば地上に対して静止している形になる」と言う静止衛星の提唱者であり、ために「静止衛星軌道」即ち地球の場合地上高約35,786kmの円軌道を別名「クラーク軌道」と呼ぶ。衛星放送も、GPS航法装置も、此のクラーク軌道上にある静止衛星のお陰なのだから、現代人はクラークの方に足向けて寝る事は憚られよう。大林組の構想で、「高度3万6000キロに設置するターミナル駅」とあるのは恐らく此の軌道エレベータの工事開始点たる静止衛星、或いはその発展型であろう。
此のクラーク軌道にある静止衛星からワイヤを垂らしたとする。クラーク軌道より内側に入ったワイヤは、衛星と同じ24時間で地球の周りを周回し続けるから、掛かる遠心力は静止衛星と同じ加速度分となる。が、内側に入った分だけ地球の引力は強くなっているから、ワイヤは「落ち」始める。充分な引っ張り強度を持った充分な長さのワイヤーならば、そのままくり出して地上にまで届かせられる。あたかも「お釈迦様が極楽から地獄へたらす蜘蛛の糸のように」。此のワイヤー=蜘蛛の糸を地表からたどっていけば静止衛星にたどり着く。これが軌道エレベーターの基本原理だ。
逆にワイヤーをクラーク軌道の外側に打ち出すと、今度は遠心力は同じで引力が地球から離れる分弱くなるから、ワイヤーは「上昇」を始める。「インド魔術のように」と言うべきかな。此のワイヤーも引っ張り強度の許す限り上=外側へ伸ばせるから、此のワイヤーを辿って行けば、地球衛星軌道脱出、さらには太陽周回軌道脱出が、少なくとも随分楽になる。
外側にせよ、内側にせよ、一方的にワイヤ=質量を展開すると、角運動量保存則からして、周回速度が変わってきてしまう。静止衛星としてはそれは都合が悪いので、内外のワイヤは同時に一定比率の速度・質量で展開されるはずだ。また、軌道エレベータとして運用する間に地上からの質量に角速度を与えたりする訳だから、普通のエレベータと違って「一度建設してしまえば、後は上下動分のエネルギーしか要らない」と言うわけには行かず、静止衛星軌道上の「軌道エレベーター・ステーション(仮称)」には適当な推進装置も要りそうだ。ま、推進装置やその他必要な器材は、一度軌道エレベータとして稼動を始めてから運び込むのも、手かも知れないが。
> 同社の建設、設計、気象などに関わる専門家らは、絵空事ではなく実現可能だと言っているという。
> 同社の建設、設計、気象などに関わる専門家らは、絵空事ではなく実現可能だと言っているという。
と、AFP記事は伝える。確か「楽園の泉」では、宇宙エレベーターの地上設備として気象的に安定したプラットフォームを必要とし、このためにクラークはセイロン島を赤道近くに移動させた上に垂直方向に百倍だがニ百倍だかに引き伸ばした筈だが、その後の技術進捗はそんなクラークの想像を超えているもの、らしい。
今回記事のタイトルにした「カーリ・ダーサ」とは、クラークがその小説「楽園の泉」で移動させて巨大化させたセイロン島( とは最早言い難いのだが )をかつて支配していた(架空の)王様の名前。この王様がその王位を賭けた決戦に臨む所から、此の小説は始まる。つまりは架空の小説の、架空の島を「かつて支配していた」と言う架空の王様の名前、にしか過ぎないのだが・・・大林組の「宇宙エレベータ構想」を報じるAFP通信に、小説「楽園の泉」共々思い出され、妙に心騒がせるのは、その名の「響きの良さ」故だろうか。
「ならば、何故君達は此の宇宙エレベーターを、「カーリ・ダーサの塔」と呼ぶのかね。」―A.C.クラーク「楽園の泉」より―
今回記事のタイトルにした「カーリ・ダーサ」とは、クラークがその小説「楽園の泉」で移動させて巨大化させたセイロン島( とは最早言い難いのだが )をかつて支配していた(架空の)王様の名前。この王様がその王位を賭けた決戦に臨む所から、此の小説は始まる。つまりは架空の小説の、架空の島を「かつて支配していた」と言う架空の王様の名前、にしか過ぎないのだが・・・大林組の「宇宙エレベータ構想」を報じるAFP通信に、小説「楽園の泉」共々思い出され、妙に心騒がせるのは、その名の「響きの良さ」故だろうか。
「ならば、何故君達は此の宇宙エレベーターを、「カーリ・ダーサの塔」と呼ぶのかね。」―A.C.クラーク「楽園の泉」より―