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今年は、1941年12月8日、大東亜戦争(太平洋戦争)開戦から70周年である。第二次大戦に我が国も参戦して、文字通りの世界大戦に拡大した日であるが、この日の最も有名な歴史的イベントが、空母六隻を中心とした我が機動部隊によるハワイ・真珠湾攻撃だろう。米太平洋艦隊の「主力」を奇襲することに成功した我が軍は、戦艦五隻撃沈をはじめとする嚇々たる戦果を挙げて、大東亜戦争(太平予戦争)の初戦を飾った。無論その大東亜戦争(太平洋戦争)はその後大苦戦の果てに我が国の敗北に終わった訳だから、「緒戦の勝利」と言っても虚しいものがあることは認めざるを得ない。とは言え、最初から最後まで、良いところも見せ場もないよりは、何らかの「盛り上がり」があった方が良いのは道理。我が国の敗戦に終わった大東亜戦争(太平洋戦争)と言えども、我が国にも見せ場があり、その一つが「緒戦の勝利」・真珠湾攻撃である。
この真珠湾攻撃については、「宣戦布告が戦闘開始前に届かなかった」事を以て「卑劣な騙し討ち」と宣伝され、「Remember Parlharbor」なるキャッチコピーにまでされて、現在に至っている。
無論、そんな通説に対し、大いに疑義があるからこそ、私は本記事のタイトルで「それは騙し討ちか」と謳っている。
真珠湾攻撃については、「ルーズベルト米大統領は知っていたのだが、日本から戦端を開かせ、第二次大戦に裏口から参戦しようとし、成功したのだ。」という説がある。さらには「真珠湾に旧式な戦艦ばかりが居て、肝心の空母が居なかったのは、戦艦を囮として日本軍を誘い出すためだ」とする説まである。ルーズベルトが、当時すでに欧州では始まっていた第二次大戦に参戦しないことを公約して大統領選挙に勝ったのは事実だ。一方で、「裏口からの参戦」を狙っていた節は多々あるし、最近産経が報じたフーバー元大統領の証言もある。一方で、「開戦当時、日本の外交暗号は解読されていたが、作戦暗号の解読はまだだったから、真珠湾が攻撃されると暗号解読でわかっては居なかったはず」として、「ルーズベルトの陰謀」を否定する説もある。
僅か70年前でしかないとは言え、「史実を客観的に評価する」というのはなかなか困難である。人間の評価でさえ「棺を覆いて百年待つ」まで真の評価は下らないなどと言うから、事象が複雑な上に相互関係も確定するのが難しい「史実」の評価はなおのこと困難である。困難ではあるが・・・その評価をなすことこそが歴史マニアの一つの楽しみ。或いは「潜在的時間犯罪者」などとも揶揄されるシミュレーションゲーマーの楽しみでもある。
で、その楽しみを実施するならば・・・
まず「日本の外交暗号は解読されてた。」というのが事実ならば、「日本の対米宣戦布告は判明していた」筈だ。宣戦布告の書類が米側に手交されなかったのは手続き上の不備ではあろうが、手続きの不備にとどまろう。宣戦布告とは「我が国は貴国と戦争をします」という宣言であって「我が軍がどこそこを攻撃します」という宣言ではないのだから、外交暗号が解読されていれば、宣戦布告の意図は明白なはず。それで真珠湾を「奇襲」されるのは、米側の落ち度ではあっても、我が方の落ち度ではあるまい。
「暗号解読とタイピングまで正規の職員に限定することで、対米手交時間の遅延を図った」と言うのもとても信じられない。「対米手交時間の遅延」を期待する手段としては相当不確実であるし、「手交すべき時間」を指定していることと矛盾する。その指定は「アリバイ工作」であると仮定したとしても、そのアリバイは不確実な遅延手段に対し、余りに絶妙な「読み」であり過ぎよう。
一方で、「ルーズベルトは旧式な戦艦部隊を囮にした」と言うのも、相当眉唾だ。戦艦が決定的に「主力艦」の座を滑り落ちるのは、正に真珠湾攻撃の成功が判明してから。戦艦を「無用の長物」と断じるのには、真珠湾攻撃以前ならば相当な慧眼が必要となる。無論、ルーズベルト大統領がそんな慧眼を持っていたという可能性はある。だが、その慧眼を以てしても、「航空雷撃は魚雷が海底に刺さってしまうため不可能」とされた浅い真珠湾に対し「着水の際飛ぶヒレをつけることで浅い海底での航空雷撃を可能とした」特殊魚雷の開発と配備まで予見することは難しかろう。
日本の魚雷メーカー(って事は、多分、三菱重工だが )からの情報が筒抜けになっていれば「浅い深度に対応した航空魚雷の開発と配備」がアメリカに察知されたことになり、真珠湾攻撃を予測する材料足りうる。それは同時に「囮」とルーズベルトが考えていたかも知れない戦艦部隊に、相応の損害を覚悟しなければならないことを意味する。先述の「慧眼」により、戦艦から空母・航空機への主力艦交代を予見していれば、「真珠湾にある戦艦部隊に予想される被害」は大きくなる。
一方で、先述の浅深度対応魚雷の配備は、それこそ我が機動部隊の単冠湾出港直前であったそうだから、この時点まで「真珠湾駐留戦艦部隊の運命=大損害」は確定していなかった筈。言い換えれば、ルーズベルトが「真珠湾の戦艦部隊を囮にする」と考えていたとしたら、浅い深度の真珠湾に守られた戦艦部隊は、上述の浅深度対応魚雷が完成・配備されるまで、囮としては極めて魅力に乏しいモノだったはず。その状態でも我らは真珠湾攻撃を敢行しようと計画していたし、「囮として魅力が乏しい」のは米側にとって安全側とも言い得る。が、第2次大戦への「裏口からの参戦」を目的とし、「日本軍をおびき寄せる囮」としては、「真珠湾に駐留する戦艦部隊(但し空母抜き)」は、当時の視点からは、これまた相当不確実であろう。
まあ、囮というモノは、その程度の不確実は当たり前なのかも知れないが。
真珠湾攻撃を以て火蓋を切った、大東亜戦争(太平洋戦争)の意義に関する議論は、ここではひとまず置こう。ただ、「我が機動部隊による真珠湾攻撃が、騙し討ちであったか否か」という点に絞って議論するならば、我が方が「騙し打ち」に使用した手段は「宣戦布告を表す外交文書の翻訳及びタイピングを正規の職員に限った事による、対米手交時間の遅延」に限られる。それ以外の手段、たとえば真珠湾攻撃の意図の秘匿や、我が機動部隊のとった秘匿航路、電波封止などは、作戦上認められる欺瞞にしか過ぎない。その「騙し討ちのための手段」すら、米側の外交暗号解読の前には「騙し討ち」としての効力を失う。それでもなお「奇襲」され「大損害」を出したのは、浅深度対応航空魚雷の開発成功と配備、我が機動部隊の驚異的なまでの技量、並びに米側の油断の結果であって、「日本軍の卑劣な騙し討ち」のためとは、少なくとも断言できない。
故に、敢えて断言する。我が大日本帝国には、「真珠湾攻撃は騙し討ちだ」などと謗られる覚えは、毛頭ない。
最大限、米側に好意的に、我が方に悪意的に解釈したとしても、それは、「失敗した騙し討ち」にしかなりようがない。騙し討ちに失敗しながら、奇襲となり大損害となったのは、米側の油断による所大である。人種差別が常態化していた当時にあっては、無理からぬモノがあるが、人種差別で油断するのは米側の勝手であって、我が方の責になぞなりようがない。
如何に、米国。
如何に、国民。