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マリフアナ吸引「肺には害なし」、米研究 http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2850155/8281369
 
 「専門馬鹿」と言う言葉を、私は好まない。
 
 私自身に「専門馬鹿的傾向」があることは否めないから身につまされる、と言うのもさることながら、知性と理性を重んじ、それらが人類の存在理由とは言わぬまでも最強の武器であると断じる私として、専門家の持つ知識や判断基準には相応に敬意を払うべきだと考えるし、「専門馬鹿」とレッテルを貼り専門家を排斥する事は、「常識論」や「普通の人の感覚」を楯に取った素人考えの跳梁跋扈に通じはしないかと考えるからである。
 
 「専門家任せ」は衆愚政治の入口となりかねないが、「専門馬鹿」として専門家を排斥ないし軽視する事もまた、衆愚政治の第一歩となりかねないと、危惧するからでもある。何度も書くが、衆愚政治こそ民主主義の宿敵であり、これを宿痾・宿命としないように常に警戒と国民の関心を必要とするのが民主主義であり、我が国が曲りなりにも民主主義制度を採っている以上「衆愚政治こそが民主主義の宿敵である」と言う「民主主義の原理的弱点」からは免れようがないからである。
 
 だが・・・「専門馬鹿」と、私でも呼びたくなるような専門家は、確かに居る。
 
 引用したAFP通信の報じる専門家「アラバマ大学(University of Alabama)医学部予防医学科と米バーミングハム(Birmingham)の退役軍人医療センター(Veterans Affairs Medical Center)の研究者」なんてのは、そんな「私ですら専門馬鹿と呼びたくなるような専門家」である。
 
1> 吸引量は、1日1巻き(ジョイント)ないしパイプ1本を1年間吸った量(365ジョイント)を「1ジョイント年」とする単位を使用した。
2> 研究の結果、平均で1日あたり1ジョイントを7年間(1週間に1ジョイントの場合は49年間)吸引し続けた人の肺に、悪影響は見られなかったという
3> 喫煙者の肺機能の方が喫煙時間の増加に伴って悪化したのに対し、マリフアナ吸引者の肺機能はやや改善したという。
 
・・・多分、此処で報じられている調査結果には、意図的な数値操作や誤差はないのだろう(※1)。つまり引用記事のタイトルにもなっている通り、「マリファナ吸引が肺に悪影響を与える事はなさそうだ」と言うデータが取れていた、としよう。
 それは呼吸器系の専門家にとっては大いに意義のある調査結果であろう。或いは、肺のことを心配しているマリファナ常用者にとっては朗報かも知れない。「煙草の方がマリファナより肺に悪いんだ。だから、煙草よりマリファナを吸おう。」ぐらいの事を言い出しそうだ・・・・マリファナ吸引自体が犯罪であることを棚に上げて(※2)。
 
 だが、AFP報道記事にもあるとおり、
 
4> 「マリフアナは依然、違法薬物で人体機能に複雑な影響を及ぼす」
 
である。そのマリファナが違法薬物とされるのは、「その吸引が肺に悪影響を与えるから」ではない。上記4>「人体機能に複雑な影響を及ぼす」即ち中毒性があり、禁断症状があり、幻覚症状その他の精神的悪影響を引き起こす、麻薬であるからに他ならない。
 
 仮に今回以上の大規模な統計調査を実施し、「マリファナ吸引は肺には全く悪影響を与えない」と判明したとしても、やっぱりマリファナは麻薬として違法薬物に指定され続ける筈だ。だから、AFP通信の報道は、呼吸器系の専門化には興味あるデータかも知れないが、社会学者、犯罪学者、薬物学者には殆ど意味を持たない。況や一般大衆に意味を持つとしたら、先述のマリファナ常用者の言い訳ないし誤解ぐらいにしか役に立ちそうにない。そんなデータを嬉々として報告しているとしたら(※3)、それはやはり、「専門馬鹿」との謗りは免れまい。
 
5>  米政府統計によると、マリフアナは米国で最も多用される違法薬物。
6> 09年の調査では、12歳以上の米国民のうち約1670万人が調査前の1か月間に少なくとも1回はマリフアナを吸引したと回答している。
 
 「皆が吸ってれば、麻薬が麻薬でなくなる」訳ではない。

 

<注釈>

 
(※1) 「マリファナ関係者」と呼ぶべき利益団体・圧力団体はありそうだから、余り自信はないのだが、其処は「専門家」の学者としての良心を信用する事にしよう。 
 
(※2) ああ、国によっては犯罪ではないらしいがな。第一、「マリファナ吸引は犯罪」と言う事を棚に上げデモしなければ、「マリファナ常用者」にはなりようがない。逆に言えばマリファナ常用者は、「既にマリファナ吸引が犯罪であることは棚に上げっぱなしにしている」と言う事だ。 
 
(※3) 「嬉々として報告している」のはAFP通信であって、件の学者集団ではないかも知れないが。