バイキングの伝説の石「サンストーン」、実際の航海に使用 仏研究 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2838887/8028020
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伝説、伝承と言う奴は普通は法螺、と言って悪ければ「史実ではない」と考えられている。紅海が二つに割れて海底に道が出来るとか、雷が岩に落ちて文字を刻むとか、実際にはありえない若しくはありそうに無いことが、伝説・伝承にはまま登場するのだから仕方が無い。
だが、時にその「ありそうも無い」伝説・伝承が実証されてしまう事もある。有名なところではハインリッヒ・シュリーマンの「トロイ発見」がそうだろう。「トロイの木馬」で有名なトロイ戦争の伝承を、史実として実証しようとしてトロイ遺跡を発掘した事(*1)は、考古学史上の一大イベントであると共に、「歴史へのロマン」を掻き立ててくれる。
AFP通信が報じるのは、そんな「歴史へのロマン」を掻き立てる、ヴァイキングの伝説の航法器材「サンストーン」が実証されたと言うニュース。
1> 長年、専門家たちは、
2> 水晶のかけらを使って厚い雲の上の太陽の位置をつかむ方法をバイキングたちが知っていたと論じてきたが、
3> 考古学者たちが確たる証拠を発見したことはなく、それが一体どんなものだったのかも疑わしいままだった。
4> しかし今回、仏レンヌ大学(University of Rennes)のギー・ロパール(Guy Ropars)氏率いる国際研究チームが、
5> 実験的証拠と理論的証拠を集め、その答えを見つけたと発表した。
報道によれば、此の太陽の位置を掴む石「サンストーン」とは、「カルサイト(方解石)、別名アイスランドスパー(氷州石)と呼ばれる透明な結晶」の事であり、以下の方法によって「太陽の方角を誤差1度以内という正確さで把握していた」と言う。
6> その仕組みはこうだ。
7> もしもカルサイトの上部に点印をつけ、下からカルサイトを通してその印を眺めると、印はふたつあるように見える。
8> 「次に、ふたつの印の濃さや暗さがまったく同じに見えるところまで、結晶を回転させる。
9> それらが同じになった角度の時、上を向いている面が太陽の方向を指している。
10> 薄明の状態でも誤差は2、3度という精度が得られる・・・バイキングたちは隠れた太陽の方向を正確に見極めることができただろう」(ロパール氏)
11> ロパール氏によると、人間の目は微妙な明暗差も見分けることができるため、ふたつの点がまったくそっくりになる角度を見つけることができるのだという。
AFP通信が報じるのは、そんな「歴史へのロマン」を掻き立てる、ヴァイキングの伝説の航法器材「サンストーン」が実証されたと言うニュース。
1> 長年、専門家たちは、
2> 水晶のかけらを使って厚い雲の上の太陽の位置をつかむ方法をバイキングたちが知っていたと論じてきたが、
3> 考古学者たちが確たる証拠を発見したことはなく、それが一体どんなものだったのかも疑わしいままだった。
4> しかし今回、仏レンヌ大学(University of Rennes)のギー・ロパール(Guy Ropars)氏率いる国際研究チームが、
5> 実験的証拠と理論的証拠を集め、その答えを見つけたと発表した。
報道によれば、此の太陽の位置を掴む石「サンストーン」とは、「カルサイト(方解石)、別名アイスランドスパー(氷州石)と呼ばれる透明な結晶」の事であり、以下の方法によって「太陽の方角を誤差1度以内という正確さで把握していた」と言う。
6> その仕組みはこうだ。
7> もしもカルサイトの上部に点印をつけ、下からカルサイトを通してその印を眺めると、印はふたつあるように見える。
8> 「次に、ふたつの印の濃さや暗さがまったく同じに見えるところまで、結晶を回転させる。
9> それらが同じになった角度の時、上を向いている面が太陽の方向を指している。
10> 薄明の状態でも誤差は2、3度という精度が得られる・・・バイキングたちは隠れた太陽の方向を正確に見極めることができただろう」(ロパール氏)
11> ロパール氏によると、人間の目は微妙な明暗差も見分けることができるため、ふたつの点がまったくそっくりになる角度を見つけることができるのだという。
直接は記載されていないが、上記の記述から推測すると、此のカルサイトは「少なくとも、二つの比較する点を映し出す面は平面」である必要がありそうだ。「上部につける点印」は、平面と反対側の尖った先端が理想的なのだろう。二つの点の明暗をハッキリさせるには、カルサイトの厚みが熱い方が良いが、一方で微弱な太陽光の方向を知る事で方位を知る為だから、比較する二点が太陽光ではっきり見えないといけないから、透明度が高いか薄い必要もあるだろう。厚みは機械的寸法だから見れば判るし加工のしようもあるが、透明度は石によっても異なりそうだから、恐らくは試行錯誤で実用的な形状を定めたのだろう。
恐らくは、太陽の方位しかわからないだろうから、昼間にしか使えない太陽のみの天測航法であり、高精度な時計がないヴァイキングの時代では緯度=南北方向の位置は測れても経度=東西方向の位置は計れない。それでも、薄暮、曇天、霧、もやに関わらず太陽の方向が判るというのは、殊に目標物が何一つ無い洋上では心強い事であろう。
さて、かくしてどうやら「ヴァイキングの伝説の航法装置」が実証されたようであるが・・・此処で疑問なのは、何故そんな簡単な実証が21世紀の今日になってしまったか、と言う事だ。上記1>の考古学者ならざる「専門家」がその伝説を上記2>の通り論じながら、上記3>の専門家ならざる「考古学者」が確たる証拠を発見せず、「それが一体どんなものだったのかも疑わしいままだった。」のは何故か。
カルサイト(方解石)が途轍もなく貴重な鉱石で、その特性が殆ど知られていないと言うのならば兎も角、カルサイト(方解石)は石灰石の一種であるから地上でも屈指の豊富な鉱石であるし、その光学的特性は複屈折「透明な方解石を通して向こう側を見ると二重に見える光学的特徴」として広く知られていた。にも拘らず上記1>~2>の通り、サンストーンが伝説であり続けた理由は、私の想像力の及ぶ限り、以下の二条件のいずれかとしか考え付かない。
(1) カルサイト(方解石)の複屈折を利用する事で、光源の方向を検知する上記7>~9>の方法が知られていなかった。誰も思いつかなかった。
恐らくは、太陽の方位しかわからないだろうから、昼間にしか使えない太陽のみの天測航法であり、高精度な時計がないヴァイキングの時代では緯度=南北方向の位置は測れても経度=東西方向の位置は計れない。それでも、薄暮、曇天、霧、もやに関わらず太陽の方向が判るというのは、殊に目標物が何一つ無い洋上では心強い事であろう。
さて、かくしてどうやら「ヴァイキングの伝説の航法装置」が実証されたようであるが・・・此処で疑問なのは、何故そんな簡単な実証が21世紀の今日になってしまったか、と言う事だ。上記1>の考古学者ならざる「専門家」がその伝説を上記2>の通り論じながら、上記3>の専門家ならざる「考古学者」が確たる証拠を発見せず、「それが一体どんなものだったのかも疑わしいままだった。」のは何故か。
カルサイト(方解石)が途轍もなく貴重な鉱石で、その特性が殆ど知られていないと言うのならば兎も角、カルサイト(方解石)は石灰石の一種であるから地上でも屈指の豊富な鉱石であるし、その光学的特性は複屈折「透明な方解石を通して向こう側を見ると二重に見える光学的特徴」として広く知られていた。にも拘らず上記1>~2>の通り、サンストーンが伝説であり続けた理由は、私の想像力の及ぶ限り、以下の二条件のいずれかとしか考え付かない。
(1) カルサイト(方解石)の複屈折を利用する事で、光源の方向を検知する上記7>~9>の方法が知られていなかった。誰も思いつかなかった。
(2) 「サンストーン」は「魔法の石」であり、透明マントや7リーグブーツ並みに「検証の必要すらなし」と放置されていた。
上記(1)と言う事態は俄かには信じ難い。複屈折と言う光学的現象の本質からすれば殆ど自明のことであるから、上記(1)が真実ならば、人類の相当部分は大間抜けであり、長年にわたって大間抜けであり続けた事になる。無論、「コロンブスの卵」なんて喩えもある通り、科学史上の発見が往々にして「気づいてしまえば、今まで誰も気づかなかったのが不思議なぐらい」と言うものであることがあるのだが、かくも原理的・基礎的なレベルで誰も気づかないと言う事は信じ難い。
上記(1)と言う事態は俄かには信じ難い。複屈折と言う光学的現象の本質からすれば殆ど自明のことであるから、上記(1)が真実ならば、人類の相当部分は大間抜けであり、長年にわたって大間抜けであり続けた事になる。無論、「コロンブスの卵」なんて喩えもある通り、科学史上の発見が往々にして「気づいてしまえば、今まで誰も気づかなかったのが不思議なぐらい」と言うものであることがあるのだが、かくも原理的・基礎的なレベルで誰も気づかないと言う事は信じ難い。
だが上記(2)の場合。「カルサイト(方解石)の複屈折で、光源の方向を検知する事は出来るとわかっていたが、誰もそれを『伝説のサンストーン』と結び付けなかった」と言う場合。これなら信じられる。これはこれで「人類の間抜けさ」を示すものではあるが。
本件「伝説のサンストーンの実証」を思いつくには、古代ヴァイキング史考古学者と鉱物学者と光学設計家の協力ないし兼任が必要と思われる。だが、そんな協力の機会も兼任する酔狂者も無い或いは居なければ、本件は実証されないまま「伝説」であり続ける。これは殊に学問の専門化・分化が著しい今日においては起こりうる事であり、警戒すべき事だ。
「ジェネラリストの重要性」等と大上段に振りかぶる心算は無い。
だが、専門として一分野を極める事もさることながら、無用の用、道草の効用、趣味の実益といった奴も、存外馬鹿に出来ないのではないか、と考える。
その上で、一寸だけ大風呂敷を広げるならば・・・「理系による歴史実証・考察」と言うのは、まだまだ未開拓の学問分野であり、今回報じられる「伝説の航法器材サンストーンの実証」はその未開拓ぶりを現しているのではなかろうか。
この世には、勉強のタネ、学問の端緒は尽きそうもない。
故アイザック・アシモフ老が名エッセー「未知のX」で賞賛したとおり。実に心楽しいことである。
It's a WONDEFUL WORLD!
<注釈>
(*1) よし、彼がトロイと思い込んだのは、トロイより以前の下層にあった遺跡であったとしても。本物のトロイも発掘しているのだから。