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 図らずも半ばシリーズ化している「沖縄・八重山地区教科書選定問題」である。ついでに言えば、「問題化」したのは三赤新聞の下っ端・沖縄二紙=琉球新報&沖縄タイムスが本件を執拗に社説で取り上げているからであると、私は考えている。
 
 それが今度は全国紙の老舗、三赤新聞筆頭、朝日が社説に取り上げてきた。竹富町教委ならずとも注目に価しよう。先ずは御一読、願おうか。

転載開始=========================================

朝日社説 沖縄の教科書―町に矛盾押しつけるな

  http://www.asahi.com/paper/editorial20111031.html?ref=any#Edit2
 国が放置してきた制度の矛盾のつけを、小さな町に押しつける。そんなやり方ではないか。
 沖縄県八重山地区の中学の公民教科書選びで、石垣市、与那国町、竹富町の間で意見対立が続いている。そこで文部科学省が示した見解のことだ。
 「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を選んだ採択地区協議会の答申を有効とし、それと異なる東京書籍版を採択した竹富町には、教科書を無償で支給しない。ただし町の財源で東京書籍版を買い、配るのは構わない――。
 これでは、小中学校で学ぶ子どもの教科書は国の費用でまかなうという制度に、穴があく。「義務教育無償」を定めた憲法26条の精神を、より広く実現するための大切な柱なのに。
 竹富町は猛反発している。そもそも地区協議会での選定のしかたに問題があったのだと、竹富町は主張してきた。
 混乱のもとは、いくつかの市町村が共同で同じ教科書を選ぶ広域採択制度にある。1963年にできた教科書無償措置法で定められたしくみだ。
 小さな町や村では独自の教科書研究は難しい。まちごとに教科書が違うと、教科書会社から届けるのにも効率が悪い。だからある程度まとまって選ぶのがいい、と文科省は説明する。
 そうやって採択された教科書を、国が買い、市町村に無償で渡すことになっている。
 一方、地方教育行政法では採択権限を持つのは市町村教育委員会。同じ採択地区で、最後まで市町村の考えが合わないときは、解決の手がない。この矛盾が放ったらかしだった。
 文科省の見解は、その中であれこれと法律解釈を重ねた、苦肉の策でもあろう。
 だが、効率のために作られたルールに従って、憲法の精神がないがしろにされるなんて、おかしなことだ。救済の手立てはないものか。
 広域採択制度には、ほかにも弊害がある。広い範囲で同じ教科書を使うことで、教科書会社は大手の寡占化が進んだ。検定の縛りもあって、内容も似たり寄ったりになりがちだ。
 だが本来は、地域や子どもの事情に合わせ、教科書も色とりどりであっていい。多様な学びを、国が財政的に支える。それがあるべき姿だろう。
 文科省は、教科書採択制度の改革に本気でとりくむべきだ。広域採択のしくみはただちに見直す。将来は学校ごとに選べるよう、道をつける。各地の教委も選び方を改めて考える。
 急いで議論を進めてほしい。
=================================転載完了

補足説明:八重山教科書選定問題

 何しろ朝日は全国紙。これに対して沖縄は八重山地区の教科書選定問題は、ローカルな話題だから、朝日読者の大半も、本ブログ読者もご存知の方は少なかろう。その経緯をスッ飛ばして朝日社説を読んでも、社説自身も、私の記事も、理解は適うまい。重複覚悟で八重山教科書選定問題の経緯を記すと、以下の通りになる。
 
 経緯は例によって()番号順に並べた。なお、番号の後にアルファベットが付いている項目は、沖縄タイムス社説(*1)による補足・訂正であるから、沖縄タイムス自身の経緯認識( の筈)だ。
 
 (1) 八重山地区は「愛国心を強調し、改憲志向が強い「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社の教科書」を採択した。

 (1A) 上記(1)は「石垣、竹富、与那国の3市町による八重山地区協議会が育鵬社を採択した」である。「教科書の最終的な採択権は各教委にある」
 
 (2) 上記(1)の八重山地区の採択を、石垣市、与那国町の両教育委員会は追認した。

 (2A) 最終的な教科書採択権のある各教委の内、「石垣市、与那国町は育鵬社版、竹富町は東京書籍版を採択した。」
 
 (3) 上記(2)までで八重山地区の教科書選定手続きは完了したはずだが、これが問題視された。

 (3A) 「八重山地区の3市町は同一教科書を採択しなければならない」為、県教委が乗り出した。これは、協議会規約に「県教委の指導・助言を受け、役員会で再協議することができる」とあるためである。

 (3B) だが、その役員会は決裂した。
 
 (4) 上記(3)を受けて、9/8石垣、竹富、与那国3市町の教育委員全員による「全体会合」が行われ、2012年度から使用する中学公民教科書に東京書籍版を多数決で採択した。
 
 (5) 上記(4)の報告を文科省は受けたが、同時にその有効性を否定する文書が石垣市と与那国町の両教委から提出されていたため、上記(4)「全体会合」の決議は「法的に無効」との見解を示した。
 
 (6) 9/16に県教委から文科省に報告しなければならない教科書の需要数について、9/13現在で石垣市教委は「公民は育鵬社」と県教委に報告済みであり、与那国島教委も同様に報告する方針である。
 
 (7)10/26 中川正春文部科学相は、竹富町教育委員会が東京書籍を採択する場合、無償給与の対象にはならないとの方針を示した。逆に言えば、「八重山地区で無償供与する教科書は(規約に従って)育鵬社教科書とせよ」と言う事だ。
 

<注釈>

(*1) [八重山教科書問題]3委員長の要請は重い  http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-09-17_23561/
 

したり顔の善人面

 さて、如何だろうか。
 
 先ず注目すべきと私が考えるのは、朝日社説が上述の「八重山教科書採択問題」の経緯をほぼ冒頭の一行「国が放置してきた制度の矛盾のつけを、小さな町に押しつける。」で言い尽くし、「教科書無償」の原則論を憲法を旗印に押し立てている事だ。
 
1> 効率のために作られたルールに従って、憲法の精神がないがしろにされるなんて、おかしなことだ。
2> 救済の手立てはないものか。
 
 これは日本国憲法大好き人間や、日本国憲法に一定の権威を認める大方の人間にとっては相当に説得力ある「主張」だろう。
 だが、あんなお花畑な前文が付いて、我が国の安全保障についてまともな記述もないようなまま、戦後70年近くも一言一句変わっていない日本国憲法が、その設定経緯からして相当に怪しげな事もあり、「不磨の大典」な訳がない、と私は考えているから、そんな呪文は私には通用しない。
 義務教育の無償化だって、憲法に記載されているとは言え、正しい事とは思わない。人は、無償で供給される物は、有り難がらないからだ。

 成人前の、人生で最も知的発達著しい時期に教育を受けられると言うのは(*1)人類史上からすると相当有り難い事であるが、それが無償であるが故に有り難がられないならば、教育効果も下がろうと言うものだ。義務教育の目的は、「教育を義務化する」ことではなく、「義務として教育を受けさせる」事であり、主体は「義務」ではなく「教育」であろう。
 
 しかしながら、朝日社説は憲法を御旗に教科書無償を訴えて前記(7)の「竹富町が自腹で東京書籍教科書を買う分には構わない」文科省見解を非難し、現状の広域採択制を上記1>のように槍玉に挙げる。さらに以下のように追い討ちをかける。
 
3>  だが本来は、地域や子どもの事情に合わせ、教科書も色とりどりであっていい。
4> 多様な学びを、国が財政的に支える。それがあるべき姿だろう
 
 実に清々しいばかりのしたり顔だ。三赤新聞下っ端の琉球新報が唱える教育の中立性」と称する広域採択制(*2)なぞより余程理屈が通るのは、流石は老舗の全国紙だ。ボスキャラは、ボスになるだけの事はある、と言えそうだ。
 
5>  文科省は、教科書採択制度の改革に本気でとりくむべきだ。広域採択のしくみはただちに見直す。
6> 将来は学校ごとに選べるよう、道をつける。各地の教委も選び方を改めて考える。

 
と来るのだから、大した物と言うべきだ。
 上記1>で朝日は効率のために作られたルールと言う。それは言い換えれば「低コスト」と言う事だ。憲法の精神に則り「効率のために作られたルール」を変えよと言う上記5>~6>の主張は、教科書の「高コスト化」を意味する。現状でも教科書と言うのは採算性が悪い出版物であり、相当なやっつけ仕事でないと割に合わないそうである。それが採択と配布と言う教科書の品質には直接関係ない部分でコストが膨らむとしたら、教科書の低品質化を招くのは必至だろう。或いは、上記4>「国が財政的に支える即ち膨らんだコストを国が負担するか、だ。
 
 全体として、仲々美事な社説である。否、実に巧妙な社説である。八重山教科書問題の経緯も、広域採択制を細分化する事によるコスト増も、隻言半句とは言え触れているし、「憲法重視・教科書無償化」の基本方針も徹底している。非難対象は文科省と現行制度だから、非難しても敵は作りにくい。
 
 だからこそ、私は気に入らないんだが。
 言うまでもなかろうが、章題にした「善人面」と言う表現は、本当の善人には使わないものだ。
 

<注釈>

(*1) その教育を受けている時は、そんなことは理解できないであろうが。「勉強」と言うのが「勉めて強いる」と書くのは、その辺りが所以ではないかと、私は想像している。
 
(*2) 支離滅裂意味不明-琉球新報社説 「八重山教科書問題 教育の中立性を放棄するのか」を斬る!  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36166069.html
 

八重山地区教科書選択関連記事

(1)愚問承知で琉球新報社説のダブルスタンダードを問う! http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35958019.html
 
(2)続報・沖縄八重山地区教科書採択  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35980232.html   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35980305.html
 
(3)続々報・沖縄八重山地区教科書採択―沖縄タイムスの言い訳   
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35987995.html
 
(4)つまらない社説in沖縄二紙― 八重山教科書選定  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35996723.html
 
(5)支離滅裂意味不明-琉球新報社説 「八重山教科書問題 教育の中立性を放棄するのか」を斬る!  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36166069.html